《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第二十四話 襲來

「おーおー、凄い數だな」

時は遡り、ジークたちが地下通路にった頃。

白龍閣に殘ったロウガたちは、移する街の人々を窓から眺めていた。

不測の事態に備えて街に殘った彼らだが、この分なら儀式の場に向かった方が良かったかもしれない。

「でも、半分ぐらいは殘ってるんじゃない? 子どもたちとか、ほら」

そう言ってクルタが指さした先では、子どもたちが追いかけっこをして遊んでいた。

儀式に參加するのは大人たちだけのようで、子どもは街に殘されたらしい。

大人のいない街で、彼らはここぞとばかりにはしゃぎ回っていた。

「いざという時は、私たちが守らないといけませんね」

「ああ、そうだな。まあ、何もないのが一番なんだが」

不安げな眼差しでララト山を見上げるロウガ。

竜の谷には、今も數えきれないほどのドラゴンが集結していることだろう。

ジークたちならば、ドラゴンの一頭や二頭はの數ではないが……。

流石にあれほどの數となると、無事に帰って來られるかわからない。

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以前も、ジークが命がけの賭けに出てどうにか戻ってこれたぐらいなのだ。

「今のところ、ボクたちにできるのは待つことぐらいかな」

「それもそうか。しかし、部屋で靜かに待つってのもなかなか辛いな」

「本でも読んだら? 結構面白いよ」

そう言うと、クルタはカバンの中から一冊の本を取り出した。

『イルファーレン語』と大きく記されたそれは、いま流行りの小説である。

全十巻にも及ぶ大作であるが、クルタは全て読破して二周目に突したところだった。

「おいおい、俺はそんなの読まねえよ」

「えー、すっごく面白いのに!」

「そうですよ、私も読みましたけど傑作です」

「つってもなぁ……」

イルファーレン語は、王宮を舞臺にした華やかな絵巻である。

甘く切ないストーリー展開に定評があるが、あいにく、ロウガはそう言った作品は好みではなかった。

どちらかと言えば、彼は漢の浪漫が溢れる冒険譚が好きなのである。

最近のお気にりは、東方を舞臺にした『コゴロウ剣豪譚』であった。

こうして彼が渋い顔をしていると、クルタが笑いながら言う。

「ほんとに面白いんだって! あのライザも読んでるんだよ」

「あ? あのライザが?」

「そうそう。一週間ぐらいで全部読んじゃったって」

そう言って、楽しげに笑うクルタ。

一方のロウガは、ライザと小説がどうにも結びつかず変な顔をしていた。

あの堅で武骨なライザが、小説を読むとは思えなかったからだ。

「やっぱ、年頃のはみんなものが好きなのかねえ」

「私はホラーとか結構好きですけどね」

「ニノって、たまにゲテモノ好きなとこあるよね」

ニノの個的な趣味に、やや引き気味なクルタ。

それを見たニノは、いけないとばかりに口を閉じて顔をそらす。

の小さな頬が、恥ずかしさで朱に染まった。

「ま、趣味は人それぞれってことだろ」

ロウガがそう言ったところで、部屋の扉がトントンと叩かれた。

いったい誰が來たのだろう?

來客に心當たりのない彼らは、即座に武を手にして警戒態勢を取る。

ひょっとすると、街の人たちが彼らのした芝居に気付いて乗り込んできたのかもしれなかった。

「……誰だ?」

「宿の者です。ギルドの方から連絡がありまして、取次に來ました」

「ギルドから? いったいなんの?」

「詳しいことまでは知りませんが、屆けが著いたとか」

その言葉に、ロウガたちは互いに顔を見合わせた。

屆けの予定など、特に記憶にはなかったからである。

しかしここで、クルタがハッとしたような顔をして言う。

「あ、もしかして! ちょっと早いけど、あれが屆いたんじゃない!?」

「あれ?」

「そうだよ、早くジークに屆けて――」

クルタの言葉が終わらないうちに、窓の外から悲鳴が聞こえてきた。

急いで三人が窓を覗き込んでみれば、山の方からいくつかの影がこちらに向かってくる。

目を凝らしてみれば、それは巨大なドラゴンであった。

これまで竜の谷から出ようとしなかった群れが、にわかにき出したのだ。

「おいおいおいおい! こりゃまずいぞ!」

「……子どもたちがいます。迎え撃つしかないですね」

「急いで、ギルドに荷を取りに行こう! あれがあれば、しはマシかも!」

「だから、あれってなんだよ!」

「聖剣! ほら、一週間後ぐらいに屆くって前言ってたでしょ!」

クルタにそう言われて、ロウガはようやくバーグに打ち直しを依頼した聖剣のことを思い出した。

この戦いにはとても間に合わないと思っていたため、すっかり記憶から抜け落ちていたのだ。

それが幸か不幸か、討伐の延期が重なったためギリギリで間に合ったのだ。

「んじゃ、とにかく聖剣を確保しねえとな! もし焼けたりしたらことだぜ!」

「そういうこと! 急がないと!」

「でも、子どもたちも放っては置けませんよ! お姉さま!」

ニノの言葉に、クルタの眉間に皺が寄った。

子どもたちを保護しなければならないというのは、至極もっともな意見であった。

だが、聖剣を放置しておくわけにもいかない。

萬が一、ギルドの建が攻撃されて聖剣が失われたりしたら取り返しがつかなくなる。

「じゃあ、ニノだけ別行で! 聖剣をけ取って、ジークのとこまで持って行って!」

「私がですか?」

「ニノ、私たちの中で一番小回りが利くでしょ? それに隠とかもできたわよね?」

「わかりました。行ってきます!」

こうして、部屋を飛び出して走り始めたニノ。

を見送ったところで、ロウガとクルタもまた部屋を出る。

「さあ、ここからが勝負だね」

「ああ。とんでもねえ戦いになりそうだ」

そう言って、武者震いをするロウガとクルタ。

三人の長い戦いは、こうして幕を開けたのだった――。

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