《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》34話 アレフチーム撤退戦 その2
「タダ! 簡潔に奴の注意點を!」
「怪力、不気味、固い! あとからなんか腕とか生やす! それで、あとなんか耳から音を出してくる! そんでもって不死! あと変するぞ!」
「なんすか!そのインチキは?! ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたーじゃねえんだから!!」
「仕方ねえだろ!! マジなんだから!」
味山が喚きながらアタッシュケースから自小銃を取り出す。
えーと、これどうやって撃つんだ、銃所持免許ん時の散弾銃と勝手がまるで違う。味山はあの時かっこつけてガスマスクの部隊に使い方を聞かなかった事を後悔していた。
「タダ! 貸して!」
「お?」
グレンが味山の手から小銃を奪いとる。慣れた手つきでマガジンを裝填し、安全裝置を解除した。
「よっ……と!」
バババババ!! バババババ!
連続する銃聲、吐き出される薬莢。タイピングライターの音にも似た破裂音と同時に、耳の化けのにいくつもの風が空く。
「nice Guter Arm」
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耳から音が鳴り響く。赤いをから垂れ流しつつも化けの歩みは止まらない、それどころか
「げえ!! 噓! 傷が……!」
「ほら! だから言ったじゃん! だから言ったじゃん! 不死だって! アイツクソ耐久に再生待ちなんだって!」
「クソボスすぎるっすよ! タダ! お前あんなの1ヶ月前どうやって撃退したんすか?!」
グレンの泣きそうでやけっぱちなびに味山は返答をつまらせた。
8月の記憶が蘇る。
灰ゴブリン、それから、えっと、それから……
それから、なんだっけ?
あれ、おれどうやってアシュフィールドが來るまで時間保たせたんだ?
「……じゅ、し、か」
つぶやきは無意識、自分が何を言ったかももうおぼえていない。
「は? なに?!」
「……たまたまなんかうまくいったんだよ! なんか、確か、……みたいな? あれ? つーかこの話何遍もしてるだろが!」
「あんなの飲みの席の話でしょうが! ……え? マジなんすか?」
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「マジだよ! あの時はアシュフィールドもいた! 今はいない! あるもんでやるしかないだろうが!」
「クッソ! こんなん特別ボーナス貰わないとやってらんねえす……よ…… あれ、タダ、野郎は?」
「は?」
唾を飛ばしながらんでいた味山とグレンはのきを止めた。
いない。
目の前に迫っていた耳の化けがいつのまにか消えている。
馬鹿な、目は離していなかった。こんな広くて見通しのいい場所、姿を隠すところなんてーー
TIPS€ 上にいる
「グレン!! 上だ!」
「っ! うお!」
味山とグレンが咄嗟にその場から飛び退く。確認などしない、していたら間に合わなかった。
ず、ん。
影が広がる。
2人がその場から飛び退いた剎那の後、耳の化けがその場に、墜落した。
「くっ….」
「う、あ……」
勢を戻した2人が言葉をうしなう。
草原、地面が凹んでいる。耳の化けがめり込んでもがいていた。
アタッシュケースが衝撃で遠くへ飛んでいく。
もし、ヒントを聞くことが出來なかったら、もしあの場から飛び退くのがしでも遅かったら……
味山は口の中にいつのまにか溜まっていた唾を飲み込み、認識を改めた。
そうだ、コイツは普通の怪とは違う。
「グレン…… ふざけた姿だがコイツはマジで化けだ。ちょっとしたことで殺されるぞ」
「……みたいっすね」
グレンは小銃を構え直しもがき続ける耳の化けへと銃弾をたたきこむ。
「タダ! そろそろ弾が切れるっす! どうする?」
グレンのびに味山は吐き捨てる。
「どうするも、こうするもいつも通りにやるしかねえ!! 俺が囮! お前が火力! 生半可な攻撃じゃ通用しないぞ!」
味山は手斧を握りしめる。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!! いくらなんでも早すぎる! 耳との再戦のプランはいくつか考えていた。
だが、まだ準備が足りない。決定的に、足りないのだ。それだけは味山にもわかる。
「落ち著け…… 落ち著け…… やるしかねえだろうが…… 」
自分に言い聞かせる。早鐘を打つ心臓が辛い。
カチっ、カチっ。
銃聲が止む。腹の底に響いていたリズムが途切れる。
「っくそ! 弾切れ!! タダ、戦闘準備!」
「……了解」
もがいていた耳の化け、の銃槍がみるみる再生していく。が紡がれ、が塞がれる。
そのから垂れるのは、味山達と同じ赤い。垂れていた赤いが、傷口に吸い込まれるように戻っていく。
「round 1」
耳がこちらを見つめていた。
選択を誤れば死ぬ。あれほど考えていた作戦、耳との再戦のプランもいざ実際に相対してみれば、どうだ。
頭が真っ白になる。味山は今ほど自分の凡庸さを呪った事はなかった。
でも、もう、
「やるしかねえだろ」
そう、やるしかない。凡庸でも無策でも、予定外でもやるしかない。
それが、仕事だ。
「グレン…… 狙うなら耳だ。あそこだけはらかかった」
「オッケー、タダ。死ぬなよ」
「お前もな」
ぬらり、耳がゆれた。
同時に、味山の足は一歩を踏み出す。
頼む、耳。ヒント、ヒントヒントヒント、ヒントくれ。
教えろ、ダンジョンのヒントを。
踏み込む。手斧のつかを短く握る。
耳がいた。
ただその短い腕を何かを求めるようにばして
TIPS€ ……條件達 ”耳”との再戦を確認…… 非公開攻略報を解
きいん。
あ? なんだ、いつもとヒントの聲が違う? 味山が妙な違和に気を取られかけたその時。
TIPS€ せいけんづきがくる
ぼん!!
「ふっ!!」
緩慢なきから信じられない速度で突き出された腕、空気が破裂した音とともに、短な腕による攻撃が始まる。
その攻撃が來る前に味山は大げさに地面に飛び込みそれをかわす。違和を、今は無視する。これはヒントを聞くこの耳は大きな武だ。
味山の中に埋め込まれた"耳クソ"はヒントを聞き逃さない。ヒントがなければ終わっていた。
酔いはその恐怖をごまかす。死の恐怖は怒りへと歪められる。
怒りは人の原力となる。
「オラ!!」
倒れた勢いそのままに味山が立ち上がり、斧を両手で握り、そのま真橫に振る。
耳の化けの小さな、斜め上に切り上げた。
がき。鉄に固いモノが食い込む音。
短な腕、機敏に振り下ろされた肘鉄が、脇を狙った斧の刃を食い止める。
「てめえ、本當に有機かよ」
「Type and pull pull」
耳から聞こえる再生音聲、味山はそれを無視して、
TIPS€ ”耳”非公開攻略報 ”耳”は記憶している、これまでに殺した生の音を。耳はあるとき気づいた、一部の生かられ出す音には規則があることを
斧を引く。もう一発食らわせようとをねじりーー
TIPS€ ”耳”非公開攻略報 ”耳”はその音聲が言葉であることを知った。耳のかられ出す音はすべてこれまで殺した人間の聲を録音したものだ
「っ! とに悪趣味だ、てめえは!」
ぶ、味山の耳がヒントを、コツを、いつもとはなにかが違うTIPSを拾い続ける。たとえそれが知らなくてもいいおぞましいことであっても。
がん! 渾の二度目の振り上げ、肘鉄のガードごと崩そうと力をれた一撃も”耳”には屆かない。
耳が片方の手を味山に向けた、それは人などごみのように屠れる膂力をめた腕、それが味山をとらえれば終わり。
ソロ探索ならここで終わり、だが今回は違った。
「おっと、こっちもいるんすけど」
軽薄げに聲とともに、銅鑼を毆ったような音、鍛え上げられた腕、固められた拳が味山とは反対方向から耳を毆り飛ばした。
「AOW!!!」
がっ、っ
耳が吹き飛ぶ、大きな耳がたわみながら草原を転がった。
「い、ってえええええ!! なん、なんすか! このバケモン?! 鉱石系の怪種ぶん毆ったときよりもいてええ!!」
「ナイス! グレン!」
拳に息を吹きかけながら耳を毆り飛ばしたグレンが騒ぐ。
やっぱり、こいつも伊達じゃない。
味山がグレンと並び、耳へと向けて斧を構える。
「Von gra」
「あ」
耳がすぐさま起き上がる。邪魔なはずの大きすぎる耳を振り回し、浮き上がるように立ってーー
ぼん。
地面を蹴った。
TIPS€ グレン・ウォーカーを狙っている
「グレン! お前に來るぞ!」
味山がび終わる前に、耳がもう腕が振れそうな位置まで來ていた。
「!」
雑に振るわれる大耳
TIPS€”耳”非公開報 耳の外側は固い
迫るそれを味山は斧をぶつけながら背後に自分から倒れることでその場を回避する、みしり、消化手斧がきしむ、頼むまだ壊れないでくれと願いながら味山は顎をひいてけをとった。
味山はその攻撃から逃れるだけで一杯、
「あら、よ!」
しかし、上級探索者グレン・ウォーカーは違った。
しゃがむ、なぐように振るわれたその大耳を躱す。耳が瞬時に振り下ろした腕の攻撃を貓のようなみのこなし、最小限のきで躱す。特別な目と選ばれた能力が可能とする怪に迫る白兵能力。それがグレンという探索者の武だ。
「そこ!」
低姿勢から繰り出された足払いが、耳の短い両足をとらえ掬った。
「ぶっとべ!!」
同時にバネがはじけるようにグレンのがしなる。固く握られた拳は制の崩れた耳に直撃した。
「OH」
耳がグレンの流れるような連撃にあとずさりする。くらくらと耳を揺らす姿はその攻撃が聞いているようにみえーーー
TIPS€ まるで効いていない。耳はしかしその練り上げられた技に心した
にべもないヒント、しかしそれは正しかった。
拳を突き出した姿勢のまま固まるグレンが、乾いた笑いをらした。
「……はは、手ごたえ、なし……っすか。えー、かなりショックなんすけど」
TIPS€”耳”非公開攻略報 この戦闘において”耳”への有効打は2つしかない。それを活用しなければお前たちはあと數分で耳に壊されて、死ぬ
「まじでくそ」
味山が味山だけに聞こえるヒントにむかって、吐き捨てた。
「教えろ、その有効打を」
だいたい予想はついてるけど。味山は立ち上がり絶の撤退戦へと臨む。
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