《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》ED.No84【探索者、貴崎凜の気付き】

條件達

"貴崎凜"の生存

の殘り滓"鬼裂"の保有

バベル島防衛戦にてプランCを選び、なおかつ、人知竜から貴崎凜を救い出す

"耳"から貴崎凜を守り抜く

"東條"が死亡している

"貴崎凜" を人に戻している

調子が、良い。

良いものを見たからか、それともあの夜にコツを摑めたからか。

貴崎凜は、刀にぬめつく怪の青いのりを振り払う。

「……ボク、人のこと鬼は勘弁してくださいよ」

「わあ、すごい……」

私をキラキラしたら目で見る子。勇敢な子だ。あの場面で飛び出すのは並大抵のことじゃない。

「隨分、肝が座った子ですね。お母様ですか? ここは危険です。その子から目を離さないでくださいね」

「は、はい、え、で、でもあなたも危ないわよ、怪が」

「くす、良い人ですね、お母様。ねえ、ボク、あなたは勇敢な子ですね。……今からお姉さんが周りの怖いのぜんぶやっつけてきますから、それまでここでじっとしてられますか?」

「うん! わかった! サイシンサマもおねーちゃんの言うこと聞けばいいってゆってるから! ここでお母さんと待ってるね!」

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「ええ、そうしてください。お母様、あそこの路地のコンビニの中へ。1匹たりとも近づけませんから」

「は、はい、あなたは、どうするんですか?」

「戦います。私にはその力がありますので。……いい目をしたお子さんですね。し、私の……知り合いと似てる気がします」

「まあ。お若いのに…… だ、だいじょうぶなのですか?」

「はい、探索者、なのでなれっこです」

「だいじょうぶだよー、おかあさん、おねーちゃんとってもつよいって、サイシンサマがゆってる! おにのちがすごく濃いからって! げーじゅつひんってゆってる」

「継人! 人様に対して鬼とは失禮でしょ! だめよ! そんなこといったら」

「あ、はは。個的なお子さんですね、でも、あながち間違いではないですよ」

「え?」

「いえ、すみません、獨り言です。それでは私はこれで、ボク」

「はい!」

「お母さん、すき?」

しゃがみ込み、彼と目を合わせる。

一瞬、そのつぶらな瞳の奧になにか、そう、にょろにょろした何かを見た。けれどすぐにそれは消えてーー

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「うん! だいすき!」

まあ、この子なら大丈夫だろう。鬼のも、そのにょろにょろしたのがかなり弱っていると告げている。

「そうですか、とてもいいことです。あなたがあなたのまま、大人になることを祈ってますよ。そのためにお姉さんは怖いのやっつけてきますから」

「うん! がんばってね、おにさき、ううん、きさきのおねーちゃん! いこ! お母さん!」

「あ、あの、どこの誰とは存じませぬが、本當にありがとうございました! せ、せめて、お名前を! こら、継人待ちなさい! あ、すみません、お名前を!…… え? あの子今名前呼んでた?」

くすっ、笑う。

こんな時なのに、その禮儀を忘れぬ態度がし面白く、そして尊いものだとじて。

ああ、東條さん。ごめんね、世界がつまらないとか、周りの人間が退屈とか、本當に私はバカでした。

し周りを見渡せば、こんな時にも人のことを思いやれる人はいる。年齢も関係なく勇敢な人もいる。

それに目を向けず、全て自分で決めつけていた私のなんと愚かなことか。

「貴崎凜、探索者です。安心してください、あなた達には指一本れさせません。私の、私を育ててくれた人の全てに賭けて」

跳ぶ。

刀を構える。街に蔓延る怪種、多賀のおじ様が言っていたことが全て現実になっている。

ーー君が選びたまえ、貴崎凜。彼、東條君のその一生に意味があったのかどうか。それは東條君がした君にしか証明できないのだから。

「あのタヌキおじ様、ほんといい格してますね」

乗せられてるのはわかってる。利用されてることもわかってる。

それでも、ここは譲れない。

「化けども、ここより先はキサキの領域。禮なき振る舞い萬死に値する。誰ぞ、踏みれてみよ。その首、掻っ切る」

刀を、構える。私の背には無辜の民。當たり前に子をし、當たり前に親をする。

私がいままで退屈だと切り捨ててきた、人の営みが私の背に。

東條さん、今、あなたに會いたい。

いぐさの香りのするたたみのうえで膝枕してほしい。

もう會えないのはわかってるけど、もう一度あなたに微笑みかけてしい。それができないのもわかってるけど。

「東條さん、みててね。私、頑張るから。あなたが教えてくれたもの、あなたが尊いとじていたもの、全部、私が守るから」

あなたを忘れないために。あなたに言われた通り私は生きる。

あなたがしていた當たり前の日々を、私が生きて、それを守る。

「ギブチチチチチ」

「遅い」

ぜんぶ、見える。

走り迫る醜い猿の化け、どこを斬ればいいのか、全部わかる。

すぽん、3つ、4つ、青いとともに、首が舞う。

「あは」

に酔う。このに流れる鬼のが生命を壊すことに悅びを覚える。

でも、そのことは別に忌むべきものでもない、恐るものでもない。

私は人、私は鬼。

東條さんは人である私をしてくれた。どれだけ歪んでもそのままの私をしてくれていた。

そして、もう1人。

あの人は鬼の私をたたきのめした。お前は只の人だと言ってくれた。鬼でも、人だと。

ただのクソガキだと、言ってくれた。

ふふ、味山さん、あなた、ほんとバカですよね。鬼なのに、かのに紛れるものは明らかに人ではないのに。

あなたはきっと怖がらない、あなたはきっと何も気にしない。

だってーー

「味山さんのほうが、怖いですもんね」

だって、鬼ですら、化けですら、あなたは気にしない。

あなたが気にすることはただ一つ。敵か、味方か。それだけ。

ほんと、バカ。

きっとあの夜、あなたは進んだのだろう。

敵が、星でも、あるいはそう、例えば"神"でも、あなたはきっと、全部壊して進んだんだ。

あの人は更に深く、生きて進んでいく。

私はどうだ? 私はどうなりたいんだろう?

「あなたと、また、話がしたい」

の中、舞う。

鬼が舞い続ける。世を、人を、見下していた鬼のはしかし、深き人と、只の人との流により、人と世の尊さを學んだ。

「あなたは何を想うんだろう、あなたはどうして進むんだろう」

味山さん、あなたとまたお話がしたいんだ。くだらないことでもいい、私の話を食べ食べながら聞いてるあなたが見たい、を引っ付けるとさりげなく離れるあなたにれたい。

うん、ただ、それだけでいい。

だから、そのために。

ーーお嬢様、あなたは特別なお人です、そのおには貴い特別なが通っています、だから、だからね

うん、わかってるよ、東條さん。

特別なことって、別に特別で偉いわけじゃないんだ。恵まれた分、私には力がある。周りの人を助けて、そしてまた周りの人に助けてもらうことが出來る。

味山さんが、そうしてたように。

もう目を背けない。私は人で、私は鬼。それが、私。

「貴崎凜なんだ」

東條さん、あなたには會うことはもうできないけど、それはとても悲しくて寂しいけど。

あなたがくれたもの、教えてくれたもの、全部私きちんと持ってます。

東條さんにを張れるやり方で、私は、あの人に逢いに行きます。

あの人はまだ、生きてる。會える、話せる、れる。それがほんとにとうといことだと思うから。

「おんどりゃあああああ!! こんの、バケモンどもがあああ! 弱いもんイジメばっかしおってからに! とりっぴー!! 焼き盡くしてまえ!」

「ピョーヒョロロロ!!」

空から、大きなカラス、それに乗ったの子、いや、の人がんでる。

し暑苦しいけど、とても頼りになる私の仲間。

「よーう! 貴崎凜! なんや、アンタやるやんけ! 心! あの親子、よー守ってくれたなあ!」

「クマ先輩、遅いです。全部私が斬るところでしたよ」

「かーっ、言うやんけ、小娘! はっ、まあそんくらい大口たたけんと指定探索者はつとまらんか! ……ウチは片っ端から化け焼き盡くす、アンタは1匹たりとも、逃すな」

「了解です、クマ先輩。熊野山の導き手、その神威、とくと拝見させていただきます」

「はっ! なんや、畏まってからに! よせよせ、こちとらキュート&バイオレンスでキャラ売っとんねん! に合わんわ!」

「キュート……? クマ先輩、今年でたしか28……」

「なんか問題あるか?」

「クエっ」

クマ先輩と、その"八咫烏"が、じとりとこちらを見つめる。

い人だなあ。私は頼もしくて可い先輩の顔にし笑ってしまう。

「ふふ、いいえ、なんでも。クマ先輩、ここで実績あげたら約束守ってくれるんですね」

「は! あの約束か! 安心せえや、これからのニホンにアンタほどの腕利きを遊ばせておく余裕あらへん! 無しでも、この化け大行進終わらせたら、アンタは間違いなく、ウチらの國の指定探索者になるやろ、あのタヌキがなんとでもするわ」

「そうですか、なら、問題ないですね」

「はは、貴崎、アンタ、しばらくみんうちに、し大きゅうなったな」

優しい聲、見た目はあれだけどこの人もきちんと大人だ。し、味山さんが、私に向ける聲とにていた。

のサイズなら中三でクマ先輩を抜いてましたけどね」

「前言撤回や、このクソガキ。……死んなよ、凜。東條の忘れ形見よ」

「ええ、死にません。逢いに行きたい人がいますから」

「はっ、たく、どいつもこいつも。あのタヌキもアンタも、アジヤマタダヒトか。しキョーミ湧いてくるなあ」

「……あげませんよ」

「はあ、なんやそら? ウチはそんな簡単なやないで」

……なんとなく、クマ先輩と味山さん、気が合いそうで怖いなあ。年も近いし、いざという時はノリノリになりすぎるところとかし、似てるし。

まあ、いっか。

私は、前を見る。

シブヤの街に蔓延る百鬼夜行、魑魅魍魎、怪種。

が囁く。滅ぼせ、と。

人が諳んじる、守れ、と。

「どうですかね…… じゃあ、クマ先輩、そろそろ始めます、ついてきてくださいね」

「ケッ、ナッマイキなガキやの! ま、ウチな、そーゆうん嫌いやないで」

あなたを忘れない。あなたがしてくれていたことを決して忘れない。

あなた(東條さん)のを連れていく。消して離さない。

あなた(味山さん)に逢いにいく。ただしい方法と、あなたの誇りのままに。

「上級探索者、貴崎凜、參ります」

すすめ、進め。

あなたは進め。あなたの願い、あなたの思い、あなたのたのしみのままに、進んでしまえ。

でも、絶対、私はあなたに追いついてみせる。あなたは私の憧れで、私の報酬なんだから。

そして、1つ。私は人であり、鬼であり、探索者でもある。

私も探し索める者だから。

気になることが1つ、あります。

味山さん、あなたに聞きたいことが、あるんです。

【ポンぴーん! "スタンピード" 中間ハッピョオオオオ!! ニホン、素晴らしいです! オオサカ、フクオカにおいて、神種【黃泉兵"ヨモツシコメ"】の討伐! "ヒロシマ"において神種【河魔人"エンコウ"】の討伐! おっとお! トーキョーチヨダ區においては既に地上に溢れた怪種の全滅を確認しました! ああ、あの結界とかありましたもんね。やるなあ!】

なんで、この聲、味山さんのーー

ご覧いただきありがとうございました。

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