《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ソフィ・ダイアリー

今日は、楽しかった。久しぶりに會ったあのいけ好かないも元気そうでよかった。

結局あのあと、アレタはあの2人組の男から話を全て聞き出して、それはもう愉快なじに仕上がってしまった。

酔いもあるのか、アジヤマに対する愚癡を続けて普段の凜とした彼からは想像も出來ない姿をワタシに見せてくれた。

アジヤマ・タダヒト。ワタシは未だに彼に対する評価を決めかねている。

つまり、信頼に値する人間か、否か。

と言っても、ワタシは実のところかなり彼に絆されている。アレタが彼を異常なまでに気にっているのを除いては、彼という人間はワタシにとっても割と、好ましい奴だ。

人間の価値は、窮地にこそ、その真価を発揮する。ワタシのアレタがピンチの中で1番星のように輝くかの如く。

その點で言えば、アジヤマは悪くない。ソフィポイント的にも、あの時、撤退戦においてアジヤマはいのいちに殿軍を申し出たのは高得點だ。

ああ、そうだ。ワタシは窮地の中、恐怖に立ち向かうことの出來る人間が嫌いじゃない。ああいう人の姿を見るたびに、この世界も捨てたものじゃないと認識させてくれる。

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だが、ワタシには懸念がある。

アジヤマの隠している謎についてだ。

彼はときに恐ろしいほど簡単に真実にたどり著く。

共にした探索において、ワタシより早く怪種の特や、正を言い當てたり、推測したり。

はっきりと問い詰めたことはない。あくまで彼は指定探索者、アレタ・アシュフィールドの補佐。つまりは、アレタの所有だ。ワタシが過分に口を出すのは、アレタを信用していないことになりかねない。

アジヤマ、君が自分から言い出してくれれば楽なのだが、きっとキミはそれをしない。

特異な力をひけらかすのは愚策だと考える程度にキミはきっと、利口で、臆病なのだろう。

臆病。

そうだ、アジヤマのある種恐ろしい點はここにある。

彼の人格は、至って単純。

実利的、自己中心、慎重で臆病。

至って普通の大凡なる人間のものだ。それだけならいい。彼の特異なところ、いいや、はっきり言おう。

恐ろしいところは、同じく単純。

彼は窮地において、それらを簡単に捨て去る。

平時では、実利、自己中心、臆病な彼、そのはずなのに実際はどうだ?

窮地に陥った途端にそれを本當に忘れたかのように捨て去るのだ。

他利、自己犠牲、大膽にして蠻勇。

それが窮地においてのアジヤマタダヒトのあり方だ。

人はそんなにも簡単に、あり方を変えれるものだろうか。

その時、その環境、その狀況で変わる彼の人間の変容。それがワタシには恐ろしい。

ああ、こうして文章に書き出していてわかった。

アジヤマは、し、ラドンと似ているんだ。

あの天才にして、天災。ついぞ生きている間には奴の真意などまったくれることが出來なかった傑

目を瞑ると、ラドンの雑なドレッドヘアと発明や科學に興しで高笑いするあの姿が今でも思い浮かべる。

クソ親父。

ああ、あのクソ親父とアジヤマは似ているんだ。

目的の為に、簡単に自分を捨てることができるあのイかれた部分が。

あのクソ親父が生きていれば、きっとアジヤマを気にったことだろう。ふむ、なんだかんだアジヤマもあの親父と相が良さそうだ。

……アジヤマタダヒト、ワタシは願う。キミが同士であることを。

アレタ・アシュフィールドのためならば、世界にすら歯向かう大馬鹿であることを、祈る。

世界はよくない方向に向かっている。アレタ以外に深度Ⅲに到達する可能のあるものは未だ現れない。

頼む、頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む。どうか、どうか、アレタをこのままで。

ワタシは今が続けばそれでいい。それ以上は求めない。

アレタがいて、ワタシがいて、助手がいて。そこにはアジヤマも居ればそれなりに心強い。

あの、アレタが選んだ人間だ。だから、ワタシも信じたい。

ラドンの予言した通りに、世界は進んでいる。このままアレタの深度Ⅲへの移行が科學的に解明され、L計畫が完遂されたのち、世界は大きく変わるだろう。

……なぜだ? ラドン・M・クラーク。ワタシを孤児院から見出し、娘にした男、稀代の天才、世界の天災。あの男はなぜこれほどまでに急に、そして綿に、L計畫なんてものをした?

アレはどこまで行っても愉快犯、自分が楽しめないことに関わるような人間じゃない。

自分が死んだ後にまでる壯大な計畫。

その最終目的は"人類へのレベル概念の付與、及びそれによる種としての強化"

奴にしては迂遠すぎる計畫。

ラドンは何のために、L計畫をした? そしてあの委員會のカビ臭い連中がなぜあれほどまでにL計畫に固執している?

……ラドン、あの親父は何かに備えていた?

……ダメだ、酒の廻る頭ではまとまらない。朝が近い、そろそろ寢よう。

そういえば助手の奴、今日は帰らないつもりなのか?

まあ、そんな日があってもいいか。

……待てよ、アジヤマが夜遊びしていたということは、まさか……

ふむ、詰問が必要かも知れないな。ワタシの助手だ。しつけもワタシの仕事のだ。

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