《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》空腹との闘い

「噓、だろ……!?」

驚愕の表を浮かべる石神。俺は右手で容易く石神の拳をけ止めていた。なかなかのパワーだが所詮は一般人、俺の敵ではない。朝野の方が遙かに強かった。

「格の違いが、何だって?」

俺が右手に軽く力を込めると、ミシミシミシと骨が軋む音がした。

「いだだだだだ!! 待て待て何だその力!! テメーは一……!?」

「今そんな話はしていない。パンを返せと言ってるんだ。これ以上拒むようなら――」

「分かった返す!! 返すから!!」

俺は石神の拳から手を離した。

「ぐっ……おらよ!」

石神は奪い取ったパンを持ち主の男子生徒に放り投げ、早足で食堂から出て行った。直後、生徒達から小さな拍手が湧き起こった。

「すげえな月坂、あの石神を……」

「石神にはずっとムカついてたから、スカッとしたぜ」

「私も。ありがとう月坂くん」

どうやら図らずも、生徒達の元気を僅かながら取り戻すことができたようだ。なくとも圭介の笑ショートコントよりは。俺としても悪い気分ではない。

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「お前、力測定では斷トツの最下位だったよな……?」

信じられないといった様子で、圭介は俺に盆を返した。

「あの時は手を抜いてたんだよ。悪いな、騙すような真似をして」

「マジかよ。いやでもそれにしたって……」

「はいはい、この件は終わり。俺達も早く食べよう」

々やりすぎただろうか。今ので俺が普通の高校生ではないと疑いを持った者もいるかもしれない。まあ、この事態が収束したらその辺の記憶も支配人が上手いこと改竄してくれるだろう……多分。

食事を終え、俺は今日も春香達と手分けして學校の敷地を巡回する。一刻も早く雪風を見つけ出して、この狀況を終わらせなければ。だが、ここで重大な問題が一つ。

「腹減った……」

もう何度腹が鳴ったか分からない。栄養が十分に摂れない上にこの極寒なので、がかなり弱っているのをじる。たとえ雪風を見つけ出せたとしても、果たしてこんな狀態でまともに闘えるのかどうか。とりあえず何か食べたい……。

「あっ、秋人さん! こんな所にいたんですね!」

育館の周辺を歩いていた時、千夏が俺のもとに駆けてきた。

「どうした千夏?」

「えっと、ですね……」

千夏は用心深そうに周囲を見回した後、あるを懐から取り出した。それはさっきの晝食で出されたパンだった。

「このパンを、秋人さんにと思いまして」

「え? でもこれって千夏の分のパンなんだろ?」

「それは、まあ……」

もしかして千夏は俺にこのパンを渡す為に、食べずに取っておいたのか?

しでも秋人さんのお役に立ちたくて。気休めにしかならないかもしれませんが、私にできることはこれくらいですから……」

「いやいやけ取れないって。千夏だってお腹空いてるだろ?」

「だ、大丈夫です! 私はダイエット中なので、ちょうどいいんです!」

「本當か? どう見てもダイエットなんてする必要ないだろ」

「そんなことありません! 私はもっと痩せたいんです!」

「痩せなくていいと思うけどな。今のままで全然問題ないような――」

って、今はそんな話をしてるんじゃなかった。

「とにかくけ取れない。そのパンは千夏が自分で食べてくれ」

「でも、秋人さんはとても強い敵と闘うことになるかもしれないんですよね? だったら私なんかより秋人さんが食べるべきです!」

千夏って意外と頑固だよな。でもここで俺がパンをけ取ったら石神と同類になるよな気がして、なんだか後味が悪い。

「心配すんな。ちょっと腹が減ったくらいでへばる俺じゃない。むしろ千夏に空腹で倒れられることの方が心配だ」

「秋人さん……!」

目を潤ませる千夏。そしてしだけ俯き、再び口を開いた。

「分かりました。秋人さんがそう言うなら……」

「ああ。その気持ちだけで十分だ」

「……隙ありです!」

「モガッ!?」

俺が気を抜いたその時、千夏が俺の口に無理矢理パンを押し込めた。

「ふっふっふ。油斷しましたね秋人さん」

「モ……モガッ……!!」

「あっ、ごめんなさい。お水をどうぞ」

こうなっては仕方がない。俺は千夏から差し出された水と共に、パンを胃の中へと流し込んだのであった。

「や、やってくれたな千夏……」

「こうでもしないと食べてくれないと思ったので。作戦功です」

「まったく。次こんなことしたら怒るからな」

「あはは……」

嬉しそうな、申し訳なさそうな、そんな顔で千夏は微笑んだ。

「では、私はこれで。秋人さん、絶対に無理はしないでくださいね」

「……ああ。ありがとな」

千夏は手を振りながら俺の前から去っていった。千夏の行には驚かされたが、晝食の時に食べたパンよりも千夏から貰ったパンの方が腹を満たしてくれた気がする。きっと千夏の気持ちが込められていたから……なんてな。

その直後のことだった。攜帯に朝野からの著信が來た。

「どうした朝野――」

『大変にゃ!! 私の痣が反応したの!!』

「……何!?」

痣が反応したということは、朝野の近くに転生杯の參加者――つまり雪風がいる。ついに現れやがったか。確か朝野が見回っているのは校舎の中だったはず。

日頃からブックマークと評価、本當にありがとうございます。とても勵みになっております。

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