《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》13話 セーフハウス・イン・ホラー
「あー、疲れた……」
簡素な作りのベッドに味山はを投げ出す。がしゃり、裝備を何も外さないままだったので反で音が大きく鳴る。
「相変わらずなんもねえな、セーフハウス」
味山はを起こしてベッドに腰掛ける。真っ白で簡素な室、土足OKの床をルンバ5という掃除ロボが這い回る。
味山は先程手にれた取得をおもむろに取り出す。
「えぐい形してんな、自然に出來るもんか? これ」
心臓の形をした石を眺めぼやく、凄いリアルだ。まるで本の心臓を石で固めたような……
「こんなんが本當に役立つのか?」
味山が取得を再度ポケットに仕舞い込んだ。
ピピピピピピピピピ
ピピピピピピピピピ
端末、著信音。
味山は端末を取り出し畫面を確認する。
「サポートセンターからか。なんの用だ?」
セーフハウスの使用で何か行き違いでも発生したのか?
味山はそのまま電話に出る。
「もしもし?」
「ピー……ガガ…… コちら探索者組合さポートセンターデす。アじやま様、セーフハウスデの休憩中申し訳ございません、しよろシイでしょうか?」
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電波が混戦しているのだろうか。端末からの反応が悪い。サポートセンターからの音聲がかすれている。
「え、ええ。大丈夫です。どうしましたか?」
「ありがとうゴざいます。実は付近にイる探索者カら救援依頼がっています。味山様の滯在シテいるせーふはうすへの避難の許可をイただきたいのです」
「……ええ、わかりしました。人數は?」
「2人です。1人ハ負傷シテいます。けれヲお願いします、ザザザーー」
「了解、ええと失禮ですがコレはサポートセンターからの正式な依頼っていうことでいいんですね?」
「ザっザザザ、ガガガ、ピー。ハい。その通りデす。コちらはサポートセンター、タンサク者の手助けをする機関ーー」
「……失禮ですが所屬とお名前を伺ってもーー」
ツーツー。
通信が切れる。
何か様子がおかしい。セーフハウスの相部屋はそんな珍しいものではないが先ほどの連絡はどこか要領を得ない。
味山は首をひねり、一応自分からもサポートセンターへ確認を取ろうと端末を起した。
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ピン、ぽん。
「あ?」
[ごめんなさい! 急に! 私は探索者のタテハナと言います。組合のサポートセンターにこのセーフハウスへ避難しろって!]
「あ、ああ。ついさっき話は聞いています。人數は?」
[2人です! 1人、パートナーが怪我をしていて!! 足を怪我してるの! 化けからなんとか逃げてきたの!」
2人、1人は負傷。さきほどの話と齟齬はない。
しかし味山はなんとも言えない違和を覚える。ソロ探索だから気を張っているのだろうか。
ここには判斷を仰ぐアレタも、観察するソフィも、実行するグレンもいない。
全ては自分で決めなければならない。
[お願いします! れてください! 彼、を流してて顔もどんどん悪くなってるんです!! あ、ああ、ダメ! 諦めないで!]
「っ、すみません、今扉を開けます!」
ドアのインターホンから屆く悲鳴に味山は反的に開閉ボタンへ手をばす。
そうだ、俺だってあの耳に追いかけ回された時にセーフハウスに駆け込んだじゃないか。
化けに殺されかけ追い詰められる恐怖は俺も知っている。それにサポートセンターからの事前通信もある。
う
何もおかしいことなんて、ない。
味山の指先がドアのスイッチにれた。そのまま押し込もうとーー
じわ。
「熱っ!!」
ポケットから熱湯でもかけられたような熱さ。
ドアの開閉ボタンから指が離れ、ポケットを弄った。
知らせ石、それが
「は? 真っ赤……」
知らせ石、心臓の形をした石が、さっきまで灰だったその石が真っ赤に染め上がっていて。
「危険を知らせる時に赤く……染まる」
どくん、どくん。
脈する、まるで本の心臓のように。
なんでこれが赤くなってんだ? 味山は目を丸くしてきを止めーー
TIPS€ 三階層に潛む人知竜は人間の死骸を27手にれた。そのうち25人はすでに人知竜の手により遠隔作が可能な人形と化している。
TIPS€ 人知竜は人間の扱う電波への干渉方法を得ている。
TIPS€それはお前がセーフハウスの出り口を開けるのを待っている。
TIPS€人知竜は人間の人形をまだ増やすつもりだ。
TIPS€ お前の周辺に人知竜の人形が最低二存在している
TIPS€ 人知竜は人を知るために人間の死骸を集めている。人知竜はお前を自分の死骸のコレクションに集めようとしている
「あ……」
ささやきが連続で耳に屆いた。
人知、竜。
聞いたことのない名前、しかしその容はあまりにも的でいて。
きの止まった味山、インターホンから泣きそうなの聲が響く。
[どうしたんですか?! 早くれてください!! 彼のの匂いに寄せられて化けがまた來ちゃう! お願い、助けて……]
「……1つ聞かせてくれ、あんたのパートナー足を怪我してるんだよな」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「……アンタたちどうやって化けから逃げたんだ? 怪種の種類は? 負傷した奴を抱えてここまで逃げ切れることのできる怪種ってどんなやつだ?」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「……お前たち、何者だ」
[2人です! 1人、パートナーが怪我をしていて!! 足を怪我してるの! 化けからなんとか逃げてきたの!」
「……名前と國籍、探索者番號を教えてくれ」
[2人です! 1人、パートナーが怪我をしていて!! 足を怪我してるの! 化けからなんとか逃げてきたの!]
背筋に冷や汗が浮く。
泣きそうなび聲は偽には聞こえない。しかし、どれだけ味山が問いかけても、もうその聲は同じ容しか返してこない。
まるで、設定された言葉しか喋れない人形を相手にしているような。
「……頼む俺を信用させてくれ。その足を怪我したやつと話せないか?」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
返答は変わらない。
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「一言だけでもいい、頼む」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「……人助けをさせてくれよ」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「……本當に人形なのか?」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
「人知竜って知らないか?」
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
[そうです!! 怪種に襲われて! は、話は後で、今は安全な場所に彼をれてあげたいの!]
壊れた人形だ。
同じ臺詞を繰り返し続ける。
コレはダメだ。もう、ダメだ。
味山はインターホンから離れる。ゆっくりと後ずさりし、ベッドの傍らに置いてある手斧を拾う。
味山もう一度知らせ石を見つめ、深くため息をつく。
「真っ赤じゃん……」
くすんだ灰だった石が鮮を浴びたように真っ赤に染まっている。
どう見ても異常、危険を知らせている。
インターホンからの聲が止んだ。
味山は出口から充分に距離を置き、耳を澄ませながら斧を構える。
どきん、どきん。心臓が早鐘を鳴らす。ベッドの脇に知らせ石を置き、息を整えた。
「來るなら……來い」
人形、言葉から捉えるにおそらく今セーフハウスの前にいる連中はまともな人間ではない。
敵、俺を脅かす敵だ。
ってきた瞬間に、殺すしかない。
ホラーゲームの被害者になるつもりはない。恐怖は殺す。
しかしいつまでたっても、何もきはない。てっきり扉を叩いたり、壊されるかと思いきや何も起こらない。
「いや、俺は騙されねえ。俺は詳しいんだ。こーゆーのは油斷したところに來るに決まってる」
ちか、ちか。
セーフハウスの照明が點いたり、消えたりを繰り返す。
味山は瞬きせず、構えを継続した。
そのまま10分ほどの時間が過ぎた。
照明の點滅は止み、正常な空間に戻る。
視界の隅で確認した知らせ石はいつのまにか灰に戻っている。
「……クソ耳、何か聞こえるか?」
味山が自分の中に在る力へと語りかける。しかしささやきは何もない。
味山からの問いかけに耳は必ずしも反応するわけではないのだ。
「……おい! まだいるのか!」
インターホンに向けて大聲を出す。
それでも、反応はない。
扉の外からじていた嫌な覚も消えている。
味山は扉に目を向けたまま端末を取り出し、耳に當てた。
サポートセンターに本當に救援依頼がっていたのかを確認するためだ。
プルルルル、プルルルル。
良かった、混線はなさそうだ。
がちゃ。電波がつながる音、味山は端末に向けて聲をーー
[どうして気づいた]
がちゃん。
通話が途切れる。味山が反的に通話を切ったのだ。
「はあっ、はあっ、はあ」
息がれる。耳にまとわりつくような聲、サポートセンターに電話したはずなのに今のはまるで違うところにつながっていた。
「勘弁しろよ……」
端末をベッドに放り投げ、床に仰向けに寢そべる。
「そーゆーのは本當やめろ。なんも面白くねーから。あー、もー、しんどい」
ピピピピピピピピピ、ピピピピピピピピピ。
再度の著信、次もし怖いのが來たらこの端末をぶち壊そう。
味山は再び端末を持ち上げた。
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