《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》13 迷子?
クンビーラに著くまで數日間荷馬車に乗せてくれた――という設定になっている――ボッターおじさんと別れて數十分。
ボクは良く分からない裏通りを歩いていた。
おかしいな。おじさん曰く冒険者協會は大通り沿いに進んだ中央広場にあるということだったから、こんな細い路地を通る必要なんて全くないはずなんだけど?
「屋臺の味しそうな匂いに釣られちゃったのが失敗だったかなあ……」
それとも、その後で街の子どもたちがでていた子貓に夢中になってしまったのが敗因かしらん?
でもでも「ついて來て!」と言わんばかりに尾をピンと立てて歩くんだもん。追いかけるのは當然だよね!
「あ、そうだ!こんな時こそマップ機能!」
いやあ、現実味溢れる雰囲気にどっぷり浸かってしまっていたから、ゲームの便利機能のことをすっかり忘れてしまっていたよ。
という訳でさっそくクンビーラのマップを表示してみることに。
「ほうほう。マップといっても問答無用で全が表示されるのではなくて、ボクが歩いた場所とその周辺だけ表示されるタイプですか」
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灰のマップの中に、くねくねと曲がりくねった筋だけが鮮やかに描かれていた。
これを逆にたどれば無事に戻れるけれど、それじゃあどうにもつまらない。
「ええと……、ここが南の城門でこの筋が大通りになる訳だから……。うん、こっちに向かって行けばいいはず!」
おおよその當たりを付けて歩き出す。これまで通ってきた場所に比べて、ちょっぴり建の痛みが激しかったり、ゴミが多く落ちていたり、酔っぱらったと思われる人が道端で寢転んでいたりするけど、まあ大丈夫だろう。
そんな裏通りをテクテクと歩いていると、
「くそっ!こいつ大人しくしやがれ!」
「ちぃっ!手間かけさせるんじゃねえ!」
何やら騒な聲が聞こえてきたではありませんか。
さて、どうしよう?リアルでなら攜帯端末で「通報しました」の一択だけど、ここはゲームの世界でそんな便利なものはあったりしない。
いや、アイテムボックスとかこちらの世界の方が便利なもたくさんあるから、探せば端末に代わるもあったりするかもしれない。
それはともかく、リアルの場合だとトラブルがその場だけで終わるとも限らない。粘著質なストーキングをさせるかもしれないし、ネットで好き勝手に中傷されるかもしれない。
つまり、を守るための方法として一番なのは、『君子危うきに近寄らず』を常に実踐することなのだ。
まあ、薄だなとは思うけどね。
だけど、その被害が自分だけでなく家族や友達にも飛び火するかもしれないとなると、例えそれが目の前で起きていることだとしても、トラブルに介できる人はないのではないだろうか。
要するに批判することも大切――誰もかれもが見て見ぬふりをする社會なんて、きっと碌なものじゃないだろうから――だけど、その先がどうなるかを考えてみることも大切だよって話だね。
さて、それに対して今ボクがいるのは『OAW』というゲームの世界です。そしてプレイヤーは流のための特殊な町に行かない限りはボク一人だけ。つまり、リアルのことは一切考える必要がない狀態だ。
加えて、リュカリュカ・ミミルというの子には戦うための力がある。まだレベル一で戦闘験もないけれど、そこは突っ込んじゃいけないお約束というものだ。
そう、こちらの世界でくらい、心がぶままに、行してもいいんじゃないだろうか。
次の瞬間、ボクは聲のした方へと走り出していた。
正義なんかじゃない。聲の主たちと、彼らが対している者、どちらに非があるのかすら分かっていないのだから。
ただ、これを無視してしまえば、心の中にしこりとなって殘り続けることになる。それが気に食わないだけ。
そして路地の奧、袋小路になったその場所でボクが見たのは、數人のいかにも柄の悪そうな男たちが小さな何かを捕まえようとしている姿だった。
「何だ、てめえ!どこかに行きやがれ!」
男たちの一人がボクを見て怒鳴る。見た目だけで判斷するのは良くないかもと思っていたけど、はい!こっちが悪者決定!
「大勢で小さな……、何かを捕まえようとしているような人たちに指図されるいわれはないよ」
「何だと、この!」
言い返されるとは思っていなかったのか、男Aは包囲網から抜け出してこちらへとを向けた。それにしても、まさかこんな安い挑発に乗ってくるとは思ってもみなかったねえ。
「おい、そんなやつは後回しにして、こいつを捕まえるのを手伝え!」
「うるせえ!コケにされて黙っていられるか!」
完全に頭にが昇ってしまったのか、ボクと向かい合うことになった男Aは仲間の言う事を聞こうともしていない。
「くそっ!だから単細胞は嫌なんだ!」
「なんだとコラ!もう一回言ってみろ!」
「止めろ!俺たちが爭っている場合か!」
「リーダー面して偉そうなこと言うな!」
吐き捨てるように言った仲間の言葉に男Aが噛みつくと、あっという間に仲間割れが始まってしまった。
「今までお前たちみたいな考えなしがやって來られたのも、俺が作戦を立ててきたからだろうが!」
「はん!何を勘違いしてやがる。俺様がいたからお前のだらけな作戦でもどうにかなってきたんだよ!」
「ふざけるな!いつもいつも勝手に突っ走りやがって、てめえの汚いケツを拭くのはもう免なんだよ!」
「誰が拭いをさせただと!?」
あー……、なんだかそれぞれが々と鬱憤を溜めていたご様子。
だけど、そんな絶好の隙を見逃すほど甘くはなかった。
え?ボクじゃないよ。
ほら、もう一人?いたでしょう。
「がはっ!?」
「げふっ!?」
「どむっ!?」
「ざくっ!?」
「ずごーっく!?」
目にも止まらない速さで、それは男たちの意識を次々と狩り取っていった。まさに瞬殺。
それと、変な悲鳴には突っ込みませんのであしからず。
男たち全員倒れたことで、ボクはようやく彼らが捕まえようとしていた存在をはっきりと見ることができていた。
「た、卵!?」
それは両腳と尾が飛び出した、一抱えほどもありそうな真っ白な卵だった。
さらに呆気にとられて立ち止まってしまったボクに、その卵?は飛びかかって來る。
「え?う、うわっ!?」
どうすればいいのか分からず慌てふためいていたボクは、向かってくる卵を摑むとそのままの中へと抱きかかえてしまう。
しかし、勢いを殺してしまうまでには至らず、ゴロンゴロンと後ろ向きに數回転がってしまったのだった。
「いたたたた……」
くらくらと揺れた頭が落ち著き、ふらついていた視界がようやくまともに戻った頃、視界の中央にはこんな言葉が表示されていた。
《エッグ狀態のドラゴンパピーが仲間になりたそうにしています。テイムしますか?》
「……はい?」
ゲーム開始一日目にしてドラゴンに出會ってしまったみたいです。
次回投稿は10月8日(月)の朝6:00の予定です。
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