《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》51話 2028年、9月23日ノ朝

「……まじか」

味山は部屋の有様を見て、絶句した。

部屋の四隅に盛った盛り塩が盡くまるで燃え盡きたように真っ黒に黒ずんでいる。

窓にそこかしこにっていたお札も、例にれず、まるで鋭利な刃で斬られたように、両斷されていた。

「お経もプレイリストから消えたんだけど。返せや、俺の255円」

端末を拾い電子畫面を確認する。音楽フォルダから般若心経のデータが消えていた。

「あの平安骸骨、やっぱ悪霊の類いだろ。それで、これは、なんだ」

起き抜けに、味山は機の上に置いてあるそれを見る。

「塩…… じゃない。? なんかの末か?」

機の上にいつのまにか置かれていた。漆が塗られた茶碗にほんのひとつまみ程度のれてある。

味山がゆっくりとそれに手をばして

TIPS€ 忘れられたお伽話のカケラ。神の殘り滓"鬼裂の頭蓋の骨" 食せば、平安最恐と謳われた最古の怪狩りの業を得る。たとえ濃いの繋がりや宿命がなくとも継がれるモノもある。これはきっと今はもう誰も知らない古い盟約により現れたモノだろう。

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流れ込んでくるTIPSに、しばし耳を傾ける。

誰も知らない盟約。鬼裂ですら、なぜ自分と縁が結ばれているのかを把握していなかった。

そもそも、はじめに鬼裂を探せと言い始めたのはヒント、TIPSだ。

「……わけわかんね、そもそもTIPSってなんなんだ?」

味山は今までロクに考えてこなかったモノについてし悩む。

10秒ほど目を瞑ってかんがえて、それから。

「……わからん! よし、とりあえずさっさっとこれ食べちまお! えーと、サラサラしてるし、ココアにでも溶かすか!」

都合よく小鳥くらいのIQで味山は考えるのをやめた。だめだ、だめだ。考えてどーしようもないことを考え続けてると心と時間を無駄にする。

味山はふたつまみほどの骨、それがっている皿ごとキッチンへと運んでいく。

「えーとココア、ココア」

スーパーで買った徳用ココアの袋を戸棚から取り出す。ついでに冷蔵庫からは半分殘っていた豆

ガスコンロに小鍋を置き、ココア末を目分量、豆を適當にれてかき混ぜる。

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が、豆に沈み、ダマになって浮かぶ。かちりとコンロのスイッチを回しそれを火にかけた。

「あー、でもいくらなんでもこれそのままぶちまけるのは悲劇の予がするな…… あ、そうだ」

味山は皿に盛られた鬼裂の骨を人差し指でつまみを確かめる。食塩と同じくらいの。しかし、これはきっと火にくべても水には溶けない。

「えーと、この辺に、確かあったよな…… お、みっけ」

戸棚から丸いビンを取り出す。黃金がビンから覗いていた。

「蜂かけたら、大抵のモノはいけるだろ」

小皿に移した骨に、スプーンで掬ったをかけていく。ねろり、大量にかけられた蜂が骨を包むように盛られた。

「ココアに溶かしたら意味ねえな…… まあいいや、流し込んだろ」

コハクのように蜂に閉じ込められた骨を見つめる。

……まあ、なんかの珍味と思えば行けるか。カッパのミイラより、抵抗はない。

「よっし、鬼裂の骨、いただきます!!」

そのまま一気に蜂ごと味山は骨をスプーンですくい口にれる。甘い、ただ甘い蜂の香りが鼻の奧に染み込んだ。

ぐびり。ぬるめのココアを煽り、甘いものを甘いもので流し込む。しジャリジャリした覚が舌をでたが、もう一度ココアを呷ると、それもすぐに消えた。

「……ふう。ごちそうさまでした」

口の中が、甘い。

味山はココアを最後まで飲み干した。

TIPS€ 神の殘り滓"鬼裂の骨"を取り込んだ。経験點150を使用することにより一時的に"鬼裂の狩り"を再現出來る。鬼裂との繋がりが深くなるにつれ再現出來る語は増えていくだろう

耳に響くヒント。問題なく食事を終えることが出來たらしい。

「なんか、妙に満腹だな…… まあいいや。さーて、今日は何しようかなー」

味山はあくびしながらリビングへと戻る。ベッドに腰掛け、対面上にある19型の小さめなテレビを點けた。

[おはようございます、本日のニュースです。俳優の堤シンジさんがまたしてもやりました。これで通算4度目の不倫です、お相手は今売り出し中のグラビアアイドルーー」

[ご覧ください、このツヤツヤのカスタードクリーム。ここフーシャ屋は自家製の玉子からーー]

[今日のニッ経平均株価は午前の時點で昨日の終値より658円高の58219円です。アメリカ合衆國がダンジョン事業での民間企業參の條件を緩和する施策を発表したことをけて、買い注文が広がったのが要因と見られていまーー]

[ご覧ください、このボデェエエエエ!! バベルの大から産出した特殊金屬を利用したキャンプテーブルです! これからの季節、ご家庭に1つあるだけで、鮮やかな秋がお約束されます! なんと、この商品! 探索者道の有名メーカー、シマノカジヤが協賛しておりーー」

「ハニーバー、アマくない狀況に、甘いものをーー]

「テレビは相変わらず呑気だなー…… おい」

味山は眼をりながら適當にチャンネルを回していく。ニホン本土と同じ周波數が屆くため放送チャンネルは富にあるものの、本気で見るような容のモノはない。

「ヒガシムラ野営場でも見とこ」

お気にりのキャンプ専用チャンネルに定めて味山が、リモコンを放り出す。

[いいんだよ、キャンプは天候悪い方が楽しいんだよ]

テレビを聞き流しつつ、味山は大きく息を吐いた。

何はともあれ、アシュフィールドやグレンが退院しねー限り探索の段取りは組まねえよなー。勝手にソロ行くのはなんか気がひけるし。

寢起きの頭でぼんやりと考える味山。

悪霊に荒らされたような部屋を見回し、それの片付けもしなければならない事に気付いてため息をついた。

「あ、そういや、猿の腕…… これどうしよ…… 流石にこんなもん自分じゃあどうしようもねえな……」

味山が呪いが暴れ回った後のような機、その上に置いてある猿の腕を見つめて呟いた。

ピロポロリン。

端末が奇妙な音を立てた。

なんだ? 味山が端末の畫面を覗こうとしてーー

[番組の途中ですが、一時中斷してニュースをお知らせ致します]

「あ?」

[今ったニュースです。ついさきほどアメリカ合衆國、及び探索者組合本部より共同の発表がありました。アメリカ合衆國所屬、指定探索者、アレタ・アシュフィールド氏が暫くの間、探索者活を休止するとの事です。氏は3年前、人類限界到達階層である3階層において組合の記録史上初の"接止指定怪種"の討伐者としてーー]

「え」

[この氏の盡力により、アメリカ合衆國は歴史上初となる天候のコントロール、今日において世界のバランスを保つ天候抑制システム"ストームルーラー"の開発に功。北半球において人類はついに嵐すらも手中に納める偉業を為し得ました。このことから氏はアメリカ合衆國、及び人類への多大なる貢獻から史上初、個人として國旗に記され、アメリカ合衆國國旗における51個の星に加え、52個目の星、通稱"52番目の星"として人種、國家の垣を超え、敬意を集めてまいりました]

「え」

急放送に切り替わったテレビの畫面から、よく見知ったのこれまでをどこか誇らしげに伝えるアナウンサーの聲が響く。

[その氏の突然の休養宣言、詳しいことは本日午後よりバベル島、探索者組合本部で行われる記者會見により明らかになると思われますーー]

「な」

味山はちらりと、探索者端末を除く。

メッセージアプリの著信知らせ。

*おはよ! タダヒト! よく眠れたかしら? 大事な話があるのだけれど、し探索者をお休みする事になりました! 々お話したいから、これから組合の本部へ來れるかしら?

メッセージの送り主はもちろん、今ニュースで絶賛放送中の星。

「アシュフィールド?」

*あ! ごめん! 言い忘れてたわ! ドレスコード! ジャケットとスラックスで來てちょうだい! 元サラリーマンなんだから、大丈夫よね!

こいつ、サラリーマンなんだと思ってんだ。

味山はニュースで映し出されている國旗を掲げた金髪の人を眺める。

スーツ、どこにやったっけ?

勢いよくをベッドに投げ出し、反発で立ち上がってクローゼットに向かう。

9月23日が始まった。

読んで頂きありがとうございます!

宜しければ是非ブクマして続きをご覧ください!

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