《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》8話 デートアライブ・ライブ
「うわ」
思わず聲に出る。
目の前に広がる景は味山の顔を一瞬で曇らせた。
人、人、人。
目的地のアメリカ街、現代的な建築の中に、西部劇に出てくるウエスタンな建が混ざり合う不思議な地區。
待ち合わせによく使われる噴水広場についた途端に一気に人が溢れた。
「おい、どけよ! 見えねえだろうが!」
「あっ! こっち向いた! 俺を見たぞ!」
「アンタなんか見るわけないじゃない! こっちを見たのよ!」
「こ、聲かけて見るか?」
やけに盛り上がった人々、興している。
ピコン。
端末にメッセージが屆く。
[ハロー、タダヒト。噴水広場についてるわ。あとどれくらいでつきそう?]
ああ、なるほど。この人だかりの理由が分かった。
「もうついてるっと……」
味山がメッセージを返す。
嫌な予が當たっていればこの人だかりの原因はーー
「あ!! タダヒト! こっちよ、こっち」
人だかりの向こう、高い聲が響く。聞き慣れたその聲はアレタ・アシュフィールドのものだ。
Advertisement
「あ、すみません。通ります、すみません、すみません」
ぺこぺこと頭を下げながら味山は人だかりを割いていく。怪訝な顔を向ける様々な人種の間をすり抜けると、そこに彼がいた。
「ハァイ、タダヒト。いい天気ね、絶好の外出日和だわ」
「そうだな、もうすっかり秋の空だ」
ウエーブした金の髪が太に生える。変裝のつもりか、ファッションなのか分からないがカーキのスポーツキャップに、縁の無い眼鏡をかけた人がそこにいた。
シンプルなシャツにミリタリーなジャケット、ホットパンツで剝き出しの長い腳、ラフな格好ではあるが、アレタによく似合っている。
「タダヒト、いつも同じ服よね。きちんと洗濯してるの?」
「お気にりなんだ。同じのを數著持ってる。アシュフィールドはいつも通りオシャレだな」
覗き込むようにこちらに歩み寄るアレタに味山が軽口を返す。
ギリィ、沢山の人間が何かを噛みしめる音が聞こえた。
人だかりの中心、アレタは何も気にしていないように笑う。
「アハっ、そう? タダヒトもなかなかあたしの扱い方がわかってきたわね」
「クラークからコツを聞いたからな」
味山の軽口にアレタがクスクスと笑う。
「にしてもアシュフィールド、これ凄い人だけど…… 何があった?」
「ああ、これ? んー、あたしの完璧な変裝がバレたみたいなの。ウィンスタに拡散されちゃってからすぐにみんなが集まっちゃった」
おどけたアレタがパチリとウインクをする。嫌味なほどに似合っている。
ざわざわ。
アレタと會話を続けていると周りの聴衆がわかりやすくざわめき始めた。
「おい、アイツ…… アレタ・アシュフィールドと話してるぞ」
「まさか、あんな奴と待ち合わせしてたのか?」
「待って、あの人見たことあるかも。アレタ・アシュフィールドのヒモって噂の」
「星屑、星屑野郎だ」
ざわり、ざわり。
聴衆の言葉が耳障りだ。アレタが味山と親しげに話していることに気づいたらしい。
面倒くさいことになるなこれ。味山は鼻から息を吐き
「アシュフィールド、とりあえず場所変えようぜ。人が多過ぎる」
「あら、そう? まあ、寫真も黙って撮らせてあげたしファンサービスは充分かしら? みんな! ごめんなさい、あたし達これからくから道を開けてくれないかしら?」
アレタが手をひらりと振る。それだけであれほどたかっていた人々が一斉に道を開けた。
周りの目線が痛い。なんであいつが、あんな奴が。嫉妬と恨みのこもった視線が味山を抜く。
「……すごいな」
「何が? ああ、この人たちのこと? ふふ」
アレタが微笑む、その度に周囲からの目線がさらにきつくなる。
「いや、そうじゃなくてアシュフィールドが凄い。人気ありすぎでしょ」
「あら? でもハリウッドスターやセレブたちも同じようなものよ? この人たちが見ているのはあたしじゃなくて、52番目の星だもの」
アレタと味山が並んで歩き出す。人だかりを抜けて、アメリカ街の広い道を進む。
「あたしは周りから々なものを貰ってるもの。だから周りの人達があたしを見たり、寫真を撮ったりして喜んでくれるのならそれに応える義務があるわ」
「……その辺がすげえよ。ほんと」
味山がため息をつく。凡人の自分にはないスターのサービス神を間近にして。
「ふふ、そのうちタダヒトにも分かるといいな。あ、ついたわ、ここよ。ここ」
アレタが立ち止まる。
「何屋さんだ、ここ」
「それはってみてのお楽しみよ」
味山は店を見上げる。現代建築風の建は特別目立った様子はしていない。
店にるアレタの長い腳に目を奪われつつ味山は後ろをついていった。
………
……
「くく…… アレタ・アシュフィールド。本日はご來店、誠にありがとうございます。52番目の星を當店にお迎え出來て栄の至りです」
「あら、タテガミ。貴方がわざわざ出勤してくれたの? ごめんなさい、探索者稼業が忙しいんじゃないの?」
空いた店にり著席した途端、どこからともなく大柄のシェフ姿の男が現れる。
「くく…… ご心配なく。相応しい者には相応しい者が対応するのが筋っ……! 貴が態々特別なルートではなく真っ當な方法で當店のご予約をれてくれたとはあっては…… この私が出るのがこちらの筋!」
「ふふ、そのプロ意識に敬意を。タテガミ料理長、紹介するわ。あたしの補佐探索者のアジヤマ タダヒトよ、もう知ってるかしら?」
「ええ…… じつは先日私も探索の帰りに酒場で食事をしていたところ、お見かけしておりました。貴たち、チーム・アレフを。その時にいらっしゃった仁ですね」
大柄な日本人が味山に向けて深く頭を下げる。コック帽をぎ、に手を當てるその姿はサマになっている。
「あ、これはご丁寧に。どうも、はじめまして。味山 只人です。えっと……」
「タテガミ、立神 悠太郎です。當店、會員制リストランテ、食倶楽部の料理長を務めております」
立神と名乗るその男が手を差しべる。味山も素直に握手に応じて、心舌を巻いた。
え、力強。
ぎりと握り締められたその手から伝わる力は間違いなく普段から鍛えている人間のそれだ。
「これは…… 味山様……鍛えておりますね。くく、素晴らしいバランスだ」
「……いえ、立神さんほどでは。失禮ですが、普段から運を?」
男2人が奇妙な笑みを浮かべながら握手したまま向かい合う。ふふふ、ふふふと笑い続ける男たちの握手を止めたのは、アレタのブーイングだった。
「ちょっと、筋トレマニア同士惹かれるもののはわかったけど、あまり見ていて楽しいものじゃあないわ」
「おお、悪い、アシュフィールド、つい」
「くく、大変失禮致しました、アレタ・アシュフィールド、味山様。それでは早速、調理に取り掛からせて頂きます。味山様、恐らく貴方にもきっと気にって頂けるかと」
「へえ、楽しみ。……あれ、結局ここって何料理の店なんだ?」
味山の呟きに立神は分厚いを歪ませてにこりと笑う。そのまま優雅に一禮すると奧の廚房へと消えていった。
「アシュフィールド?」
「ふふ、それは食べてみてのお楽しみよ。座れば? タダヒト」
味山は素直に座り直す。
対面に座るアレタは満足げににこりと笑った。
読んで頂きありがとうございます!
宜しければ是非ブクマして続きをご覧下さい!
【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…
※書籍化が決まりました! 電撃の新文蕓様から、2022年1月発売! 主人公のノアは、転生者。 前々世では剣聖、前世では賢者として活躍していたのだ。 だがずっと働きづめにされており、もう英雄なんてうんざり! ある日ノアが死んで目覚めると、今度は王子として生まれ変わっていた。 高い魔法の才能と、剣聖の剣術の実力を秘めていたが、また忙しい日々を送りたくなかったので、ノアは全身全霊をかけて無能のフリをした。 そして、15歳の誕生日。 スキル鑑定によって無能であることが判明(実は隠蔽スキルで隠していただけ)。 晴れて追放されたノア。 父より溫情として與えられたのは辺境の領地。 そこで第二の人生を楽して過ごしてやる!と意気込むノアだったが、彼は知らない。 実はその領地は、人が住めないとされる魔の森のなかにあったことを。 そしてこのこが前世、前々世と比べて未來の世界で、人間達のレベルが下がっていたことを。 ノアが森でモンスターに襲われていた女の子を助けたことをきっかけに、彼の有能さがバレてしまう。 「ドラゴンを一撃で倒すなんて、さすがノア様!」 「どうしてこうなったぁああああああ!」 一方で、王家もまたノアの有能さに気付いて、彼を取り戻そうとやってくる。 「來るのが遅えんだよぉおおおおおお!」 そのときにはすでに、ノアは魔の森の領主として、領民からあがめ立てられていたのだから。
8 180【書籍版発売中!】ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO
【書籍化いたしました!】 TOブックス様より 1、2巻が発売中! 3巻が2022年6月10日に発売いたします 予約は2022年3月25日より開始しております 【あらすじ】 鷹嶺 護は幼馴染達に誕生日プレゼントとして、《Endless Battle Online》通稱《EBO》と呼ばれる最近話題のVRMMOを貰い、一緒にやろうと誘われる 幼馴染達に押し切られ、本能で生きるヒャッハーな幼馴染達のブレーキ役として、護/トーカの《EBO》をライフが今幕を開ける! ……のだが、彼の手に入れる稱號は《外道》や《撲殺神官》などのぶっ飛んだものばかり 周りは口を揃えて言うだろう「アイツの方がヤバイ」と これは、本能で生きるヒャッハーな幼馴染達のおもり役という名のヒャッハーがMMORPGを始める物語 作者にすら縛られないヒャッハー達の明日はどっちだ!? ※當作品のヒャッハーは自由人だとかその場のノリで生きているという意味です。 決して世紀末のヒャッハー共の事では無いのでご注意ください ※當作品では読者様からいただいたアイディアを使用する場合があります
8 72【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】
※書籍&コミカライズ決定しました!書籍第1巻は8/10発売、コミカライズ第1巻は10/15発売です! ※ニコニコ靜畫でお気に入り登録數が16000を突破しました(10/10時點)! ※キミラノ注目新文蕓ランキングで週間5位(8/17時點)、月間15位(8/19時點)に入りました! ある日、月坂秋人が帰宅すると、そこには三人の死體が転がっていた。秋人には全く身に覚えがなかったが、検察官の悪質な取り調べにより三人を殺した犯人にされてしまい、死刑となった。 その後、秋人は“支配人”を名乗る女の子の力によって“仮転生”という形で蘇り、転生杯と呼ばれる100人によるバトルロイヤルの參加者の1人に選ばれる。その転生杯で最後まで勝ち殘った者は、完全な形で転生できる“転生権”を獲得できるという。 そして參加者にはそれぞれスキルが與えられる。秋人に與えられたスキルは【略奪】。それは“相手のスキルを奪う”という強力なスキルであった。 秋人は転生権を獲得するため、そして検察官と真犯人に復讐するため、転生杯への參加を決意した。
8 151転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
◇ノベルス4巻、コミック1巻 11月15日発売です(5/15)◇ 通り魔から幼馴染の妹をかばうために刺され死んでしまった主人公、椎名和也はカイン・フォン・シルフォードという貴族の三男として剣と魔法の世界に転生した。自重の知らない神々と王國上層部や女性たちに振り回されながら成長していくカイン。神々の多大過ぎる加護を受け、でたらめなステータスを隠しながらフラグを乗り越えて行く、少し腹黒で少しドジで抜けている少年の王道ファンタジー。 ◆第五回ネット小説大賞 第二弾期間中受賞をいただきました。 ◆サーガフォレスト様(一二三書房)より①②巻発売中(イラストは藻先生になります) ◆マッグガーデン様(マグコミ)にてコミカライズが3月25日よりスタート(漫畫擔當はnini先生になります) https://comic.mag-garden.co.jp/tenseikizoku/
8 100極寒の地で拠點作り
「まあ、何とかなるでしょ!」 が口癖の少女、冬木柚葉。 少々行き當たりばったりな性格の彼女は、ある日親友であり幼馴染の九條琴音からとあるVRMMOに誘われた。 ゲームはあまりやらない彼女だったが他ならぬ親友の頼みだから、と持ち前の何とかなるでしょ精神で共にプレイすることを決めたのだが……
8 182出雲の阿國は銀盤に舞う
氷上の舞踏會とも形容されるアイスダンス。その選手である高校生、名越朋時は重度のあがり癥に苦しんでおり、その克服の願をかけに出雲大社を訪れる。願をかけたその瞬間 雷のような青白い光が近くにいた貓に直撃!動揺する朋時に、體を伸ばしてアクビをすると貓は言った。『ああ、驚いた』。自らを「出雲の阿國」だと言う貓の指導の下、朋時はパートナーの愛花とともに全日本ジュニア選手権の頂點を目指す。 參考文獻 『表情の舞 煌めくアイスダンサーたち』【著】田村明子 新書館 『氷上の光と影 ―知られざるフィギュアスケート』【著】田村明子 新潮文庫 『氷上の美しき戦士たち』【著】田村明子 新書館 『DVDでもっと華麗に! 魅せるフィギュアスケート 上達のコツ50 改訂版』【監】西田美和 メイツ出版株式會社 『フィギュアスケートはじめました。 大人でもはじめていいんだ! 教室・衣裝選びから技のコツまで 別世界に飛び込んだ體験記』【著】佐倉美穂 誠文堂新光社 『フィギュアスケート 美のテクニック』【著】野口美恵 新書館 『表現スポーツのコンディショニング 新體操・フィギュアスケート・バレエ編』【著】有吉與志恵 ベースボール・マガジン社 『バレエ・テクニックのすべて』【著】赤尾雄人 新書館 『トップスケーターのすごさがわかるフィギュアスケート』【著】中野友加里 ポプラ社 『絵でみる江戸の女子図鑑』【著】善養寺ススム 廣済堂出版 『真説 出雲の阿國』【著】早乙女貢 読売新聞 また阿川佐和子氏『出雲の阿國』(中公文庫)に大きな影響を受けておりますことを申し述べておきます。
8 156