《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》氷の牢獄
「はあっ!!」
俺は【怪力】を発し、渾の力で氷の壁に拳を叩き込んだ。氷の欠片が飛び散り、巨大なが空いた。
「うひゃー、やっぱり凄いパワーだね」
朝野が嘆の聲を上げる。さっきこれを喰らってピンピンしてるお前も凄いけどな。一撃で破壊とはいかなかったが、何度か繰り返せばいずれ貫通するだろう。
「げっ!?」
なんて思った矢先、驚異的なスピードで氷の壁が修復されていき、あっという間に元に戻ってしまった。これも雪風のスキルの力か……!!
「あっはっはー。殘念だったねー」
「笑ってる場合か! お前も手伝え!」
「おっと、そうだったにゃ」
再び戦士に変した朝野はステッキから星の弾を放ち、氷の壁に炸裂させた。理攻撃が駄目でも魔法的な攻撃なら――と思ったが、やはり氷の壁は壊れるのと同時に修復されていく。その後も俺と朝野は粘り強く壁の破壊を試みた。
「秋人!」
悪戦苦闘する最中、春香が俺達のもとに戻ってきた。
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「どうだった春香?」
「駄目、抜けなんてどこにもない。秋人達の方は?」
「こっちも駄目だ。いくら壊してもすぐに再生してしまう」
自然解凍も期待できそうにないし、どうやら俺達は完全に閉じ込められてしまったようだ。これでは生徒達を避難させることもできない。
「秋人の【潛伏】を使って地中を経由すれば、壁の外に出られるんじゃない?」
「んー、俺一人だけ出できたところでな……。まあいい、やってみる。外の様子も見ておきたいしな」
「潛伏? 何の話?」
頭上にクエスチョンマークを浮かべる朝野。あまり朝野に手のを曬したくはないが、四の五の言ってる場合ではないだろう。
俺は【潛伏】を発し、地中に潛った。しかし驚くべきことに氷の壁は地中の深くまで張られており、先に進むことができない。壁が途切れるまで深く潛れば進めるかもしれないが、それまで息が続く自信がない。やむを得ず俺は地上に戻った。
「地中まで氷の壁が張られてる。これじゃ無理だ」
「そう。厄介ね……」
「ちょっと待って! 秋人くん今、地面に潛ったよね!? どゆこと!? 參加者のスキルって一つだけのはずだよね!?」
案の定、朝野は驚きを見せていた。朝野は俺がスキルでパワーを上げていると思い込んでるのだから當然だろう(実際その通りだし)。あの打撃力は俺の素の力で、本當はこっちが俺のスキル……とか言って誤魔化すのはさすがに厳しいか。
「実を言うと、俺のスキルは一つだけじゃない。理由までは教えないけどな」
「ええー何それ!? それってつまり秋人くんは複數のスキルを所持してるってことだよね!? なんかズルくない!? 反則にゃ! 依怙贔屓にゃ!」
「それよりどうするの、秋人」
不満をぶつける朝野をスルーして春香が俺に聞く。
「そうだな……。氷の壁を壊せないとなると、もはや雪風を見つけ出すしかないかもしれない」
だが相手はマルチプルの一人、激しい戦闘が予想させる。生徒達を避難させる前に學校を戦場にするのは避けたかったが、こうなっては仕方がない。
その時、ポケットの中で攜帯が振した。真冬からだ。
「真冬! 今こっちは大変なことに――」
『ん、分かってる。テレビやネットで凄い騒ぎになってる。まずはそっちの狀況を詳しく教えて』
「お、おう……」
真冬はとっくにこの事態を把握していたようだ。そして相変わらず冷靜だ。しかし真冬ならきっと良い知恵を貸してくれるはずだ。
『その雪風という男が、氷の監獄を創り出した、と……』
「ああ。しかもそいつは〝60〟の痣を持つ參加者だと言っていた。つまり以前真冬が話していた、マルチプルの一人だ」
『……!!』
スマホ越しに真冬の驚愕の顔が伝わってくる。
「直接そいつの痣を見たわけじゃないから確証はないけど、俺は間違いないと思う。なんせこれだけ膨大な氷を生するほどの力の持ち主だからな」
『……雪風の姿は全く見てないの?』
「ああ。ただ聲を聞いただけだ」
『どんなことを言ってた? それだけでも教えて。何かのヒントになるかも』
「んー、どんなことを言ってた、か……」
自慢じゃないが俺の記憶力は大したことないので一言一句までは無理だが、とりあえず覚えている限りのことを真冬に伝えた。
「問題は、雪風がどこにいるかよね」
「ああ。この學校のどこかにいるとは言ってたけど、それも本當とは限らない。もし學校の敷地外、つまり氷の監獄の外にいたら、俺達には手の打ちようがない」
『大丈夫。十中八九、その雪風という男は學校にいる』
確信を帯びた聲で真冬が言った。
「どうしてそう思う?」
『拠は三つ。①最初に雪風は「三人もの參加者が僕の領域にってくるとは」と言ってたんでしょ? それは學校外にいたら出てこない臺詞。②いくらマルチプルの一人とはいえ、何の條件もなしにこれほどの氷を維持できるとは思えない。おそらく外部からの維持は難しいはず。③これは私の主観だけど、この手の輩は遠くから眺めるより間近で狀況を楽しむタイプ。だからその男は學校にいると考えていいと思う』
「なるほどな……」
流石は真冬、分析が的確で早い。やっぱり頼りになるな。俺にはとても真似できない。
『気を付けて秋人。間違いなく相手はこれまでの敵よりずっと強い。私も念の為、學校外に怪しい人がいないか調べてみる』
「ああ、頼んだ」
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