《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第十三話 剣聖無雙

「こりゃ厄介だな!」

さながら、森全いているかのようであった。

以前にも悪霊の森でトレントの群れと遭遇したことはあったが……あの時以上の數かもしれない。

しかも、木の一本一本がはるかに大きかった。

これはひょっとすると、トレントの上位種であるマーダートレントかもしれない。

人の生きを養分にするとされる、極めて兇悪な食人植だ。

「さながら、境界の森の番人といったところですね。簡単には行かせてくれないようだ!」

「どうする? ここで迎え撃つか?」

「私にお任せを。伐採してやりますよ!」

そう言うと、ウェインさんはドラゴンの背を飛び降りた。

そして縦橫無盡に振るわれる枝や蔦を、見る見るうちに剣で切り裂いていく。

さっすが、Sランク冒険者!

その獅子迅ぶりに、たちまち仲間のたちから歓聲が上がる。

「ウェイン様、さすがです!」

「そんな木の群れ、さっさとやっつけちゃってください!」

「ははは! よく見ていてくれたまえよ!」

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歓聲に応じて、手を振る余裕を見せるウェインさん。

……前々から思っていたのだけれども。

ひょっとして、ウェインさんの連れている陣って応援のためだけにいるのかな?

特に、補助魔法とかを掛けてサポートしている様子もないし……。

応援のために魔界まで行くって、それはそれで気合のった集団だな。

俺は半ば呆れつつも、ちょっとばかり心してしまう。

「はああぁっ! でやあああっ!!」

応援が効いたのか、トレントの群れを次第に押し返していくウェインさん。

やがてひと段落著いたところで、彼は姉さんの顔を見て二ッとウィンクをした。

の活躍ぶりに相當の自信があるのだろう、白い歯を輝かせてひどく自信ありげである。

しかしここで、トレントたちの反撃が始まった。

「ん? あれは……?」

「木の実?」

ヒュルヒュルと音を立てながら、無數の何かが飛來した。

あれは……見たところ、木の実だろうか?

綺麗な放線を描いたそれらは、地面に著弾するや否やボンッと音を立てて破裂した。

そして中から、得の知れないガスのようなものが噴出する。

それにれた途端、若木がを失って枯れた。

「ひぃっ!? ウェ、ウェイン様ーー!!」

「くっ! まさかこんな飛び道を使ってくるとは!」

「ウェイン! 剣圧を調整して、あの実を割らずに打ち返せ!」

とっさに指示を飛ばす姉さん。

しかし、それをけたウェインさんは戸ったような顔をした。

そしてすぐさま、姉さんに非難めいた眼差しを向ける。

「そんな無茶苦茶な! ここは退卻して、対応策を考えましょう!」

「そうですよ! うわっ!?」

木の実の一つが、ランドドラゴンの足元に落ちた。

たちまちガスが噴出し、ドラゴンは唸りをあげて後退する。

當然ながら、その背中の上は大揺れ。

たちまち上へ下への大騒ぎとなってしまう。

「落ち著け! ええい、こうなったら私がやる!」

「ね……ライザさん!?」

見ていられないとばかりに、姉さんが飛び出していった。

その予想外の行に、ウェインさんはたちまちぎょっとしたような顔をする。

「ライザ殿! 何をなさるつもりですか!?」

「言っただろう? あの実を打ち返すまで!」

「ですから、そんなことができるわけ……」

「はあああぁっ!!」

再び、トレントたちが一斉に木の実を放った。

気迫一閃、姉さんは眼に映らぬほどの速さで剣を抜き放つ。

伝わる衝撃波。

たちまち、こちらに向かっていた木の実のすべてが弾き飛ばされた。

しかも、そのすべてが割れることなくトレントたちの方へと戻っていく。

時を逆転させたかのようなそのきは、まさしく神業としか言いようがなかった。

「グゴゴゴゴゴオオッ!!」

木の実から放出されるガスは、トレントたち自にも有効だったようだ。

らしからぬ悲鳴をあげながら、右へ左へと逃げう。

こうして、周囲を埋め盡くすほどのトレントたちは瞬く間に逃げて行ってしまった。

強い者には逆らわないということが、本能としてあるのだろう。

驚くほどに素早い撤退ぶりである。

「なんだ、あっけないな」

拍子抜けしたように、やれやれと肩を落とすライザ姉さん。

コキコキと首を鳴らして、まだまだ暴れたりなさそうな様子である。

それを見たウェインさんは、白晝夢でも見たかのように瞼をこする。

「ラ、ライザ殿……!?」

「ん? どうかしたのか?」

「ず、ずいぶんとお強かったんですね。高名な騎士だとは伺っていましたが」

「そうか? これぐらい、達した剣士ならばできるだろう。なぁ?」

俺の方を見て、話を振ってくる姉さん。

うーん、そうだなぁ。

さすがにあれをそのまま真似するのは厳しいけれど……。

「八割ぐらいなら、俺でも返せますね」

「む、何だその自信のなさは。そこは全部返せます、だろう?」

「いや、さすがにそこまでは。絶対いくつかれるから」

「未者め。それぐらいできるようになっておけ」

「あはははは…………。なかなか、厳しい方のようだね」

そう俺に告げるウェインさんの顔は、何故だかひどく青ざめていた。

ひょっとして、ガスをし吸い込んでしまったのだろうか?

も青く、先ほどまで覇気に満ちていたのが噓のように元気がない。

「大丈夫ですか? ずいぶんと合が悪そうですけど」

「な、何でもない。それより、早く先に進もうじゃないか」

そう言うと、ウェインさんはランドドラゴンの頭をポンポンと叩いた。

それに応じるように、ドラゴンは首をもたげるとゆっくりと歩き始める。

こうして俺たちは、魔界を目指して森の中を進んでいくのだった。

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