《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》第六章最終話 第七回お姉ちゃん會議

ウィンスター王國の王都。

その郊外に聳える城のごとき館に、またしても姉妹たちが集っていた。

そこには、ラージャから戻ったばかりのシエルの姿もある。

第七回お姉ちゃん會議の始まりだ。

皆、ララト山で何が起こったのか気になっているのだろう。

和やかなお茶會であった前回とは異なり、張した顔をしている。

「まずはシエルの話を聞きましょうか」

「ええ。強奪された魔結晶を取り戻すために、私はノアの手を借りてララト山に向かったわ。そこで――」

事のあらましを淡々と説明していくシエル。

ドラゴンの群れの襲來から、龍の王の誕生に至るまで。

予想を超えた事件の大きさに、姉妹たちの顔つきが次第に険しくなっていく。

「最終的に、龍の王は正気に戻ったわ。真の魔族とか言うやつのせいで、すっごい大変だったけど」

「なるほど。しかし、真の魔族なんてわたくしも初めて聞きましたわね」

そう言うと、アエリアはファムに視線を向けた。

聖十字教団の代表である彼ならば、何か知っているかもしれないと思ったからだ。

するとファムは、顎に手を當てて困ったような顔をする。

真の魔族という存在は、あいにく彼の知識にもないものだった。

「私も知らない存在です。ですが、教団の大図書館にならば記録が殘されているかもしれません」

「ならば、そちらの調査をお願いしますわ」

「わかりました、司祭たちにも聲を掛けておきましょう」

「何かわからない資料とかあったら、私も協力するわ」

ファムに協力を申し出るシエル。

古代語の読解に長けている彼が調査に加わるのは、ファムにとっても心強い話であった。

ひとまず、調査についてはこれで大丈夫だろう。

そう判斷したアエリアは、ひとまず話題を切り替える。

「真の魔族の件は、私でも留意しておきましょう。それより、ノアの昇級は?」

「ああ、そっちも問題なく済んだわよ。これでAランクね」

「それは良かったですわ。これで……ふふふ」

先ほどまでの厳しい表とは打って変わって、ニヤッと不敵な笑みを浮かべるアエリア。

その眼の奧には、何やら恍惚としたが宿っていた。

それを見たシエルとエクレシアが、たちまち聲を上げる。

「あっ! アエリア、枠が多いからって何度も依頼するのはなしよ!」

「特権濫用反対!」

「あら? この世は所詮弱強食、持たざる者が悪いのですわ」

そう言うと、扇で口元を押さえて高笑いをするアエリア。

その悪徳貴族のような姿を見て、シエルはやれやれとため息をつく。

「ったく、そのうちひどい目に遭うわよ? しっかし、あのノアがAランクか……」

「ついこの間まで、こーんな小さかったのが噓みたいですわねえ」

「ん、私より背も低かった」

「それ、何年前よ?」

エクレシアの話に、どっと噴き出してしまう姉妹たち。

ノアがエクレシアより小さかった頃など、もう七年か八年は前のことだった。

「でも、いよいよシエルはノアに越えられてしまったかもしれませんねぇ」

「私がノアに!? いくらなんでも、まだまだよ!」

「そうですか? なら、シエルは龍の王を浄化できたと」

「それは……」

口をへの字に曲げて、不機嫌そうに黙り込むシエル。

もグラン・ルソレイユの魔法を使うこと自はできるが、あれほどの出力を出せるかは疑問だった。

実は潛在的な魔力量では、ノアの方がシエルよりも多いのだ。

しかし、姉としてなかなか素直にその事実を認めることができない。

魔法という分野において、ごく一部でもノアに越えられたのが悔しくて仕方ないのだ。

「…………まあ、魔法についてはね。他は別よ!」

「あ、認めた」

「意外ですわね、あんなに負けず嫌いなのに」

「う、うるさいわね! いちいちそんなこと言わなくていいわよ!」

他の姉妹たちにからかわれ、プクッと頬を膨らませるシエル。

はそのまま、フンッとそっぽを向いてしまった。

流石にちょっとやりすぎてしまったか。

そう考えたファムが、笑いながら彼に告げる。

「まあまあ、喜ばしいことではありませんか。ノアが長して」

「それは……まあそうだけど……」

「ノア、このまま長して私たちのところを去る?」

「そんなことはありませんわよ。私もいろいろと策を考えますわ。それに……」

「それに?」

何やら、もったいぶるような顔をするアエリア。

すかさず、姉妹たちが彼に詰め寄る。

するとアエリアは、サッと一枚の紙を取り出す。

「ノアにはまだ、大きな試練が待ちけていますわ」

そう言って、アエリアが姉妹たちに突き付けた紙。

そこには『第七十回エルバニア大剣神祭』と記されていた――。

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