「お待たせしました。二十個くらいまでの絞り込みであれば手伝っても構わないという許可を貰いました」

「ありがとうごじゃいましゅー」

「にゃうっ！？」

嬉しくてホッとして、半泣きになりながら思わずアウラロウラさんに抱き著いてしまった。

そして可らしい驚きの聲いただきました！

「いきなり飛び付いてきたりしては危ないではありませんか！確かに『ＯＡＷ』は仮想現実であり、無茶ができますし、時には無茶をしなくてはいけないこともあります。ですがそれには仮初であっても命の危険というものが伴うのです。それを忘れてしまってはリアルでそのを危険にさらしてしまうことになりかねないのですよ。聞いていますか？」

「は、はい！ちゃんと聞いてます！」

そしてお説教されました。

ウサギ耳のにゃんこさんを怒らせるのはダメ、絶対！今日ボクは一つ賢くなったよ……。

「ふう、それでは本題に戻りましょうか」

一通りのお説教を終えたのはボクので數時間が経過した後の事だった。後から実際はたったの五分しか過ぎていなかったと知って凄く驚くことになる。

仮想現実なのをいいことに、時間経過を作されていたのかもしれない。

はい、そこ！お説教されていたから時間覚が狂ってしまっただけとか言わない！きっと、多分、そんなことはない……。はず？

「リュカリュカさん、候補の中に能力値を上昇される技能もっていましたよね？」

心の中の誰かと討論しているボクを余所に、アウラロウラさんは話しを進めていく。

「え？あ、はい。というか全種類あります」

能力値はキャラクターの本の部分だ。正比例とまではいかないけれど、これが高いほど強力なキャラだと言えることは間違いない。

そのため候補には〈運〉を除いた五つの能力値を上昇させる技能が加えられていた。

「それらは全て候補から除外してください」

「ほわい？なぜに？」

「確かに能力値を上昇させることは一番分かり易いパワーアップであり、重要なことだと言えます。レベルアップ時の能力値アップボーナスが〈運〉以外の五つの、任意を一ポイントだけしか上昇させられないことを考えても、これら能力値アップ技能の能はそれなりに効果が見込まれることでしょう」

ちなみに、一覧の中にあった能力値上昇系の技能は、〈筋力〉〈力〉〈敏捷〉〈知〉〈魔力〉がそれぞれ二ポイント上昇する〔○○の法〕五種と、〈筋力〉と〈力〉が各一ポイントずつ上昇する〔戦いの記憶〕、〈敏捷〉と〈知〉が各一ポイントずつ上昇する〔作りの記憶〕の計七種類だった。

つまりレベル換算にして一つの技能當たり二レベル分の能力値アップとなる訳だ。

「しかし、それらの技能にはデメリットが設定されています。他の技能とは異なり、練度がないのです。當然、練度が最大になった時に発生する上位技能への変化もありません」

「な、なんだってー！？」

即効がある反面、一切長することがないということみたい。

「さらにですね……、序盤から手機會が設定してあり、他の技能に比べて安い金額で取引されていることが多いようなのです」

取引、プレイヤー間のアイテム売買のことかな。

基本的には一人用であり、個々人でお話を進めていくことになるのだけれど、レアアイテムを手した場合には専用の町に行くことで、他のプレイヤーとの換や売り買いができるようになっているのだ。

「それじゃあ、急に戦力アップする必要が発生してから購するのでも問題はない？」

「その認識で間違いないと思われます」

きっちりかっちりと斷定されないところに、しばかりの不安をじないでもない。だけど人工知能である彼が、これだけアバウトでファジーな対応ができるというのは素直に心するべきなのかもしれない。

まあ、ここはそんな高能なにゃんこさんの意見に従っておくことにしよう。……ウサギ耳なことだけは未だに意味不明だけど。

そんなじで、アウラロウラさんのアドバイスに沿って候補にしていた技能を次々と消していき、最終的に殘ったのがこちら。

〔調教〕…言わずと知れた＜テイマー＞専用技能で、魔を仲間にすることができる。

〔槍技〕…槍を扱う際に補助をしてくれる技能。練度が上がると戦闘技を覚える。

〔水屬魔法〕…水屬の魔法を使用するための技能。練度が上がると新しい魔法を覚える。

〔風屬魔法〕…風屬の魔法を使用するための技能。練度が上がると新しい魔法を覚える。

〔調薬〕…薬を作る時に補助してくれる技能。練度が上がると作れる薬の種類が増える。

〔生活魔法〕…生活する上であると便利な魔法を使用するための技能。最初は【種火】のみだが、練度が上がると魔法の種類が増える。実は使い方次第で……。

〔鑑定〕…様々なものを鑑定するための技能。練度が上がると鑑定できる種類や項目が増加する。時にＭＰを消費することがある。

〔警戒〕…周囲の敵意や殺気を知する時に補助してくれる技能。練度が上がると知できる範囲や種類が増加する。時にＭＰを消費することがある。

〔気配遮斷〕…自分の気配を隠す時に補助してくれる技能。最初はきを止める必要がある。練度が上がるとかせるの部位や移できる距離が増加する。時にＭＰを消費することがある。

〔軽業〕…を軽やかにかす時に補助をしてくれる技能。練度が上がると、よりアクロバティックなきができるようになる。極めれば舞い落ちる木の葉すら踏み臺にすることが可能だと言われている。

魔を仲間にするということで、基本的には一人でき回ることを念頭にした技能構となった。生産系列の技能を〔調薬〕にしたのも、自分で使うためのアイテムを確保するためだったりする。

というか、売る分が殘るかどうかすら怪しいかもしれない……。後は実際にプレイしながら確かめて行く他はないのかもね。

「さて、殘るはリュカリュカさんの外見だけとなりましたが、ここまでのことで何か疑問點や不満にじた點などはありませんか？」

「特にはないかな。まだゲームを本格的に始めた訳じゃないから、仕様がよく分かっていないということもあるのだろうけど。まあ、それを言い始めたらきりがないしね」

同じような観點から、もっと強くしたいという気持ちもあるけど、それは不満というよりはただの願だ。

しかもゲームバランスを破壊しかねない類のものなのだと言える。

チートっぽい無雙狀態は、一時は楽しくても飽きるのを速めてしまうからだ。

結局のところ、上手くいかないことへの愚癡を言いながらも腐ることなく試行錯誤を繰り返すこと、難関や難問を乗り越えることを苦労だと思わず楽しむことができること、そんな心の余裕が大切なのだと思う。

まあ、適度に発散することも大事だけどね！

次回投稿は明日の朝6：00の予定です。

明日からは一日二回の更新を予定しています。