《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》23 宿屋で目覚め
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暗転した意識が浮かび上がってくると、そこはもう『OAW』の中だった。木製の見知らぬ天井を見上げながら、ぐっとをばす。
「おふっ!?」
その瞬間、お腹の上あたりにポスンと衝撃が走った。大したことない勢いだったけれど、いかんせん不意打ちぎみにやって來たので思いっきり焦ってしまったよ。
「な、なに?」
飛び上がるようにして上半を起こすと、原因になったであろうがコロコロと転がり落ちていく。
それは一抱えもありそうな卵から足と尾が飛び出しているという奇妙な形をしていた。
「エッ君……。遊びたいのは分かるけど、いきなり人の上に飛び乗っちゃ、めっだよ」
分かった!とばかりにコクコクと頷く、というかを振るエッ君。
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その即答っぷりに、本當に分かっているのだろうかという不安が頭をよぎったのだけど、ここはまあ、信じてあげるべきなのだろうと思う。
「そういえば昨日、何か貰ったよね」
インフォメーションが流れて、イベントクリアボーナスとして『技能ポイント』とかいうものを貰っていたはずだ。
ステータスを開いてみると……、アイテム欄に追加されていた。
「アイテムボックス」
と呼び出して中をごそごそと漁ってみると、卓球のピンポン玉くらいの大きさだろうか、明のある不思議な質の玉が転がり出てきた。
途端にをうずうずさせ始めるエッ君。完全に遊び道としてロックオンしちゃったみたい。
取り上げるのもかわいそうだし、何よりこれはエッ君がブラックドラゴンのブレス攻撃を防いでくれたおでもある。
「はい、どうぞ」
と一個進呈(しんてい)すると、すぐに技能ポイントボールを蹴ったり尾で弾き飛ばしたりして遊び始めたのだった。
それにしてもこれ、どういう効果があるのだろうか?説明には技能練度を上げるとしか書かれていないんだよね。
「そうだ!〔鑑定〕で見てみれば何か分かるかも!」
こいつは名案!
と思ったのも束の間、
「もっと早く気が付こうよ、ボク……。ブラックドラゴンを鑑定しておけば、もっと簡単に話が進んだかもしれないのに……」
それ以前に、街の様々なものに鑑定を使っておけば々と分かったかもしれない。
まあ、ランダムイベントの発生條件が不明だから、ブラックドラゴンの攻略に役立ったとは思えないけどね。
思い返してみると、エッ君のステータスなども確認してない。そんな暇がなかったことも事実だけど、それが言い訳であることもまた事実なのだ。
……おっと、いけない。やりたいことや、やらなくちゃいけないことが次々に思い付くのは悪い事じゃないけれど、戸ってばかりでは何も思い付かなかったことと変わりがない。
「そういう時はね、最初に思い付いたことからやり始めていくといいよ」
と、里っちゃんが言ったのは去年の秋、文化祭の準備をしている時に生徒會の皆がプチパニックになってしまった時だったかな。
ボクも部外者ながらお手伝いとして參加していたのだけど、あの時は本當に大変だった。
先生たちと保護者會が一緒になって予定にはなかった講演をねじ込んできたものだから、育館の使用時間配分が大幅に狂ってしまったのだ。
どうも正式な部活ではなかった軽音楽部や創作ダンス部の発表を潰すためだったようなのだけど、講演者の人を仲間に引き込むという里っちゃんの破天荒な起死回生の一手によって、見事全ての予定を消化することができたのだった。
ただし、非常事態に備えるという名目で、里っちゃんたち生徒會役員は文化祭の間中育館に缶詰めにされてしまった。
まあ、ボクがれ替わることで短時間ながら全員がこっそりと文化祭を楽しんだのだけど。
ちなみに、一番気になったことから手を付けるというやり方もあるのだけど、それを終わらせた時點で達が発生するために、他のことができなくなってしまうのだとか。
同い年のはずなのに、隨分と含蓄のある従姉妹さまの言葉です。
話を元に戻そう。里っちゃんの言葉に従って、まずは技能ポイントを〔鑑定〕で調べてみることにした。
その結果、分かったことはと言うと……、
「習得している任意の技能の練度を、十上昇させることができる、かあ」
だった。
説明文と大した変わりがないと言うなかれ。実はこの一文には練度についての重要な點が隠されているのだ。
それは『練度がパーセント表記ではない』こと。つまり、練度の最大値が十かもしれなければ百かもしれない、もしかすると千や萬の可能だってあるということだ。
それだけじゃない。もしかすると技能ごとに練度最大値が異なっているかもしれないのだ。まったく、〔鑑定〕してみて大正解だったよ。
一方で、技能ポイントは一個當たり十しか練度を上げる事はできない。できるなら効果の高い練度最大値が低い技能に使っておいた方が、後々の攻略は楽になるだろう。
問題はそれを知るがないってこと。試してみたのだけど、どうやら〔鑑定〕は能力値や技能といったものについては説明文が出るだけになっているみたいだ。それはボク自であっても同じだった。
「うーん……。便利なようで不便かも?上位技能でもなれば、こういうことも分かるようになるのかな?」
まあ、公式の掲示板とかを見れば新しい報が分かるかもしれない。クエストやイベントの攻略方法を始め、出現する魔の倒し方、各種アイテムの効果や能などなど、他のゲームに比べて『OAW』は報の公開基準がかなり緩いそうだ。
基本的には一人でプレイするシステムのためなのだろう、先人の知恵を借りるのも手段の一つという訳だ。
しかしながら、はっきり言って現狀そこまで差し迫って困っているということでもない。
それにこの後は冒険者協會に行って冒険者になるという重大イベントが待ち構えているのだ。使用期限も記載されていないのをいいことに、ボクは技能ポイントの使用を先送りにして、アイテムボックスへと仕舞いこんだのだった。
「エッ君はどうする?それ、使っちゃう?」
用にもベッドの上から落ちないように技能ポイントの玉で遊んでいるエッ君に尋ねてみる。
するとし考えた後、こくりと力強く頷いたのだった。
「あ、でもその前にエッ君がどんな技能を持っているのかを調べないとね」
どちらかと言えばステータス全般も知りたいところだ。でも、どうやって調べればいいんだろう?やっぱり〔鑑定〕?
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