《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》EDナンバー033 【耳】

條件達

……特に無し。必ずコイツはやってくる

〜彼らが音楽をかけながら去った後、もう、誰もいなくなっていた花畑にて〜

夕焼けの世界。

花畑からアレフチームが去っていく。全てを取り戻し、全てを捨てずに連れて行く。

も不安もあるだろう。それでも、彼らは進んでいく。託されたものを確かにけ継ぎ、抱き締めながら。

そして、聲が響いた。の、聲。

"號級 再誕"

"アイビー(死んでも離さない)"

それは負け続けた星、その中の1人の持つ特別な力。

何度、命を終えようと執著の対象がいる限り、命が蔦となり、花となり咲き始める、この世のコトワリを超えた力。

「そんなの、みとめ、ない」

ああ、そのが蘇る。

力のほとんどは凡人探索者に砕かれた。その権能のほとんどはを貫いた忌々しい"腕"に奪われた。

その心は、進んだアレフチーム(遠い理想)の姿にズタズタにされた。

それでも。

嗚呼、ああ、この世界にはどうしようもない奴がいる。

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「おまえ、たちだけ、おまえたちだけが、しあわせになるなんて、おまえたちだけが、なんで」

己の中にある不満、寂しさ。それをじるのは仕方ない。それを見つめて嘆くのも仕方ない。

だが、ひとたび。一度でもそれを、その暗いを、その弱さをーー

「わたしは許さない、許さない、おなじにしてやる、わたしとおなじに」

弱いことは罪でも悪いことでもない。

だが、

その弱さを他者に向けること。それは悪だ。反吐が出るほどの悪。

悪が、その勝手な怒りを希にぶつけようとしていた。

悪の華が開いていく。敗北した星。もういまは彼は自分がなんだったのかすら思い出せない。他の自分とよく似た存在には迎えてくれるものがいたのに、自分だけは誰も來ない。

許さない

ゆるせない、

くらい、

寂しい

辛い。

だから、みんな、おまえらもそうなれ。

くらくなれ、

さびしくなれ、

つらくなれ。

「でなければ、おかしいじゃない」

誰もわたしを迎えにきてくれなかった。部屋から出たアイツがわたしを見る目、あれは憐れみ。

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「許せない、おまえが、そんな目で、このわたしを」

華が開く、開いていく。

星、英雄、神。なんにでもなれるその報の塊が己の新たな在り方を定義していく。

手のつけられない存在に、彼たちの殘滓が変化してーー

ぱたん。

本が、閉じられた音だった。

「あーー お、まえ」

「」

這いつくばる"彼たち"

長椅子に座り、本を膝に置いてそれを見つめる"彼"

2人の容姿はよくにていた。

「な、んで、いま、おまえがーー」

「」

「ーーえ?」

指。這いつくばる彼たちの後方を指さす"彼"

にんまり。三日月のように口を吊り上げた笑顔が、アイツを迎えていた。

「€Head, shoulders, knees and toes.€

€Head, shoulders, knees and toes.€

€Eyes and Ears and mouth and nose.€

€Head, shoulders, knees and toes.€」

歌。

ぺた、ぺた。

歌とともに、らかい足の裏が花畑を踏み鳴らす。花を踏んでいるのに間抜けな足音が響いている。

世界の音が何か、おかしい。

「あ、ーー 待っ、てーー」

はいつくばる"彼たち"、それを見下ろし、笑ったまま本を抱えたは消える。

とても良い、とてもとても面白いものを見れた。そう言わんばかりの満面の笑みを浮かべながら、消えた。

「あ、あ……」

"彼たち" もはや、その存在にはエネルギーはない。"神"として完したその姿はあの恐ろしい人の為の道により殺され盡くした。

唯一殘っていた姿も、アレフチームに討伐された。

今、あるのはただの生命。これが消えれば本當の本當に、全て終わる。もはや、彼たちは群ではない、今ここにしかいない、ただの1人とり果てて。

「あ……、う、そ」

だからこそ、じる恐怖。

だからこそ、理解できる恐怖。

が引き攣り、が固まる。生きとして當然の反応ーー

「I'll be back」

「I'm Back honey」

びろんびろん。

ぽよん、ぽよんのがたゆむ。

ソイツが歩くたび、大きなおおきな耳たぶが、ぽよん、ぽよん。

「ひ、み、耳……?! うそ、どうして、どうやって、なんで……」

消した筈だった。完全に消滅させた、そのつもりだった。

なのに、ソイツは現れた。

短い手足は児のようで、突き出た腹は中年のようで、ああ、その頂きには大きな一対のお耳。

「I came to pay back the debt, fucking Bitch」

が、蠢く。

傷だらけのその姿、小便小僧のようなが、ぽよん、ぽよん。這いつくばるしかない彼たちに近づいていく。

「いや、だ、來るな、來るな、ちか、よるな!!」

殘る力。彼たちは今、ようやく、力を振り絞る、ということを覚えた、もうどのみち遅すぎるけども。

空気が輝き、の矢となる。アレフチームとの戦闘で見せていたものと比べそれはあまりにも頼りなく。

ぱし。

「え」

「Je pensais que les mouches volaient」

短い手が、なんのこともなく、その矢をキャッチした。びきき、小さなおててがそれを握りしめる、砂のように彼たちのがサラサラと解けた。

「ひ、ひ……」

耳が歩く、彼たちに向かって。よく見ればそのは傷だらけ。無(・)數(・)の(・)細(・)か(・)い(・)ヤ(・)イ(・)バ(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)た(・)よ(・)う(・)な(・)跡(・)、もしくは高(・)熱(・)の(・)何(・)か(・)に(・)溶(・)か(・)さ(・)れ(・)た(・)ような跡、そのほか々な傷がに刻まれている。

だが、死んでいない。そう、その傷を耳につけたものは遂にこの化けを滅ぼすことは出來なかった。

霧の悪魔の力でも、偉大なる竜の熱でも、この化けは死ななかった。

送り返すのが、一杯でーー

「aha toyama Good guy, it looks like he didn't lie」

化けが、借りを返すために、歩く。歩く。

"彼たち"が、這いつくばるを起こしーー だめだ、立ち上がった瞬間、また地面に倒れる。何故なら"彼たち"はそれを知らない。

"立ち上がり方"を知らないのだ。

在り方が似ているあの墓石の男たちとは違う、彼たちはその永い時間をずっと、ずっと、他者を引き摺り込むことにしか使わなかった。

立って、前へ進もうとするものを自分達と同じ場所に引きずる、既に倒れ伏している自分たちも同じようにする、それしかやってこなかった。

だから、知らない。

恐怖への立ち向かい方も

「First is the arm. I'll pull it out」

「ひ、こ、こない、で」

挫折からの立ち上がり方も

「Next, pull out both legs」

「な、なに、なんなの、何言ってるの」

への抗い方も

「Kill even death, destroy all screams, die, fucking Bitch」

耳が、耳が、ニタリ、歪んで。

「いや、いや、イヤ、くる、な、くるな、來るな來るな來るな來るな來るな來るな來るな!? やだ、誰か、いないの?! ヤダ、ヤダヤダヤダ!! ソフィ!! グレン!! ーー!?! いないの?! なんで、誰も、誰も、いない?! なんで、私が、私だけが、あ、ああ」

餅をついたまま、後ずさる。それでも足りない、慘めに四つん這いになり、花畑を這う、己が捨てた、己が終わらせた仲間たち、そう呼ぶことすら本來烏滸がましいその名前を、慘めにびながらーー

ぺた。

足音が、止んだ。

「あ」

たちが、振り向く。

足首に、じるひんやりした覚。

「被俘」

「ーーぁ」

ぶりん。ぽん。

人の腳が飛んだ、夕焼けに照らされくるくる回りながら跳んだ。

「ओह, मैंने गलती की, यह मेरे हाथ से था, लेकिन क्या यह ठीक है?」

「あ、ああ、あああ?! 腳いいイイイイイいい?! わたしの、わたしの、わたしのあじっ?!」

を吐く。耳の拳が、彼たちの背骨から腹を貫いていた。花畑に、いや、が染み渡る。

「あ、ヤダ、しにたく、ない、やだ、一人で、1人で、終わりたく、ない、まだ、みんなを、わたしだけ、わたしだけ、なんで、なんでエエエエエエエ!? ーー」

「うるさい」

耳たぶが、びろり。彼たちの顔を包んだ。ああ、ようそのびが世界にれることはない。

腕を引き抜かれる痛みのび、臓を混ぜられる絶び、命が消える恐怖のび。

その全て、"耳"のもの。

「It's your favorite bad end time」

夕焼けの世界の中、くぐもったびがわずかにれる。

ンンンンンンンン、ブンンンンンンン。

そのたびに、人の、パーツがおもちゃのように飛ぶ、飛ぶ。

ああ、この終わりは必然。その化けは強く、再生し、何より恐ろしい。

"妄執"ごときが、"嫉妬"ごときが、そう、"神"ごときが、手を出していい存在ではなかった。

箱庭の底に溶けようと、アイツは帰ってきた。耳たぶびろびろはためかせ、傷だらけので帰還した。

化けが、神に至れる存在をバラバラにしていく。

最期に殘った、と首、びろり、耳たぶからまろび出て

「ど、し、て、わた、し、だけがーー」

「Because you're that kind of guy」

ぷちゅ。

今度こそ、完全に、それは消えた。

心をアレフチームに。

を耳の化けに。

相手が悪すぎた。もとより"彼たち"程度が手を出していい存在ではなかったのだ。

アレフチームも、耳も。この2つだけには手を出すべきではなかった。

まあ、もう全て遅いけども。

なんの慨もなく、なにをすもなく、無為に、普通に"彼たち"はその妄念も嫉妬も、圧倒的な暴力の前に捨て去った。

「boring」

夕焼けの世界の中、それをあっけなく滅ぼした怪がつぶやく。

緩い風が、耳たぶを揺らしている。しばらくぼうっと、耳の化けは夕焼けの風の音を聞いていた。

それからしばらくして、歩き出す。小さなおててを大きなお耳に添えて、ぱよん、ぽよん。

聞いている、聴こえた。奴らの音がする。

耳の化けたる彼と唯一対等に渡り合える、イカれた連中、何よりも厄介で、何よりもしぶとく、そして、何よりたのしい奴らの音がする。

「Aleph team」

さあ、最後の戦いだ。

シンプルだ。この化けと彼ら、探索者の関係は本當にシンプルだ。

即ちーー

「It's the Final round アジヤマ、タダヒト」

殺すか。殺されるか。

にたり、ぽよん。

帰還。

この日よりまた、バベルの大で元気に殺戮に勤しむ彼の姿を世界が確認した。

ソイツは恐ろしい怪

ソイツは強き怪

ソイツは醜い怪

ソイツの名前はーー

まあ、コイツは死なないです。

これで個別キャラEDは全て終わりました! ありがとうございます、全てご覧いただき!

では次はほんとのほんとに最後、ラスト!!

トゥルーEDでこのものがたりもおしまいです、ほんとによんでくれてありがとございました。

続きをお楽しみに!

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