《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》145話 人間奇跡 【前進】

「俺が進む、お前が負けろ、アシュフィールド」

TIPS€ 魔式、仮説承認。類似例による仮説証明強化開始ーー

それは、味山只人が選び、勝ち得た部位戦爭の報酬。

「……そう、タダヒト。どうあっても、折れないのね」

「ギタギタにしてやるって言ったろ。奧歯ガタガタ言わせてやる」

味山が一歩、また英雄に向けて進む。

雷鳴が鳴り響き、その顔を、醜く恐ろしく歪んで、そして妙に似合っている耳ヅラを稲が照らした。

TIPS€脳 人知竜魔式 人間奇跡

前進開始。

ヒントが紡ぐ、その式。

世界を誤魔化し、世界の法則を犯す、侵す、冒す。

冒す者の為に人知竜が編み出した技、それがついに味山只人と結びついた。

「……….ストーム・ルーラー」

ああ、また、嵐が蠢く。

世界を泳ぐ、世界を構する嵐の神話達、唸る雷鳴、降りしきる雨、駆け巡る大風、その全てが味山只人に牙を剝く。

「クラーケン」

耳男のすら巻き潰す海の怪、嵐の夜に船を沈める神話、海を進む人間を食い殺す神話が耳男に再びその腕を向けた。

TIPS€ 人間奇跡【前進】 適用

「鬼裂」

ず、おオオオオオオ

悲鳴が響く。今度は、耳男の悲鳴ではない。

嵐の中に、吸盤の備わった腕が飛んだ、斬り飛ばされたのだ。

耳男の左手、そこに備わる鬼の骨、一瞬でそれが大包丁の形狀に変化し、タコ足を斬り飛ばした。

「すげえな、これ」

素質がなかった、味山自は致命的なまでに鬼裂の扱う呪式、鬼裂の特別な力との相は微塵もなかった。

しかし、今、味山只人には式が編まれている。

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永遠の探究者がついに見出した抜け道。世界に、そして星に勝る為に用意していた2(・)つ(・)の(・)切(・)り(・)札(・)、(・)そ(・)の(・)う(・)ち(・)の(・)1(・)つ(・)。

1つだけ、確かに味山只人の手にそれは引き継がれていた。

「それが、あなたの答え……」

英雄が目を細め、男を見る。

自らへ向けて一歩ずつ歩んでくるその男を。前進の奇跡を。

TIPS€脳 新技能獲得

人間奇跡【前進】

これは人類が星に刻んだ軌跡ではない。これはたった1人の人間が當たり前に積み上げ、証明したちっぽけな奇跡である。

これまでの人間の歴史においても複數の人間にこの技能は発現していた。

式が発中、この人が"困難"に立ち向かい、前進し続ける限り、その行、その因果、その人に"前進"特を付與する。

TIPS€ "前進"特

前へ進む為に、この世全ての理不盡にそれ以上の理不盡を叩きつけることが出來る。

前へ進むことに対して全ての行に絶大なプラス補正をかける。

人類の歴史上、歴史の転換に現れた複數の人間に発現していたバグ。

事実上、"前進"特を持つ者は進む続ける限り、理不盡に負けることはない。

味山只人は本來の"前進"特を持つ存在ではない為、人知竜魔式が終了した時點で"前進"特は永久に消え失せる。

「來いよ、英雄」

「ええ、凡人」

おオオオオオオオオオオオ、ルルルルルルルルルルルル。

歌うように、ぶように。

タコ足を斬り飛ばされた巨大なタコの神話、クラーケンが嵐とともに味山只人へと迫る。

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耳男が笑った。

「タコ焼き、だな」

TIPS€脳 人知竜魔式 仮説強化開始ーー "クラーケン"神話を打ち破った過去の"前進"特の人間史を発見

それは人知竜の切り札。魔式、仮説と証明が強固になればなるほどその存在は強くなる。

味山只人と同様に、進み続けた人間、その存在が、その歴史が、今、味山只人の探索を助ける。

「ジャワ、ミディアムで」

TIPS€脳 "クラーケン神話攻略者" "1811年 フランス海軍 アレクタン號 "乗組員" 神話攻略済み

仮説証明強化、人間奇跡 【前進】

アオオオオオオオオオオオオ?!!

これまでとは比べにならない火が起こる。

耳男がれてもいないのに、大タコ、嵐の中船を沈める神話が燃え始めた。

味山只人に適用された特、理不盡に対して、理不盡を叩き込む存在。

味山只人の前進を邪魔するものに対しての圧倒的な特攻。

「……化けね、タダヒト、いえ、前進の化け

「てめえが言うな、嵐サイコ」

悶える大タコ、しかし、火は消えない。

耳男が、飛ぶ。まだ燃え盛る大タコのに取りつき、その額に乗っかる。

「タコってよー、どこシめるか知ってるかぁ?」

左手がまた変化する。本來ならばあり得ない鬼裂の呪式の作、しかし今の味山只人ならば、人間奇跡【前進】の補正をけている味山只人ならば話は別だ。

素質はない、選ばれてもいない、なのに、全てがうまくいく。圧倒的な理不盡を従えて。

「呪式、味山スペシャル。タコ針」

ぷおばアオオオオオオオオオオオオ………

変形した左手の骨、たこ焼きの職人が扱うあのクルクルする棒みたいな形狀。

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それがクラーケンの額を突き破る。天にびるタコ足、痙攣、萎、吹き出る大墨を嵐が洗い流していく。

「1匹目」

耳男が、大タコと化したクラーケン神話をシめる。びくり、びくりと痙攣し、そのまま雨と風になって大タコが溶けた。

TIPS€脳 人間奇跡【前進】 クラーケン神話攻略 魔式仮説強化

1つ、味山只人が進むたびにその仮説はさらに強固になっていく。人知竜が施した一回きりの切り札、それは何かがし間違えればすぐに消えてしまう不完全なもの。

しかし、味山只人は証明し続けた。

前へ、前へ、只、前へ。

「俺は、探索者」

ばちゃり、溶けていくタコの殘骸を背に水溜りを進む。

「……"異界" ストーム・ルーラー。出力29%」

TIPS€脳 警告 複數の海に関する神話がお前を狙っている

唸る嵐、舞いおりるは嵐と共に語られる神話達、荒れ狂う海に見出された神話達が耳男へと迫った。

「っふー…… どっからでもかかってこいや!! 海の幸ども!!」

降りおりてくる、巨大な蟹の化け。北の世界、海の底に住み、嵐の夜に船乗りを襲う蟹の神話。

TIPS脳€ "カルキノス神話"攻略者 "ベーリング海 カニ漁船漁師" 神話攻略済み

式がその存在を己で補強していく。過去に存在した名もなき前進の奇跡、それがした事実を味山只人にり付ける。

グオオオオオオオオオオオオ!!

振り下ろされる鋏、長く尖った腳、味山はそれに先程3回ほど殺されていた。

「九千坊!!」

その鋏をけ止めるは、西國大將九千坊の腕、前進の奇跡の補正をけたその水かきが蟹のハサミをけ止める。

力の拮抗、鋏をけ止めた味山のが一気に、ずびびびと地面をりながら後退する。

グウウウウウ!!

ボゴボコと泡を吹くカニの神話、耳男に振り下ろしたハサミに更に力をれてーー

「てめえは、焼きガニだ」

進む。前へ。大質量、巨大ガニのハサミを真正面からけ止め、それを押し返す。

ありえない事象を、前進の理不盡が可能とする。

「九千坊河絵巻語」

前進の理不盡はここにも。神の友人、味山只人が完させた忘れ去られた殘り滓、その伝承の再生。

前へ進む限り、その伝承にさえ補正がかかる。

「"カッパ相撲大一番"」

ボボボココココココココココ?!

泡を吹く大ガニ、それの巨大な軀が持ち上げ、

「やれ、九千坊」

耳男の意思の元、一気に地面に叩きつける。みしり、ひびのはえた甲殻、そして縄が引きちぎれる大きな音ともにハサミがとれた。

ぼぼぼぼぼばぼ?!

信じられないという風にカニの神話が泡を吹いて目を回す。

ぶちり。次の瞬間、長い腳が一本引きちぎられた。

「ギャハハ、ギャハハハハハハハハハ!! 殺されすぎてよお、腹ァ、減ってきちまった、……カニ味噌、好きなんだよ」

ぼおう。

引きちぎった腳を投げ捨て、右手の火を強く燈す。また、れもせずにカニに消して消えない火葬者の火が燃え移った。

びぼぼぼぼ…………

暴れるカニの神話、降り続ける雨もしかしその火を消すことは出來ない。みるみるうちにみ、腳をたたんでカニはかなくなった。

真っ赤に焼き上がったカニが、そこに。

嵐と雷で構されたそのが崩れ始めた。

「あー……、そうか。食えねえのかァ、かにみそ……」

「イカれてるわね、タダヒト」

「お前だけにゃいわれたくねえよ」

笑いながら、そしてまた耳男が進む。

「ギャハ」

前へ

「ギャハハハ」

前へ、只、前へ。

「……ストーム・ルーラー、出力57%」

一気に、同時に、多數の嵐と荒れ狂う海の神話が耳男に迫る。

人間奇跡 【前進】が進む。

「ギャーハッハハッハハ!! 海語かあ?! まとめてシーフードにしてやるよ、海産どもが!」

もう、恐れない。バカなことをんで、耳男が真正面から嵐に立ち向かう。

その全てに、"前進"の補正がかかる。頭の上に表示されている紋様が変わっていく。

砂時計のような紋様ーー

オオオオオオおおおおおおお!!

嵐の中に確かに生きる神話が、味山只人を狙う。

TIPS€ 警告 "嵐"に関する神話の顕現を確認。警告、複數の神話権限を確認、警告、"シーサーペント"、"テュポーン"、"一目連"、"ワイルド・ハント"、"ボレアス"、"ワダツミ"、"カナロア"…… その他複數の"嵐"に関する神話による攻撃

TIPS€脳 全てお前を狙っている。しかし、何も問題はない。人間奇跡【前進】を証明しろ

「さっきとは違う反応で大変よろしい」

逃げうだけだった。嵐に殺され、英雄に折れかけていた耳男、しかしもう、今は違う。

TIPS€脳 人知竜魔式仮説強化開始ーー 歴代【人間奇跡・前進】 を自検索

海、嵐、それは人間にとっての未知、そして大いなるものだ(・)っ(・)た(・)。

この星の7割以上を占めている人の住めない領域、その領域に過去の人間は恐れを、怖れを、畏れを見出し、數多の神話を語った。

嗚呼、深海にひそみし、大海蛇。星座に召し上げられた半神の英雄譚の障害に數えられしモノ。

嗚呼、大風の主、船乗りに良くない風と破滅を運んでくると信じられた海底の巨人。

嗚呼、風と雨の化、水から生まれ、一部の文化系においては神そのものとすら數えられる龍の劣化模造。

それら全てが、味山只人へ。

それら全てが味山只人の敵。

つまり、その前進を阻むモノ。

そしてその全て、

TIPS€脳 "複數の荒れ狂う海に関する神話"を打ち破った歴代【人間奇跡・前進】 を確認

既に人間はその歴史を進める前進により、攻略していた。

TIPS€脳 "荒れ狂う海の神話"攻略者 1492年 サンタマリア號 "乗組員" "船長・クリストファー・コロンブス"

その人間奇跡・前進は証明した。西廻りの航路、未知の海、未知の領域、その先に新大陸が存在することを。

ここに、海の神話達はその人間の功績により大きく力を削がれた。その神威、その恐怖では最早、人の進出を止められないことが証明された。

TIPS€脳 "前進"特により、邪魔をする全ての"海の神話"に対する絶大な特攻を獲得ーー

過去の人間奇跡【前進】がしえた事実が、味山只人の前進を更に確実なものにしていく。

この男と"前進"は相が良すぎた。

もう、味山只人は自重しない。

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハー!! マリンスポーツみてえだなあ!! 次のオリンピックの目玉種目はこれで決まりだぜえ!」

アアアアアアアアアアアアアア?!!

角の生えた巨大なクジラ、そのに毒蟲のように張り付き、その頭に鬼裂の骨を突き刺す。

もがくクジラに痛みを與えながら、暴れるクジラのきを導し耳男が嵐と海の神話達を蹴散らし始める。

「オラァ、言うこと聞けえ!! 突撃じゃ!突撃!! 竜田揚げにされてえのかあ?!」

オオオオオオおおおおおおおお!!?

ぼおう、火がクジラを脅すようにそのヒレを燃やし始める。

このクジラには4回ほど殺された。容赦などない、全ての無茶苦茶な有様を人間奇跡【前進】の理不盡が可能としていく。

「オラァ!! クソクジラァ!! 俺をぶち刺したようにその角で見せろやぁ!!」

ァアアアアアアアアアアアアアアア?!

オオオオオオおおおおおおお!?

星の領域、海から生まれた神話が明らかに怯えていた。そして、耳男の言う通りに周りの神話達にその角を向けて突撃し始める。

耳男andクジラ、海の神話を殺し始めた。

ブオオオオオオオオオオオ?!

龍が、そのをくねらせながらクジラに巻き付こうとする。

「ギャハハハハハハ!! 大海蛇とキャラ被ってんだよ!! 掛け軸ン中に戻ってろぉ!!」

迫る龍、真正面からクジラを突っ込ませる。鬼裂の左手を掲げる。

嵐の中、耳男がクジラに乗って、龍と相対する。雷鳴が両者を照らしていた。

「先生ぇ! 龍斬ってくれえ!! 貴崎ができたんだ、アンタが出來ねえ訳ネエよなあ!!」

アホなことをび、クジラに突き刺していた左手を引き抜き掲げる。完全な他人任せ、それしかやり方を知らないのだ。

その聲に応えるように、味山の左手が変化する。指が消え、代わりにその左手は刃へと変形していく。

生前の鬼裂の伝説、それがしえなかった業、すなわち龍を斬ることーー

オオオオオオオオオオオオオオ!!

アアアアアアアアアアア?!!

龍が雄びを、クジラが悲鳴を。

真正面、両者が真っ向から衝突ーー

「クジラァ!!」

ぼん!!

音が弾けるやうに、クジラが嵐の中を急降下。勢いそのままに、龍がクジラの上を通り過ぎて

「ギャハハハハ!! 鬼裂先生の龍の捌き方ァ!!」

跳んだ、耳男が。

構えた、鬼が。

空中でその刃が、龍の腹を捉えた。

ずん。

通りすぎていく、龍の腹、それと上下にすれ違うようにかすめて、腹を掻っ捌くのは耳男の左手から現れた鬼の刃。

ぞりりりりりりりりり。

舞い散るは鱗、皮、雨と雷鳴に溶けていく。

すれ違いざまに、嵐と雷鳴の中、耳男が、いや、鬼の刃が龍の腹を掻っ捌いた。

おおおおおおおお……

龍がもがき、嵐を落ちる。腹から嵐をらしながら、もがいて落ちる。

「はい、そこで急上昇!! 言うこと聞かねえと燃やすぞ!!」

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

空気が揺れる大音量、急降下していたクジラが耳男のびに怯えてびながら一気に急上昇。

ずん。

落ちていく龍、登ってくる角の生えたクジラ。

それらがぶつかり、

おおおおおおおおおおおお…………

龍のをクジラの角が貫いた。龍が串刺しにされ、ぐったりと力を失う。

嵐と雷をらし、溶けていく。

「おっし、ご苦労さん! ほい、次ぃ!!」

ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

龍を貫いたクジラの頭に著地、また脅すように左手を突き刺す、それをまるで縦桿のようにねじって命令する。

ヤケになったようにクジラがぶ。海の神話を脅しながら次の神話をぶち殺しに耳男が狙いを定める。

「次ァ、てめえだ!! 海巨人!! そのモリみてえなモンよこせえ!!」

巨大な一つ目の巨人、三叉にわかれたモリを持つ古き神話に耳男が牙を剝く。

読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

デモンズ

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