《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第二十話 ウェインさんとライザ姉さん
「シャアアアアッ!?」
俺たちを取り囲むように、地面から吹き上がった紅炎。
そこから発せられる熱をけて、たちまち大蛇は悲鳴のような聲を上げた。
やはり、氷の魔力を使うだけあって炎は苦手らしい。
その怯えぶりはひどく、地面を揺らしてのたうち回る。
「シャア、シャアアアッ!!」
最後にこちらを一睨みすると、大蛇はゆっくりとその場から去っていった。
熱で氷が解けたのか、ズルズルと何かが這うような重い音が響く。
やがてそれがすっかり聞こえなくなり、周囲に靜寂が戻った。
猿も大蛇も、ひとまず俺たちの周りからいなくなったようだ。
「何とか、一難去ったな」
「ええ。全く恐ろしい魔でしたね」
「これからどうします? ドラゴン、いなくなっちゃいましたけど」
俺はそう言うと、たちの方へと眼を向けた。
すると彼たちは、涙目になりながら訴えかけてくる。
「私たち、こんな森の中を歩けませんわ!」
「そうです。まさか、こうなるとは思ってなくて」
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「……まったく、困ったものだな」
たちの反応を見て、互いに顔を見合わせる俺と姉さん。
裝備やのこなしを見るに、彼たちの実力は初心者よりし上と言ったところだろうか。
流石に完全な素人というわけではないようだが、境界の森を歩くには力不足だ。
放っておけば、すぐにでも魔の餌にされてしまう。
「ウェイン殿が連れてきたんだ。責任は取ってくれ」
「わかった、私が何とかしよう。君たち、決して私から離れないでくれ」
ウェインさんがそう呼びかけると、すぐさまたちは彼にべったりとくっついた。
よほど恐ろしかったのだろう、その勢いときたらウェインさんが潰れてしまいそうなほどである。
「とにかく、早いうちにこの霧を抜けてしまいましょう。また奴らが來ても、今なら対応できますから」
そう言うと、俺はポッと指先に火を燈した。
溫度で敵を察知するとわかっているならば、誤魔化しようはいくらでもある。
俺はひとまず魔力探知を再開すると、姉さんと二人で皆を先導していく。
「ジーク、魔力に余裕はあるか?」
「しなら何とか」
「あのたちにヒールを掛けてくれ。このままでは霧を抜ける前に日が暮れる」
「わかった」
俺はすぐに魔力を練り上げると、たちの方へと振り返った。
やがて掌から発せられた癒しの魔力が、小さなの粒となって降り注ぐ。
するとたちまち、たちは驚いたように目を見開いた。
「すごい……! 疲れが全部取れましたわ!」
「が軽い、ずっと走れそう!」
「おいおい、本當かい?」
先ほどまでの疲労困憊した様子から一変して、元気が有り余るたち。
それを見たウェインさんは、しばかり戸った顔をした。
魔法を掛けた本人である俺ですら、予想以上の効果にちょっと驚いている。
ただのヒールがこれだけ効くなんて、よっぽど疲れがたまっていたのだろうか?
「ジーク、いったいどれだけ魔力を込めたんだ?」
「え? えーっと、ねえ……ライザさんに掛ける時ぐらいの基準で」
「待て、私基準で掛けたらそうもなる!」
あ、それもそうか!
ついつい何時ものやり方でやってしまったが、相手が普段とは全く違うのだ。
ライザ姉さんの人間とは思えないを基準に魔法を掛ければ、そうもなる。
「む、何か今失禮なことを考えなかったか?」
「そんなことはないよ!」
「顔が青いぞ? ……まあいい、この様子ならし歩くのを速めても大丈夫そうだな」
そう言うと、姉さんは軽く準備運のような仕草をした。
そして「ほっ!」と息を吐くと、思い切り足を前方に踏み出し――。
「のわっ!? はやい、早すぎですって!!」
猛烈な勢いで、すっ飛んでいくライザ姉さん。
それを呼び止めようと、俺は慌てて聲を張り上げるのだった。
――〇●〇――
「走り過ぎですよ!」
「ははは、すまなかった。だがおかげで、夜になる前に抜けられたではないか」
それから進み続けること數時間。
俺たちは無事に霧の海を抜けることができた。
一時はどうなることかと思ったが、どうにかなったな。
ランドドラゴンが犠牲になってしまったのはつらいが、死人が出ることがなくて本當に良かった。
「今日はこのあたりで休みましょうか」
「ああ。あそこなんていいんじゃないか?」
森の真ん中に大きな倒木があり、その周囲がちょっとした空き地となっていた。
視界が効いて、いざという時に対応がしやすそうである。
俺たちはさっそくそこにテントを張り、火を焚いて野営の準備をした。
こうして日も暮れてきたところで、一息ついたウェインさんが尋ねてくる。
「……なぁ。君たち、本當はいったい何者なんだ?」
「へっ? いったい何ですか、藪から棒に」
思いがけない問いかけに、俺は変な聲を出してしまった。
まさか、姉さんの正がバレたのだろうか?
俺がとっさに目配せをすると、姉さんもまた怪訝な顔をする。
「私たちがどうかしたのか?」
「高名な騎士だと聞いてはいたが、流石に強すぎるだろう? ジーク君にしたってあまりにも多才だ、これでただの冒険者だとはとても思えない」
そう言われた姉さんは、ふむと顎に手を當てた。
まさか、ここで正をばらしてしまうのか?
それもありだとは思うが、さすがにちょっとまずいんじゃ……。
俺が揺していると、ここで姉さんは思いもよらぬことを言い始める。
「……むしろ、ウェイン殿が弱すぎるのではないか?」
「へ? な、何をおっしゃるんですか!」
「そうだよ、そんなこと言って失禮だよ!」
「では聞くが、なぜウェイン殿はあのたちをここまで連れてきた?」
「それは、私のサポートをしてもらうためで……」
痛いところをつかれたとばかりに、聲が小さくなるウェインさん。
うわぁ、こりゃ辛いな……。
姉さんに責められるウェインさんを見て、俺は以前の自分を思い出した。
ウィンスターの実家にいた頃は、こうやっていつも絞られてたんだよな。
怒られる理由は、ウェインさんとは全然違っていたのだけども差。
「サポート役か。ということは、ウェイン殿はサポート役がいてその程度なのか?」
「そ、その程度!? 何を言うかと思えば……!」
「その程度はその程度だろう」
「バカな。私はSランクなんだぞ!!」
ウェインさんの聲がにわかに大きさを増した。
姉さんの一言が、よっぽど気に障ったらしい。
顔は上気し、額から湯気が上がっているようにすら見えた。
しかし、姉さんの方は至って冷靜な口調で言う。
「そもそもだ、そのSランクと言うことがなぁ……」
「まさか、私が不正をしてSランクになったとでも? 言っておくが、それは斷固としてないぞ!」
そう言い切るウェインさんの眼は、とても噓を言っているような雰囲気ではなかった。
彼にもやはり、冒険者としてのプライドというものがあるのだろう。
「しかしなぁ……」
「まあまあ! ライザさん、それは言いすぎですよ!」
「む、そうか? だが、ここで言っておいた方が後々ウェイン殿のためにもなると思うぞ」
そういう姉さんの顔は、先ほどまでとは一転して実に無邪気なだった。
本當に、ウェインさんのためを思って説教しているつもりだったようである。
言いたいことはよくわかるのだけど、さすがに旅の最中にこうまで詰めるのはどうなのか。
もしウェインさんの神が崩れたりしたら、明日以降に響いてしまうし。
「今日はこれぐらいにしときましょう。明日もありますから、ライザさんは早めに寢てください」
「仕方ないな、わかった」
やれやれと引き下がった姉さん。
彼はもぞもぞと寢袋の中にると、すぐに眠りについてしまった。
「…………一応、禮を言っておこう」
「あ、ええ。どうも」
「だが、庇ってもらわなくても私一人で切り抜けられたからな。ほ、本當だ!」
そう言うと、ウェインさんもまたさっさと床についてしまった。
このまま、二人のが拡大しないといいのだけれども。
どっちもどっちで、ちょっと良くない點があるからなぁ……。
こうして寢ずの番をする俺の胃は、しキリリと痛むのであった――。
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