《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》26話 裏ミーティング、主人公は呑気に海釣りしてます。割と釣れたのでその場で捌いて食べてました。

ばたり。

ドアが閉まる。

2人の足音が離れていくのを確認してからアレタがドアから離れた。

「アリーシャ、同窓會の相談って、し噓が下手すぎない?」

「教、こんな言い方はしたくないが、あの2人だから誤魔化せたようなものだよ。今度から緒の話がしたければもっと、クールに言葉を選んでくれ」

アレタとソフィがじとりとした目で、アリーシャを、2人の軍人時代の教であり、上司であったを見つめた。

眉間に手を當てながら、アリーシャが唸る。

「ああ、悪かったよ。今のは我ながら呆れた。腹蕓の類は苦手なんだ。勘弁してくれ」

アリーシャがソファを指差す。アレタとソフィは黙って再び座り直した。

「……タイプコード、ラジエル」

[音聲命令を認識しました。一定時間、音聲記録を停止します]

アリーシャが呟く、同時に部屋のどこかから機械音聲が響いた。

「で、タダヒト達に聞かせたくない話って何かしら? 本國関係か、組合の上層部か…… 出來れば、組合からの意向だと嬉しいのだけれど」

アレタがおどけて足をぶらぶらと揺らし、笑う。

味山が見れば、小さく悲鳴をあげるであろう綺麗な笑顔をりつけて。

「殘念ながら、本國からだ」

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アリーシャがスーツのポケットからタバコを取り出す。

「吸っても?」

「えー、我慢してよ」

「一本くれるならワタシは構わないよ、教

「ふふん、アレタ。2対1だな。ほら、クラーク。裏切りの報酬だ」

アリーシャがソフィにタバコを渡し、満足げに火をつける。

ふわりと紫煙がくるり、天井の吸気に吸い込まれていく。

「ふー…… やはり紙がいい。電子やらニコチンレスやら巷には溢れているが、やはり紙だ、紙」

「タバコ吸うはモテないわよ」

「タバコを吸うすら許せないような男はいらん。なあ、クラーク」

「ふむ、教がモテないのはタバコを吸うからではなく、そんなセリフがスラスラ出てくる傲慢さにあると思うがね」

流れるように3人がやり取りする。

しばらく薫る紫煙が部屋を満たした。煙が混じり、照明がそれをかす。

「……本日付で合衆國から、指定探索者、アレタ・アシュフィールドとソフィ・M・クラークに命令が発行された」

じりり、咥えたタバコがむ。

同時に、アリーシャが言葉をらした。

「組合は通してるのかしら?」

「いいや、組合は関與していない。……これはまだ合衆國でも一部の人間しか知らないことだが、トオヤマナルヒトには、違法所持者の疑いがかけられている」

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「……組合が見逃すとは思えないがね」

クラークが靜かに呟く。タバコはまだ余裕があった。

「ああ、その通りだ。事実、探索者組合はこれまでに5回の査問、19回の極検査、そして24回の記憶洗浄をトオヤマナルヒトに施している」

「それ、凄い回數ね。それでも見つからなかったの?」

「その通りだ。トオヤマナルヒトの探索における戦果ははっきり言って異常だ。いくらガンスリンガーとは言え、単獨での指定怪種の討伐など常人に出來ることではない」

「ふむ、確かに。戦果だけ見れば指定探索者として登録されていてもおかしくはないか…… だが、確定なのかい? トオヤマナルヒトがを所持しているというのは」

アリーシャが懐からパッド端末を取り出す。モニターに移すことはなく、それをそのままアレタとソフィに手渡した。

「……これは半年前、たまたま合衆國のステルスドローンがダンジョンで記録した映像だ」

「……へえ! やるわね」

「これは…… なるほどね」

それは上空から撮影された映像だった。

故のわからぬ怪に囲まれた1人の男、ノイズのかかった映像ではそれしかわからない。

突如、男を囲んでいた怪が一斉に苦しみ始め、倒れた。

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男は何もしていない。ただ、立っているだけ。

それだけで10は下らない怪種はもがき始め、やがてぴくりともかなくなった。

「映像を解析してもなんの説明もつかない、わかっているのは映っているのがトオヤマナルヒトということだけだ。この映像を確認した合衆國はトオヤマナルヒトを未登録の所持者として斷定している」

「よく分からないのは全部、の仕業…ね。あたし達の國は分かりやすくていいわ、報部はさぞ、楽な仕事をしているようね」

アレタが背もたれにからだを預けため息をつく。

「そういうなよ、アレタ。この現代ダンジョンの時代、2025年から、いや、厳に言えば2022年より、各國の上層部はの収集を最重視している。しでも可能があれば當たりをつけるものなのさ」

ソフィがアレタを嗜める。

「クラークの言う通りだ。次に起きる世界戦爭の勝利者はバベルの大からより多くの""を取得していた國である、と本気で考えている連中は多いからな」

アリーシャが一息つき、紫煙をそのらかそうなからぽわりと吐き出した。

「……合衆國の懸念は1つ。このトオヤマナルヒトのが、"病を司る"ではないかという懸念だ。……もし、そうなのであれば我々はなんとしてもこのを回収せねばならない」

「はあ、偉い人たちの代理戦爭をやらされるのはムカつくわね」

ぼそりとアレタが呟く。

天井を見上げるその瞳には、暗いが燈っている。

「いっそのこと、そうね…… くだらないワールドゲームができないよう、すべてめちゃくちゃにしてやろうかしら」

アレタのつぶやき、部屋には一瞬で重たいガスのごときが広がる。

それは笑えない冗談だった。

ストーム・ルーラー。世界から嵐を消し去り、その作権を有する”號級”の所持者、アレタ・アシュフィールドにはそれができる。

その気になれば世界に再び嵐を、好きな時に、好きな場所に、好きなタイミングで熾すことができる。それはこの現代において世界の均衡を保つ強大なる力の一つだった。

「……ちょっと、ちょっと、冗談よ。アリーシャ、それにソフィもよして」

ジャキ。

アレタの眉間には一瞬で、黒い鉄の筒、拳銃の銃口が突きつけられていた。

「貴様の冗談は笑えんのだ。すぐに撤回しろ、アレタ・アシュフィールド特別佐。"52番目の星"」

「おっとその前に、教殿。アレタに向けた銃を下ろしてもらおうか。ワタシの銃は骨董品だよ、引き金が思いの外に軽いからね」

アレタの眉間に銃を突き付けるアリーシャ。しかし既にソフィ・M・クラークのリボルバー銃はアリーシャに向けられている。

さんすくみ。

眉間に銃口を向けられつつも、ふてぶてしい笑みを浮かべながらソファにを沈めるアレタ。

テーブルを足蹴にし、無表に銃口を振り下ろしたアリーシャ。

ソファに座ったまま腰だめにリボルバー銃を向けるソフィ。

「リラックスしましょうよ。アリーシャ。今は仕事の話の最中でしょ」

「これが私の仕事だ。アレタ、忘れるな。お前の役割は英雄という名の合衆國の兵だ。貴様の力には責任が伴う。言には注意しろ」

「教、そろそろ銃をさげてくれないか? ワタシは非力でね…… 指がしびれて、引き金にあたりそうだ」

ソフィが赤い片目をしばたたかせながらつぶやく。アリーシャの銃口はピクリともかない。

アレタがじっと自分を狙う銃口を見つめていた。

する銃口よりも、もっと深く暗い、夜の海を映した瞳をじっと。

「ふう、わかったわよ。ごめんなさい、アリーシャ。あたしの自覚がたりなかったわ。発言を撤回する」

アリーシャがゆっくり銃口を下ろし、無骨なオートマチック銃をふところにしまい込んだ。

「……理解に謝する、アレタ。それだけお前は世界にとって非常に強い影響力のある人間だと自覚してくれ」

「ええ。久しぶりにアリーシャと會えたからちょっとはしゃぎすぎちゃったみたいね。反省してるわ」

アレタがアリーシャに手をばす。しっかりと2人が握手をした。

「わかってくれたのならいいさ。それでアレタ、このいまだに私に銃口を向け続けている小娘を説得してくれないか?」

「ああ、そうね。ソフィ、ありがと、今のところあたしがアリーシャに撃ち殺されることはないとおもうわ」

「ふむ、そうか。今日こそは訓練兵時代の借りを鉛玉で返せると思ったのだがね、次の機會を待つことにしよう」

ソフィがケロリとした顔で、リボルバーをくるくるとスピンさせながらホルスターへと戻す。人形の貌がいたずらげにゆがむ。

「ふん、まだまだお前ら小娘にやられる私ではない。……話がそれたな。本題に戻ろう」

アリーシャが再びソファに座り込む。その所作は洗練されている。アレタと同じくらいに長くそして筋質が足が組みかわる。

「指定探索者、”52番目の星” アレタ・アシュフィールド。指定探索者、”史” ソフィ・M・クラーク。両名にアメリカ合衆國軍、アメリカ陸軍、ダンジョン攻略対策室よりの命令だ」

アリーシャの言葉を2人の指定探索者、所持者が不敵な笑みを浮かべて聞く。

「違法所持者、トオヤマナルヒトがロストしたを他國に先駆けて回収せよ。作戦行中における障害はすべて排除だ。サポートチームもすべて合衆國の協力者を派遣する。彼らと連攜し、任務に當たれ。何か質問は?」

「トオヤマナルヒトが生存していた場合は?」

アレタの質問にアリーシャが答える。

「合衆國の國益を最優先せよ」

端的な、あまりにも端的すぎる答え。それがこの時代の國家の在り方だ。

それは事実上の所持者の抹殺指令とも言えた。

「先日EU主導で行われた“耳”の討伐作戦において、連中は指定探索者2名、つ(・)ま(・)り(・)、(・)(・)(・)を(・)2(・)つ(・)失(・)っ(・)た(・)。ロストしたのうち一つはロシアが、そしてもう一つは中國が回収してしまったわけだ。合衆國はこの事態を重く見ている、なくとも仮想敵國に最低1つずつ新たなが追加されたわけだからな」

「ふふ、いずれくるワールドゲームにロシアと中國が一歩リードってとこかしら」

「そうはさせんさ。お前たちがを回収すればな。合衆國は貴様らの働きに期待している」

アリーシャが立ち上がり、鋭い目で2人を見下ろした。

「返答はいかに?」

アレタとソフィは互いに顔をあわせ、肩をすくめた。

そして、やるべきことにうなずいた。

「「イエス、マム」」

たちは指定探索者。

國家に覇権をもたらさんとする役割をもつ、現代の英雄にして、人の形をした兵だった。

「宜しい、諸君らの闘に期待する。……加えて合衆國からの報告だ。アジヤマタダヒトに対する警戒レベルが引き上げられた。様子見、監視のCレベルから、介、接のBレベルへとな」

「……あたし達がついてるだけじゃ足りないの?」

「そんな事はないさ。ただ、先日の彼が行ったソロ探索。あの日、ホットスポットにて彼のみが帰還したという実績を合衆國は注目している。引き続きアジヤマタダヒトの監視のため、アレフチームを継続せよ、とのことだ」

「どうしてソフィも、ステイツもそんなにタダヒトを構うのか、理解できないわ」

「アレタ、お前もわかっているだろう。アジヤマタダヒトは壁(・)畫(・)の魔との濃厚接者だ。彼の行データはどの國もしがっているのさ」

その言葉にアレタがふふふと、笑みを溢した。

てっきり不機嫌になるかと想像していたアリーシャは、いぶかしげに眉を潛める。

「誰も彼も、タダヒトを買いかぶりすぎよ。彼は今も、そしてこれからも、変わらない。只の人だというのにね」

………

……

~バベル港、埠頭にて~

空高く、されど波穏やかなり。

海鳥が呑気に鳴き、遠くの空では薄い雲の隙間を塗ってのはしごが降りていた。

穏やかな空間、しかし男のはしゃいだ聲が海に屆いた。

「う、うおおおお、ふぃ、フィッーッシュ‼ やべええ、これは、これは大っすよ!」

「うおお、すげえグレン! 釣竿離すなよ!」

「お、折れるううう! なんで埠頭でこんな大釣れるんすか!?」

「バベル島だからな!! 本土の常識は通じねえ!」

「味山ぁ! たも網だ、たも網! 網どこだあ!?」

「や、やべええええ。釣竿がみしって、みしっていったああああ!?」

「鮫島、だめだ! 網はまにあわねえ! 俺が潛ってとどめを刺す!」

「よしっ! わかったぁ!! 網は俺が持つ! 銛持っていけ! 銛!」

「ぐぬぬぬぬおお、タダ! タツキ! マジでこれ竿折れる! てか何が釣れてんすかこれ!」

「大だ! よし、行く! キュウセンボウの大海渡りいいいい!!」

どっポーン。

パンツ一丁になった味山が、海に飛び込む。

「ぎゃはははは! アイツバカだ! バカ! タダ! 溺れんなよ!」

「あじやまあ! 風邪ひくなよお!」

男3人は笑っていた。夏休みに好き放題に遊びまわる小學生のような輝いた笑顔で。

9月の海は、思ったよりもまだ暖かい。海水の覚が気持ち良い。

あの星の瞳のと同じ、深い蒼の中味山は目を開いた。

こぽり。こぽり。

海の音が聞こえる。砕ける白い泡、海面を刺す

味山は、釣り糸を飲み込みもがく魚影に銛を構えた。

探索者組合データベース閲覧開始……

~””について~

”とは現代ダンジョンにおいて発生する現代科學の理解、理法則の常識から外れた現象を起す取得である。その形はさまざまで現在、確認されているでもてのひらサイズの人形から、直系30メートルを超える球まである。

データベース閲覧……”號級”について

クリアランスレベルが足りません、注意、クリアランスレベルブルー以上のIDでのみこの報は閲覧できまままままままままままままままままま……—――――――――――

クリアランスレベルブルーを確認

”號級”とは””の中でもことさらに致命的な現象を引き起こすの名稱である。現代において主要7か國、およびロシア連邦においてこの號級の収集競爭が水面下において繰り広げられている。

アメリカ合衆國、”ストームルーラー”所持者、指定探索者アレタ・アシュフィールド、中華人民共和國、”龍昇”所持者、指定探索者曹宇辰、ドイツ連邦、”シュバルツヴァルト”所持者ロイド・アーダルベルドが一般公開されている”號級所持者”である。

ラドーM**による調査の結果、これらの號級は*****に本來存在しない:::・・・

エラー。不正なログインを検知、本端末のデータを消去。ただちに探索者組合警邏本隊への出頭を命じます。24時間以の出頭が確認されない場合、端末にて検知した顔データをもとに追跡部隊が発足されます。

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