《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》146話 人間奇跡【前進】 その2

オオオオオオオオオオオオボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

それは怒りのびか、それとも唸る大海の海音か。

一目の巨人が歯を剝き出しにしてぶ、嵐を侵食していく癡れ者に向けて殺意を向け

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! なんだぁ、キレてんのかァ? 海の番犬さん気取りかぁ?!」

それを耳男が笑い飛ばす。クジラの頭に突き刺した左手を捻り

「オラァ、突撃じゃ!! あんの一目くり抜いてやらぁ!! いくぞお、クソクジラァ!!」

ギュオオオオオオオオオオオオオオ?!

突撃、角を持つクジラの巨が耳男の脅しに屈して巨人へと迫る。

亜オオオオオオオオオオオオオオ!!

海の象徴、古き海の神話、墮とされた神、しかしその巨人の持つ神話の力は絶大であった。

三叉の槍が、角をけ止める。

雷鳴が発するかの如き音、一瞬、嵐の音が消えたような。

ぼき。先に折れたのはクジラの角。

クジラの悲鳴とともに嵐の中に耳男を何度も殺した角が折れて

「まだまだァ!! 進め!!え! クソクジラァ!!」

ァアアアアア!!

角を折られた怒りか、はたまた耳男への恐怖か。クジラがそれでも槍の一撃をかいくぐり、巨人への突撃を始める。

嵐が吹き荒れる。風が、雨が、雷が、まるで巨人を守るために壁となりその道を阻む。

「ぶちかませええ!! クソクジラァアアアアア!!」

海、荒れ狂う嵐にそのまま突撃する。その巨、嵐の神話を、嵐の神話がけ止める。

剎那、巨人の手がびる。嵐の壁に直撃したクジラをその手で挾むように摑んだ。

●◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉ーー!!

巨人がぶ、それは理解出來ない音、しかし確かに言葉だったのだろう。

その証拠に、先程まで耳男に脅されその指示に従っていたクジラが急にきを止めた。

「あ?! なんだ、おい、ゴラ、クジラ、てめえ何止まってーー」

おオオオオオオオオオオオオオオ!!

擬オオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおお!!

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「あ、やべ」

クジラがを捩り、耳男を振り落とした。

嵐の空、耳男が墮ちる。

わかりやすく怒りを目に宿したクジラが大口を開けて耳男に迫る、巨人の一つ目がニヤリと笑ったかのようなーー

「鯨油、クジラの油ってよお、よおく燃えるんだぜ」

耳男が一目の巨人よりも遙かにドヤ度の高い笑みを浮かべる。

その右手には人間の火が燃え盛っていた。

「クジラ弾、燃えて死ね」

ぼおん。

オレンジの花火が、嵐の世界を照らした。

火が、クジラの神話を燃やし盡くす。そのに宿る概念、クジラの油、ガソリンが生まれる前に燃料として扱われていたそれ。

味山の、そしてジャワの火がその油を食い盡くし大きな花火を嵐に刻む。

その花火は大きく、巨人も巻き込み、火が燃え盛る。

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!! やっぱ海鮮は良く燃えるなあ!! アシュフィールドオオ!! どうした、てめえの嵐どもがどんどん消えてくぞお!! いつまでも見下せると思うなよお!!」

落下しながら、耳男が笑う。

遙か空、嵐の神話達が舞う位置よりもさらに高いところから見下ろす英雄に向け、耳男が笑う。

「そっから、すぐに引き摺り下ろす!!」

「彼を、あまり舐めない方がいいわ。タダヒト」

嵐の世界に、英雄の聲が響く。世界の主人の聲は雨音などよりも優先権が高い。

「あ?」

燃え盛る火の中から、大きな手のひらがびた。

オオオオオオおおおお!!

「ギャ?!!」

がち、捕まる。

子供が蟲を捕まえるかのごとく、巨大な手のひらが落下する耳男を捕らえた。

ぐっと、持ち上げられ掲げられる。

オオオオオオオオオオオオオオ

一目の巨人は生きていた。火がところどころそのを燃やしているが、渦巻く嵐が火を中和している。

黒焦げている顔、しかし一目の中に宿る殺意はいささかも衰えず。

を握りしめられ、抜けられない。神話の巨人、ある神話系に置いての主神との決戦、無力の果実によりその力を奪われようやく敗北せしめたその神話。

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その力は前進の補正をける耳男ですら抵抗出來ない膂力。

「ぐべ」

耳男の口かられる。握りつぶされそうだ。

骨が軋んで、臓がたわむ。

この巨人にも8回ほど殺された。

オオオ

一目に宿るのは嗜、愉しんでいる。耳男を一撃で殺さないのはその神話に宿る殘か。

再び、その巨人が、耳男を即死させない程度に握りしめて

「ぶげ…… てめえ、ほんとムカつくツラしてんな。消し飛ばしてやる」

その膂力には真正面から抗えない。神に限りなく近いこの海の巨人と凡人は相が悪い。

だが、しかし、今、この凡人には補正がかかっていた。

頭上に続く砂時計の紋様が、黒くら始めた。

TIPS€脳 人知竜魔式 仮説強化開始ーー

TIPS€脳 敵 神話解析、"テュポーン" 嵐の神話

TIPS€脳 歴代【人間奇跡・前進】 を自検索

前へ進む限り、その奇跡は自重しない。

味山は何も諦めていない。殺す、ぶち殺す、消しとばす。

その意思が魔式を廻していく。

その神話を前進(ぶっ殺す)ためにその仮説を証明するために魔式が人間の歴史を探る。

TIPS€脳 "荒れ狂う海"、"嵐による人類の繁栄阻止" 嵐、海という不可侵領域の象徴" これらの神話を完全に墮とした人間の歴史、歴代"人間奇跡【前進】を確認

「あー…… お前よお」

その神話はまさに、人類、人間に対する嵐と海の優位の象徴。

人は海に生きれない、人は嵐に打ち勝てない、嵐を超えることなど出來ない。

絶対的な星の息吹、地球という星に住む生命、その1つに過ぎないはずの人間の超えることの出(・)來(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)は(・)ず(・)の象徴。

出來なかった、はず。

その人間奇跡【前進】は不可能を可能とした。

海を、嵐を、神話を乗り越え今日のグローバル社會の基礎を切り拓いた。星をめた大偉業。人類の軌跡ではなくまさに、人間の奇跡。

TIPS€脳 "嵐、海の人類への絶対"神話攻略者" 1580年 ゴールデンハインド號"乗組員" 及び"船長 フランシス・ドレイク"

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存命しての、世界一周。

その男は海と嵐、全ての神話を乗り越え人の歴史を前へ進めた。

その男の偉業を持って証明された。もはや、海も嵐も人間の前進を止めることは出來ないのだとーー

TIPS€ 技能発 人間奇跡【前進】

補正がかかる。

原理、整合、理由、法則。

その全て、その奇跡を止めることは能わず。

人間奇跡【前進】フランシス・ドレイクは嵐を墮とした。ならば、人間奇跡【前進】耳男もそれが可能となる。

前へ進むためならば、どのようなルールも今の耳男を止めることはできない。

「ギャハ」

耳男が嗤う。

同時に、巨人がをビクリと大きく震わせた。

嗤う耳男に、果たして巨人は何を見たのか。まるで、その存在に刻まれた天敵を見たかのように、巨人がそのを震わせた。

「お? 今、てめえ、ビビったな?」

それは耳の化けの業。耳男となった味山の扱える最大最強の火力。

ああ、耳が悍ましく蠢く。

TIPS€脳 "耳の癖" 使用準備完了、人間奇跡【前進】"耳の癖"に対して適用、"前進"補正適用

あ、アあ、アアアア、◉◉フラ◉ン◉シス◉ドレイ◉◉ク!!◉◉?

巨人が、喚き始めた。その目はギョロギョロと辺りを見回す、まるで恐ろしい敵がどこにいるのかを必死に探すように。

TIPS€脳 歴代人間奇跡【前進】 フランシスドレイク、事実再現ーー "火船"

火が、巨人のに燻る火が人間奇跡【前進】の補正をけてその勢いを取り戻す。

がぱり。

が蠢く。恐ろしい耳の化けの力、それを人間奇跡【前進】が理不盡に、デタラメに、バカのように補正をかける。

ドレイク…… ドレイク、ドレイクドレイクドレイクドレイクウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア?!!

大口を開ける巨人、半狂になりながら耳男を食い殺そうとして

その瞬間。嵐の世界から音が消えた。風も、雨も、雷も。何も聞こえない。

耳の化け、世界から音を、びを奪い愉しむその癖ーー

「俺はーー」

その男の呟きだけが世界に響いた。

TIPS€脳 耳の癖+人間奇跡【前進】

"ゴールデン耳の癖砲"

「味山だアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ぼもっ。

が収し、音を吐き出す。

指向を持った音の暴力、人間奇跡【前進】の後押しをけたそれは、黃金の鹿の火砲と同じ。

「……………うそ」

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 言ったよなあ!? 消し飛ばしてやるってよお」

一目巨人の首から上が文字通り消し飛んでいた。

ぐらりと揺れ、そのがまた嵐に溶けていく。

ばらばらと舞い落ちるその殘骸とともに、耳男が地面に著地し大笑い。

ヒオオオオオオオオオオオ!!

空から大口を開いて降りてくるのは大海蛇、味山を幾度も食い殺した神話ーー

「モリ、これ、しかったんだよ」

崩れ落ちる巨人の手からこぼれ落ちる巨大なモリ、味山が大海蛇の大口をわし、そのに飛び乗る。

跳ぶ、空中で建ほどの大きさのある三叉の槍、それに薄して

「九千坊、鬼裂、ジャワァ!!」

耳男のエラからこれまでのどれよりも巨大な水かきの手のひらが現れる。

その水かきが三叉のモリを握りしめた。

左手の骨が変形、巨大化、水かきのてのひらを支えるようにモリにつながる。

ぼおう。そのモリの鋒に火が燈った。

「どっこいせええええええええい!!」

振り投げる。

三叉のモリが、河の力、鬼の技巧、火葬者の火を用いられ大海蛇の脳天に突き刺さった。

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!

もがきくるしみ暴れる大海蛇、そして力なく地面に橫たわる。

また1つ、神話が死んだ、耳男が殺した。

人間は荒れ狂う海、嵐を超えることは出來ない。その法則は既に、過去に、進み続ける人間により覆されていた。

味山はそれをなぞるだけ。

「あー…… アシュフィールド、次はどんなシーフードを出してくるんだァ? おら、次出せよ、來いよ、嵐ども。人間様が相手してやるぜ」

人間離れした容貌の化けに片足突っ込んでいる男がまた嗤う。

嗤って、また前へ一歩。

ホオオオオオ……

ルウウウウウ……

嵐の中を揺う數多の神話達、生き殘っているそれらはしかし、味山に襲いかかってこない。

一歩、一歩、耳男が進んでも、その進路を邪魔することがない。

TIPS€脳 神話はお前を、お前たちを恐れている。嵐を踏み越える存在、星の支配者、人間を神話は恐れているぞ

「ストーム・ルーラー……67%」

嵐の神話がビクリとを震わせ、その支配者の意向をける。

「……どう、して……」

しかし、かない、けない。

そして1匹の空を揺い続けていたエイの形をした神話がふわりと地上へ降りた。

その首を垂れる。

ーー味山只人へ向けて。

「それでいいんだよ、海産ども」

次々に、嵐の中を舞っていた神話達が首を垂れる。

神話が道を作る、もはや何者も人間奇跡の前進を止めること能わず。

味山が、嵐を踏み越える。その先にあるモノ、嵐の支配者気取りのバカを見上げた。

「お前、すぐにそこから引き摺り下ろしてやる」

「……無茶苦茶ね、でも、事実は変わらない。人は嵐を超えることは出來ない。偶然で掻い潛ることは出來るかも知らない。それでも、無理なものは無理なのよ」

「てめえが決めることじゃねーよ、アシュフィールド」

嵐が更に強く吹き荒ぶ。

雷が空間を歪ませるように閃き、風が大地ごと全てを抉るように吹く。

災禍の調べ。

生きを象った神話ではない。嵐そのものが持つ暴威。

「いいえ、あたしが決めることよ。あたしは星、あたしは英雄、あたしは嵐。……シンプルにいきましょう

タダヒト。人は嵐には勝てない」

TIPS€脳 警告 ストーム・ルーラーによる大規模範囲攻撃の予兆を確認 保有技能による真っ向からの対抗手段無しーー

「……バ火力好きのアメリカ人め」

どろり、味山に侍っていた神話達が溶けていく。嵐の支配者の意思の元、その力、その神話がストーム・ルーラーの中へ吸収されていく。

嵐そのものが、ストーム・ルーラーの中で蠢く。その恐ろしさを模した神話ではない。今、その中にはこの星に揺う嵐そのものが有る。

「人は嵐には勝てない…….か」

唸る雷鳴、轟く雨、吹き荒ぶ風。

それが指向を持って味山に向けられつつある。火力とは神だ。星の活、それが英雄の力により純粋な暴力へと変換させられていく。

TIPS€脳 推奨攻略方法 耳の癖砲+人間奇跡【前進】による最大火力での対抗、功率12%

上空、球、ストーム・ルーラーがまるで花開くように変形していく。數々の神話達がそれに吸い込まれ還元されていく。

神話、自然、それすらも英雄の意思のもと扱われ消費されていく。

味山はそれをぼーっと、眺めていた。

TIPS€脳 警告 ストーム・ルーラーによる消失攻撃の予兆を確認、警告 人間奇跡【前進】ーー

「…………違うな」

嵐を見上げて、味山がつぶやく。

暗い空、雲が歪んで流れている。

TIPS€ なんだと?

「違う、アレのしばき方はそれじゃない。あの耳砲じゃ無理だろ」

空を見上げる。似ていた。子供の頃、見上げていた空と。

早くく雲、り気のある水の匂い、不安に、でもどこか高揚する雨の音ーー

「……臺風の日、好きだったなあ」

TIPS€脳 ……?! 新たなる人間奇跡【前進】の歴史を確認、ストーム・ルーラー対抗手段、更新

ヒントの聲がどこか慌てたように響いた。味山はその聲を無視して、ぼーっと牙を剝く嵐を眺める。

「臺風の日ってよ、學校休みになんだよ。家ん中にいて、普段見ねえ朝の番組見て、ゲームして、遅い朝飯食うんだ」

散々嵐に殺されて、嵐を殺し続けて、ふとに浮かんだのは年時代の記憶。

「ガタガタ揺れるボロ家の窓とか、切り裂くような風の音とか、ああ、そうだ。空見上げるとアホみたいな速さで流れる雲、あれも好きだったなあ」

高く、遠い空、決して手の屆かぬその景、揺れていて、流れ続ける雲を見上げるのが妙に面白かった。

それを思い出した。

TIPS€脳 人間奇跡【前進】と適合する隠し技能を発見

【日本人】

ストーム・ルーラーに対する特攻技能を発見

【日本人】+人間奇跡【前進】

熱帯低気圧により生まれるその自然現象。

嵐、星の、自然の力の形の1つ。

西洋の國はその力を神の力として扱った。この世全てを創りたもうた神、自然すらも神の作りし、そして人間はその神から全てを引き継ぐ者として生まれたと考えられた。

しかし、その國は違った。

その國は古來より、天災とともに在る國だった。

「ああ、好きだった。田んぼの緑一面の稲がよ、風ので一斉に揺れるんだ。山ん中れば、木の葉っぱが風に攫われてすげえいてよ、風のなかにいるみたいだったんだ」

その國は、その自然現象の通り道だった。

毎年、7月から9月にかけて訪れるモノとして扱われていた。

時に、災禍を、そして時に恵みを。

人間の都合など全て無視してただ、そこに在る大いなる自然、人の力では、いや、人ではどうしようもないその大きな大きな存在。

その國はその現象、それ自を神として扱い敬った。

唯一の神ではない。

その國では米粒一つにすら神が宿る。

八百萬の神とともに、その民族はその國で生きてきた。

TIPS€脳 【日本人】 技能 人間奇跡【前進】による補正開始

「…….なに、これは…… なにを、したの?」

空、雲が歪む。英雄がその異常事態に気づき始める。

雷がそのを潛め、ストーム・ルーラーに吸収されていく神話達、その中から數匹がその列から外れた。

「嵐に勝つ、違うな、そりゃあ、違えわ」

その國で、嵐は神であった。神の扱う力ではなく、神そのもの。その國で神は1人ではなく、また人間の裁定者でもなかった。

共に存在し、共に生きていたモノ。

敵でも味方でもない。

只、そこに在るモノ。

共に生きるモノーー

TIPS€脳 人知竜魔式仮説証明開始ーー

TIPS€脳 過去の人間奇跡【前進】及び、"日本人"技能の歴史を検索、複數の"嵐"の概念攻略者の存在を確認、

「俺は嫌いじゃねえんだ」

その國の民は常に、証明してきた。

嵐により荒れた田畑、ダメになった作をそれでも諦めずに新たな開墾に乗り出した名もなき農民が。

「臺風の日の休みも」

日照りの後、降りしきる大雨と大風の中を口を開けて雨を飲みながら駆け回るが。

「臺風の日に見るテレビも」

治水の業、嵐を討ち滅ぼすのではなく嵐を治め、水害を無くさんと工夫を凝らす職人が。

「臺風の日に食うコロッケも」

そして、臺風の日にも平気で職場に出勤する全ての人間が。

「ああ、うん。俺は臺風が割と好きだ」

その國に當たり前に住まう全ての民、日本人は証明し続けてきた。

人と嵐は共存出來る、と。

TIPS€脳 人間奇跡【前進】 証明 【日本人】技能により"異界ストーム・ルーラー"への概念侵食開始

「……どういうこと、それ……」

一ツ目の龍が、嵐の神話として數えられ味山の敵だったはずの一ツ目の龍が味山の頭上を泳ぎ始める。

襲うのではなく、ただ、共にあるかのように。

そう、日本人にとって神とはただ、そこに在り、畏れ畏みながらも、ただ共にある存在。

自然、そのもの

そうだ、日本人は嵐と共に生きてきた。

「俺がぶちのめしたいのはお前だけだ、アシュフィールド」

一つ目の竜、一目蓮。

日本の嵐の象徴が耳男の歩みを見守るように揺っていた。

耳男は日本人だ、だから

TIPS€脳 人間奇跡【前進】 発

"日本人"技能に前進特を付與

新技能獲得

"日本人" (人間奇跡【前進】補正)

歪み、戻り、歪み、壊れ、掠れ、戻り、戻り、繰り返し。

果てのない繰り返しと破壊と延命の中、例えその名前が歪み変わり果ててもなお、その國の民が証明してきた事実は変わらない。

"人は嵐と共に生きていくことが出來る"

それは、日本に住まう全ての人間が、正しい手段で手にれた國籍と、味噌味いとじ、その文化をすることの出來る歴史に殘らない當たり前の日本の民が証明し続けて來た奇跡。

本來の"日本人"技能とは異なるものである。

この技能を持つものは歪んだ自然災害の概念へ対して絶大な特攻を得る、また自然災害の負の側面が強調された"異界"を侵食することが出來る

「いや、そうは、ならないでしょ……」

「なるんだよ、今だけはな」

また一歩、耳男が前進した。

ホオオオオオオオオオオオオオオ!!

一つ目の竜が雄びをあげる。き通るような聲、歌うかのような竜の聲。

味山只人の背中を押す。

「うそ、なんで、ストーム・ルーラー……?! どうして」

TIPS€脳 "異界・ストーム・ルーラー"への侵食、4パーセント完了。味山只人の記憶から再現した"雨上がり"のり付け開始、"臺風の日の休校"をり付け

英雄の創り出した世界、嵐舞う災禍の世界に亀裂がる。

進ませ過ぎた、時間をかけ過ぎた。

もう、味山只人は止まらない。

英雄が、その金の瞳に揺を燈し、狼狽えた聲をあげて

「ギャハハ」

この男がそれを見逃す筈がなかった。

「ッ、ストーム・ルーラー!!」

「ギャハハハハハ、なんだぁ?! えらい遅いなあ、アシュフィールドオオ!!」

駆ける、一気に。

嵐の世界を耳男が駆ける。風が、雨が、雷がその道を遮ろうと迫る。

振り上げられる手斧、笑い聲、嵐は耳男を止めることが出來ない。

「見下してんじゃねえよ、アシュフィールドオオオオオオ、降りて來やがれええ!!」

そのびに呼応する存在がいた。

ホオオオオオオオオオオオオオオ。

う一つ目の竜がみじろぎし、味山の頭上を飛んだ。向かうは嵐、ストーム・ルーラー球へ。

味山の願いに応えるように、ストーム・ルーラーと、アレタに向かって攻撃し始める。

「あ、ありえない、止まれ、止まりなさい!!」

ストーム・ルーラーから別の神話が現れ、一つ目の竜を迎え撃つ。

ストーム・ルーラーに異変が起き続ける、歪んでいた、歪み始めていた。まるで崩れた卵の黃のやうに何かが溢れている。

TIPS€脳 ストーム・ルーラー侵食 10% 日本人と嵐に関する新たな歴史を確認

歴代人間奇跡【前進】・"嵐との共存による危機の打破"に類似する事象を確認ーー

1281年 日本"元寇・弘安の役

事実詳細 意思持つ天候概念による土著の土地の防衛、臺風の神格化、通稱ーー

「ギャハハハハハハ!! 悪いなあ! 俺はよ、神(・)風(・)が吹く國の善良な一般人だからなあ!! 神社ん行って賽銭発してた甲斐があったぜえ!」

神風。

その國にはそれが吹く。それが味方をする。

人間奇跡【前進】と味山只人を止めることが出來るものなどもう何もない。

世界のバグと頭のイカれた耳男、その前進はもう、嵐ですら、神を飲み干さんとする英雄ですら

「あっこまで連れてけえ!! あのクソバカと同じ場所までェ!!」

TIPS€脳 新技能獲得

"神風"(人間奇跡・前進)

風が逆巻く。

上空で嵐の支配者に挑む一つ目の竜がいなないた。

耳男の足元に渦巻く風が生まれてーー

「どっこい、ショオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「……は?」

跳んだ、ただそれだけ。

風が全て都合の良いように、耳男の足元に発生し、全て都合の良いように吹き荒れる。

上空に鎮座する星の英雄、その金の目が大きく見開かれた、開いた口が塞がらない。

耳男が空を跳ぶ、英雄より遙かに高い位置まで跳ぶ。

ついに、味山只人とアレタ・アシュフィールドの位置が逆転した。

「ぎゃっはっはっは、アアアシュフイールド、てめえを見下すのはよお、気分いいなあ?!」

「……撃ち落とせ、ストーム・ルーラー」

嵐の支配者がその暴威を味山に、しかし神風はそれをら許さない。

ホオオオオオオオオオオオオオオ!!

「っあ?!」

ずもむ。その臺風を従える巨が味山への攻撃を止めるかの如くストーム・ルーラーへと當たりをかました。

英雄の意識が、味山から臺風の化へとーー

「墮ちるのはてめえだ、このボケエエエエエエエエエエエエエ!!」

「う、そ……」

もう、遅い。気付けば英雄にソイツは完全に迫っていた。

ついに、辿り著いた。

風の後押しをけ、一気に味山只人が真っ逆さまに降下する。

頭を上に、足を下に、構えるのは全全霊の

「墮ちろぉ!! クソ英雄!!」

ドロップキック。

呪われたビジュアルの頭のイカレた凡人、それのドロップキックが、嵐の空を支配する英雄の腹をとらえた。

「なに、それ」

「いいから黙ってぶっ飛べやぁああああああおああ!!」

「ぐぶッッッッッッッッッッ!!」

華奢なに食い込む耳男全霊のドロップキック、腹に直撃、そのまま飛行機雲を引きながら英雄が地面へ向けて吹き飛んだ。

「シャオラアアアアアアアア、言ったよなあ、アシュフィールドオオオ、空から引きずり下ろして、ギタギタにしてやるってよお!!」

笑いびながら落ちていく耳男、地面にめり込んだ英雄がふらつき、嘔吐しながらも立ち上がる。

「げぼっ、げほ!! げほ! ん、ハァ……」

口を拭い、上を英雄が見上げる。

ふわり、ふわり、大きな耳たぶで風に舞い、降りていくその男を見上げた。

「……ほんと、デタラメね」

その顔に浮かんでいる表ーー

読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

デモンズ

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