《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》27 冒険者協會と商業組合
料理長や將さんを巻き込んでの話し合いの結果、偉い人の面子的なことから一度出したお金を仕舞う訳にはいかないということで、今回グラッツさんが持ってきた分はけ取ることになった。
その代わり、これ以上の報酬は絶対にけ付けないということにした。
「リュカリュカには街を出ていくという切り札があるから、公主様方も無茶は言わないだろう」
料理長の言葉を聞いてしばかり心が軽くなったけれど、け取った革袋の重さですぐに沈んでしまいそうになる。
ちなみに中にっていた金貨の枚數は、予想した通り三十枚だった。
「うう……。こんな大金怖くて持ち運べないよ」
ボクたちプレイヤーは『OAW』の世界において、神々からの特別な加護をけた存在という扱いになっている。
そのため魔などからの攻撃をけてHPがなくなったとしても、死亡することなく街へと送還される。でも、だからと言って戦闘に負けていいという話にはならない。
それというのも俗にこの『死に戻り』と呼ばれる狀況になった際にペナルティが発生するからだ。
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まず、所持金の一割が沒収される。ボクが大金を貰っても素直に喜べなかったのはこれが主な原因だ。
次に消耗品もしくは素材系アイテムが一個から三個消滅してしまう。何が選ばれるかは完全にランダムで、運が悪いと高いお金を出して買った高能な回復薬とか、苦労して手にれたレア素材などが消えてしまう場合があるのだ。
さらには高確率でけていたクエストや発生していたイベントが失敗扱いになってしまう。
そして最もキツイと言われているのが、同行していたNPCが死亡してしまう(・・・・・・・)ということ。
プレイヤーとは違って、本當に世界から消えてしまうのだ。そのため、運よくクエストやイベントが続行していても、時間巻き戻し(リセット)を使ってやり直すという人がほとんどなのだそうだ。
余談だけど、死に戻り後にリセットを行っても沒収されたお金と消滅したアイテムは戻ってこないようになっているので注意が必要です。
あくまでもクエストやイベントの発生狀況と、NPCの死亡だけがリセットされる。
「それならば裝備品の類を揃えられてはいかがですか?三十萬デナーもあれば店売りの量産品の中でも良いが買えるはずです」
グラッツさんの提案に、ボクは首を橫に振った。
「レベル一のボクにそんな技量はないですよ。どんなに良いでも使いこなせなければ無用の長になってしまいますから」
よりゲーム的な方面から説明するなら、能力値が裝備條件となる數値に達していない可能が高い、ということだね。
「それなら冒険者協會か商業組合に預けておくのはどうだい」
將さんの話によると、この二カ所の施設ではお金を預けておくことができるのだそうだ。
「どちらもそれぞれの組織に所屬する必要はあるけどね。リュカリュカは冒険者になるつもりのようだから、必然的に冒険者協會には預けることができるようになるさね。ただ、將來的に何かを売ったりするつもりがあるなら、商業組合にも所屬しておくことをお勧めするよ」
ここでいう「何かを売る」というのは、採取品や魔からのドロップ品を売卻するということではなく、生産で作ったアイテムや裝備品を販売するという意味のようだ。
なんでも、冒険者協會でのお金の預かりには手數料がかからない反面、上限が低いのだそうだ。預けた街の冒険者協會からしか引き出すことができないのだとか。
「冗談みたいな話だけど、全額に近い金を預けているのを忘れて、他所の街に行く途中に引き返してくる羽目になった冒険者は結構いるのさ」
「帰って來られたやつはまだマシで、到著した先の街で一文無しになって仕方なく裝備を売ったという話もあるからな」
宿屋という商売柄、將さんたちはその手の話をよく耳にするのだそうだ。
一方の商業組合のメリットとデメリットはちょうど正反対で、組合員登録の時と預ける時や引き出す時に毎回手數料が必要になる代わりに、どこの街でも同じように利用することができるというものだった。
「後、さっきも言ったように自分でアイテムを作って持ち込めば適正な価格で買い取ってくれるよ。まあ、渉に自信があるのなら直接商會に持ち込んだ方が利益になるかもしれないけどね」
生き馬の目を抜くような過酷なやり取りをしている商売人を相手に渉?
無理むり。
適正価格なら十分なので、持ち込む場合は商業組合に行くことにしようっと。
「將さんのアドバイスの通り、商業組合の方にも登録しておくことにします」
お金は冒険者協會と商業組合に半分ずつ預けるようにすればいいんじゃないかな。
「さてと、それじゃあ遅くならないうちに出掛けますか」
將さんから渡されたお弁當二つをアイテムボックスにれてから立ち上がる。
ふう……。ようやく出かけられるよ。
「それじゃあ行ってきます」
ボクの言葉に合わせて、腕の中のエッ君もピコピコと尾をかしていた。
「はいよ。気を付けて行っておいで」
將さんたちの聲を背中にけて歩き始めるボクたち。
「ではまず冒険者協會へと向かいましょうか。いくつか道はあるのですが、一番分かり易い大通りに出て中央広場に向かうという方法で行きたいと思います」
昨日の今日だから、大人しく指示に従うことにしよう。グラッツさんの後ろをエッ君を抱いたままてくてく歩いていく。
この辺り一帯の中核の都市ということで大通りに出るまでの短い間にも、數多くの人とすれ違うことになった。そして大通りに出た後は、自由易都市の名の通り外部からやって來たと思われる人も數多くいたのだった。
クンビーラの街はおよそ正八角形に近い形をしていて、東西と南北に十文字に最も大きな通りが走っている。その點にある中央広場に、目的地である冒険者協會はあるということだった。
ちなみに、騎士団や衛兵さんたちの詰所なども中央広場沿いに建てられているのだとか。そのため、クンビーラの街の中でも治安の良い地域ということになるらしい。
「それでも時折、冒険者同士の喧嘩などが起きてしまっていますが……」
腕自慢の荒くれ者でもなれるから、それは仕方のない事なのかもしれない。この時のボクは他人事のようにそう考えていた。
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