《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第六話 出大作戦!
「何だこの數は……!?」
空を埋め盡くすドラゴンの群れに、俺たちは思わず息を呑んだ。
まさか、これほどの數のドラゴンと遭遇しようとは。
予想をはるかに上回る出來事に、思考が停止してしまいそうになる。
「前に來た時は、ワイバーンがいただけだったのに……!!」
「そうなんですか、お姉さま?」
「じゃなきゃ、ボクが依頼達なんてできないよ!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃねえ! 逃げるぞ!!」
全速力で走り出す俺たち。
しかし、何かのドラゴンが崖に向かってブレスを放った。
響き渡る音、崩れ落ちる大巖。
崖際の道がたちまち土砂で塞がれ、俺たちは退路を失ってしまう。
「くっ! まずいな!」
「見て、あそこ!」
そう言ってシエル姉さんが指さしたのは、崖にできた大きな裂け目であった。
口こそ橫になってれる程度の幅しかないが、奧はそれなりに広そうである。
こうなったら、ひとまずここに逃げ込むしかないな!
俺たちが大慌てでその中にり込むと、即座にシエル姉さんが結界を張る。
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「ノアも手伝って!」
「はい!」
俺も姉さんに手を貸して、強力な魔力の壁がり口に展開された。
これで、しばらくの間は持ってくれることだろう。
とりあえずの危機をしたことで、俺たちはほっとをで下ろす。
「何とか全員無事だったな」
「ああ。しかし、まさかあれほどの數のドラゴンがいるとはな」
「うん、明らかに何かおかしいよ」
すっかり困り顔のクルタさんたち。
するとライザ姉さんが、結界越しに外の様子を伺いながら言う。
「あそこにいる赤い鱗のドラゴン、あれは火山地帯に住むファイアドラゴンだな」
「言われてみればそうね。雪山にいるような種じゃないわ」
「ほかにもあの緑の鱗は、大森林のフォレストドラゴンじゃないのか?」
「そうね……言われてみれば……」
ドラゴンの群れを見ながら、意見をわすライザ姉さんとクルタ姉さん。
どうやらあの群れには、本來はララト山に住んでいない種が混じっているらしい。
「つまりそれって、大陸中のドラゴンが集まってるってことですか?」
「……そういうことになるわね」
「何だか大ごとになって來ましたね。もしかしてこれも、魔族の影響でしょうか?」
不安げな顔でつぶやくニノさん。
彼の言う通り、こんなことをするのは魔族ぐらいしか考えられなかった。
けど、ドラゴンたちを一か所に集めて何をするつもりなんだ?
まさか、ドラゴンの大群を先兵に人間界へ戦爭を仕掛けようとでもいうのだろうか。
あんなものが山を下りて暴れたら、國の一つや二つは吹っ飛ぶぞ……!
「とにかく、ここはひとまず撤退だな。いくらなんでもあの數は厳しいだろ」
「そうだな……。ノアとシエルと私で五ずつ倒してもし足りないな」
「五ずつって、いくら何でも無茶だよ。俺は三ぐらいじゃないかな?」
「そうか? 行けると思うがな」
「いやいや、そういう問題じゃないだろ……」
俺たちの會話を聞いて、何故か呆れた顔をするロウガさんたち。
あれ、また変なこと言っちゃったかな?
軽く首を傾げると、話題を切り替えるようにクルタさんが言う。
「それより、早くここを出ないと。さっきから揺れてるよ!」
「このままだと、天井が落ちてくるかもしれませんね……」
ニノさんがそう言った瞬間、ドォンと雷鳴にも似た音が響いた。
それと同時に、天井からパラパラと小石が落ちてくる。
結界の強度を察したドラゴンたちは、そこではなく周囲の崖を攻撃し始めたようだ。
幸い、この辺りの巖はかなり頑丈なようなのだが……。
先ほど見た崖のように、いつ崩れ落ちてもおかしくない。
「まずいわね。このままじゃ生き埋めになるわ」
「だが、外に打って出るわけにもいくまい」
「そうね、何かあいつらの気を引くようなものでもあれば……そうだ!」
そう言うと、シエル姉さんはマジックバッグの中から大きな人形を取り出した。
これはゴーレムの一種……なのだろうか?
男の子の姿を模しているようで、ご丁寧にきちんと服まで著せられている。
手足の球関節を見なければ、人間と間違えてしまいそうなほどだ。
「何ですか、これ」
「アエリアに頼まれて作った人形よ」
「へえ、マネキンにでも使うんですかね?」
「さ、さあ! 私は言われたとおりに作っただけだから!」
何故か、人形の顔を執拗に手で隠しながら顔を赤くするシエル姉さん。
まだ製作途中で、恥ずかしいのだろうか?
シエル姉さんって、完璧主義だからそういうこと気にするもんなぁ。
俺がそんなことを思っていると、ライザ姉さんが心底呆れたように呟く。
「アエリアはまたそんなものを作ったのか……」
「まあいいじゃない。今回ばかりは助けられたわ」
「でも、そんな人形一でドラゴンの気を引けるの?」
人形を見ながら、訝しげな顔をするクルタさん。
彼の言う通り、たった一の人形でドラゴンの群れを引き付けられるものなのだろうか?
するとシエル姉さんは、ふうっとため息をついて言う。
「それについては平気よ。この人形の力には、高純度の魔結晶が使われてるの。
間違いなくドラゴンを引き付けられるわ」
「けど、すぐに壊されたりしない?」
「そこも心配なし、姉さんのオーダーですっごく頑丈にしてあるから」
いったい、そんな人形を何に使うつもりだったんだ?
俺は思わず首を傾げたが、再び姉さんに「知らなくていい」と釘を刺されてしまった。
知らなくていいって、それってシエル姉さんは理由を知ってるってことじゃないか?
さっきと言ってることが矛盾してるぞ。
俺の中でますます疑問が深まっていくが、ここでライザ姉さんがポンと俺の肩を叩く。
「いいか、ノア。知らなくて良いことを知るのも、大人になるということなんだ」
「はぁ……」
「とにかく、その人形でドラゴンどもの気を引いて一気に逃げるぞ! 時間がない!」
そう言って、場を取りまとめたライザ姉さん。
こうして俺たちは竜の谷からの出作戦を開始するのだった。
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