《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》害蟲駆除

「真冬!! 大丈夫か!?」

「……ごめん、秋人。私……」

泣きそうな表で、俺の服を握りしめる真冬。その時俺の脳裏には、晝休みの終わりに春香とわした會話が過ぎっていた。

「秋人に聞いておきたいことがあるの。真冬のことで」

「何だ?」

「真冬は本當に、沢渡達への復讐を果たせると思う?」

「……どういう意味だ?」

「言葉通りの意味よ。秋人が真冬の復讐についてどう思ってるのか聞きたくて」

「そりゃあ……」

俺は言葉に詰まった。真冬の記憶を視た俺には、真冬が抱いていた憎しみや悲しみがハッキリと分かる。きっと殺したいとも思っているはず。しかし真冬が沢渡達を殺す場面を想像できるかと言われると……。

「アタシは無理だと思う」

俺が思案する中、春香はキッパリと言った。

「真冬はとても優しい子なの。自分の手で誰かを傷つけたり、ましてや殺したりなんて絶対にできない。たとえそれが自分を死に追いやった相手だろうとね。だからいざその時になったら、きっと躊躇してしまうわ」

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俺は一切の躊躇なく、憎き相手を殺して復讐を遂げた。だが俺と真冬は違う。真冬にも同じことができるという保証はどこにもない。むしろそんなことができる人間の方が稀だろう。

「今朝アジトを出る前に、真冬の覚悟を確かめたでしょ? でも真冬は何も答えられなかった。その時點で結末は分かりきってる」

俺は何も言い返せなかった。真冬との付き合いは春香の方が長い。だから真冬のこともよく分かっているのだろう。

「なら作戦は? 中止にするべきか?」

「いいえ。復讐に失敗したら、真冬には後悔が殘るに違いないわ。それで沢渡達への憎しみが消えることはないわけだし」

まあ俺としても高校に転までさせられておいて今更作戦中止というのは不本意だし、それについては賛だ。

「だったらどうする? 復讐したくてもできない、だけど復讐しないわけにもいかない。これじゃ堂々巡りだろ」

「そう。だからその時は……。お願い、秋人」

春香の言葉が何を意味するのか。それを理解した俺は、小さく頷いた。

春香の予は的中した。真冬は沢渡達を殺すことができなかった。

「ったく、真冬のくせにビビらせやがって」

沢渡は立ち上がり、先程落とした金屬バットを再び手に持った。

「そーいやテメーが自殺してからしばらくの間、テメーの家族がアタシの家に何度も來てたっけ。『娘はイジメを苦にして命を斷った! 娘を返してください!』ってピーピー泣いてたわ! 他にもなんかイジメの事実を明らかにしようと必死に著名活してるのも見たなあ。でも結果はぜーんぶ無意味! アタシ達は今もこうして何不自由なくJKやってまーす! いやー現実って殘酷で素晴らしいよね!! あははははは!!」

この沢渡の発言で――俺の怒りは臨界點を越えた。

「……真冬」

俺は靜かに、真冬の耳元で呟く。

「俺が、やってもいいか?」

「……!」

真冬は俺の服を更に強く握りしめる。そして僅かな沈黙の後――真冬は頷いた。

「よし。あとは俺に任せろ」

俺は真冬から手を離し、沢渡の方を向いた。

「おい、どけよ。アタシはこれから真冬に再教育しなきゃならねーんだ。テメーの相手をしてる暇はねーんだよ」

煩わしそうに沢渡が言う。真冬が現れたことで俺に喧嘩を売られたことなどどうでもよくなったらしい。俺は深く溜息をつき、靜かに口を開けた。

「……やっぱり、駄目だな」

「はあ?」

「所詮、俺は部外者だ。俺にはお前達への復讐心なんてないし、お前達も俺に復讐されるほどのことはしていない。だから俺にはお前達をどうこうする資格はない、そう思ってたんだが……」

俺はゆらりと立ち上がる。そして――

「やっぱり駄目だ。お前達はもう、この世から消えた方がいい」

沢渡達に、冷たく告げた。

「なにゴチャゴチャ言ってんの? ああ、要はもう一回痛い目に遭いたいってことね。だったらみ通りにしてやんよ!!」

沢渡は突っ走り、俺の頭を目がけて金屬バットを勢いよく振り下ろした。

「なっ……!?」

驚愕の聲を上げる沢渡。俺は左手で容易く金屬バットをけ止めていた。この程度、俺の【怪力】をもってすれば造作もない。

「気は済んだか? 今度はこっちの番だ」

左手に集中させていた【怪力】を、今度は右手に集中させる。

「……あばよ」

俺は沢渡のに、全力の拳を炸裂させた。沢渡は悲鳴を上げる間もなく、校舎の壁に激突。大量の片が周囲に飛散した。

「う……うわああああああああああ!!」

「沢渡が……!!」

もはや沢渡ではなくなった〝それ〟を見て、取り巻き二人が腰を抜かす。

「おおお、お前!! 自分が何をしたのか分かってんのか!?」

「ひ、ひ、人殺し!!」

「人殺しぃ? 違うな。俺はただ害蟲を駆除しただけだ。おっと、こんな所にまだ害蟲が二匹も殘ってるなぁ……」

俺は指の関節を鳴らしながら、次の標的に目を向ける。もはや二人は恐怖のあまり立ち上がることすらできない有様だった。

「ままま、待って!! アタシは沢渡に命令されて仕方なく従ってただけなんだ!!」

「アタシも!! 本當は誰もイジメたりしたくなかったの!! お願い信じて!!」

なんと見苦しい。まるで子供の言い訳だ。しかし俺も鬼ではない。

「そうかそうか! だったらお前達二人は無罪放免だな!」

一瞬、安堵の表を浮かべる二人。

「……なんて言うわけないだろ。連帯責任って言葉、知ってるか? お前らも沢渡と同罪なんだよ」

「ひいっ!! ど、どうか、命だけは……!!」

「誰か!! 誰か助けてええええええええええ!!」

二人の悲鳴が響き渡る。だがそれも、すぐに聞こえなくなった。

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