《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ED.No58 【世界の中心で咲く華に】

條件達

"雨桐"の生存

"王"の生存

"雙子の神仙"が"アレタ・アシュフィールド"と戦闘していない

雨桐からの好度が"執著"以上

王からの友好度が一定以上

雙子の神仙からの好度が"所有"以上

バベル島防衛戦にてプランCを選択、王龍救援ルートにて雨桐と王を"親子"にしている

「む。ぐう、せ、仙人殿、こ、これはあまりにも、その」

「あら、おかしなことを言うのね、あなた」

「ええ、ほんと、おかしなことを言うわ、あなた」

男がいた。

部屋には各代の指導者の肖像が並ぶ。大陸の超大國、その歴史をこれまで決めてきた部屋だ。

高価な調度品に囲まれた執務室、白樺の木をつかって贅沢に作られた機はお気にり。

「あなたにお願いすることなんてめったにないのよ? あなたが私たちにお願いすることはたくさんあってもね」

「あなたはただ、わかりました、神仙さま。そう答えればいいだけなのに、あらあら、どうしたの? 酷い汗だわ」

その機に2人の。全く同じ顔をした黒いワンピースのたちがそのそうなを乗せている。

くすくすと笑うが、足を揺らすたび薄い生地から形がわかるが艶かしくく。足をゆらすたびに、ワンピースの裾からこの世のものと思えぬきめ細かなが覗いた。

"雄"であれば誰しも目がいってしまう景、だが、男はそれどころではない。

見た目は妖でも中は悪鬼よりも恐ろしい超越者、男はその辺りをよく弁えている。

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ただでさえ日頃の暴食と運不足のせいで高い圧が、焦りと恐怖でやばいことになっていた。

「お、お気持ちは、お気持ちは理解いたします、し、しかしですね、やはりこの文書と要求は……」

"北京文書"

そう題された簡素な書類、大きな印が表紙に押され、桃の香りがするその文書に男は頭を悩ませていた。

突如、恐ろしき神仙たちが用意してきたその文書。

それは男にとって、いやこの國、中華人民共和國にとっての劇薬だった。

「次の"全人代"で議題に挙げるだけでいいのよ? その程度のことがなぜ出來ないの? なんのための、一黨獨裁、中央集権の政府かしら」

「ねえ、あなた。いま、もう一度思い出してみてはどうかしら」

「くす、ええ、そうね。もう一度思い出してみなさいな。そもそも未だこの大陸をお前たち現代に生きる人間が支配できているのは誰のおかげ?」

「扱えきれない叡智、黃泉がえりし數々の英傑、それらを全て屠り、この國をお前たちに返してあげたのは誰の、おかげかしら?」

「む、そ、それは、忘れてなどおりませぬ。九天玄様、白水素様…… あなた様たちが暴走した伝説たちを止めてくださったことを」

「あら、だれか1人忘れてないかしら?」

「ひ、も、もちろん、あなた様たちのお娘!! 彼の助けあってのこととは理解しておりますとも! ええ」

「そうよね、あの子がいなければ私たちだってお前達側に立つことはなかったわ」

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「そうよね、私たちが今、お前たちの言うことを聞いてあげてるのはひとえに、あの子に今の世を生きていてほしいからに過ぎないのだからね」

くす。くすくす。

いたいけな達、しかし彼たちは心をわせる魔しさをめる。

長機の端と端、両端にそれぞれ腰をかけ、を鳴らしながら笑う姿は形容できないを持つ。

まあ、男にとってそれどころでは無さそうだった。

雙子がくすりと笑うたび、その脂ぎったからまた脂の浮いた汗が出る。

男は、その2人の神仙の恐ろしさをよく理解していた。

それが理解出來なかった政に関わる人間はもう、この大陸にはいない。

恐怖を理解することができる、だからこそこの男は未だにこの國のトップに存在することができていた。

「む、むう…… し、しかし、仙人殿、これはやはり、というか、この容はいささか、その、まずいというかなんというか」

「あら、またおかしなことを。そもそも彼の國を最大の仮想敵國としていたのはお前たちでしょう? ねえ、げんにょ」

「あら、またおかしなことを。いずれ敵対する未來があるのなら、今のうちにはっきりとこちらの立場を明確にしておく。それがこの大陸に棲まうものの古代からの覇道よ、ねえ、もとじょ」

「む、むう、彼の國による世界規模に変化を及ぼす"大號級の無斷使用"、"スイス條約"違反、その事実を國際社會に正式な國家発表として提出、國連加盟國による追及と、必要であれば経済制裁を視野にれた対米政策…… 神仙さま、やはり、これは過激すぎでは……」

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「まあ、なんて煮え切らない男かしら、ねえ、げんにょ」

「まあまあ、黃帝はもうし肝の座った男だったわ。あなたも、かの者のの傍流ならそれらしいところを見せてしいわね、ねえ、もとじょ」

「………む、むーん。あ、あの、神仙さま、ちなみに、この"アレフチームの國家戦力を挙げての追跡、及び懐"とは? いえ、その、この文書は先日の"聲"を元に作られておりますよね? それを信じるのならば、その、アレフチームは懐ではなく殲滅を目指す……… ひえっ」

男が、すぐに口をつぐむ。

機の上に座りこちらを見下ろす神仙の2人から、はっきりと殺意をじたからだ。

「「わたしたちの地雷がどこにあるかは、今のでわかったわね? 総書記殿?」」

「ひゃ、ひゃい」

男がらしそうになる。それほどまでに神仙は恐ろしかった。

ぷしゅう。

執務室、黨首室の扉が開いた。

この部屋に自由に出り出來るのは數ない(神仙はなんか気付いたら勝手に現れる)

男が開いた扉を見つめて、顔を輝かせた。

「まあ、げんにょさま、もとじょさま、その辺りでどうか勘弁して下さいまし」

「神仙どの、あまり我らの黨のトップを脅すのはやめてくれ。まだ同志にはこの國を率いてもらわねばならん」

2人の男

髪をひとまとめにしたパンツスーツ姿の。神仙にすら劣らぬ貌、黃金比の。アーモンド型の綺麗な目がらかく微笑む。

隣、小さいおっさん。開いてるか閉じてるかわからない瞼から覗く目が異様に鋭い。

「あ、雨桐くん! 王! い、いいところに! そ、その神仙殿が、な、その、なんというか、あ、はは」

「まあまあ、総書記殿。落ち著いてくださいまし。どうなされたのですか?」

「じ、実はこれ、その、アメリカを刺激するような要求をなされておいでで、いや! いやいや! 私個人としてはもちろん、お力になりたいのは山々なんだが、き、君達からもお言葉を添えてくれないか?」

恥も外面もなく、男が本來部下であるはずの雨桐と王に助けを求める。

この男のしたたかな所だ。

表では上意下達、厳しい獨裁者の顔を全面に出しつつ、裏では能力の高く、自分に反旗を翻す可能のある人間にあえて弱みを見せる。

天然の人たらし。

それが今の中華人民共和國、共産黨のトップの姿。

男がドタドタと機に置いていた"北京文書"を雨桐に見せた。

すがるような目、お願い、あのワガママ雙子仙人なんとかして! そう目が語っていた。

雨桐が、その貌、仙人に等しい魔をにこり、菩薩のような笑みを浮かべて

「あ、雨桐くーー」

「まあ、とてもいいアイデアじゃないですか。さすがは神仙のお2人。かの黃帝に知恵をお授けになられた叡智の仙人さまらしい素晴らしい文章ですね」

「え、、あ、雨桐くん?」

「……はあ、同志。誠に、その申し訳ないのだが、世の父親というのは娘のワガママには勝てん。普段ワガママを言わん子ならなおさらな」

「わ、王……? あれ、うそ、そういうこと?」

男は理解した。

こいつら、味方じゃねえ。むしろーー

「まあ、何がそういうこと、なのでしょうか? 総書記殿、いいではありませんか。我が國はいずれ世界に広く、全世界全中華をし遂げる覇道の國。米國が行ったのはその覇道からかけ離れた邪道、大國としてなすべき責任を我が黨が世界に先駆けて行う。ええ、あなた様の名前は長く中華の歴史に殘ることになるでしょう」

「……ああ、帝辛の気持ちがいますごくわかる気がする…… 王、お前の娘は恐ろしくしく、そして恐ろしいな」

本命はこちら。おそらく神仙を通してこの書類を用意したのはこちらだ。それに気付いてしまった。

「「あら?」」

男の言葉に、神仙が微笑む。

「ひい!? いやいやいやいや、褒め言葉です、褒め言葉ですとも神仙様!」

「げんにょさま、もとじょさま、あまり総書記殿をおいじめになられないでくださいな。彼は必ず私達のことを考えてくださるのですから、ねえ?」

にっこり。

笑う

男は々考えた。自分の保、どうにかこの場を切り抜ける言い訳、そしてこの書面通りにいた場合のリスクと國益。

その時間、2秒。百面相を終えた男が、がっくり肩を落とし、自分の席に戻る。

「……はあ、普天之下 漠非王土 率土之浜 莫非王臣…… これを私の代で行うことになるとはなあ…… ええ、全ては我らが偉大なる仙。我ら中華の華の心のままに」

腹を決めた。この切り替えの速さが単なる農家の次男だったこの男を大陸の王にまで上り詰めさせた。

「「ふふ、腹を決めたあなたは、なかなかに素敵よ」」

「……神仙さまに言われ、神仙にされし桃の娘には諭され、頼りの戦友は娘に頭が上がらないとなれば、もはやは覚悟を決めるより他ありますまい」

自分で調合した烏龍茶をすする。すっかり冷めてしまっていた。

「……ひとまずは米國へ裏に潛させている工作員を即時、全員帰還させ、準備ができ次第、3月の全人代で発表させて頂きましょう。今のところきとしてはそれでよろしいですか、神仙どの」

「「ええ、問題ないわ。ああ、そうだ。ご褒をあげる、良い判斷をしたご褒ね」」

「はて、私はこう見えてもらえるものはもらう主義です。何を賜れるのでしょうか?」

余裕をし取り戻した男が戯ける。

神仙が満足そうにその様子を眺めて。

「「4月、全人代が終わった頃より以降、主要都市に最低1人は指定探索者を置いておきなさい。出來ることなら、軍も即応態勢を取らせておけばいいでしょうね。これは、神仙として、中華の王へ対する予言です」」

その聲、その顔は人にあらず。

超越者、神仙の顔で2人の雙子が王へ言を送る。

それは中華の長い歴史の中、何度かあった歴史の転換。

仙人より、王へ賜れる神言。

「……誠に謝を。我らの神仙。どうかこの中華をお導きくださいますよう」

「「ええ、あなた達が私たちの大切なものを庇護する限りは。中華を世界に中心に押し上げてあげましょう」」

ふわり。

鈴なりの笑い聲とともに、黒いワンピース姿の神仙ふたりが霞かかり、消えていく。

男が大きくため息をついて、ふかふかの椅子に沈み込んだ。

「つ、疲れたぁ…… 怖すぎる、……王、君はよくあの2人にあの態度を取れるものだな」

えらく出た腹を膨らませ、男が椅子にとけるように座り込む。ぎしり、椅子が悲鳴をあげた。

「慣れだよ、同志。まあ、君も君で肝心なところは上手くやっているじゃないか。あの2人も態度こそあれだが、君のことはそれなりに気にっているはずだ。でなければこうして私は君ともう話すことは出來なかったろう」

「こ、怖いこというなよ、王」

笑えない冗談だ。

共産黨のメンバーは実は3年前と比べてかなりれ替わっている。

いや、れ替わっているというのは語弊がある。

人員代という意味ではほぼ変わらないのだが、神仙の逆鱗にれた何名かは何日か行方がわからなくなり、そのあと、人が変わったかのように格の変貌を遂げて帰ってくるのだ。

共産黨の中で冗談めかして言われる"神仙隠し"、汚職や賄賂にかかわると仙人に攫われて自分と同じ見た目の別人にれ替わりをさせられる。

笑えない噂だった。

「ふふ、総書記殿、いつもご苦労をおかけいたします。それでは、私達はこれで」

「ああ、1つ。1ついいかな、雨桐くん。……アレフチーム。この文書にかかれているアレフチームへの対応だが…… 本當は君が必要なのは1人だけだろう」

「……ふふ、さすが。お2人の神仙が目をかけているだけはありますね。我ら中華の王」

「なに、戦友の娘のことだ。きちんと把握しておかなければ結婚式を勝手に済まされたりしてはたまらないからね」

「……君が本當にしいもの。それだけを選ぶのならやはり、アレフチームは殲滅するのが手っ取り早い筈だ。にもかかわらず神仙の提案には懐、と表現されている。理由が、聞きたくてね」

しの沈黙。

雨桐が、男の言葉にふりむく。

ーーっ。

立場上、薬品やしの手香が効かないはずの男でさえ、初を思い出す。

そんな顔だった。何かを想う、顔だ。

「とても、味しいお酒でした」

「……ん?」

「あの方と、神仙さまと頂いたお酒。なんのこともないおでん屋で出る市販のお酒です。ですが、生まれてこの方あれ以上に味しいお酒を飲んだことはありません」

「お、酒?」

「はい。あの方は私の話を聞いてくれようとします。あの方は私が聞きたいことを話してくれます。でも、あの方が1番嬉しそうにおはなしされるのは仲間の話、アレフチームのことを聞くと、彼はとても嬉しそうなお顔をされていました」

「そのお顔を見ながら飲むお酒が、ほんとうに味しくて、味しくて」

たおやかな指先が互いに絡み合う。その手が本當に絡みつきたいものは今や、最前、夕焼けの彼方に。

「私はあの方がしい。でも、それは抜け殻では意味がない。全て失ったあの人はもう、あの人ではないから」

「ありのまま、雲が行くように、水が流れるように、只、あのかたのまま生きているあの人がしいのです、アレフチームはあの人を構する大事な要素。それを壊してしまえばもう、あの人は、あの人ではない」

「ええ、例えあの人が星を追いかけて闇の中に沈もうとも引き上げて見せましょう。全宇宙、その中心が中華なれば、世界の真中に咲く華として、星すらもその懐に引きれましょう。そして」

「また、おでん屋さんにいくのです。今度は神仙さまと、お父さんも一緒に。ええ、全てです。それが全てなのですよ、我ら中華の王よ」

「……そうか。わかった。行っていい」

男に向けて雨桐があたまをさげる。

完璧な所作、流れる水のように濡れ羽の髪がきに合わせて揺れていた。

「苦労かけるな、同志」

鋭い目をした好々爺、王が靜かにつぶやく。

「なに、慣れているさ、戦友」

軽く返事をして、男が2人を見送る。

ぷし。

圧力ドアが閉まった。

人の気配が完全に消えた、その瞬間、男は気が抜け、おもいっきり椅子に座り込む。

大きく息を吐いて、吸って、一言。

「…… 害怕的〜〜(こっわ〜〜)」

神仙すら魅せる、人と神の融合

その執著の対象となってしまった1人の人のことをし思い、また大きく息を吐いた。

……

私は思ったよりも強なのですね。

つい、心のままに語ってしまいました。

造られた生命、決められた定め。あなたはそれを笑ってくれた。

あなたは予、あなたは変化、あなたは生そのもの。己のままに進み続けるあなたはとても眩く。

ええ、その輝き。私はあなたの全てがしい。あなたをあなたとして構する全て、それごとあなたを貰いに行きます。

「……雨桐、頼むから、前みたいな危ないことはしないでくれよ」

「ふふ、お耳のお面。お父さんも似合ってましたよ」

その言葉に、お父さんが睨んでくる。

い。そう思ってるのをバレないようにし凹んだフリをする。

「ええ、わかってますよ、お父さん」

隣にはお父さんがいる。

「まあ、王の小僧。雨桐には私たちがついているわ。だから大丈夫よ、ねえ、夕顔」

「ええ、王の小僧。雨桐はあなただけの娘じゃないのだから。ねえ、朝顔」

ふわり、ふわり。2人が、可らしい私の庇護者、そして私の雙子が當たり前のように霞をまといて現れる。

「ふふ、朝顔、夕顔。ありがとうございます」

「「えへへ」」

恐ろしき神仙であろうとも、私が2人の、朝顔と夕顔の教育係であることは変わりなく。

これがあなたが救ってくれたわたしの家族。かけがえのない私の寶。

ああ、でも、ご存知でしたか? 味山さま。

中華のは、家族ぐるみで男を囲うのですよ?

「例え星とて、例え鬼とて、世界の真中で咲く華に比べれば見劣りしましょうとや」

あなたの與えてくれた家族とともに。

私たちの探索を、始めましょう。

ご覧頂きありがとうございます。

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まだまだあるよ、EDナンバー。たくさんあってすみません。

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