《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》64話 合コンに行こう!(死闘)

「タイム、ちょっとタイム。朝顔さんに、夕顔さん。それは、その罰ゲームはちょっと勘弁してください、いやまじで」

「えー、でも男に二言はないって」

「えー、味山さんが言ったのに」

い、じゃない、斷固として抗議しなければ。味山がなんとか雙子を説得しようとしてーー

「そうだぞお、味山ぁ。男らしくねえ」

「そうだーそうだー、タダ! アレフチームにバックギアはないっすよー!」

ぎゃっはっはっー、と酒にいいじに酔い始めている酔いどれのクソ野郎たちの呑気なヤジが飛んできた。

ぷちん。

味山の最近切れやすくなった堪忍袋の緒が、もう切れた。

「朝顔さん、夕顔さん。これは場を盛り上げる娯楽なんですよね」

「その通りです、味山さん」

「です、です、味山さん」

味山の靜かな言葉に、雙子が互に頷く。

「なら、そこの後ろではしゃいでる2人にもやってもらうのはどうでしょうか? もちろん罰ゲームはれましょう! だけど、この高難易度の遊びを俺だけが楽しむのは! やはり! もったいない! そう思いませんか? 朝日さんに、朝霧さん!」

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「へ?」

「へ?」

男どもの酒を傾ける手が固まる。その隙に味山は隣の人達に言葉を向けた。

「お姉様がた、そこの2人は探索者です。窮地に追い詰められてこそその本來を見ることが出來ます。気になりませんか?」

「鮫島さんの?」

「グレンさんの? 本來?」

その貌だけで、一晩でうん百萬稼ぐ人達がを乗り出した。

フィッーーシュ!!

「朝霧さん、本當に追い詰められた時に鮫島が見せる、ギザ歯の煌めきを」

唸れ、俺の舌。

「朝日さんも、追い詰められたグレンがどんな顔をするのか見たくないですか?」

煌めけ、俺の話

味山がなるべくゆっくり、しかしはっきりと聲を向ける。

「お、おい、味山ぁ、お前何言って……」

「タ、タダ、そ、その辺で……」

「お前らは黙ってろ。俺は今この2人と話したんだ」

事態を把握しつつある、男2人が辿々しく今更、なんとなく甘えたような口ぶりで話しかけてくる。

おそらく空気が変わることを察したのだろう。

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だが、もう遅い。

「へえ、でもそれは確かに。味山さんの言う通りかも。鮫島さん、いつも余裕あるところしか見せてくれないから、ねえ?」

「あはは、私も。グレンさんのかっこいい所みてみたいかなーって」

「え」

「え」

釣れた。完全に。

TIPSを聞くまでもない。ここが勝利への分水嶺だ。

「はい決まり! 朝顔さん、夕顔さん! 俺達はキミ達に挑戦する! アレフチーム味山只人とグレン・ウォーカー、臨時チームメイトに鮫島竜樹! 名付けて特攻野郎Aチーム!! 以上の3人でかぐや姫ゲームを挑むぜ!」

「いや、いやいやいや、待て待て待て! 味山ぁ!」

「挑むぜ! じゃねえっすよ!タダ!」

「やかましい! うっおとしいぞ!朝霧さんと朝日さんを失させる気か、お前らが煽ったせいだ、恨むなら自分の軽率な言葉をうらむことだなあ!」

味山には私しかなかった。自分だけがヤバイ目に合う。それだけは我慢ならなかった。

「ぐ、おお。なんつー小だぁ、忘れてたぜ、こいつこういう奴だったあ」

「さ、最近妙にかっこいいから忘れてたっす。タダ、基本的にはダセエ奴だった……」

なんとでもいえ、味山はいている男陣を見下ろし笑う。

「あは、たのしいです。たのしいね、朝顔。みんな遊んでくれるって」

「ですね、夕顔。でも鮫島さんとグレンさんの罰ゲームはどうしよっか?」

「雙子のお嬢様がた、私に提案がございます。ここは平等に、鮫島には姪と姉への今回の飲み會の報告と普段の放ぶりの報告を、グレン・ウォーカーは、ソフィ・M・クラークへこの飲み會のことを報告するのが、上策かと」

しゅたっと、片膝をつき味山が雙子へと申する。

陣からのウケが良かったらしい。みんなクスクス笑ってくれた。

「てめえ!! こら、味山ぁ!? やっていいことと悪いことあるだろお?!」

「鬼っすか!? タダ、お前に赤いは流れてるんすか!!?」

「ぶははは、ここまでくりゃもう俺達は運命共同、滅ぶ時は一緒だ、友よ」

味山が鮫島とグレンの急所を簡単にチクる。クスクス笑っている雙子も頷き、了承してくれたらしい。

それでも鮫島とグレンが味山に噛みつく、チッ、流石探索者、しぬのがわかっていても中々に生き汚い。

味山がどうやってこいつらを黙らせようか、し考えていたところに。

「……そうよね、鮫島さん。鮫島さんにとって私はやっぱり、ご家族には隠したいよね」

「へ、朝霧、ちゃんン?」

「……あは、わかってました。私、わかってたんです。グレンさん、私に笑ってくれてるときもあなたの中にはもう一番の人がいますもんね…… 私は、遊びですもんね」

「え、あ、朝日ちゃ、ん?」

よよよ、と顔を伏せる2人のに、男2人がわたわたと焦り始める。

しかし味山には見えていた。顔を伏せる朝霧が、まなじりに涙を浮かべる朝日が一瞬、互いに目配せをしていたところを。

は怖い。

だが、今はその怖さ、ナイスです。味山は事を都合の良いように考えた。

「あ、あの、やりますぅ…… かぐや姫ゲーム參加させてくださぁい」

「っす…… グレン・ウォーカー、志願……します」

いつの世も、の涙よりも強い武はなかった。

「ふふ、頑張って、鮫島さん」

「あは! グレンさーん、ファイトー!」

ケロリと笑顔に戻った彼たちが聲を上げる。うん、顔がいいからね、しょうがないね。

「……味山ぁ、ってコエエなぁ」

「……タダ、お前、いつもこんな……」

「安心しろ、ツラの良いの子に弄ばれ続けるとな、そのうち慣れて楽しくなってくるから大丈夫だ。よし、友達よ、理不盡に立ち向かうぞ」

「……ああ、もうなんでもいい」

「センセにバレなきゃそれでいいっす」

「うふふ、準備は出來たようですね」

「ならなら、始めてもいーですね」

「しかたねえ、こうなったらもうしかたねえ…… 俺から行く! 速攻で勝負を決めてやらぁ」

鮫島がジャケットをぎ去り、ビシッとシチサンに分けられた前髪を整える。

「タツキ、その自信! 何か策があるんすね!」

「フッ、まあ見てろよぉ、グレン。結局大切なのは観察と考察だぁ。雙子ちゃん、いつでもいいぜえ」

「ふふ、頑張ってね、鮫島さん」

「おうよぉ、見ててくれよなあ、朝霧ちゃん。それとマジでさッキのは演技だよねえ? ね?」

鮫島がふと、すがるように呟く。

「ふふ、さてどうかしら。ほら、もう始まる見たいよ」

その呟きを朝霧は文字通り、霧に巻いた。

「始めるよ、朝顔」

「はじまるよ、夕顔」

雙子がとてとてと個室から出る。出たかと思えばがちゃりと2人同時に部屋にってきた。

見れば見るほど、似ている。髪型から顔、つき、服裝、長。外見から判別は味山にはできない。

髪留めだって、まったく同じデザイン、同じ向きでつけられてある。鮫島のやついったいどうやってーー

「さあ、鮫島さん」

「さあさあ、鮫島さん」

「どっちが朝顔で」

「どっちが夕顔でしょーか?」

同じ方向に首を傾げながら言葉を互に繰り出す。雙子、端的に言ってかわいかった。

「え、普通にかわいいぃ。っと、じゃない。ふ、殘念だったなあ、雙子ちゃん。この勝負、俺の勝ちだあ」

鮫島がにやり、ギザ歯をきらめかせ笑う。迷いなく指を指した。

「左が朝顔ちゃん、右が夕顔ちゃんだあ!」

「くす、くすくす。どうして」

「どうしてそう思ったの?」

「ケッ、簡単な質問だなあ、ワトソン君。髪留めだぁ。その高そうな髪留め。一見まったく同じモノに見えるが、俺の目はごまかされねえ…… それはフェルガモの一點モノ。サルバトーレだぁ。そいつは一年ごとにマイナーチェンジを繰り返してる。自己紹介のときに朝顔ちゃんは、2025年モデルを、夕顔ちゃんは2026年モデルをつけてた」

つらつらと語る鮫島。

すごい、味山はほんのし早口の鮫島に気味の悪さをじつつもその察力と知識に驚く。

アイツなんで、髪留めのブランドとか知ってるんだ、とかの疑問も湧いているがあまり味山は鮫島には興味がなかった。

「わあ、すごい、すごい! 鮫島さん! ね、朝顔!」

「です、です! 夕顔! 髪留めの違いに気付いた人は男では鮫島さんが初めてです!」

気味に雙子が顔を向かい合わせはしゃぐ。

すげえ、鮫島。もうクリアしてーー

味山が心した瞬間、違和に気付いた。ん? 今呼びかけがーー

「フッ、どうやら、俺の勝ちみたーー」

「「ブッブー」」

雙子がはしゃぎながら口を尖らす。ワンピースを押し上げるの前に白く華奢な腕がバツの形に差されていた。

「え」

「「殘念でしたー、鮫島さん」」

「私が夕顔で」

「私が朝顔」

互いに互いを指差す雙子、確かに鮫島の指摘とは逆だ。

「な、あ、ありえねえ。俺の見立てが間違うなんて…… 一、何が…… あ……」

「ふふ、お気づきみたい。朝顔」

「そうだね、夕顔」

「「ジャジャジャーン! 髪留めをそれぞれれ替えていたのでした」」

「そんなんありかよおおおおお!?」

崩れ落ちる鮫島、男の慟哭が個室の壁に吸い込まれた。

「あらあら、鮫島さん。殘念だったわね。でも凄かったわ。あんなこと誰も知らないわよ」

「あ、朝霧ちゃーー」

「それじゃ、はい。罰ゲームね。お姉さんと姪っ子さんに、私のこと紹介してね」

「ひえ」

差しばされた手をつかんだまま、鮫島が固まる。朝霧の笑顔はとても綺麗だった。

「あ、あじやまぁ……」

あの自信はどこにいったのか、汚い泣き顔ギリギリの表で鮫島がすがってきた。

「ご、ごほん。朝顔さん、夕顔さん。罰ゲームなんだけど、こっちは男連合だ。三本勝負でもし全員負けたら、その時に罰ゲーム執行ってことじゃダメですか?」

「えー、どうします? 朝顔」

「しますです? 夕顔」

お互いに、ねー、とばかりに首を傾げる雙子。一々所作が可いのが手に負えない。

「かわりに、もし連チャンで負ければ、そうですね。ここにいる3人の男が、陣のお願いゴトを聞くというのも追加、でどうでしょう?」

「は?」

「ちょ、おま」

味山の提案に男が目を丸くした。

「へえ、いいですね、賛よ、味山さん」

「お願いゴト…… 朝日も賛でーす」

逆に陣は、目を細め、薄く笑う。

「「いいのですか? 味山さん、本當に?」」

雙子も、目を輝かせる。爛々と広がる形の良い瞳に、味山はうなずいた。

「ええ、花京ーー じゃない。グレンと鮫島の魂を賭けましょう」

「「グッド」」

味山の言葉に雙子がハモる。

「おい、グレン。あの男、どさくさに俺たちの魂まで賭けたぞぉ」

「あいつ絶対、院してる仲間の魂も勝手に賭けるタイプの人間っすよ」

わーわーと、鮫島とグレンが文句を言い始める。陣の方でなく味山にしか言わないとこ辺りに、2人の人間がよく現れていた。

しかし、味山にはまだ策があった。

「た、だ、し!! そこの後ろでお酒を舐めてらっしゃるお姉様も同じだ! 俺たち男陣が勝てば! 朝顔さんと、夕顔さんと同じように、俺たちの倫理にそってセクハラにならない程度のお願いを聞いてもらう! 勝負は平等だ! 公平、それこそが男の世界!」

聲高く味山が宣言する。これこそが味山の真の狙い。

もういっそ、全員を巻き込んでしまうことで萬が一負けた時になんとか罰ゲームを誤魔化せないかという、小全開の考えがそこにはあった。

「へえ…… ふふ、いいですよ。鮫島さんだったらしのお願いも聞いてあげる」

朝霧の言葉に、鮫島が耳をぴくりとかして、味山への文句を止める。

「あはー…… 朝日もそれで構いません。グレンさんにどんなお願いされちゃうんだろーな」

朝日がぺろりと小さなを舐める。グレンがすっと、黙って味山に向けてサムズアップした。

陣たちの意見を聞く必要はもうなかった。ちょろすぎるこいつら。

全員が一致したゲームのルール、味山が、それぞれ朝顔と夕顔と締約の握手をする。

ひんやり、らかい。

もそっくりだ。でも駄目か。

味山は判斷の基準をまた1つ失った。

「「じゃー、次は、どなたが私たちと遊んでくれますか?」」

雙子がにこり、笑う。

夜はまだまだ終わらない。

味山の飲みかけのコークハイ、汗を掻いてるとばかりに濡れているジョッキの中で、からん。

氷が溶け始めていた。

読んで頂きありがとうございます!

宜しければ是非ブクマして続きをご覧ください!

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