《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》63話 合コンに行こう!
……
…
2028年、10月。
カスミトラの膽石手、及びカスミトラの群れの駆除を完了し帰還から3時間後……
〜バベル島、表層、アメリカ街噴水広場、PM18:00〜
裏切り者。はめられた。
味山がそいつを見た瞬間にじた想は、その二言だった。
「おおーい、タダ! こっち! こっちっす!」
人の多い夕方の噴水広場、そいつは長い腳をぶらぶらさせながら、噴水の淵に座っていた。
バチバチにダークのスーツで上下を固め、ジェルで髪をかき上げた長の丈夫が笑顔で聲を張り上げる。
白い歯をきらりと煌めかせ、手を振っているその男に向けて味山は口を尖らせた。
「てめえ、ハメやがったな、グレン。何がラフな格好だ? お前、バチバチじゃねーか」
いつものパーカーに、簡単なジーンズの味山がグレンを睨みつける。
「えー、なんの話っすか? これでも俺ラフなんすけどねー?」
広場にいる周りの人、主にはちらちらとそいつ、グレンを橫目で盜み見していた。こいつは確かに外見がいい。
よほど視線を集めるのだろう。
たしかに決まっているが味山はむかつくだけだ。
「グレン、よーくわかった。お前のやり方がな。この合コン、俺からの協力はないものと思え」
「え!? ちょ、タダ、タダタダ、タダヒトさん、そんな事言わないでくれっすよー。俺たち紳士協定で結ばれた仲間、だろ?」
味山は肩に置かれたグレンの手を叩き、切り捨てる。
「やかましい、気な外人枠。お前が抜け駆けでバッチリスーツを決めてきた時點で協定はなしだ。俺はもう、知らん」
そのが気にらなかった。どう考えてもモテるのはグレンの方だ。なのに、こんな死蹴りに近い真似をしてくるとは。
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味山はグレンの卑劣なやり方にいらつく。
「えー、だって、そんくらいのハンデはしいじゃないっすか! タダ、お前、今の自分の狀況わかってないんすか?」
「ハンデ? お前何言ってんだ。ハンデなら俺がしいわ。お前と比べられる方のにもーー」
グレンの素っ頓狂な言葉に味山が言い返す、言い返しかけて、ふと、視線に気付いた。
あれ、この視線、グレンもそうだがーー
「ねえ、あれもしかしてニュースに出てた人?」
「アレタ・アシュフィールドの記者會見の人じゃない? ほら、サムライソードを持ってた」
「味山只人だ。本見ちゃった」
ヒソヒソと周りの人間達がざわめく。その視線はグレンに注がれるものよりも、意外なことに味山へ向けられているものの方が多かった。
「え、俺?」
「そうっすよ。この前の一件でタダ、お前今し有名人になってるんすからね。アレタさんやセンセイが今んところマスコミとか抑えてるけど、ネットは止めれないっすからね」
マジ? でも確かに最近、SNSでの謎のDMやフォローが増えていたような。
良く耳を傾けてみたら、いつものアレタと一緒にいるときの罵詈雑言とかはない。
遠巻きに眺めてくる視線は敵意よりも興味の方が多かった。
「ほーん、なるほど。じゃあお前、まさかそのスーツは」
「そーっすよ。あめりやのの子なんか特に探索者の事に詳しいんすからね。今日の合コンの主役はどうしてもタダになるっす。服裝のハンデくらいくれてもバチは當たらねーっすよ」
グレンが頭を掻きながらバツの悪そうにつぶやく。
ほん、ほんほん。なるほど。
「なるほど、そういうことか。え、俺今有名人なわけ?」
味山の小さな自尊心にし、火がついた。
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「そーっすよ。腹立たしいことに。あめりやのの子の何人かは味山只人が來るなら行くとか言ってるらしいっすよ」
グレンの言葉に味山は大きく息を吸った。
「ほおおう。な、る、ほど。なるほど、なるほど。それは苦しゅうないな。良い、グレン。お前のその裏切りを許そう。持っている側らしいからな、俺は」
分かりやすく調子に乗り始めた味山はすでにグレンのスーツ騙し討ちのことがどうでもよくなってきていた。
「うーわ、骨に調子乗り出したよこいつ。これだからチヤホヤされ慣れてない奴は調子に乗ってダメなんだよなー」
「ははは、嫉妬の聲が気持ちいいわ。よし、グレン案せよ。今宵の俺たちの戦場へ」
わかりやすいほどの笑顔で、味山は歩き出す。味山がくと周りの人間の視線がく。
「め、めんどくせえ。まあいいや、タダわかってるとは思うっすけど……」
「安心しろ、抜け駆け止、互いの指定探索者へのチクリは厳、幸せは分かち合うもの、奪い合うのは探索だけ。アレフチーム男のお約束はいつも俺のにある」
人差し指を立てながら味山は笑う…一応まだ酔ってはいない。ダンジョンにも酒にも。
「ふっ、ならいいっす。タツキは現地集合らしいっす。ぼちぼち向かいますか」
「おう、……えー、まじ? 今回俺目當ての子とかいんの? えー…… やだあ」
自分には酔っていたが。
「おねえになってんぞ小市民。行くっすよ、タダ」
いつもより冷たいグレンの言葉も今の味山には気にならない。
普段調子に乗れない立場の味山を止める人間はいない。分かりやすくテンションを上げながら味山は、燈り煌く夜の探索者街を歩きはじめた。
……
…
店の薄暗い照明、天井は高く、り口にはアロマが焚かれている酒場だった。
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るとすぐに店員が飛んできて、個室に案される。
言われたとおりについて行き、ドアを開く。ごゆっくり、という店員の言葉を背中でけると、一足先に席についていた人が振り返り、笑いかけてきた。
「あ、味山さんに、グレンさん! お元気でしたか?」
元気な聲、今日は結んでいない染められた金髪はよく手れされ、照明の薄いを優しくけ止める。清潔な服裝にを包んだ朝日が、にかりと笑った。
朝日、あめりやのナンバー3。確かグレンがお気にりの活発系だ。
「朝日ちゃん! 久しぶりっす! いやーなんやかんやありつつ元気っすよ」
グレンが聲を張って返事をする。にっこにこ、それはもういい笑顔だった。
「もー、グレンさん良かったよ、マジで。ぜーんぜんお店に遊びに來てくれないんだもん。怪我はもう治ったの?」
「ふ、朝日ちゃんが飲みにってくれたその日に治したっすよ、店に遊びに行かれなかったのはまじごめん」
「ぶー、まあでも今日來てくれたからいーんだ! ほらほら、座って座って!」
朝日とグレンが早速いちゃつきながら言葉をやりとりする。なんとなく味山は話すきっかけを失いグレンの後ろで突っ立っていた。
「あら、有名人みちゃった。お久しぶり、味山さん、グレンさん」
アンニュイな人、朝霧が小さく手を振る。この前のあめりやのメンバーだ。
「あ、朝霧さん。ご無沙汰です。うわ、鮫島、お前もうちゃっかりと……」
味山は頭を下げつつ、これまたスーツ姿のつい先程まで一緒に泥まみれになって働いていた仕事仲間を見つけた。
「ああ? なんだぁ? 有名人。俺のラフな格好になんか文句あんのかあ?」
「いや、もういい。ふ、持てる者は全て許そう」
まあいい。こいつらの工夫程度寛大な心で許してやろう。味山は首を振りため息をついた。
「げっ、なんかお前変なスイッチってんなあ」
「朝日お姉さん、この人たちが噂のアレフチームの?」
「朝霧お姉さん、私達にも紹介してです」
聞き覚えのない聲、機の先端、いわゆるお誕生日席の位置から聞こえた。
「そーだよ、雙子ちゃん! グレンさんに、味山さん! 朝日や雨霧さんのお得意サマなのでーす」
「ええ、そうよ、朝顔、夕顔。あなた達待の味山只人さんよ」
雙子、と呼ばれた2人が形の良い目を丸くしてこちらを味山を見つめる。
「おお、本」
「本です。ニホン刀持ってものすごいドヤ顔してた映像と同じです」
「こーら、味山さんに失禮な事言わないの」
機の反対側にいたアンニュイな人、鮫島がお気にりの朝霧が優しい聲で雙子を嗜めた。
「いーんだよお、朝霧ちゃん。味山なんざいじられてなんぼだぁ。なあ、味山」
鮫島はもうちゃっかりと朝霧の隣をゲットしていた。こいつはほんとこういう所あるわ、ほんと。
味山は鮫島に言い返す。
「ああ、人に弄ばれるのは問題ねえ。だが鮫島に言われると普通にむかつく」
「けっ、なんだよお、冷えなぁ。今日だって一瞬に仲良く探索終えた仲じゃねえかよ」
「あら、鮫島さん。今日お仕事だったんだ。來てくれてありがとう、おつかれでしょ?」
「朝霧ちゃんの顔見たら疲れも取れるさぁ。つーかグレンも味山も、早く座れよ。乾杯できねえだろうが」
味山との軽口のやりとりすら、鮫島は朝霧との會話のタネにしていた。
「グレンさーん、朝日の隣、空いてますよー!」
「座る座るー、座るっす!」
グレンがり込むように朝日のとなりに座る。
あれ、俺が座る所って。味山が瞬時に埋まった向かい合わせの席をぼんやり眺めているとーー
「味山さん、味山さん」
「私達の間がたまたま空いてます、どうぞこちらへ」
「あ、ど、どうも」
まさかのお誕生日席、雙子達がいそいそと椅子の隙間を開けて、そこにもう一つ椅子を置く。
聲からいとじていたが、2人が立っている姿を見ると普通に人している。上品な黒い膝丈のワンピース姿から的なラインが覗く。
やべ、普通に人だ。
てか、なんか挾まれてるせいかすごい甘い匂いがする。
味山は鼻の下がびそうになるのを我慢する。
「ふふ、ごめんね、味山さん。その子たち、あなたのファンみたいなの。今日の飲み會にあなたが來るって言ったら、ついて來ちゃって」
「え、ファン? 俺の?」
「そうです」
「そうなのです」
無表に見えるの子2人、おかっぱの髪型が異様に似合う。右を見ても左を見ても同じ顔のがじっと、味山を見つめている。
黒いワンピースの刺繍まで全て同じ。違うのは髪留めの位置ぐらいだろうか。
「朝顔と夕顔はグレンさん達と初対面だよね! ほら、自己紹介、自己紹介!」
「わかりました、朝日お姉さん」
「わかりましたです、朝日お姉さん」
雙子が互に返事をする。微妙に表が読みにくいが整った目鼻立ちにはそんなことなんの問題もなかった。
「みなさま、はじめまして。私は夕顔」
「みなみなさま、はじめまして、私は朝顔です」
「おお、すげえなあ。ほんとそっくりだぁ。雙子って初めて見たかもなあ。同じ顔のが並ぶと壯観だなあ」
「ほへー、2人とも可いっすね。お人形さんみたいっす」
「……ふうん、鮫島さん。朝顔や夕顔みたいないじの子がタイプなんだ」
「……あはは。グレンさん、黒髪の方が好きなじです?」
呑気な想を呟いた男2人に、それぞれの隣に座るが笑顔で話しかける。
味山はその笑顔の目が笑っていない事に気づき、そっと目を逸らした。
強く生きろ、鮫島、グレン。その笑い方をするはきっと一筋縄ではいかない。
「今日はわがままを言ってお姉さん達の飲み會に參加させて頂きました」
「言いました。朝日お姉さん、朝霧お姉さん。それに雨霧姉さんのお話を聞いてからどうしてもみなさまにお會いしとうございました」
ぺこり、ぺこり。と2人が頭を下げる。
「今日はみなさまの々なお話を聞いてたのしい時間を過ごしたいです」
「たいです。ちなみに朝顔と夕顔のタイプは味山さんのような普通の人だけど、何かを隠し持っているような大人の男がタイプです」
棒読みに近い言葉で雙子の1人が話す。
「朝顔。早い、そういうの言うのはもっとお酒が進んだ後でしょ」
「そうでした。ごめんなさい、夕顔。今のはなしです、どうぞよろしく」
「お、おおー。個的」
「漫才みたいで可いっすね」
「味山が趣味なのだけは、あまりオススメできねえがなあ」
男陣が呑気に、パチパチと拍手する。似た顔の朝顔と夕顔がむふーとし誇らしそうにしながら味山を挾むように席に座り直す。
見計ったように店員が個室をノックして、注文を聞きに來た。
雙子も含めみんな生ビールですぐに最初の一杯がやってくる。
「それじゃあ、みんな今日はたくさん楽しみましょーっす! カンパーイ!」
「「「「「「かんぱーい」」」」」
からんと、上品に優しくジョッキを鳴り合わせて皆がビールを傾ける。
男達がを鳴らしながら呷る中、朝霧と朝日は一口傾けてゆっくり嚥下していく。
雙子がちびり、ちびりとビールを舐める。しかしその速度は誰よりも早くすでにジョッキは半分空いていた。
「ふふ、変わった子達だけど良い子達だから、仲良くしてあげてね、味山さん。ああ、そうだ、雨ちゃんも後から來るわ。先に始めてくれって」
ビールを置きながら、朝霧が笑う。
「おお、雨霧さんも來るのかぁ? すげえ豪華な飲み會だなぁ。ほんとに金かかんねえのか?」
鮫島がおどけながら、朝霧をからかう。軽いコミュニケーションとして放ったつもりの言葉に朝霧がふわり、笑い返した。
「やだ、鮫島さんったら。私達そんなにお金にがめつくないわよ。おサイフさんと、興味深い男の區別はつけてるわ」
「ひえ」
「ひえ」
「ひえ」
言葉のキャッチボールを楽しもうと、軽くボールを投げたらバズーカが返ってきた、そんな覚だった。
あまりにも綺麗な顔と、言葉の端からじる闇に男陣のきが止まる。
「あはは! 朝霧お姉さんが言ったら冗談に聞こえなーい。大丈夫ですよう、グレンさん。朝日はそんなおサイフさんなんていませんからねー」
冗談? そっか、冗談か。良かった、男をおサイフさんなんて呼ぶなんていなかったーー
「ふふ、この前、一見さんの某國高に一晩で200萬使わせた子は面の皮が厚いわね。指一本れさせなかったくせに」
「あはは、その日は朝霧姉さんは600萬くらいでしたよね。魔法みたいだったなー。朝霧姉さんが笑うだけでおじさん達どんどんお金使っていくんだもの」
「すげえ」
「ぱねえ」
陣の的な金額のエグい話に鮫島とグレンは目を點にして小學生並みの語彙でつぶやく。
朝日と朝霧、異なるタイプの人がふふふ、と笑いあいながら言葉をわすその景。
は怖い、改めて味山はその考えを確認した。
「おお、姉さん達が本気で笑ってる」
「むおお、珍しいです。笑ってる」
「えーと、2人とも、どう言う事?」
「あわ、味山さんに話しかけられちゃいました。朝顔」
「おわ、ほんとですね、夕顔。きちんと返事しませんと」
「不思議ちゃんが2人いるとほんとに不思議な気持ちになるな。えーと、君が夕顔で、君が朝顔ね」
味山は互に話す雙子を指差し、確認する。見た目ではほんとに判斷ができない。
「名前を覚えられちゃいました」
「ちゃいましたね」
「ああ、覚えた。で、夕顔さん、さっきの話続けてくれよ」
「は、はい。あの、私達のお仕事は笑顔がとても多い仕事です。でも、なかなかここで働いているお姉さんのほんとの笑顔を見たことはないです」
「私達の笑顔は売りですから、それ用に作られた笑顔とても多いです。朝日お姉さんも朝霧お姉さんもとても良い人ですけど、ほんとのほんとに笑うのは珍しいです。なので、驚きました」
雙子が目を輝かせ2人のを見つめる。
「だから、グレンさんも鮫島さんも、お姉さん達にとても信頼されてるのです」
「ですです。2人がお客様とプライベートで飲むなんて今まで聞いたこともありませんでしたし」
「ほーん、あの2人もなかなかやるなあ、おい。あ、夕顔さん、朝顔さん。飲み次何にする?」
味山はいつのまにか消えている雙子のジョッキに気付く。機に置かれていた飲み放題のメニューを持ち上げ2人に見えやすいようにの前で掲げた。
「気を配られてしまいました、朝顔」
「ましたね、夕顔。私達は同じ生ビールでお願いします」
「あいよー、俺何にしようかな…… あ、鮫島、グレン、そっちはまだ飲み大丈夫か?」
「ダイジョウブ」
「ダイジョウブダァ」
ニコニコと笑顔の応酬を続ける朝霧と朝日、その隣にいる男2人はまだショックから立ち直っていないようだ。
ふ、の怖さに慣れていない奴らはこれだから。味山は妙な優越のもと新しい飲みを注文する。
呼び鈴を押すとすぐに想の良い店員が個室に飛んでくる。
良い店だ、BGMも穏やかで控えめ。突き出しの海老の素揚げも気付けば無くなっている。
味山が目を瞑り、覚にを任せる。酒に弱いはすでに火照り始め、なんとなく良い気分になってくる。
し不思議ちゃんっているが、蕓能人クラスに顔が良いの子に挾まれ、味い酒と飯。うん、人生とはかくあるべしだ。
味山が結構いいじになりつつある、そこに
「朝顔、味山さんが目を瞑ってしまいました」
「夕顔が恥ずかしがって話しかけないから退屈されてしまったのですよ」
「朝顔こそ、もじもじして何も話してないじゃないですか」
味山を挾んで雙子のき通る聲がぶつかり合う。
「おっと、ごめんなさい。あまりにも居心地良くて…… えっと、朝顔さんと夕顔さんはあめりやでいつから働いてんですか?」
「わ! 話しかけてくれました! えっと、1年前からです、ね、夕顔」
「1年前、朝日お姉さんが働き初めての半年後だから1年前です。そうだよ、朝顔」
「へえ、結構長いんですね。あ、と言うことは2人もあのゲームあるんですか? あの無茶振り鬼難易度のかぐや姫ゲーム」
味山は以前あめりやに遊びに行った時のことを思い出す。
「あります!」
「あります、あります! 私達のかぐや姫ゲーム、今まで誰もクリアした事ありません」
無表を続けていた雙子の表に喜が燈る。
「へえ、今度遊びに行った時やってみたいな。こう見えて、俺、それはそれはとても難しいかぐや姫ゲームをーー」
「「知っています」」
味山の言葉に食い気味に雙子が反応する。短い一言だが、同時に放たれたその圧に味山はびくりとを跳ねさせた。
「お、おお、そうでしたか、いやー、あのゲーム容、地味にキツくて」
「そうです、雨霧お姉さんのかぐや姫ゲームは、何もない人には絶対クリア出來ないものです」
「そうです、雨霧お姉さんのは私達と同じ誰にもクリアさせない為のゲーム、でした」
雙子の良く似た黒目がちの瞳が左右から味山を寫す。
その瞳からじるのは興味、観察、そして諦観。ああ、あれだ、いつものあれ。特別な人間が、凡人を見るアレだ。
その目が味山のちっぽけなプライドを刺激する。
「……でも俺はクリアしました。夕顔さん、朝顔さんのゲームも機會があれば挑戦してみせますよ」
だから、そんな言葉を言った。
「く、ふふ。聞いた、朝顔」
「ふ、くく。聞いたよ、夕顔」
雙子がニヤリと妖しい笑みを浮かべる、それはとても綺麗で、整いすぎた笑い。
「あ、なに! 朝顔、夕顔、もうやるの?」
「ふふ、味山さんに遊んでもらいなさいな。きちんとお禮言うのよ。で、朝日まだ話終わってないんだけど」
「えー、なんですか? 朝霧お姉さんも鮫島さんの前だからって、しムキになってませんか?」
「ふふ、グレンさんの前だと勇敢になるのね、朝ちゃん、いえ、あさひ」
「朝霧さん、かっこええ……」
「朝日ちゃん、勇ましいっす……」
アメリカ街、高級酒場"ビカム・ア"の貸切個室には混沌が訪れていた。
味山が運ばれてきていたコークハイを呷る。コーラの最強な味に混じるわずかな苦味がキツケになった。
「ええ、言いましたよ。言わせてもらいましょう。挑戦させてくださいよ、夕顔さん、朝顔さん」
「「呼び捨てでいーよです。味山さん」」
雙子が同時に、聲を紡ぐ。ハーモニーしたその聲は心地よい。
「「どちらが夕顔で」」
「どちらが朝顔か」」
「「あなたにわかるかな?」」
「あ、もうルールの説明大丈夫です。よっしゃ! やってやるぞお! 景品はなんだあ!?」
「「ふふ、味山さんのお願いを聞いてあげる」」
「「なんでもね」」
妖しく笑う雙子の顔、味山は互に2人を覗き込み、笑った。
ああ! こんなに可いの子たちとイチャコラしながらなんか花魁遊びみたいなことが出來るなんて!
たのしい! 探索者ライフ!
酒に酔った頭は単純な喜びにはしゃぐ。だから、雙子の口元がにやりと三日月のように歪むのに気づかない。
「「でももし、外れたら罰ゲームですからね、降りるなら今ですよ?」」
「ははは! 構わん、構わん!! どんとこい! 男に二言はねえ!」
かなりアホになっている味山はテンション高く笑う。
「「味山さんには本気でゲームしてしいから罰ゲームはこうしますね」」
笑っている味山は、ひんやり背筋に冷たいものを今更じる。
あれ、おれなんか調子乗りすぎてね? ふと、正気に戻るももう、遅い。
「「じゃあ、罰ゲームはアレタ・アシュフィールドに今日の飲み會をバラしちゃうってことで、けってーい♪」」
それはそれは綺麗な笑顔で、悪魔のように雙子が笑った。
「そういうの、やめようよ」
一瞬でシラフに戻った味山が、ぼそり。
でも、もう全てが遅かった。
固まる味山、席から立ち上がり部屋の前面に並ぶ雙子。
きざまの一言を味山は聞き取ることが出來なかった。
「「那麼,向我們顯示出你的力。味道山不過人♪♪」」
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