《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ED.No163【鮫がはじめに飛び込み、鯨がやってきて、最後に海で出來上がる】

條件達

"鮫島竜樹の友好度が一定以上"

"耳祭り"に鮫島竜樹と"タテガミ"が參加している

グレン・ウォーカーが生存している

シエラ1とシエラ・リーダー戦をソフィとグレンに任せる

"海原善人"がver2,0まで探索者になっていない

"久次良慶彥"がver2.0まで探索者になっていない

バベル島防衛戦でプランCを選び、"鮫島竜樹"と"食倶楽部"メンバーを生存させる

CLEAR!!

そして、とある3人が島に集う。

"悲劇"、今度こそそれでは終わらない

〜2028年 12月28日 バベル島 アメリカ街 食クラブ店にて〜

「はい! こちら5番テーブル! お晝のAランチ! イリエワニの生姜焼きセット2つお願い!」

「Bランチりました! ミズミ菜とダーツウオのソテーセット!」

「わ、味し!! え、怪種のおってこんな味なの?」

「下ごしらえが違うんだよ、この店は。あの災害の時の炊き出しのアレチマツタケのおこわも味かったなー」

種の味さに男のペアが朗らかに笑う。

給仕が元気よく丸テーブルひしめく店を進んでいく。

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お晝時。

バベル島防衛戦前は會員制レストランだった食クラブはいま、復興を目指す島の人々に寄り添う形で、全員に解放されていた。

混み合う店、活気のある聲が響くキッチン。

創意工夫がこなされ、しかし量もしっかりある料理に頬をほころばせる人々。

その中で、その男もまた木の皿に盛られた溢れる料理につりあがった三白眼を輝かせた。

「むお、これ、味えなあ。タテガミさん、これなんのだぁ?」

鮫島竜樹が、その口に収めたに舌鼓を打つ。

獣臭さはまったくないのに、噛めば噛むほど溢れる野生の味。力がどんどん湧いてくる。

「くく、お口にあったようで何よりです、鮫島さん。こちら、怪種27號"スナイノシシ"のイチボでございます、おっと、廚房が手薄だ、では、鮫島さん

ごゆっくり」

「おーう、わざわざ顔出してもらってすみませぇん、またゆっくり飲みましょうやあ」

丁寧に禮をして早足で廚房に向かうタテガミを見送る。

それにしても、怪種のもバカには出來ねーなー。

バベル島防衛戦以降、炊き出しをきっかけに急激に普及した怪種料理。

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見た目だと畜産のとみわけがつかないしい赤を鮫島が眺める。

「へえ、イチボ。あ、僕知ってるよ、鮫さん、おだ」

さわやかな聲は、鮫島と同席している者の聲だ。

鮫島は対面に座るソイツに返事をした。

「へえ、流石、獣醫學部詳しいなあ、オイ。……んで、クジラぁ、お前、さっきの話、本気かよお」

鮫島がを頬張り、話を再開する。

その顔には若干疲れが見えた。

「いや獣醫學部関係ないでしょ。イチボくらい誰でも知ってるって。……うん、本気だよ、鮫さん。もう親にも話して、これまでの學費も全部返してきた」

「……まあよー、お前の人生でよお、お前の選択だからそれは否定したくねえけどよお…… 探索者ぁ、それなりにキツいぞお」

「うん、だと思う。いま、僕は親が死に狂いで用意してくれたレールを自分で外してるんだと思う。々な人の気持ちを裏切って、周りから見ればトチ狂ったと思われてもしかたないよ」

「まあ、そこまで言ってねえがぁ、ほんとになるんかよ」

探索者ーー 鮫島がそう言葉にする。

対面に座っているさわやかなマッシュルームヘアの青年、久次良 慶彥(くじら よしひこ)はにかりとさわやかに笑う。

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「うん、僕は探索者になるよ。鮫さんと同じく、ね」

「……はあ、お前、優男の割にがんこだからなあ」

鮫島が年の離れた友人を見てため息をついた。

年末。

々あった、ありまくった騒や世界規模でのオカルト現象、それらがし収まったと思ったところに來た友人からの相談。

探索者になる。

短いメールを見た時は思わず額に手をやっていたのは覚えている。

「まあ、もう止めやしねえけどよお。なんでまた急に決めたんだよ、……あの、あれか? 聲のせいか?」

鮫島が自分の端末をテーブルに置く。お晝のニュース番組、ここ最近ある話題で、もちきりだ。

"聲" "ダンジョンからのお知らせ"

おそらく世界中、一緒だろう。

【また、先日の"集団幻聴事件"について、政府は47都道府県でのアンケート調査を完了したと発表しております。地方との協力で異常事態とも言える幻聴事件の調査を進めておりーー】

【またこの幻聴で數多くの人々が確認している"アメリカ合衆國"の他國に影響のある號級の極使用の可能について、合衆國ホワイトハウスは以前沈黙を続けています】

【海外の有識者からは幻聴の可能が極めて高いとの見方が強い一方、ニホン政府の現在の公式発表としては極めて重大なダンジョンの変化の予兆ととして捉えられており、諸外國との反応の違いに野黨からはグローバル意識に欠けるとの批判がーー】

ver2.0

ふざけた容とふざけた口調で、世界中の人間が聞いた幻聴。

初め人々はそれを完全に自分の幻聴、個人の何かの気のせいだと片付けようとしていた。

しかし、ネットとSNSで繋がったこの世界、その聲を同時に全世界の人間が聞いていたとわかれば話は違う。

理由も意図も全く分からず、しかし容はやたら騒なその幻聴にいま、世界中が混している。

最近やたら、ニホンでは新興宗教が立している話も聞くがおそらく無関係ではないだろう。

そして、アメリカ合衆國の號級使用。"アレタ・アシュフィールド"というワード。

鮫島竜樹はある程度の仮説を立てていた。

即ち、あの夜、奴らに協力して起こした"耳祭り"

テロリストになってまであのバカ2人が世界にかましに行ったのはつまり、そういうことじゃないのか、と。

奪われた仲間を取り戻しに行く。ああ、たしかにアイツらならやりかねない。

「鮫さん、どしたの?」

「あ?」

「いやなんか、笑ってたからさ」

「お、おお、悪い、思い出し笑いだ。最近、良いコメディを見たもんでなあ。んで、久次良、やっぱお前が探索者になる理由はこれか?」

端末のニュースを指さす。

「まあ、正直それもあるんだよね。だってさあの容だとまるで探索者にならないとこの先生き殘れないよ、ってじじゃない?」

「んー…….まあ、なあ。容全部信じるわけじゃねえが、不気味なのは変わりねえ」

鮫島はここバベル島で、そして久次良はニホンでその聲を聞いていた。

「ん? それも? 他にもまだなんか理由があんのかぁ?」

「……笑わない?」

「あ? 笑える容なのかぁ?」

「……最近、夢を見るんだ」

「夢ぇ? 探索者にならなかったらやべえことになる夢かよ?」

「いや、違うよ。……その夢さ、めちゃくちゃリアルなんだ。……世界がさ、いつのまにか終わってて、滅んでるんだ」

「……………」

「それでね、その中に鮫さんも出てくる。海さんも、一姫ちゃんもね」

「ほおん、続けてえ、どうぞぉ」

「そんな睨まないでよ。一姫ちゃんとは何もないんだから。……まあ、その、あれだよ。その夢でさ、鮫さん、死んじゃうんだ」

「……おいおい、久次良くうん。なんだ、なんだぁ、お前え、夢で俺が死ぬから、現実でも危ねえってか?」

「笑わないって言ったじゃん。……わかってるよ、自分でも馬鹿なことは。でも、ホントに怖いんだよ。いつも、夢が覚めてホントに安心するんだ。……夢ん中でさ、鮫さん、ぼくの知らない所で死ぬんだよ」

「ふうん……」

「海さんと、鮫さんがよく覚えてないんだけど、2人でどこかへ行くんだ。見たことない高校生くらいの子達と一緒にさ。ぼくは、何故かいつも一緒に行けない。ぼくだけ、置いてかれるんだよ」

「信じて待ってたんだ。2人なら絶対大丈夫だって。でも、いつも、いつも鮫さんだけいないんだ。ぼく、いやなんだよ。そんなの」

「いじりにくいなあ。……まあ、なんだ、久次良」

「………?」

「俺ァ、しなねえよ。一姫置いて死ねるかよ」

「……そうだね。その通りだよ、鮫さん。あんたは死んじゃあならない。……も(・)う(・)2(・)度(・)と(・)あんた達に置いてかれるのはごめんだ」

目を見開いた久次良。その言葉は探索者である鮫島すらし押される何かがあった。

「久次良?」

「……え? あ、ごめん、なんかしぼうっとしてた。移の疲れかな。この後件も下見したいんだけどな」

「ああ、まあ、島にゃ酔いもあるからなあ。探索者適があっても慣れない頃は無駄にテンション上がって疲れに気がつかねえとかもあるさぁ」

「ふうん、そんなもんなんだ…… まだもうし時間があるな……」

「時間ん?」

「ううん、こっちの話。ねえ、そういえばさ、鮫さん」

「アレフチーム、鮫さん、友達だったんでしょ?」

「だったらなんだよ」

「あの夜、ニュースになってた夜だよ。アレフチームが起こした本部襲撃事件。眉唾だけど、彼らに協力した耳のお面の人たちがいたんだってね」

「……ああ、らしい、なあ」

「あれさ、鮫さんも一枚噛んでたりして」

「…………」

がたん! がしゃああん!!

「ああ、料理長! 大丈夫っすか?!」

「どしたんすか、急に?! マンガみたいにずっこけてましたよ!」

「し、失禮しましたー!!」

廚房から誰かがずっこける音、そして皿が割れる音が響いた。

鮫島は思わず顔を覆う。

タテガミさん、アンタ……

「あれ、まさかまさかのここの料理長さんも? ふうん、なるほど、ねえ」

「なんだあ、その目はぁ」

「いーや、鮫さんがそこまでれ込むなんて珍しいなって。あんた、人をかなり選ぶとこあるからさ」

「てめえが言うな、人間嫌い」

「それ、ブーメランだよ。でも、そっか、し殘念だなあ。鮫さんがそんな気にる人たちなら一回會ってみたかったなあ」

鮫島は何も言えなかった。

アレフチーム、世界を敵に回し、おそらくはまだ生きているあのバカども。そのバカ達のうち2人は間違いなく良い友人だった。

なぜそこまでれ込んだか。鮫島は久次良にその答えを決して言うことはないだろう。

お前たちといっしょにいたときみたいにたのしかったから。なんて、恥ずかしくて言えない。

「會えるだろお、そのうち」

だから、話を誤魔化そうとして適當に口をかしたら思わずそんな言葉が出てきた。

「え?」

「あいつらは探索に行ったんだよ、世界が隠したアイツらだけの報酬を探しによお。んで、まあ、あれだ、俺らも探索者、向かう先が同じなら、そのうちまた會えるさ」

しまった、なんかかっこつけたこと言っちまった。

言ってすぐに、鮫島は後悔する。

「鮫さん、顔赤いよ?」

「うるせえんだよお」

にしし、と久次良が年相応の笑みを見せた。鮫島は誤魔化すようにを再び頬張り始める。

「まあ、それもそっか。ここからは3人でまたチームを組むんだし、僕らならそこそこ良いとこいけるだろうしね」

「ああ、そうだな。……はい?」

「え、なに、その顔は。なんかぼく変なこと言った?」

「いや、なんだよ、チームってよぉ」

「あ、まだ言ってなかったけ。ぼくのフレッシュマン制度の擔當、鮫さんなんだよ。だからさ、そのま

ま組もうよ、チーム」

「え、ええ…… 初耳なんだけどお」

「あれー? 通知行ってると思うけど?」

「まあそういうこともあるかあ、ん? 待てよ、久次良ぁ、お前、さっき3人って言ったかあ?」

鮫島の問いかけ。

その言葉に久次良 慶彥が今日1番の笑みを浮かべる。

そして時計を見つめた。

「うん、そろそろだね」

かららん。

ドアベルの鳴る音。

「あ、いらっしゃいませ! お客様、何名様でしょうか?」

給仕の言葉に、店ってきた男がキョロキョロし始める。

「あ、こっちこっち! こっちだよ! すみません、給仕さん、この席、1人追加で!」

久次良が椅子に座ったまま手を振る。

男が同じく、こちらに手を振りかえしてきた。

ずかずかと歩いてくる。歩き方だけで図々しさが滲み出ている。

黒い短髪、すこし日焼けした、何故か年末のこの時期に腕まくりしたシャツとスラックス姿、安の革靴の音が妙によく響く。

鮫島が、目を見開く。

チラリと久次良を見ると笑いを堪えている。

イタズラが功したガキみたいな顔だ。

「へへ、鮫さんにちょっとしたサプライズだよ。3人目、これで3人、ようやく揃ったね」

「んあー、ったく、なんだよ、お前らぁ、ふん、來るなら來るって言っとけよお」

鮫島のぼやきに久次良が笑う。3人目の男もニカリとドヤ顔で笑った。

ふん、アジヤマ、グレン。

まあ、お前らなら大丈夫だろ。どうせ今もバカがバカなことしながら生きてんだろ。

まあ、こっちも大丈夫だ。お前らと負けず劣らずのアホが揃ったからなあ。

また、會おうぜぇ。今度は5人で合コンでも行くかぁ。

鮫島がしニヤついてしまうを抑えてつぶやく。

「まあ、難の相が出てる奴がだいぶ増えちまうけどなあ」

「鮫さん、それ自己紹介?」

男も席に座りながら、鮫島をイジる。

「うるせえよ。大學のミスコン野郎と、ユキシロの令嬢、いやもう社長か。それにアメリカの金髪たらし込んでる社畜にゃ言われたくねー」

どーやったらオンラインゲームで金髪が家に転がり込んでくるみたいなイベント発すんだ、てめーは。

鮫島が口を尖らせた。そして 3人が、笑う。

味い飯と騒がしい店。男3人のバカ話もたしかにその店の景を構する絵の一枚。

そして、鮫島が咳払いをして。

3人目の男に向けてギザ歯を剝き出して笑った。

「まあ、なんだ、ーー久しぶりだなあ、海原ァ」

鮫がはじめに飛び込み、鯨がやってきて、最後に海で出來上がる。

終わっていない世界、揃った3人。

さあ、探索の始まりだ。

ヒロシマも読んでくれた方への禮を込めたお話です。しば犬部隊の作品をずっと読んでくれてありがとうございます。

もうしだけつづくんじょよ。

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