《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》記憶の改竄

「ちなみにこれは、昨日秋人が闘った場所の、今の映像」

モニターに住宅街の道路が映し出される。間違いなく俺と鮫島が闘った場所だが、何事もなかったかのように人々が行き來している。鮫島の一撃でブロック塀が崩れたり地面に大が空いたりしたはずなのに。

「俺は夢でも見ていたのか? いやそんなわけないか……」

「あくまで仮説だけど、支配人が一般人の記憶も含め転生杯の痕跡を全て消してるんだと思う」

「あの支配人が……?」

「ん。そうとしか考えられない」

まあ俺達を仮転生させたり能力を與えたりするくらいだし、そんなことができても不思議ではないだろう。転生杯のことが世間に広まったら大騒ぎどころの話じゃないし、痕跡が殘っていたら支配人にとっても都合が悪いのだろう。

「ただし転生杯の參加者は例外みたい。現に私も春香も、秋人が闘ったという記憶は保持してるし」

「なるほどな……」

鮫島との闘いの最中、俺が一般人に見られていることを指摘した時あいつは心配する必要はないとか言っていたが、その意味が今分かった。脳筋とか言ってすみませんでした。

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「それにしても監視カメラをハッキングするなんて凄いな真冬は。生前の頃からそういうの得意だったのか?」

「そこそこ。さすがにハッキングはやってなかったけど」

「まあ、犯罪だもんな……」

「ちなみに子更室の防犯カメラの映像なんかもあるけど、見る?」

「何!? 本當かそれは!?」

「冗談。なに興してるの? 変態なの?」

「こ、こいつめ……!!」

その後も俺と真冬は雑談を続ける。真冬は大人しくて口數もなそうという印象だったので、最初は二人きりで気まずくならないだろうかと不安だったが、俺の言葉にもちゃんとけ答えをしてくれるし、ちょいちょいおふざけもれてくるので、なんだか話していて楽しい気持ちになった。

「二人ともお待たせ! ご飯できたわよ!」

やがて春香が俺達を呼びに部屋に戻ってきた。

「ふふっ。二人とも、この短い間にすっかり打ち解けたみたいじゃない。もしかしてお邪魔だった?」

「……何言ってんだよ。それよりご飯は何を作ってくれたんだ?」

「それは見てからのお楽しみ。さ、こっちに來て」

俺はリビングらしき空間に案される。テーブルの上には三人分の白米、サラダ、そしてハンバーグが置かれていた。

「おっ、ハンバーグか」

「ただのハンバーグじゃないわよ。なんと納豆ハンバーグです!」

あ、さっき真冬が掻き混ぜてた納豆も活用したのね。食べ末にしないのは良いことだ。

「冷めないに早く食べちゃって」

「ああ。いただきます」

俺は椅子に座り、早速納豆ハンバーグを口に運んだ。

「うおっ!! なんだこれ、めっちゃ味いな!!」

それはお世辭でも何でもなく、本心から出た言葉だった。実は納豆ハンバーグを食べるのは今日が初めてなのでなからず「本當に味しいのだろうか」「そもそも納豆とハンバーグって合うのだろうか」といったことを考えていたが、そんな不安は一瞬で吹き飛んでしまった。レトルトのハンバーグとは格が違う。

「でしょでしょー? もっと褒めてくれていいのよ!」

「いや本當に味いぞ。文句のつけようがない」

もっと気の利いた想を言ってあげたいところだが、俺の語彙力では大した表現ができないのが実にもどかしい。

「春香の料理の腕は本當に素晴らしい。私が今まで食べたハンバーグの中で二、三番目くらいに味しい」

「……そこは噓でも一番って言ってよ」

真冬のリアルな想に、春香は苦笑いを浮かべる。

「生前も普段から料理はしてたのか?」

「ううん、ほとんど。本格的に料理を始めたのは仮転生してからね」

「へえ。それでこのクオリティは凄いな」

「きっと元から料理の才能があったんでしょうね。流石はアタシ!」

ドヤ顔で自分を讃える春香であった。箸の進むペースは最後まで落ちることを知らず、気付けば皿は空になっていた。

「ふー、ごちそうさま。大満足だ」

「お末様でした。とても味しそうに食べてもらえてアタシも嬉しいわ。真冬はあまり表が変わらないから味しいって言われてもあまり実がないのよね」

「私はが表に出にくいだけ。ちゃんと味しいって思ってる」

「ほんとにー?」

「ほんと。今まで食べたハンバーグの中で三、四番目くらいに味しい」

「なんかちょっと順位下がってない!?」

「冗談。春香の作る料理はどれも一番味しい。いつも料理作ってくれてありがとう」

「……ま、まったくもう。相変わらず真冬は人をからかうのが好きよね」

このやりとりを聞くだけでも、二人の仲の良さが窺えるな。

「今更だけど、ここってどういう建なんだ? 普通の家とは違うよな?」

俺はリビングを仰ぎ見ながら尋ねる。そこそこ大きな建、ということだけしか分からない。

「ここは元児養護施設よ。閉園になって使わなくなったみたいだから、アタシ達のアジトにしたの」

「児養護施設、か……。そんな所を勝手に使ったりしていいのか?」

「勿論勝手じゃないわよ。取り壊される直前にアタシ達が土地ごと買い取ったの」

「なるほど買い取っ……は!?」

衝撃の事実に、思わず俺は聲を上げた。

「買い取ったとか噓だろ!? そんな金どこから!?」

転生杯の參加者に與えられる初期費用は百萬円のはず。春香と真冬の二人で二百萬としても到底足りないだろう。

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