《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ライアン・フロディの日記 その2
薄く白んでくる空、國の用意した宿舎の窓から、ゆっくりと訪れる朝を眺めながらこの日記を書いている。
おっと、勘違いしないでくれ、優雅な朝の自慢じゃない。
やあ、読者のみんな。ライアン・フロディだ。
今から寢る所だ。空が明るくなって、日の出を見た後に泥のように眠ってやるつもりだ。
昨日か、いや、もう時間的には今日だったか?
何か懐かしい夢の中、お気にりのナイトガウンにを包まれてすやすや眠っていた僕の眠りをけたたましいアラートが臺無しにした。
なんのアラートだって? 僕の仕事はアレタ・アシュフィールドの調査、そして僕の専門は分子神経學、要は脳みそのスペシャリストだ。
話が長い? オーケー、簡潔に。
アレタ・アシュフィールドの脳みそに大きなストレスが発生した。
同時に、大西洋のど真ん中に沈められている號級"ストーム・ルーラー"のエネルギー反応が増大した。
ふーむ、興味深い。アレタ・アシュフィールドのに埋めているバイタルチップのコルチゾール反応の記録タイムとストーム・ルーラーの異常は同期している。
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これはつまり、アレタ・アシュフィールドとストーム・ルーラーを繋げている何か(研究チームの中でこの繋がりを"パス"と呼ぶか"ライン"と呼ぶかの議が広がっている)は、彼の脳で起きる電気信號のきをストーム・ルーーラーに送っている可能が高い。
ああ、要はあれだ。脳の電気信號のき、つまりはという奴だ。
、これはなかなかに馬鹿にしたものじゃない。その存在を確実、はっきりと証明することはできないが誰しもに、たしかに存在する人間を人間たらしめるものだ。
だが、うーむ。分からないな。人間のをがキャッチしているということか? アレタ・アシュフィールドの起こす超常現象のエネルギーの源泉は明らかにあのストーム・ルーラーから供給されているものだ。
つまり今までの両者の関係は、あくまでストーム・ルーラーが主、アレタ・アシュフィールドは的にしか影響をけていなかったはずだが……
今回は違う。その逆だ。アレタ、彼がストーム・ルーラーに影響を及ぼした。
これは糸口だ。
の謎、いやバベルの大の謎という巨大なる深淵の真実にたどり著く為の糸口になる、そんな予がする。
そうか、今よく考えてもみれば通常の所持者は、あくまで所持者が主導権を握っている…… ああくそ! 僕は馬鹿だ! 事のスケールの大きさに目が眩んでいた!
アレタ・アシュフィールドとストーム・ルーラーの関係は変わっていない! あくまで所持者はアレタ本人のまま。力の出力が変わっただけか!
だが、待てよ、そうすると、ほかに説明がつかないことが出てくる。ふ、ふふ、面白い。謎だ、本當に訳が分からない。
とりあえず、今日の夜の定期カウンセリングではアレタ・アシュフィールドに何があったのかをヒアリングして、関連を調べてみよう。だが、あれほどのコルチゾール反応も一瞬だけ。
さすがはアレタ・アシュフィールド。自分のを極めて強いレベルでコントロールしているというわけか。だが、彼があれほどまでに取りすのはどういうわけだ?
確かスケジュール管理では、指定探索者のソフィ・M・クラークと、スカイ・ルーンとの會食だったはずだが……
おっと、いけないな。つい仕事の事ばかり書いてしまう。完璧に職業病だ。
ふーむ、それ以外のことなると、そうだ。最近聞いた妙な噂話でも書き留めておくか。ここバベル島は殘念ながら、割と死に近い場所だ。
貧者が一夜で富豪になれる可能をめると同時に、功者が文字通り、土塊の料になることも充分にあり得る土地だ。
だからオカルトまがいの噂話も多い、曰く、どこかの管轄の街に奇妙な力を持つガラクタを売る店がある。そこの店の商品は、世界の裏側で行われていたみどろの戦いの戦利品だとか、例えば行方不明になって死亡判定を食らったはずの探索者がひょっこり路地裏を歩いているのを見かけたとか。
うーむ、どれも眉唾だ。
ただそんな眉唾の噂話の中でも1つ、個人的に興味深い話もある。
曰く、必要の本棚、そんな噂話だ。
中央區、探索者組合本部の存在するこの島の中心にある"公文書館"。
世界中から、、言語問わずに報が集められているその公文書館のどこかに、"必要の本棚"と呼ばれるものがある、と。
なんでも、その本棚は毎日毎日場所を変えてき続ける。その本棚を探すと、探した人間にとって、本當に必要な本が現れるという話だ。
必要の本棚を見つける方法は1つ。違和らしい。に分類されている公文書館の中では起こり得ない出來事を見つけるとのことだ。
例えば資料コーナーの中にポツンと小説が混じっていたり、文學コーナーの中に図鑑が混じっていたり。
こんなことがあると、それは必要の本棚に出會えたということになるらしい。
その違和の中で見つけた本は、當人にとって全く興味のない容だとしても不思議と手に取ってしまうんだとか。
ふむ、興味深い。
ん? 科學の輩が何を非科學的なことをだって?
不思議なことに、科學を突き詰めて研究しているとたまにどう考えても説明出來ない現象に出くわすことがあるんだ。
そんな時に我々は、決して口にこそ出さないにしろこんなことを思う。
この世には解明されないことが確かに存在している。
というか、バベルの大なんてものが実在している時點でこの世にあり得ないものなんて存在しないと私は思うけどね。
ふむ、つらつらと駄文を書き連ねていると、本格的に眠くなってきた。
そろそろ眠るとしよう。早起きの海鳥たちの呑気な聲をBGMにして。
読んでくれてありがとう。
ライアン・フロディ、オーバー。
眠る前に甘いミルク、ニホンだと練かな。それをお湯に溶かして飲むと、よく眠れるよ。
読んで頂きありがとうございます!
宜しければ是非ブクマして続きをご覧下さい!
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