《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》30話 銃撃戦
「あー、いいなー。フルオートマのアサルトライフル。俺もしーなー」
腹に響く、リズム。
「くく、アジヤマ。殘念ながら許可を得た探索者でも単発式のライフルがせいぜいだ。彼らのはもはや武ではなく兵だからね」
たたたたん、たたたたん。たたたたたたん。
心地よいリズムが聞こえるたびに、青いと共にが飛び散る。
「ブラボー、次、10秒後にリロード開始、チャーリー、同時に隊列を組みかえろ、近づけるな」
チャールズ隊長の指揮のもと、ガスマスクの部隊がそれそのものが武のやうに銃撃を繰り返す。
「……カッコつけて號令したけど、あたし達驚くほどに暇ね」
「ぶっちゃけ、訓練された最新鋭の裝備でを固めた部隊の戦闘力は半端ないっすからね。銃が規制される理由がわかるっすよ」
アレフチームのメンバーは銃撃をBGMに呑気に語り合う。
ガスマスクの部隊が円形にアレフチームを中心に囲む。
タイミングを合わせ、リロードしながら四方八方から迫る怪種を撃ち続けていた。
たたたたん。
「びいぎゃっ?!」
鉄の弾、弾頭が一つ目の化けの頭蓋を砕く。
草原の緑の絨毯がまた、青いを吸った。
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「あーあ、勿ねえ…… 5萬円もするのに」
味山が力なく呟く。
「まあまあタダ。全部殲滅した後に、形の殘ってる奴だけ剝ぎ取りましょ」
そう言いながらグレンが先程、味山が仕留めた一つ目ソウゲンオオザルの単眼にナイフをさしこんでいた。
「あ、てめ、グレン! それ俺がぶっ殺した奴だろうが!」
「まあまあタダ、お前剝ぎ取るの下手なんすから、かわりにやってやろうという親切心っすよ、親切心」
銃撃の舞う修羅場で、探索者たちは呑気にいつもどおりのやりとりを続ける。
「隊長…… 連中、イかれてるんでしょうか?」
「黙って手をかせ。今わかるのは、俺たちはそのイかれた奴のおかげで部隊行を取り戻せているという事実だけだ」
カートリッジを投げ捨て、チャールズが自小銃を構える。
たたたたたたたん、たたたたたん。銃口から迸る、星の明滅にも似たそれが瞬くたびに、化けが倒れる。
「さすがね、一瞬はれかけたけどもう立ち直ってる」
「ふふん、アレタ、キミの前だからだろうね。誰しもが星の前ではそのに飲まれないようにするために背びするものだ」
アレタが腰のベルトをりながらソフィと會話する。
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彼達の視線の向こう、よだれを振りしながら迫る怪種が、銃弾によってまた倒れた。
たたたたたん、たたたたたん。
銃撃が踴る。
腹に響く低音が鳴るたびに、化けが死んでいく。
こりゃ、楽だ。味山はグレンから渡された化けの目ん玉をベルトの保管ポーチに放り込みながら考えた。
撃たれても、撃たれても、仲間の死骸を乗り越えて怪種は迫る。
一つ目を見開き、茶赤の皮を逆立たせ、化けが迫る。
ああ、これ、なんかいやな予すんな。
明になって近付いてくる、そして襲撃前にわざと姿を表して包囲したことを示してくる知能を持つ連中。
それがこんな単純なことを繰り返すか?
一つ目ソウゲンオオザルは確か、知能が高い怪種の筈だ。普段ならもう、逃げていてもいいはずなのに。
「お耳さん、お耳さん。なんか嫌な予がするんですが何かご存知じゃないですか」
味山が投げやりに、"耳"に語りかける。まさか答えなど返ってこないだろうと思っていると。
TIPS€ 彼らは學ぼうとしている。人間の銃の脅威を調べている
「はい?」
TIPS€ 彼らは槌と轟音、見えない刃を扱う人間を恐れた。人間の力を恐れた。だから人知竜の提案をけれた
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TIPS€ 彼らは人間を學ぼうとしている。一族を犠牲にしてすら、それを為そうとしている
「う、げえ…… やべえ、やべえ、やべえ。それはやべえ! アシュフィールド!」
なんだ、それ。いつもいつも空恐ろしいヒントばっかり伝えてきやがって!
味山が異変を伝えるためにぶ。
「アシュフィールド!! 辺りの様子を確認してくれ! なんか様子のおかしい化けがいないか?!」
「え? ど、どうしたの、タダヒト、そんな慌てて」
「すまん! 上手く伝えれねえ! けど、あれだ! あいつらもしかしたら銃を學習しようとしてるかもしれねえ!」
「ちょ、ちょっとタダヒト、落ち著いてよ」
アレタが形の良い眉をへの字に曲げながら首を傾げた。
どうやってアシュフィールドにこのヤバさを伝えればいい?
味山が自分の伝達力の乏しさを呪っていたその時、
「お、おい、あれ、なんかおかしくないか?」
「た、隊長!! ば、化けが!」
隊列を組んでいた混合部隊のメンバーがぶ。
味山はその騒ぎを確認し、思わず笑った。
「ははは、おい、まじかよ」
盾にしている。
銃弾に倒れた仲間の死骸を拾い上げ、それを盾に猿の姿をした怪が迫りくる。
「な、なんだと……? カバープレイ…? 怪が、まさか、線を理解しているのか?」
隊長が呆然と呟く。
理解、味山が反的にんだ。
「あいつら、銃を知ってるんだ!! 遠山鳴人との戦いで、銃を覚えてやがる!」
ダンジョンのヒント、槌と轟音、見えない牙をる人間。味山の頭の中でヒントが組み立てられていく。
間違いない、こいつらは遠山鳴人と戦した怪種のグループだ。
「そんなバカな、怪種だぞ?!」
「で、でも、隊長、あいつら仲間の死骸を盾に!! 他のやつも真似し始めてる!」
ガスマスクの部隊は浮き足立ちながらも引き金は緩めない。プロだ。リロードのスピード、照準の正確さは変わっていなかった。
「はあ…… タダヒトの嫌な予はよく當たるわよね、ホント。えーと、隊長、そこし開けて貰ってもいいかしら、ソフィ、雙眼鏡ある? 貸してくれない?」
「コピー、デルタチーム、間隔を広げろ、星の視界を通せ」
「ほらよ、アレタ。壊さないでくれよ」
アレタの言葉に皆が従う。すげえ、あれが発言力か。味山はその様子に素直に心した。
「ありがとう、隊長。何よ、ソフィ。いくらあたしだって雙眼鏡覗くだけで壊すわけないじゃない」
「うるさいよ、前科者め。ほら、雙眼鏡だ」
口を尖らせるソフィからアレタが雙眼鏡をけ取り、銃を構える隊列に加わった。
「どれどれ…… うーん…… あ、あの辺り、なんかヤなじするわね」
雙眼鏡を地面に置き、アレタが笑った。
ぺろり、赤い舌がその薄い桜のを這う。
「ごめんね、みんな。もうし離れてくれるかしら?」
アレタの言葉に、ガスマスクの部隊が瞬時に反応する。
ポカリと空いたスペース、アレタ・アシュフィールドがその業を振るう。
薄手の迷彩服に巻かれたベルト、そこには懐中電燈ほどの大きさの筒が何本も、何本も備えられている。
「3本、くらいかしら」
アレタの腕がベルトをかすめる。マジックのように次の瞬間にはアレタの手に、黒い槍が握られていた。
アレタ・アシュフィールドの英雄譚、嵐を墮とした投げ槍だ。
「す、たーと!!」
振りかぶる、長いた手足がしなりらかな肩関節から投擲が始まった。
びゅおん。
空を切る。大草原の青々しい風景の中、槍が弧を描き、ある場所へと吸い込まれていった。
「ホバ!?!」
ボン。
押し寄せる怪達、それよりももっと遠くの地點に槍は降った。
瞬間、青いが破裂したように舞った。
「だんちゃーく! 今! YES! 大當たりね」
アレタがガッツポーズしながらはしゃぐ。
放り投げられた槍が虛空に潛んでいた化けの首を消しとばした。
隠れていたのだ。姿を現し突撃してくる猿達とは別に、離れたところで明なまま、こちらを観察する個がいた。
「す、すごい!! 星がやったぞ!」
「ああ、お星様。なんて綺麗なの」
「見ろ! 化けどもの足が止まってる! 鴨撃ちだ!」
「「「アシュフィールド! アシュフィールド!! 我らが52番目の星!」」」
ガスマスクの部隊が一気に湧く。
ええ、あれで盛り上がるの?
明になってる化けに遠距離の投擲を功させるのって割とドン引きポイントなんだけど。
味山は今にもUSA! とび出しそうな連中との空気の違いをじていた。
「まじ、お前ホントどうやって見つけるわけ?」
「ふふ、の勘ってやつかしら」
空間と同化して明になろうともの勘には敵わないらしい。
味山は極力、アレタに対してはやましい隠し事はしないでおこうとじた。
「むー、あと2匹…… まだ見られてるじするわね。でも不気味…… 襲ってくるでもない、これは、観察してるのかしら」
アレタが首を傾げながらも、腕を再びベルトにばす。
懐中電燈サイズの筒が、アレタの手に収まる途端に、槍へと変化する。
オカルトじみた科學により造られたアレタ・アシュフィールドの探索者道、"星の槍シリーズ"。
それが何気なく、また放り投げられる。
ああ、勿な! あれ、一本100萬以上するのに!
味山は自分の年収の數割ものが金額が息継ぎのついでに放り投げられるのを冷や冷やしながら見守る。
ぼん!
また遠く、草原の丘陵線の上で青いが破裂した。
再びガスマスクの部隊達が盛り上がる。銃聲がまた一際響いた。
「セッカンドー。これでタダヒトとスコア並んだわね」
「そですね」
うしし、と笑うアレタに味山は乾いた笑いを返す。
銃を學習する怪種に対する恐れも、指定探索者のでたらめぶりの前には薄れてしまった。
「アシュフィールド、もし遠山鳴人が生存してた場合、こいつらにここで足止め喰らうのはまずくないか?」
パチリ。アレタが指を鳴らした。
「隊長!! 作戦を変えるわ! このまま怪種の群れの襲撃の中を進みます!」
「……了解! 総員、傾聴! これより進行を再開、フォーメーションを各分隊規模で編する。……アシュフィールド特別佐、円形で立ち止まってのフォーメーションを崩すと貴達を危険に曬すことになりますが」
「アハ、ありがとう、隊長。でも大丈夫よ。ちょうど退屈していたところだし、それに」
アレタがちらりと流し目をこちらに向けた。
「あー…… やるしかないでしょ」
「いつでもいけるっすよ! アレタさん」
「やれやれ、楽はさせてもらえないものだね。報酬分は働くとするか」
アレフチームが答える。生命を賭けることに慣れすぎてしまった連中の答えは軽い。
「あ、やべ。アシュフィールド、俺その場のテンションで斧投げちゃった」
「もう、バカ。はい、これ。あたしの槍貸してあげるから、早く死骸から引き抜いてきて! あの辺に転がってるのだと思うわ」
アレタが自分のベルトから筒を取り出し、それを振るう。まるで魔法のように筒は一瞬で大きくなり、槍へと変化していた。
「あ、どうも。うわ、結構重い」
「くく、よかったじゃないか、アジヤマ。アレタが自分の武を他人に渡すなど初めて見たよ」
「あら、ソフィ。それどころかあたし、タダヒトがニンポーで作った武を使ったことも…… あ、今のなしね。だったわ」
「なんすか、タダ? ニンポー?」
「……気にすんな。アシュフィールドのいつものテキトーな話だ」
味山は手頃な大きさの投げ槍を肩に乗せて、大で歩き始めた。
「……」
無機質なガスマスクの視線がいくつも味山を捉える。
味山はその視線を無視して、彼らの陣形の外、怪の前に進み出た。
「よし、仕事だ。仕事。張り切ってぶっ殺していこう」
TIPS€ 銃弾に倒れた友の、子の、親の亡骸を盾にし、怪は駆ける。一族のために命を懸けて戦に臨む
目の前には、じりじりとこちらへ迫る猿の怪、銃を、アレタを警戒し、慎重に様々な方角から迫りくる。
TIPS€ 彼らはんでいる。何故、住処を冒すのか、何故、家族を殺すのか
味山は星から渡された槍を大雑把に素振りする。怖え、コレそういや発するんだよな。誤とかしないよな。
TIPS€ お前に問う。何故、お前は怪を殺す? なんのために、なんの権利があって、生命を奪う?
「ゲゲゲ、ギギギギィいい!!」
威嚇するサルの化け、その牙は、その腕は容易く人間を殺す。
しかし、味山は進む。酔いが、その足を進ませる。
TIPS€ 何故お前たちは奪う、何故お前達は殺す。
耳のささやき、そのヒントに味山は
「ぶはっ!」
吹き出した。その表には哀れみも躊躇いも優しさも何もない。心底愉快なものを見たかのように、笑った。
何故、だと?
味山は大笑いするのを堪えて、答えた。
「1匹につき、5萬円だからだよ、お前らが」
味山が地面を蹴る。
味山にこの槍を使って、アレタのように戦う技も力も才もない。
だからシンプルに、ただ切っ先を構えて、1番近くにいたオオザルに突っ込む。
「げっ?!」
大振りに下される腕の一撃。當たりどころが悪ければ死ぬ。
たまたま。
今回はたまたま、その腕が味山の顔に直撃するよりも
「きげっ?!」
「しゃあ!! ごっ、まんえん!!」
味山が突き出した槍先がそのを抉る方が早かった。
「おっと、アジヤマ。運が良かったな」
赤い髪、抱きすくめれば折れてしまいそうな細いが味山のそばに。
その手に握るはほのかにる鞭、反対の手にはそのに似合わぬ鈍に輝くリボルバー銃。
「げ?」
鞭がしなり、オオザルの首が妙な方向にねじれた。
「うわ、センセ。相変わらずその鞭、反則っすよね。いいなー、俺もしいっす」
ぱきゃ。
灰の髪の丈夫が赤髪のの背を守るように侍る。味山とは違う、怪の攻撃を、偶然ではなくその才気を持って捌く。
拳が、怪の顔面を砕いた。
「アハ! じゃあ始めましょ! トオヤマナルヒト捜索任務、スタート!」
星の両手に握られた投槍、それが瞬くたびに、怪はその數を減らしていく。
ガスマスクの大男、チャールズが部隊に指示を出す。
「彼らに続け! 探索者を死なせるな!」
アレフチームが、怪の群れを裂き始めた。
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