《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》次なる敵
「要するに、この子を倒してこいと?」
「察しが良いわね。だけど必ずしも倒す必要はないわ。一応、仲間にならないか説得してみて。いけそうだったら仲間にしちゃいましょ」
「……まだ仲間を増やすつもりなのか?」
「四人チームを結するつもりだから、あと一人追加する予定よ。と言っても簡単に仲間になってくれるようなチョロイ人なんて滅多にいないだろうけど」
それ遠回しに俺のことディスってる?
「説得が無理だった場合は十中八九戦闘になるから、負けちゃ駄目よ。戦闘が終わったらアタシも駆けつけるから」
「戦闘が終わったらって……そこは一緒に闘おうって言うところだろ」
「言ったでしょ、アタシも真冬も戦闘に向いてるスキルじゃないから、足手まといになるだけよ。でも安心して。一緒には闘えないけどちゃんと協力はするから。ね、真冬」
「……ん。秋人にはこれをあげる」
そう言って真冬は俺に、ビー玉程の大きさの黒いを手渡した。見たところ何かの機械のようだ。
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「何だこれ?」
「インカム、って知ってる?」
「あー、聞いたことあるぞ。通話機能しかない攜帯みたいなもんだろ?」
「……まあ、間違ってはないけど。それは私が作った超小型インカム。それを耳に付ければ離れていても私達の聲を聞ける。一般的なインカムよりずっと軽くて小さいから戦闘の邪魔にもならない」
いやサラッと言うけど機械を自作するって凄くないか? 真冬はそんなことまでできるのか。
「何で俺にこんなを? あ、もしかして俺に聲援を送ってくれるのか? 確かにの子から応援されたらテンション上がるなあ」
「私達はここで監視カメラを通じて秋人の周囲の狀況を見てる。そのインカムは秋人に危機が迫った時、素早くそれを伝える為のもの」
「……ああ、うん」
つまりは俺の後方支援をしてくれるってわけね。それと今のはちょっとしたボケのつもりだったんだけど、何事もなかったかのようにスルーされると結構傷つくな。
「いざ戦闘になったら攜帯でやり取りする余裕なんてないだろうから。そもそも今は攜帯とか持ってないだろうけど」
「……なるほどな」
俺はインカムを右耳に取り付けた。これ制作費とか凄そうだし、戦闘中に壊さないように気を付けよう。
「ただしこのインカムの通信は一方通行だから、私から秋人に聲を送ることはできても、その逆はできないから注意して」
「分かった」
「さあレッツーゴーよ秋人! 早くしないと逃げられちゃうわよ!」
「はいはい」
まったく、もし戦闘になったら俺が敗れて消滅する可能もあるってのに、春香はお気楽だな……。
「秋人」
部屋を出ようとした時、真冬が俺を呼び止めた。
「何だ?」
「……頑張って」
「え? あ、おう……」
なんか真冬から普通に応援されると変なじがするな。だけどおかげでやる気が出てきた。何があっても必ず生きて戻ろう。
真冬の道案に従い、俺は住宅街にやってきた。まさか二日連続でここに來ることになるとはな。幸いアジトからそれほど距離はなく、歩いて十五分ほどで著いた。もう夜も遅いので人の気配はない。昨日ここで鮫島と死闘を繰り広げたのが噓みたいな靜けさだ。
『今は監視カメラでは確認できないけど、この辺りに〝65〟の參加者がいるはず。気を付けて』
「ああ」
インカムから聞こえる真冬の聲に返事をする。こちらの聲は聞こえないと分かっていても、つい言葉を返してしまう。
張のあまり心臓の音がうるさい。これから互いの命を賭けて闘うのだから張するのは當然だ。大丈夫、俺には【略奪】と【怪力】の二つのスキルがある。まあ、まだ闘うと決まったわけじゃないけども。まずは俺達の仲間にならないか説得してみよう。俺としてもできるだけ戦闘は避けたいからな。
やがて俺の〝88〟の痣が赤くり始めた。參加者が近くにいる合図だ。ということは相手も俺の存在に気付いたはず――
「!」
その時、近くの小さな公園から人の気配がした。おそらくここに〝65〟の參加者がいる。俺は公園の真ん中に立ち、周囲を見回す。どこにも人の姿はない。遊の中にでも隠れているのか……?
『秋人、後ろ!!』
「えっ……」
真冬のび聲で咄嗟に振り向くと、が俺にナイフを振り下ろそうとしていた。
「うおっ!!」
俺は辛うじてナイフをかわした。危なかった、真冬がんでくれなかったら確実に心臓を刺されていた。
「チッ。一発で楽にしてやろうと思ったのに」
悔しそうに舌打ちをする。真冬が映像で見せてくれたで間違いない。右腕にもしっかりと〝65〟の痣がある。しかしどういうことだ、直前まで全く気配がしなかったぞ。まるで突然、俺の背後に現れたかのように。
『今、そのは地面から現れた』
「は!?」
人間が地面から出てくるなど通常は有り得ない。つまりそういうスキルか……!?
「さっさと死にな!!」
は殺意剝き出しの目で何度も俺にナイフを突き刺そうとしてくる。
「ちょっ、まっ、待て!! まずは俺の話を聞いてくれ!!」
「……話?」
がピタリときを止める。
「お前、名前は?」
「……城月」
「俺は月坂秋人。城、俺の仲間にならないか? 俺達は共に闘ってくれる仲間を集めてるんだ。一人で闘い続けるよりは絶対に――」
「仲間だって? 笑わせんじゃないよ! 仲良しごっこなら稚園でやってな!!」
ナイフによる攻撃を再開する城。渉決裂か。こうなる予はしていたが、やはり闘うしかなさそうだ。しかし鮫島といい城といい、どうしてこうの気の多い奴ばかりなのか。
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