《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》アイドル部

が出てますけど、大丈夫ですか? ごめんなさい、私を庇ったばかりに……」

「気にしないでくれ。大した怪我じゃない」

「よかったらこれ、使ってください」

千夏が一枚のハンカチを俺に差し出した。綺麗なショートボブの髪、吸い込まれそうになる瞳、雪のように白い。よく見るとかなりのである。

「お、お名前を教えていただいてもいいですか?」

「……月坂秋人」

「あの、もしよろしければ、何かお禮をさせてください」

「いいよ禮なんて。それよりまずここから出たい。いつまでも子トイレにいるのは落ち著かないし」

「あっ!? そ、そうですよね!」

俺はこっそりと子トイレから出た。誰にも見られてないな、うん。

「それじゃ、俺はこれで」

「あっ……」

千夏は何か言いたげな様子だったが、俺は足早にその場を立ち去った。今の俺にはやるべきことがある。それに真冬の復讐が済んだら、俺はこの學校から姿を消すことになる。だからもう、今後あの子と関わることはないだろう。

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五時間目の授業が終わり、休み時間。俺は春香を廊下に呼び出し、真冬にスマホを繋いで晝休みに起きたことを二人に話した。

「驚いた。もう沢渡達に喧嘩を吹っ掛けちゃうなんて、隨分仕事が早いわね」

「誰かさんが呑気に部活を見學してる間にな……」

「だけど場所が校舎裏となると、どうやって真冬を校れるかが問題ね。真冬の顔を覚えてる教師や生徒もいるだろうし、その人達に目撃されたら大騒ぎになっちゃう」

「そこはあまり考えなくてもいいと思うけどな。ある程度顔を見られないようにして歩けば大丈夫だろ。仮に目撃されたとしても死んだ人間が蘇ったなんて誰も思わないだろうし、他人の空似で押し通せばいい」

「んー、それもそうね」

「まあ勿論、真冬が良ければの話だけども。どうだ真冬?」

スマホを通じて真冬に確認をとる。

『校舎裏……』

「どうした? 何か問題があれば――あっ」

俺の脳裏に真冬の記憶が蘇る。そうだ、校舎裏といえば屋上からを投げた真冬が落下死した場所じゃないか。我ながら配慮がなさすぎる。

「すまん真冬、校舎裏はやめよう。どうにかして場所を変えて――」

『……ううん。校舎裏で問題ない』

「えっ……いいのか?」

『ん。私が命を落としたその場所で沢渡達に復讐できるのなら、むしろ本というもの』

「真冬がそう言うなら……」

場所は校舎裏で確定した。あとはそこで真冬と沢渡達を対峙させるだけだ。

「ただ、他の生徒に現場を目撃されたら面倒なことになりそうだし、誰も校舎裏に立ちらせないようにする必要があるな。どうするか……」

「そこはアタシに任せて! 良い考えがあるから!」

自信満々の顔で春香が言う。本當に任せて大丈夫だろうか。

打ち合わせが終わり、俺は真冬との通話を切った。あとは放課後になったら各自行を開始するだけだ。真冬の復讐の為に、この作戦は必ず功させよう。

「さてと。もうすぐ六時間目の授業が始まるし、そろそろ教室に――」

「待って秋人」

教室に戻ろうとした俺を春香が呼び止める。そして真剣な表で、春香はこう言った。

「……秋人に聞いておきたいことがあるの。真冬のことで」

放課後、俺は一人で校舎裏に向かう。同じクラスの生徒達から歓迎會も兼ねてカラオケにわれたが、俺は適當に理由をつけてお斷りした。気持ちはありがたいが、今は生徒と流を深めている場合ではない。

校舎の外は下校中の生徒や部活の準備を始める生徒が大勢見けられる。これだけいたら誰かが校舎裏にってくることも有り得るだろう。だが作戦をスムーズに進める為にもイレギュラー要素はできるだけ排除しておきたい。手はず通りなら、春香が何か策を打っているはずだが……。

「みんなーこんにちはー!! あ、もうこんばんはの時間かな!? アイドル部でーす!!」

その時、聞き慣れた聲がスピーカーを通じて學校全に響き渡った。まさかと思い周囲を見回すと――校門前の広場にフリフリの裝を著た五人の子がおり、なんとその真ん中に春香がいた。何やってんだあいつ!?

「おっ、アイドル部だ! 今日も屋外ライブやるんだな!」

「ん? なんかメンバー五人になってね?」

「本當だ、一人増えてる! ていうかあれって噂の転生じゃない!?」

「うおっ、めっちゃ可いじゃん! 見に行こうぜ!」

生徒達が一斉に広場に集まっていく。晝休みに見學に行くと言っていた部活ってアイドル部だったのかよ。

「本日アイドル部に部した青葉春香こと、はるにゃんでーす!! アタシのお願いで急遽ライブをやることになりました! はるにゃんのデビューライブ、是非見ていってくださーい!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおーーーーー!!」」」」」

生徒達が熱狂する。早くも凄い人気だな、はるにゃん。

曲に合わせて可憐な歌と華麗なダンスを披する春香。それはまるで本のアイドルを見ているよう……いやちょっと待て、部したばかりなのに何故あれほどのパフォーマンスを発揮できる? まさかこの短時間で歌もダンスも覚えたというのか? 天才か?

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