《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》75話 汝、只の人なりて・貴崎凜の場合。
「……う、ん……」
暖かい布団の中、貴崎凜は目を覚ました。服裝はいつのまにか浴に変わっている。
もう10月、秋の空から降り注ぐ日が和室を明るく照らす。
「ああ、目が覚めたのね。良かった、調はどうかしら? 凜」
「雪代……さん……?」
ぱたり。近くの安楽椅子に座っていた雪代長音が本を閉じる。
"雪國"、そうかかれた表紙を雪代が腕をばしてちゃぶ臺へと置いた。
「ええ、あなたの友人、雪代長音よ。思ったより早いお目覚めね」
「……わたし、負けたんですね」
「ええ、完なきまでに。全國の貴崎の門下、そしてテレビの前の我が社の社員の前で、ね」
「……そうですか」
「どんな気分? 凜、教えてよ、興味があるわ。あのあなたが、はっきりと負けたとこなんて初めて見るから」
「……寢たいです、誰もいないところでずっと寢ていたい。そんな気分です」
「あら、ふふ。私、お邪魔しちゃったかしら?」
「いえ…… 巻き込んだのはわたしです。雪代さん、いえ、長音さん。ありがとうございました」
「……驚いた。凜、あなた、変わったわね」
「……クソガキ、はもう卒業しないと。あれ、でもわたし、怪我がない?」
「ごめんね、最後の一撃。彼、本気であなたに打ち込もうとしてたから、止めちゃった」
「止め……?」
貴崎は意識のある最後、唐突に響いた聲を思い出す。
ーーそこまで。
そうだ、あの凜、とした聲が響いた瞬間、それ以降の記憶がない。
「長音さん、まさか……」
「はい、ストップ。詮索も追及も疑問も怒りも何も聞かないし、答えないわ。わたしは友人が大怪我負うのを見てられなかっただけ。大丈夫、本當に何が起きたのを理解出來たのは、彼だけでしょうから」
雪代が部屋の隅、大布の上に置かれた二振りの合竹刀へ視線を運ぶ。
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その刀は捻れ、歪んでいた。まるで真夏の車に放置した飴細工のようにとろけていた。
「でもまさか、本當の本當に、貴崎凜が敗北するとは思わなかったわ。私、あなたとタイマンでガチバトルして勝てる気しないもの」
「……噓つき」
貴崎の呟きに、雪代はぱっと、扇子を広げて口元を隠す。
その整った口元に浮かぶものがなんなのか、それは雪代長音にしかわからない。
「1つ、凜。あなたに謝らないといけないことがあるの」
「なに?」
「あなた達の模擬戦。誰がどう見ても勝者は、味山只人。それは間違いないわ。でもね、本當に殘念、殘念なんだけれど」
「何が言いたいの? 長音さん」
「ふう、……我が社は探索者、味山只人とのスポンサー契約を結ぶことはないわ。これは私の決定。もう決めてしまったの」
雪代の言葉、部屋に唐突に広がる言葉が貴崎の耳に屆く。
「は?」
貴崎の瞳孔が開く。が開き、に力が満ちる。
靜かさの積もる和室に、はっきりと怒気が充満していく。
「何を、なにを言っているの? 雪代長音。それは話が違う」
「怒らないでよ、凜。恐ろしくて、震えてしまうわ」
言葉とは裏腹に、雪代長音の顔にの揺らぎはない。
あるのは冷徹な経営者の顔だ。
「わけを、話して。雪代の家の當主が、約束を違えるなんて恥知らずな言いを平気で出來る理由を。納得出來なければ……」
「あら、あなたを納得させなければいけない理由なんてないけど。でも、一応聞いておこうかしら? 納得出來なければどうするの? 貴崎凜」
「その分厚い舌を引き抜き、焼いて裂く、ああ、雪白の舌はすぐに溶けような」
「あはは、悪いが出ているわよ、鬼裂。見ていて難儀だわ。忌々しいの呪いに囚われている同族を見るのは。哀れみすらじる」
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「彼は、彼は報酬があったからこそ、私に本気で向き合ってくれた! それを今更無しにするなど、どういうつもりだ! 雪代長音!!」
「吠えるな、小娘。その報酬、とやらは我々がを切り払うものだ。敗北したお前が何を言っても虛しいだけ」
「本気で、言っているの? あなた……」
「はは、凜、お前が本気で他人のために怒るとはね。ヒトはまさにヒトにとっての砥石…… まあ鋭すぎる砥石も使い道に困るもの」
「長音、さん。訳を話して」
「ええ、もちろん。答えはシンプル。アレは私の手に負えない。首を繋ぐことも、餌で導することも、だ。味山只人は制できる人間じゃないということが今回はっきりわかったからね」
「……彼は、俗的で、現主義、事を利益で考えるタイプの人間よ。長音さん、あなたが1番かすのが得意な人間だと思うけど」
「ははははは!! 凜、りん、リイイイン!! ダメだな、本當。は盲目と言うが、貴崎凜もそれは同様だったかい。アレは違う。アレはね、表向きは理でいていると見えるが、本質はまるで逆。全て己の側から湧き出る衝でくタイプの人間だよ」
「衝?」
「そう、衝。彼の厄介なところはね、自分を自分で理的な人間だと勘違いしている所さ。凜が負けたのは彼の側にあるその衝を刺激してしまったせいね。斷言する、彼はいつか必ずやらかす。それがどんなに大勢の犠牲を伴うことだとしても、彼の中の衝は止まらない。必ず、やらかす」
「だからって、そんな……」
「私はね、最初、勝敗がどうあれ彼と契約を結ぼうとしていたよ。殘忍で狡猾、しかし理的で俗的なを併せ持ち、社會常識を兼ね備えている。企業からすれば本當にの良い探索者だ。でも、もう私にはそう思えない」
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「……」
「模擬戦とはいえ、貴崎凜に一対一で勝ってしまうような人間は、もう普通じゃない。アレはいずれユキシロメディカルに災いをもたらす。経営者としての私の判斷はこれで終わりよ」
「言いたいことはそれで終わり?」
貴崎が立ち上がろうとに力をれる。
かくり、布団についた膝が崩れる。たったあれだけの模擬戦、しかし"道"を使用した味山只人との戦闘は貴崎のに今までにない影響を殘していた。
「長音さん…… 負けた私が言うことじゃないことはわかってる。でも、でも、それじゃあ、彼があまりにも…… そんなの不誠実すぎるよ」
「凜、あなたの言いたいこともわかるわ。でもね、世の中全ての人が報われる訳じゃないの。勝利の先に何もない事も、ううん。報われない勝利のなんと多いことか。それを理解していくのが、大人というものよ」
「……本気で、言ってるの?」
「噓を言ってるように見えるかしら? あなたもそろそろ大人になる時期、近いんじゃないの、凜」
「……なら私は大人になんてなれなくてもいい。彼にクソガキって言われるままでも構わない。そんな、そんなさもしい存在になるのが大人になるってことなら! そんなのはクソよ!!」
クソ。
本來の貴崎であればその口からは絶対に出てくることはなかったであろう言葉。
でも貴崎はこの言葉をよく聞いていた。一時の仲間で、今はよく分からない凡人が好んで使う言葉だったから。
「……くそ?」
雪代長音の顔から、不敵な笑みが抜け落ちた。漂白剤にさらされた布のように、がすぽり。
「今、クソって言った? 貴崎凜が? あの貴崎家のあなたが、クソ?」
目をまんまるに広げながら呟くように雪代が続ける。
貴崎は布団にを橫たわらせ、うつ伏せになりながらを起こす。
「ふ、ふふ。ええ、そうよ。クソ。クソよ。あなたも、そして私も!! 自分の下らないとから、自分を友人だと言ってくれた人を試そうとして敗北した私もクソ!! 約束を簡単に覆すあなたもクソ!! クソよ! 全部!! 全部!」
の行き所がなかった。
大嫌いだ。
何故か、あの時言われた言葉がリフレインする。
言われても仕方ない。ダサすぎる。なんだ、このザマは。
わけのわからない衝に飲まれて、あの人を傷付け、勝手に失して、勝手に盛り上がって、
勝手にーー
「う…… やだ、やだよ…… ほんとうに、ほんとにきらわれちゃう。味山さん、お金好きなのに……」
ツン、鼻の奧にじる刺激。それが脳に昇る。
負けた、悔しさ。
大嫌いという言葉の、衝撃。
彼に、嫌われる。
彼に、失される。
様々なが貴崎凜の中で渦巻く。自分以外の他人の存在で、その存在の心を想像するだけで、が締め付けられ、息すら出來なくなる。
「やだ…… きらわれるのやだぁ。ごめんなさい、あじやまさん。ごめんなさい、おかねも、何もあげられない…… あんなひどいことしたのに、やだ、きらわれたくないよう…」
たまにいく學校で、同い年のの子が泣いていたのを思い出す。
好きな子と喧嘩した。ただそれだけでそのことで泣いていた彼を當時の貴崎は理解出來なかった。
今なら、分かる。痛いほどにその涙の理由が。
味山只人の事を思う。彼の考えている事を考える。
それだけで、こんなにも、怖い。怖い、怖い。
彼にれた、彼に近付いたからこそ生まれた恐怖に貴崎は、怯えた。
「……驚いた。凜。あなたまるで人ね。良かったわね、早めに、人に戻れて」
小さな聲、雪代の顔に浮かんでいたのは安堵。それはすぐに消えた。
「え?」
「安心なさいな。凜のお気にりの味山さん。彼は怒ってなんかいないわ。むしろ今はきっと、ホクホク顔でのんびりしてるから」
「どういう事ですか?」
「さっきの話、あれは全部本音よ。味山只人にはリスクが多すぎる。社として支援することは出來ない。でも個人としては別ってこと」
「それは……」
「探索者獻金、チーム所屬の探索者には個人レベルでの支援が認められてるわ。契約金と同額の1億円、さっき私の個人口座から彼の口座に送っておきました。まあし稅金で持ってかれるけど、彼からしたら大金も大金よ」
「え?」
「あの変わりの速さは流石ね。金手続きの畫面を見せた瞬間に、靴でも舐めてくるんじゃないかってぐらいに態度変わってたから…… それと凜へ彼から伝言」
「え、金? 伝言?」
「いい仕事、紹介してくれてありがとう。今度飯奢るわ…… だってさ。ふふ、凜、あなた厄介な男に引っかかってるわ。わざとであれ、天然であれ、アレは厄介よ」
雪代の言葉を聞いた途端、貴崎のからこわばりがきえた。
「……怒ってない、怒ってないの? 味山さん」
繰り返すのは確認。
「言ったでしょ? 彼は衝によってく。あなたを乗り越えた時點で彼はその衝に満足した。アレの中ではあなたに対する怒りや恐れ、憎しみは積もるものではないの。一瞬吹き上がったものをぶつければそれで満足なのよ」
「ほんとに、怒ってない…? あんなことしたのに?」
「それを言うなら彼も最初から竹刀投げつけてきたりの畜生ムーブだったと思うけど…… ええ、斷言していいわ。探索者、味山只人はその支払われた報酬をけ取り、満足している」
「……そっか、そっか。味山さん、きちんとお金貰えたんだ」
噛み締めるように呟く。
その素晴らしいの素質により的な魅力にも富んでいる、それを包む浴がはだけた。
「あなたの安心ポイントが若干ズレてる気がしてならないけど…… どんな形であれ約束は守るものよ。そこを違えたら、もうどこにも進めないもの」
呟く雪代が天井を眺めてため息をつく。雪の積もった庭に吹く冷たい風のように。
「彼は今、この旅館の部屋で休んでるわ。貴方も意識戻ったのなら顔見せに行ってきなさいな、凜」
「……今、から? やだ、會えない」
貴崎が呟き、布団に再び潛り込む。
どくり、どくり。閉じた布団の中、鼓がうるさい。の骨を、を、心音が突き破りそうだ。
不安、安心、大波のようなの行き來。貴崎の中に最後に殘ったのは、熱だ。
熱い、熱い、熱い。
味山只人の目、味山只人の聲、味山只人の臭い。
今は會えない。
それを想像するだけで、顔が熱い、心臓がうるさい。
「ちょっと、凜。なんで急にもぐらになるの。味山さんも貴方に挨拶してからじゃないと帰りにくいでしょ」
「や、やだ。むりむりむり、今、今は味山さん、みれない、會えないよう…… 長音さん、なんで、私、おかしくなっちゃった、おかしくなっちゃった!」
布団から顔だけ出して、芋蟲のようにのたうちまわる貴崎凜、それをみて長音が力が抜けたように笑う。
「なんで。なんで? 味山さんに會うの、怖い、こわいよ…… こんなかお見せられない…… おけしょうもしてないのに」
「凜、それ、好き避けってやつよ。おめでとう、あなたもきちんと年頃の人になれたってわけね」
「す、き…… あ、あああああ、わわわ」
ばひゅん、布団の中に貴崎が潛り込む。雪代はその様子を眺め、ただ笑う。
「味山只人、あなたやはり手に負えないわ。でも、ありがとう。凜を人に戻してくれて」
雪代がジャケットをぎ、タイツをぎ去る。足になってそのまま畳に寢転がる。
貴崎は布団にくるまり、その男を思い浮かべた。
その力強さ、その底知れなさ、その容赦のなさ。
ああ、間違いではなかった。世界は退屈じゃあなかった。
でもなぜだろう、今までにないこのの熱さ。頰が溶けそうな熱。
思い浮かべる、味山只人を。
でもだめだ、會うなんて、今は出來ない。そんなの想像するだけで、だけでーー
……
…
「ウッヒョッヒョヒョ!! あーヒッヒッヒ! アッハー!!」
ざぶん。
広い檜風呂にを沈める。木の懐かしい匂いが湯船に溶け出し、湯気となり昇る。
「あー、はっはっは!! いやー、稼いだ後に自分の金でる風呂は最高ですなー!!」
じんわりと広がる湯の溫かみ、鼻の奧から中を潤わす湯気。
味山は今、有頂天だった。
「アッハハ! たたた痛い! う、ご…… 筋痛やべえ…… でも、風呂ってるからしはマシか? あれ、筋痛の時って冷やした方がいいのか? ……まあいいか。痛たたた」
鬼裂の力の代償、いきなりくる筋痛を癒しつつ味山はそれでもにやけが止まらない。
「う、ひひひ、ほほほほ! いやあ! もう笑いが止まんないなー! うほほほほ」
貴崎が布団の中で、自分の中に目覚めた新たなるに困していると同時、味山只人は自分の中の最も馴染み深い俗な部分と向き合っていた。
「車、金、時計、クルーザー、マンション…… いや、投機的に株…… 車は、だめだ。バベル島じゃ申請に時間かかりすぎるし乗るところがねえ。登録した瞬間に半値になるから資産としても弱い…… 金か時計だな」
大人の金とは湯船では落とせない。
味山は揺らめくお湯の水面を眺めつつ、降って湧いた大金の使い方を考える。
「あー、たのしー。イチオクエンだよ、イチオクエン。もうそんなん勝ち組じゃん、おほほのほ…… あ…」
ふと。
味山はあることに気付き、のきを止めた。
四肢から力を抜き、だらり、全を湯船に預ける。
耳まで湯につけ、ぼんやりと木造りの天井を眺めた。
ごおおおおおお、ざおおおおおお。湯の音が耳に満ちた。
「……探索者、辭める選択肢が出て來なかったな」
足抜け。
探索者は長く続けられる仕事ではない。まだこの職業が出來てから3年。
黎明期も黎明期、それでも3年続けられている人間は割とない。
大金を一気に稼いでアーリーリタイア。味山只人も當初はそんな呑気な夢を見ていた。
「一億円だ、一億円。一生安泰にゃ遠いが、それでも足抜けには十分過ぎる。なのに、なんだこりゃ」
発想がない、想像がつかない。自分が探索者を辭めることをイメージ出來なかった。
「……カッパのミイラ、鬼の骨、乾いたさるの腕。クソ耳の耳糞。は、ははは。すげえ、すげえよ。まさか貴崎にすら勝っちまうとはな。すげえ」
てのひらに掬ったお湯を握りしめる。指の隙間からびちゃり。
「俺の道、すげえ」
力を、味山は己の探索の果を噛み締める。気付けばてのひらは震えていた。
口角は吊り上がり、自分の力の結果に笑う。
嗤う。
結果に。あの貴崎凜をも下すその道の素晴らしさに。
「は、ははは、ひひひひ……」
もう味山只人は探索者を辭めることは無い。
あの夏に、恐怖を焼き付けられた。
そして今日、恐怖の対価を実した。
素晴らしき道、凄まじい力。
凡人は、探索者に酔う。
「……うまくすりゃ、アシュフィールドにだって」
そこまで呟き、口のき、舌のきは止まる。
今、俺は何を考えていた? 味山は一瞬脳裏に浮かんだありえない狀況を振り払う。
浮かんだ景、あの眩く輝く1番星。あれと対峙するなんてあり得ない。
し、昂りすぎだ。味山は、ぽちゃんと湯船に頭までつけ、目を瞑る。
お湯の音、水の中、心地よい。
ふと、アレは、最後のアレはなんだったのだろうと、小さな疑問に思いを馳せる。
貴崎凜へのトドメの一撃は、屆かなかった。元より本気で撃ち込むつもりはなかったが、一撃は喰らわせるつもりだった。
ぐねり。竹刀がまがり、何かの力に邪魔された。まるで見えない壁が貴崎を守ったような。
ざぱり、お湯から顔を上げる。ふう、と大きく息を吐いた。
「いや、ないないない。そんなオカルトありえ……」
そこまで言いかけて味山は口を噤む。
怪種、、神の殘り滓達。
この世にはさまざまな不思議が確かに存在している。
先ほどのあの竹刀をねじ曲げ、貴崎を守った何か。アレも何か、いや誰かの力だったのではないか。
じゃあ、それは誰だ。
そこまでーー あの時鳴り響いた雪代長音の聲と同時に異変は起きた。
まさか、あのが?
味山はグルグル巡る考えに答えが見出せない。しばらく湯気を目で追いかけて、それから大きく息を吐いた。
「……まあ、いいや。わかんね」
呟き、思考を止める。
重要なのは、1つ。自分にとんでもない金額の報酬がったこと。それだけのはずだ。
湯船から出て、防水加工された端末を作する。開いたページは、探索者道のネットカタログ。
"グレンスフォシュ・モデル・バベル"
¥1,980,000-
〜北歐、スウェーデンの老舗が探索者のために拵えた一品。希なバベル産の高純度鉱を怪種のを混ぜて鍛造、尋常ではない威力をあなたに
「はい購」
ぽちり、ぽちり。カタログを流し見しながら味山がどんどん注文を決めていく。
味山只人はこの日、初めて値段を見ずに今までしかった道をポチッた。
「味山さん、お料理の準備が出來ました。その、お嬢様はまだおやすみになられているようで…… 雪代社長より気にせずに召し上がってしいと言伝いただいてます」
部屋風呂の扉の向こう側から、東條の聲が響く。
「ウッヒョー!! 待ってましたぁ! 東條さん。ここの旅館飯、ネットで見てから食べて見たかったんですよ! すぐに出まーす!」
和牛に、バベル近海で獲れる海の幸をふんだんに使った高級懐石に期待を膨らませて味山は浴槽から飛び出る。
東條との軽快な會話、ツヤツヤのごはんに彩りのおかず。
割と全全霊で旅館での休憩を楽しんだ味山は大満足で帰路につく。
結局、貴崎や雪代とこの日に顔を合わせることはもうなかった。
スポンサー契約の話こそ流れたものの、大金を手にした味山は意気揚々とバベル街を練り歩く。
ピコン。
だからだろうか。ウキウキの味山はめずらしく端末の著信に気づかない。
それに気づき、顔を真っ青にするのは帰宅して、就寢直前のことだった。
送信:アレタ・アシュフィールド
[ハァイ、タダヒト。アメキリやリン・キサキとのデートは楽しかったかしら?]
読んで頂きありがとうございます!
宜しければ是非ブクマして続きをご覧ください!
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜
※書籍化します! 10/1にKラノベブックス様で発売! コミカライズも決定してます! 史上最強の勇者である俺・ユージーン。 魔王を討伐した後、気づけば俺は貴族の息子・ユリウスとして転生していた。 どうやらこの世界の俺は、魔力ゼロの忌み子として、家から見捨てられていたらしい。 優秀な雙子の弟と比べられ、わがまま王女な婚約者を寢取られ、學校や屋敷の人たちからは無能とさげすまれる。散々な日々を送っていたみたいだ。 しかし別人に転生した俺は、それらを全く気にせず、2度目の人生を気ままに過ごすことを決意する。 このときの俺は知らなかった。 ここが勇者のいた時代から2000年後の未來であること。 平和な世界では、魔法も剣術も、すさまじくレベルが低下していたことに。 勇者としての最高の剣術、魔法、回復術、體術を引き継いだ狀態で転生した俺は、衰退した未來の世界で、自覚なく最強の力を振る。 周囲の悪評と常識をことごとく覆し、戀人や家族、そして俺を馬鹿にしていた弟からは嫉妬される。 けれどそんなこと全く気にせず、俺は今日も自由をただ謳歌するのだった。 ※書籍化に合わせてタイトル変更しました 舊「落ちこぼれの兄の方が実は最強〜史上最強の勇者、未來の世界へ転生する。優秀な弟に婚約者を寢取られ、家や學校からも無能と蔑まれてたが、前世の力を引き継ぎ気ままに生きてたらいつの間にか目立ってた」
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ごくごく普通な學園生活を送る、 高校1年生、西田 徳馬は 一つだけ誇れる自慢があった。 それは、成績優秀、運動神経抜群、 容姿端麗な宮園 愛花の幼馴染だということ。 いつものように愛花の家のインターホン を押し、愛花の可愛らしい聲で 1日がスタート。ーのはずだったが⁉︎ ☆不定期更新m(._.)m☆ ☆率直なコメントお待ちしております ☆1話1話が短めです(((o(*゚▽゚*)o)))
8 111意味がわかると怖い話(自作)
オール自作です。一話一話が少し長く、また専門知識が必要な話もあります。 解説は長くなってしまうので、省略verとフルverに分けて投稿します。 また、小説投稿サイト「小説家になろう/小説を読もう」に全く同じ作品が投稿されていますが、それは作者の僕が投稿したもので、無斷転載ではありません。
8 56天使と悪魔と死神と。
杏樹(あんじゅ)は小さな頃から孤児院で育った。孤児院の日々はつまらない。どうにか抜け出したいと思っていたある日、孤児院のブザーがなって……
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