《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》20 ログアウト後とプレイヤーの街の酒場

後半は他プレイヤーたちの會話や雑談というになっています。

意識が浮かび上がって來るのにしたがって、視界もはっきりとしてくる。

流れている『OAW』のデモムービーを消してヘッドギアを外すと、知っている天井が見える。こてんと首を橫へと振ると、そこには見慣れた機や本棚が。背中にはすっかりに馴染んでしまったベッドのもある。

ゲームをしている間に拐されるなんていうことが起きることもなければ、ゲームの世界から帰ってくることができないということもなく、無事に自分の部屋へと帰還することができたようだ。

「はふう……」

先ほどまでの狀況との極端なまでの違いに、思わずといったじでため息が口をついて出てしまう。

「VRの験は人生観を変える」とはよく聞く言葉だ。でもその分大袈裟だったり、集客のために過剰な言いをしたりしているのだとばかりに思っていた。

早い話、『OAW』も所詮はゲームだと侮っていた部分があったことは間違いない。それはキャラクターメイキングでアウラロウラさんに々なアドバイスをもらっても変わらなかった。

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ところが、実際にあの世界の中にってみると、それはとんでもない勘違いだったのだと理解させられることになる。

広大な草原にしい街並み、風にのって屆く屋臺で作られていた料理の匂い。馬の歩みや車の回る音に、たちの生々しいまでの。五のすべてに訴えかけてくるそれらに、いつしか作りの世界だなどいう考えはどこかに消え失せてしまっていた。

さらに登場人であるNPCたちはその生を謳歌しているだけでなく、こちらの言にも的確に反応してくれていた。

と、小難しく言ったけれど、要するにとんでもなく大きな衝撃をけた訳。

もちろん良い意味でね。

だけど、あのランダムイベントはいただけない。ゲームを開始して直後の超新米プレイヤーにドラゴンをぶつけてくるとか、正気の沙汰とは思えない。

ブラックドラゴンがブレスをはこうとしたあの瞬間、ボクは間違いなく死を覚悟したし、その恐怖は今でもありありと思い出すことができるほどだ。

一歩間違えればトラウマ直行便だよ。

ただ、あのイベントのおでエッ君テイムできたんだよね……。それを考えると何とも複雑な気分になってしまった。

時計を見てみると時刻は午後二時をし回ったところだった。午前十時くらいにログインしたはずから、およそ四時間『OAW』の中にいたことになる。

始める前にブランチと稱して優雅にご飯を食べたけれど、さすがにこの時間ともなると小腹が空いてきた気もする。

余談だけど、睡眠扱いの時などの一部を除いて『OAW』の時間経過はリアルと同じとなっている。

仮想現実で時間を短する技は既に存在しているのだけれど、実用化の目途は立っていない。これはボクたちの側の問題で、脳の処理が追いつかないためだそうだ。

「忙しい人でも長期休暇が簡単に取れたような気分になれる!?」とか、「VRならわずか一日で世界旅行が可能に!?」などと々な謳い文句で開発が進められてきたんだけどね。

人間の方はそこまで都合よくはできていなかったみたいだ。

う……、難しいことを考えたからなのか本格的にお腹が空いてきた。殘りか何かがあったかな?と考えながら臺所へと向かう。

そうそう、里っちゃんに『OAW』をプレイしてみたことも報告しておかないとね。

「楽しいゲームの世界へようこそ!」

満面の笑みでそんな臺詞を口にする従姉妹の姿がありありと想像できてしまい、ボクは苦笑いを浮かべたのだった。

ところ変わってこちらはプレイヤーたちによる流と売買渉(たたかい)の場である『異次元都市メイション』。ここには流の場と稱してたくさんの酒場があった。

多彩な料理と酒を提供することで有名な『休肝日』もその一つである。

しかし、そこを切り盛りしている給仕の一人が実はオーナーであり、しかもプレイヤーであることを知っている者はない。

フローレンス・T・オトロ。

通稱『報屋』。

は今日も給仕のフローラに扮して店の會話に耳を傾けている。

「はーい、『エール』と『おつまみの枝豆』お待たせしました」

「お、ありがとな、フローラちゃん。そして今日も可いね」

「あはは。定番の臺詞ですね、おじさん」

「ぐはっ!そ、そこはお兄さんと言ってもらいたかったぜ」

「いや、お前のキャラ、どこからどう見てもおっさんだろ。それはともかくフローラちゃん、『シェフの気まぐれ』のバージョンを一つ追加で」

「あ、おれは魚バージョンで」

「ご注文ありがとうございます。オーダーです!気まぐれ一、魚一!……すぐにお持ちしますから々お待ちくださいね」

「あいよー。……あー、フローラちゃんは今日も可いな……」

「お前の外見だと、そこはかとなく犯罪臭がする」

「ほっとけ!……それで、最近はどうよ?」

「帝國は相変わらず貴族たちが牽制しあっている狀態だ。魔討伐とかのクエストは隨時更新されているんだが、肝心の帝國統一系のイベントは発生しないままだな」

「確かお前、貴族に雇われずにフリーの冒険者のままだったよな?それが原因じゃないのか?」

「知り合いに特定の陣営にったやつもいるんだが、領の改革や改善系のクエストが増えただけだったと言っていたよ。だからキークエストをクリアできていないのか、それとも帝國統一イベント自がまだ実裝されていないのか、プレイヤー間でも意見が分かれているってところだな」

「レベル不足なんじゃないかっていう考察もあったよな?」

「考察っていうか、ただの意見だろ。拠も薄いし」

「アキューエリオスでもジオグランドでも、偉い人と仲良くなったり顔馴染みになったりするイベントはあってもその先がないって話だから、もしかすると初期選択エリアからまだ移できなくしてある可能も出てきた」

「しばらくは地道にクエストをこなしていくより他ないのかもしれない」

「それはそれで面白いけどな。街中でのお手伝いクエストなんてNPCの一人一人が作り込まれているのがよく分かるぞ」

「普段の臺詞數がないのが難點だけどな」

「まあ、MMOにはNPCの自然さにこだわっているものが多かったから、比べてしまうと(あら)に思えてくるからなあ……。ただ、その辺はアップデートで徐々に改善していくって言われているから今後に期待ってところか」

次回投稿は本日夕方18:00の予定です。

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