《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》四面楚歌

「ははっ、この非常事態に元気だなー」

「お前の元気には負けるけどな……」

「しっかしかくれんぼか、懐かしいなー。俺、ガキの頃はかくれんぼマスターって呼ばれたんだぜ。鬼に絶対見つからないように、池の中に潛ったり地面にを掘ってその中に隠れたりしてたな」

「ガチすぎるだろ。もはや子供の遊びってレベルじゃ――」

ん? 今の圭介の発言、何か引っ掛かるような……。

「それより気になったんだが、今日の皆の様子、ちょっと変じゃねーか? なんかヒソヒソ聲が多いっつーかさ」

「……そうか?」

俺は育館の中を軽く見回してみた。

(なあ聞いたか、例の噂……)

(あっ、それ俺も聞いた。本當なのか……?)

(いやさすがにデマだろ……)

(でも本當だったら……?)

確かに圭介の言う通り、あちこちからヒソヒソ聲が聞こえる。もう喋る気力も殘ってなさそうだったのに、今日になって一どうしたというのか。しかも心なしか皆、俺の方を見ている気がする。

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「圭介、お前何か知らないか?」

「いや何も。俺はネタ作りに集中してたからな」

なんだか気味が悪いな。まあいい、とりあえず雪風の捜索を再開しよう。そう思いながら立ち上がった、その時。

「うおっ!?」

突然、彫刻刀を手にした男子が俺に向かって突進してきた。俺は咄嗟に橫に跳んでそれを回避した。

「危ないな! 何するんだいきなり!?」

震える手で彫刻刀を持つ男子に俺は尋ねる。初めて見る顔だし、何故俺を刺そうとしたのか理由が全く分からない。知らないに恨まれるようなことでもしてしまったのだろうか。それとも今度こそはるにゃんファンの私怨……なわけないよな。

「き、聞いたんだよ! お前を瀕死にしたら、ここから出られるって!」

「……はあ!?」

俺が瀕死になったら氷の監獄から出られるだと? そんな訳がないだろう。一誰がそんなこと――いや考えるまでもない。十中八九、これも雪風の策略だ。

(月坂を瀕死にしたら出られる……!?)

(噂はマジだったのか……!!)

(だったらやらないと……!!)

今のを皮切りに、男子達は次から次へと立ち上がり、俺を睨みつけてくる。

「なっ……冷靜になれ皆!! そんな都合の良い話あるわけないだろ!!」

俺の言葉も無視し、男子達はジリジリと迫ってくる。心もも極限狀態に陥っているせいか、正常な判斷能力を失っているようだ。説得が通じないなら力ずくで――駄目だ、相手はただの高校生だぞ。

「くそっ……!!」

やむを得ず俺はこの場から走り出した。ここは逃げるしかない。

「逃げたぞ!! 追え!!」

「絶対に捕まえろ!!」

男子達が必死の形相で俺を追いかけてくる。腹が減ってまともにけないはずなのに、錯した人間ほど怖ろしいものはない。

育館を飛び出した俺は、すぐさま【潛伏】を発して地中に潛った。

「どこに行った!?」

「探せ!! まだ近くにいるはずだ!!」

咄嗟に地中に隠れたが、こんなのは一時凌ぎにしかならない。地中を移するのは地上に比べて大きく力を消耗するので、今の狀態ではただ潛るだけで一杯だ。やがて息が続かなくなり、俺は地中から出てしまった。

「いたぞ!!」

再び俺は走り出し、男子達がそれを追いかける。かくれんぼの次は鬼ごっこかよ。俺の力もいつまで保つか分からない。

俺は避難先を求め、子達のいる校舎に向かった。もう男共は手遅れだ、子達に頼るしかない。この異常事態だしれてくれるはず――

「げっ!?」

俺は急ブレーキをかけた。校舎の方から大勢の子がこちらに向かってくるのが見えたからだ。まさか……!!

「いたわ、月坂よ!!」

「あいつを瀕死にしたらここから出られるのね!?」

くそっ、とっくに子達にも噂が広まっていたのか。これで校舎に避難することもできなくなった。四面楚歌ってやつか……!!

気付いたら俺は、誰もいないであろう部室棟に逃げ込んでいた。俺は三階に上がり、廊下の真ん中で仰向けに寢転がる。

「はあっ……はあっ……」

ちょっと走っただけでこの疲労、力が限界に近い証拠だ。ひとまずここで一休みしてしでも回復を――と思った矢先、左の方から階段を駆け上がる足音が聞こえてきた。

「もう來たのかよ……!!」

どうやら休む暇も與えてくれないらしい。俺はすぐに立ち上がって右方向に走る。が、間もなく右の方からも足音が聞こえてきた。これでは挾み撃ちにされてしまう。

適當な部室にを隠したいところだが、當然ながら俺はどの部室の鍵も持ち合わせていないので中にれない。かと言ってドアを破壊したりすれば、その形跡でそこにいるのは即バレてしまう。萬事休すか……!!

「秋人、こっち!!」

その時、とある部室から聞き慣れた聲がした。よく見ると一つだけドアが開いている。

「その聲、春香か!?」

「いいから早く!! このままじゃ見つかっちゃうわよ!!」

迷わずその部室に飛び込むと、案の定そこには春香がいた。春香は即座にドアを閉めて鍵を掛ける。

「ひとまずこの中に隠れて!!」

春香が掃除用れを指差す。考えてる余裕はない。俺は春香と共に掃除用れの中にを隠した。

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