《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第十八話 信じるということ
「解釈一つで、容がまったく違ってきますね……」
老婆の語った話を聞いて、俺は渋い顔をしながらそうつぶやいた。
自分たちの先祖が大罪人であったなど、街の人々からしてみればおよそけれがたい容である。
メイリンたち一家が疎んじられているのも、ある意味で納得がいった。
「必ずしも、こちらの話が真実とも限らないんですけどね」
「あたしとしては、こっちが本當だと思うけどねえ」
「もう! そんなことを言ってるから、街の人とめるんですよ!」
「あたしは平気さ、街の連中に嫌われるのも慣れちまったよ」
そう言うと、老婆は懐から煙管を取り出した。
そして魔石を弾いて火をつけると、ふうっと煙のを吐き出す。
その仕草は堂にっていて、ずいぶんと世慣れた雰囲気であった。
きっと若い頃は、家の信仰が原因で散々苦労してきたのだろう。
荒波を乗り越えてきた人にしか出せない、獨特の貫祿がある。
「それに、その方がいろいろ辻褄が合うのさ」
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「……と言いますと?」
「あたしらの先祖を助けてくれたのは先代の龍の王だと言われている。だがこの王は、その直後に魔族と人間の連合軍に討たれちまった」
「ええ、大陸全土を巻き込む大きな戦いだったとか……」
「だが不思議なことに、あたしらの先祖は龍の王を討った國々と何事もなかったかのように友好を結んでいるんだ。変だと思わないかい?」
確かに……自分たちが崇拝する者を討った人々と簡単には仲良くできないだろう。
いくら経済的な事などがあったとしても、そうあっさりと割り切れないのが宗教というものだ。
まして、もともとチーアンに住む人々は保護を斷られてここまで流れ著いたのである。
恨み真髄となってしまっても不思議ではない。
「人質と引き換えに助けてもらったと考えれば、それも納得がいくさね。恩があるとはいえ、人を食う龍なんていなくなってくれた方がありがたいぐらいだっただろうよ」
「でもそうなると……。逆に今の狀況の方が変じゃありませんか?」
老婆の言っていることが正しいならば、なぜ人々は龍を神聖なものと崇めるようになったのだろう?
納得のいかない俺が疑問をぶつけると、老婆はうっすらと笑みを浮かべながら言う。
「そりゃ、龍を神聖なものとした方が楽だったんだろうさ」
「楽?」
「そう、このあたりはただでさえ耕地のない過酷な土地さ。その上、生贄を求める恐ろしい龍がいるなんて考えるよりも、聖龍様が守ってくださるなんて考えた方が楽だろう?」
よく言えばプラス思考、悪く言えば現実逃避に走ってしまったということだろうか。
それが世代を経ていくうちに、真実とすり替わってしまったと。
ありがちな話ではあるが、ちょっと腑に落ちないようなじもするなぁ。
俺がうんうんと唸っていると、今度はメイリンさんが言う。
「私は、龍は聖なるものだと信じたいですけどね。さ、このぐらいにして今日のところは休みましょう」
そう言って、気を取り直すようにメイリンはパンと手を叩いた。
彼はそのまま部屋の奧に向かうと、よいしょっと布団を抱えて戻ってくる。
「あ、俺が持ちますよ!」
「いいです、お客様なので!」
そう言って、床に布団を敷くメイリン。
こうして寢床の準備が整ったところで、老婆がシエル姉さんの様子を見ながら言う。
「この様子なら明日には回復するだろう。そしたら、溫泉で休んで力を戻すといい」
「溫泉ですか? でも俺たち、街の人たちに避けられていて……」
「それなら心配ない。ちょっと登ったところに隠れ湯があってね。そこなら街の連中もほぼいないよ」
「おお、ありがとうございます!」
老婆に向かって、深々とお辭儀をする俺。
この街に來た時から、溫泉のことが気にはなっていたんだよな。
生殺しのような狀態がずっと続いていたのだけれど、こんなところで機會が巡ってくるとは。
ここはひとつ、お言葉に甘えて溫泉で英気を養うとしよう。
「ちなみに言っておくと、風呂は混浴だよ。良かったねえ」
「こ、混浴!?」
「そうさ、可いお仲間のあんな姿が見放題だねえ」
「ぶっ!?」
思わず妙な場面を想像して、俺は噴き出しそうになってしまった。
いい人なんだろうけど、こうやってからかってくるのが難點だなぁ。
しかし、混浴って……大丈夫なのか?
小さい頃は姉さんたちと一緒にっていたけれど、流石に十歳を過ぎてからはない。
だいたい、クルタさんやニノさんとは……。
「噓ですよ! ちゃんと湯船は男で分かれてますから!」
「なんだ、びっくりした……」
「つまらない子だねえ。もっと慌てさせてからでもいいだろうに」
「そういうのはやめてって、言ってるでしょ?」
「おやおや、我が孫はこの年寄りから數ない生き甲斐を奪うつもりかい?」
そう言うと、老婆は眼元を押さえながら俺にもたれかかってきた。
そして大袈裟に泣くのだが、涙は一滴たりとも出てはいない。
噓泣きあることは誰の眼にも明白であった。
「あはは、長生きしそうだなあ……」
もたれかかってくる老婆のを抱えながら、俺は困ったようにそうつぶやくのだった。
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