《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第二話 シエル姉さんの依頼

「な、何でシエル姉さんが!?」

予想だにしていなかったの登場に、俺は思わず大きな聲を出してしまった。

いったいどうして、こんなところにシエル姉さんがいるのか。

もしかして、また俺のことを追いかけてきたのか?

これにはライザ姉さんも驚いたのか、即座に問いかける。

「シエル、帰ったはずではなかったのか? 流石に二度目は往生際が悪いぞ」

「ふん、違うわよ。私はノアに依頼を出しただけ」

「え? ということはもしかして……姉さんが依頼人だったの!?」

たまらずひっくり返りそうになった俺に対して、シエル姉さんはゆっくりと頷いた。

噓だろ、なんでまたそんなことに。

そもそもシエル姉さんなら、俺に頼らずともドラゴン討伐ぐらい何とかなるだろう。

仮に手助けが必要だとしたって、俺以外にも伝手はいくらでもあるはずだ。

「いったい何のつもりだ? プライドの高いお前が、ノアに助けを求めるとは」

「プライド高いって、ライザにだけは言われたくないわよ。単純に、ノアの力が必要なだけ」

Advertisement

「俺の力がですか?」

「ええ」

そう言うと、心を落ち著かせるようにふうっと息を吐いたシエル姉さん。

に促されて、俺たちはエントランスに置かれていた椅子に腰を下ろした。

何とも言えないがその場に漂う。

やがてその不穏な気配を押し流すように、シエル姉さんが語り始めた。

「私の所屬している王立魔法研究所が、ゴールデンドラゴンに襲われたの。

で、研究資料として保管されていた巨大魔結晶が強奪された。

今回の依頼は、私と一緒にゴールデンドラゴンを討伐してこの結晶を取り戻すことよ」

「……でも、どうしてそれにジークの力が必要なのさ?」

「いろいろと厄介な狀況になっちゃったからね」

シエル姉さんの額に、深い皺が寄った。

ゴールデンドラゴンというのは、そんなに厄介な種なのであろうか?

強力なドラゴンの一種としか知らなかったのだが、何だかいろいろと訳ありそうな雰囲気だ。

「ゴールデンドラゴンは、恐らく魔結晶から魔力を抜いて自分のに溜め込んでるわ。

こんな魔力の塊みたいな奴を魔法で攻撃したら、最悪の場合、大発が起きるわよ」

「それで、シエル姉さんだけでは対処ができないと」

「ええ。けど、ゴールデンドラゴンの鱗は魔力を通した剣じゃないと斬れないの」

「……つまり、発しないように最低限の魔力だけを剣に通して戦えと?」

俺がそう確認すると、シエル姉さんは深々と頷いた。

言葉にすると簡単だが、これってかなり高度な要求なんじゃないか……?

俺が困していると、シエル姉さんはさらに続けて告げる。

「さらに言うと、どれだけの魔力を通せばいいのかは狀況次第よ。

だから、魔剣を使って常に一定の魔力を出すってわけにもいかないわ」

「そりゃまた、だいぶ難しい……」

「だから、ノアにしか頼めないの。純粋な剣技ならライザだけど、魔力の作ができないからね」

なるほど、それで俺に依頼を出したという訳か。

しかしどうしたことだろう、理由を語ったというのに姉さんの顔はどことなくスッキリしない。

そのことをライザ姉さんも不思議に思ったのか、尋ねる。

「どうした? 煮え切らない顔をして」

「別に何でもないわ。ただ、流石に難しい仕事になるだろうと思って」

「いつも自信満々なシエルらしくないな」

「そりゃ、私だって悩むことぐらいあるわよ。脳筋な誰かとは違って」

「なっ! 姉に対して、何を言う!?」

たちまち始まる言い爭い。

まったくもう、姉さんたちはいつも一言多いんだから!

何人か集まると、すぐに喧嘩を始めちゃうんだよなぁ……。

どうして姉妹同士で仲良くすることができないんだか。

大事にならないうちに、俺はサッサと話題を切り替えようとする。

「あー、それは良いとして! シエル姉さんが研究所のために仕事するなんて、珍しいですね?」

「そう?」

「だって姉さん、普段は何を言われても研究所の手伝いとかしないのに」

王立魔法研究所に所屬しているシエル姉さん。

しかし実際のところは、年に數回の學會に顔を出す程度のことしかしていなかった。

それ以外はもっぱら、自宅の研究室で魔法の研究に勵んでいる。

そのため研究所への帰屬意識などまるでなく、向こうから何か要請があった際もほとんど斷っていた。

が賢者の稱號を持っていなければ、とっくの昔に追い出されていたことだろう。

「そういうことか。ま、今回奪われた魔結晶の作には、私もちょっと噛んでたからね」

「作? 人工的に作られたものなんですか?」

「そうよ。小さい魔結晶をたくさん集めて、大きな魔結晶に合し直すって研究をしてたの。

まさか、ドラゴンに眼を付けられるとは思ってなかったんだけど」

どこか渇いた笑みを浮かべるシエル姉さん。

やはりまだ、何かありそうである。

けどこういう時の姉さんって、質問しても素直に答えてくれないんだよな。

俺は好奇心をグッと抑え込むと、何も気づかないふりをして言う。

「……それで、討伐にはいつ出かけるの?」

「ノアたちの旅の疲れが癒えたら、すぐにでも」

「たちってことは、俺たちも一緒に行くのか?」

「ええ。ララト山にはゴールデンドラゴン以外にも厄介なのが住み著いてるわ。その払いをお願い」

シエル姉さんがそう言うと、ロウガさんたちは任せておけとばかりにを張った。

Aランクのクルタさんに、Bランクのロウガさんとニノさん。

そして、剣聖であるライザ姉さんが払いとは何とも贅沢な布陣である。

「そういうことなら、今日のところは休むことに専念するか」

「だね。この街のダージェン料理は絶品だよー!」

「へえ……。お姉さまがそういうなら、きっと素晴らしいんでしょうね!」

こうして俺たちは、討伐任務に備えてしっかりと休みを取るのであった。

    人が読んでいる<【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください