《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ED.No56【生命の詩、子守唄となりて大地に捧ぐ】
條件達
プランCで貴崎凜を救いにゆく
シエラチームと戦闘し、シエラ6が戦場から離する。
最低でも一回、"マザー・グース"と遭遇している
"委員會"ルート以外のルートでver2.0を迎える
ラドン・M・クラークが消失している
シエラチームに"味山只人"が加していない
アリサ・アシュフィールドとの友好度が"知り合い"以下
はい、みなさん、こんにちは。俺が誰かわかります?
ああ、いや、わかんないですよね。こんなんじゃ。
じゃあはい、ヒント。
イカしたガスマスク裝備、マーベルヒーローのような隠された大いなる力、世界の暗部の実行部隊、一応そのメンバーの1人。
え、まだわかんない? 影が薄い?
ああ、じゃあ、もういいや。はい。
どーも、シエラ6です。え、うそ、これでもわかんない?
あのほら、あれさ。味山只人と貴崎凜の確保任務に失敗した間抜け、島の一大事にカジバドロボーのようにコソコソしてたら、耳の化けに皆殺しにされた可哀想な連中さ。
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まあ、その中でノコノコ逃げたのが俺なんだけど。
え? 誰に向かって話してるのか?
獨り言だよ、獨り言。まあ壊れかけの裝備についてる思考メモに記録してんだけどさ。
ここしばらく、もう誰とも話してないんだ。なぜかと言えばーー
「ちゅるるる♪」
「ちょろろろろろ♪」
「ジュロ」
オウ、お母様とお姫様2匹が目を覚ましやがった。
うわぶ、うべ。
お姫様2匹が、おはようと言わんばかりの俺の顔をぴょろぴょろびる細い舌で舐め回してくる。無臭なのが救いだ。
知ってるか? 蛇の巣って以外に暖かいんだ。こいつらが狩ってきた怪種の羽やらなんやら。驚きだが、やはりこいつらには知がある。
ふわふわしたものが暖かいって知ってるんだな。
「ちゅる」
こどもの蛇。といったも地上のニシキヘビと同じくらいのサイズのやつが尾を俺の方に向けてくる。數日間ここで暮らすようになってから、これが尾をマッサージしろ、の合図だと理解するようになってた。
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「ちゅるるる……」
ゆっくりとその尾にれる。もにもにして、ひんやりしてまあ、割と怪のくせにり心地がいいんだ、これ。
「ちゅろ♪」
「ちゅるる!!」
もう1匹の蛇のこどもが自分のもでろといわんばかりに俺の首に尾をおしつけてくる。
ぐえ、きつい。こいつらちっこいとはいえ、怪種だ。力強い。
「じょろ」
一際、でかいお母様。いやもうほんと、ここから見たら山のようにでけえ。
IDDシステムで熾される"酔い"があったとはいえ、よくこんなモン相手に俺ら戦ってたな。
"マザー・グース"
探索者に畏敬の念を込めて呼ばれる怪種の中でも一際強い個。
味山只人とスカイ・ルーン追跡の際に作戦行程の邪魔になるんで始末したはずだったんだけどなあ。
……ああ、そうだよ、俺はしくじった。シエラ2の指示通り、大を離したはいいんだが道中、コイツらに鉢合わせちまった。
「いやあ、あん時は焦ったなあ。中から引き裂いてやったのに回復してんだもん、お前。蛇すげえわ」
俺の國で、蛇は悪しきものとして扱われてると同時に再生の象徴としても知られている。
皮を繰り返し、自分よりも大きなものを喰らうその姿に古代の人は神に似た何かをみたのかも知れない。
まあそのあとはあれだよ、ラウンド2。互いに死力を盡くしての殺し合い。もう、ほんと俺頑張ったぜ? 虎の子の"融解結合"まで使い倒して、なんどコイツの巨に押し潰されても跳ね除けてよ。
「……なんで、まあ、俺はこんな中途半端だったのかねえ」
マザー・グースとの死闘の最中、ちゅるるる、か細い悲鳴が俺たちのきを止めた。
音もなく空から飛來した別の怪種、ヘリコプターくらいの大きさの鳥の化けが、に隠れていたマザーグースの子どもを攫っていったからだ。
なんでだろうなあ、ほんと。
考えるまもなかった。気付けばさ、俺は意味もわからずそのこども蛇を助けてた。融解結合で進化した能力をフル活。
飛び去ろうとする鳥の翼に取りつき、それをもいで地面に叩き落とす。こどもの蛇は爪で摑まれて傷付いていたが
「ちゅるるる」
「ぶべ」
今じゃこの通り、ちょうおてんば。俺の首にからみつき、頭にとぐろをまき始める。重いんですけど。
結局、鱗に傷がついたくらいで済んでる。
「ほんと、なんでこうなっちまったかなあ」
地に落ちた鳥の化けは哀れ、蛇の神さまみたいなその巨に瞬時に巻きつかれ、ののよだつ骨がべきべきに砕かれる音とともに死んだ。
殘っていたのは俺たちだけだった。
そこでもう俺はガス欠。元々人改造で無理やりに馴染ませた異端の力、あの完、グレン・ウォーカーみたいに天然の適合のDNAがあるわけでもない。
仮初の力、偽の資格。
まさに、スペア。一皮剝けば俺、シエラ6はそういう存在だ。チームにいた頃はそういうの考えたくないからあまり喋らなかった。
いやなんだ、人はあれだね、仕事から離れて始めて本當の自分を見つけることが出來るのかもしんねえなあ。
……ほんと、なんで、あん時、こども蛇を助けたんだろう。
「ちゅる」
「こら、甘噛みすんな」
フカフカの羽のカーペットに靜まる。あたたかく心地よい。
まあ、助けたことに後悔はしてない。
そのままマルス・スペアを使いすぎて意識を失った瞬間、悪くないって思えたんだ。殺してばっかだった俺の人生、最後に思えたんだよ、何かを助けるのって結構気分がいいんだなって。
「……まさか、怪に助けられるとはなあ。なあ、マザーグース、お前俺のことどうするつもりなんだ?」
子ども蛇をあしらいながら、とぐろを巻いてデカすぎて顔が見えない母ヘビに語りかける。
そう、俺は生きていた。
ダンジョンの中、怪種の目の前で意識を失う。それは死を意味することだったが、俺は生きていた。
気付けばこの暖かい化けヘビの巣の中でグースカいびきをかいてたわけだ。自分のいびきで目が覚めるまでぐっすり。ここ數年で1番深い眠りだっだと思う。
「ちゅろ」
「ちょろ」
「ああはいはい、でろね、はいわかりました」
「ちゅろ♪」「ちゅろろ♪」
まとわりついてくるひんやりボディを適當にでる。子ども蛇が歌うようにを揺らしていた。気持ちいいんだろうか?
まあ、そんなこんなで、だ。俺は生きている。初めは巣に持ち帰られて非常食かこどもの狩りの練習道にでもさせられるかと思えばそんなことはなかった。
「るるるるる」
でか蛇。マザーグースがみじろぎする。そろそろ母親の完全な目覚めが近い。
俺は今、怪種とともに生きている。コイツらともに寢て、ともに起きて、ともに狩りに出かけている。
巣に連れ來られてしばらく、親蛇がねぐらであるから這い出る時にこども蛇に小突かれて狩りに連れて行かれたその日から。
わけわかんねえだろ? 俺もだよ。
だが不思議と、俺は今、もうまったくと言っていいほど元の生活に未練はなかった。
任務の日からもうかなり日がたっている。裝備の通信機もいかれていて救援信號も出せない。まあ、出せたとしても俺が助けを呼ぶかどうかは正直微妙なところだ。
シエラチーム。悪いが俺は連中からしたら外様も外様。奴らは俺以外みんな共通點を持っている。
奴ら、シエラ2からシエラ5はアリサ・アシュフィールドというの馴染連中らしい。なんでも彼をこちら側に墮とさない為に自ら汚れ仕事に志願したとかなんとか。
ご苦労なことだ、そのノリがあまり合わなくて饒舌な俺が無口になってしまっていた。
俺は違う。昔から殺すことだけが得意で、それを続けていたら落ちるとこまで落ちてた。それだけの話だ。
ああ、だけど、なんだよ。
くそ、化けの蛇と暮らす? 馬鹿げている、意味わかんねえ。
だけど俺は、今、生まれて初めて人生をたのしいとじていた。
ダンジョンの日が落ちれば巣に帰り眠る。明るくなれば起きて水場へいってを潤す。腹が減れば怪を殺し、その中を焼いて食う。
心強いヘビの神様と一緒に。それがその暮らしがに合っていた。ここには噓つきも汚ねえ連中もいない。
ただ、狩るか、狩られるか。それだけしかない。
「るるるるるるる、るるるるる」
目覚めが近いな。今日はそろそろ外に出て狩りのタイミングだろうか。
コイツらは多分ただの怪じゃない。明確な知がある。食う為だけに獲を狩ってるだけじゃないら、
食わないんだよ。
周りの木々を食べすぎる馬鹿でかいサイみたいな化け、暴れ回るカエルの化け、獲を食いすぎる鳥の化け。
それらが現れた瞬間、親ヘビの狩りが始まる。
コイツらはまるで、そう、ダンジョンの生態系を守ってるみたいな。
「るるるるるるる、シュルルルルルルル」
巨がき出す。
お目覚めだ。さあ、今日はどこにいくんだろうな。
「ちゅるるる!」
「ちょろろろろろろ!」
親ヘビの鳴き聲に合わせて、子どもヘビもそれに張り合うように鳴き始める。まだまだ威厳はないが、元気なのはいいことだ、そうだろ?
「チュ!」
「ちょろ!」
「ああ、はいはい、わかった分かった。乗っかるから待てよ」
俺はもう、戻る気はねえ。
どうせ俺がいなくても、"スワンプマン・プログラム"が発している頃合いだ。
シエラチーム、ある異星存在のスペアを武裝として與えられた世界のウエットワーカー。
武裝がスペアなら、本人達もスペアだ。
俺たちシエラチームには2つの欠員が発生した時のバックアップが用意されている。
1つは"コンティニュープログラム"
死亡した瞬間、の中にあるスペアたちの再生機構を利用して蘇生させられる仕組み。まあ、これは々弊害がある。記憶障害、神汚染、その他多數のバグ。
おまけに作が不安定で100%じゃねえ。ふん、本の天才、ラドン・M・クラークの構想だけ凡人どもがパクッた出來損ないのプラン、まあ、俺らにはお似合いだけどな。
あともう一つ、これは最悪だ。
"スワンプマン・プログラム"
記憶、人格、嗜好。そしてDNA構造。全てが當人と全く同じのクローン人間による欠員の補填。
まあ、あれだ。
多分もう、地上には新たなシエラ6が存在している。
殺しが大好きで、それしかできねー出來損ない。
自分が誰かのクローンてことも知らずに今も多分、どっかの誰かにとって邪魔な誰かを殺してんだと思う。
「っとに、くだらねー」
戻る気はない。
マルススペアの調整も出來ねえ、酔いによる神汚染もそろそろ始まる。
まあ、長生きは出來ねえだろうけど、もういい。
俺はこいつらとここで生きていく。
「ちょろろろろらろ」
「ちゅるるるるる」
丸太よりでけえ、それによじ登る。子ども蛇が歌いながらついてくる。
登る先はへびの神様の頭の上、ここが1番綺麗に聞こえる。
首をもたげる。俺の目線が高くなり、一気に蛇がき出す。
から出た。
石によって照らされるダンジョンの世界。
灰の荒地、砂ぼこりの舞う空気、低い木、耳を澄ませば聞こえる湧水の音。
これが今の俺の世界、上よりよほどシンプルで心地よい。
マザーグースの頭の上でおもいきり背びして空気を吸う。埃臭え空気、ああ、これでいい。
「ちゅるるるるるるるるるる!」
「ちょろろろろろろろろろろろ!」
「ジュロロロロロ、シャロロロロロロ」
マザーグースたちの歌聲が世界に響く。
それは誤魔化しようのないシンプルさ。
生きて殺して食べて寢て起きて、また生きる。
生命の詩、子守唄となりて大地に捧ぐ。
おっと、そろそろメモリの限界か。じゃあ俺の記録はこの辺で。俺が死んだあと、どっかの誰かに屆いて、こんな馬鹿がいたことを知っててくれればもう、それでいい。
シエラ6、オーバー。
俺はここで、生きて死んでいく。それが俺のライフの答えだ。
【ピンポン、ぱんぽーん!】
【新規トロフィー"怪の隣人"を獲得した人類が現れました!】
はい、趣味丸出しの話です。
地上の生活に疲れた男が大自然の中で本當の自分と向き合う。好きなんです、そういうの。
もうすこしだけエンディングナンバー続きます。次回はアイツ、人知竜エンド!
是非ご覧くださいませ。
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モテない陰キャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の美女3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜
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