《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》オオカミ

「どけ!! 邪魔だ!!」

噂をすれば、廊下の方から石神の大聲が響いた。あいつには尋問しないといけないので、わざわざ戻ってきてくれたのは助かる。しかしやけに取りしたじだが、何かあったのか……?

「きゃあっ!!」

「うわっ!?」

悲鳴を上げる生徒達を押しのけ、石神が保健室にってきた。その瞬間、俺は大きく目を見開いた。石神が全傷だらけの子生徒を抱えていたからだ。気を失っており、明らかに危険な狀態だ。

「おい、どうしたんだその子!?」

俺はベッドから飛び起き、石神に詰め寄った。

「んなことよりまずはこいつの手當てが先だろ!!」

石神の言う通りだ。俺は春香と目を合わせて頷く。

「私に任せて! 秋人、もうベッド使っていいわね!?」

「ああ!」

春香は石神から子生徒を預かると、先程まで俺がいたベッドに彼を寢かせ、個室のカーテンを閉めた。

「おい、あいつ一人に任せていいのか!?」

「ああ。春香に任せておけば問題ない」

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春香のスキルならどんな傷もたちまち治る。その代わり後癥がキツいが、そこは耐えてもらうしかない。

「それで石神、一何があった?」

「屋上に行ったら、なんつーか〝人の形をした氷〟が何もいて、そいつらに襲われてたんだよ!!」

人の形をした氷……?

「何言ってんだ石神の奴……」

「作り話にしても雑すぎるだろ……」

「どうせ石神が腹いせにやったんだろうな……」

「うわっ、最低……」

嫌悪に満ちた目を石神に向ける生徒達。

「お、お前ら!! 俺の言うことが信じられないのか!?」

「そりゃそうだろ、馬鹿馬鹿しい」

「つーかあのデタラメな噂を皆に広めたのって石神なんだよな?」

「そんな奴の言うことを誰が信じるってんだよ」

何も言い返せず、たじろぐ石神。どうやら石神は完全に信用を失ったようだ。元々周りからは煙たがられていたようだが、今回の件が駄目押しになったらしい。

「ぐっ……どいつもこいつも……!!」

この場に居たたまれなくなったらしく、石神は保健室から出て行った。はみ出し者の石神も生徒全員から敵視されてはどうしようもないと見える。

「俺達もそろそろ戻るか」

「いつまでも保健室に群がってたら迷だもんね」

「しかし腹減ったなあ……」

「俺達、これからどうなるんだろうな……」

他の生徒達もゾロゾロと退室していく。直後、春香が個室から出てきた。

「終わったわ。もう大丈夫よ」

「そうか。悪いな、立て続けに春香のスキルに頼ってしまって」

「まったくよ。アタシがいなかったらどうなってたことやら」

「それより、さっき石神が言ってたことなんだが――」

「ええ、アタシにも聞こえてた。秋人は石神の話、本當だと思う?」

俺はしの間考え込む。また俺を追い詰める為の罠、という可能もあるが……。

「俺は本當だと思う」

「へえ、意外ね。石神のせいであんな酷い目に遭ったのに、石神を信用するの?」

「別にそんなんじゃない。ただ……」

人の形をした氷に襲われていた――普通だったら他の生徒達のように馬鹿馬鹿しいと一蹴するところだが、雪風がスキルを使ってそのようなを出現させた、そう考えられなくもない。

「とにかく、そいつらがいたっていう屋上に行ってみようと思う」

もし実際にそんながいたら、また犠牲者が出るかもしれない。そうなる前に対処しておかなければ。石神を尋問したり真冬と連絡を取ったりするのはその後にしよう。

「秋人さん、おの方は……」

「ああ、もう大丈夫だ」

軽くストレッチしながら千夏に返事をする。もう十分休んだし、は問題ない。

「秋人がそう言うなら、アタシも行くわ」

「……いいのか春香? 危険かもしれないのに」

「もし何かの罠だった時のことを考えると、秋人だけじゃ心配だしね。ほらアンタも付き合いなさい! いつまで寢てんのよ!」

「ふぎゃっ!? え、なになに!?」

春香が床で寢ていた朝野の背中を踏んづけた。そういや朝野のことすっかり忘れてたけど、布団からり落ちた後もずっと寢てたのかよ。あんなに騒がしかったのによく起きなかったな。

「皆さん、気をつけてくださいね」

「ああ」

千夏に見送られながら、俺は春香、朝野と共に保健室を出た。

「それで秋人、どうして石神の話が本當だと思ったの?」

屋上に向かう途中、春香が俺に聞いてきた。

「春香はオオカミ年の話、知ってるか?」

「當たり前じゃない。もしかして石神もその年と同じって言いたいわけ?」

「そういうことだ」

年は噓つきだったので、本當にオオカミが現れた時には誰も信用されず、結果として村の羊は全てオオカミに食べられてしまった。この話は今の狀況とよく似ている。

「それにちゃんとした拠もある。一つ目。あの石神の慌てよう、俺にはとても石神が噓をついているようには見えなかった」

「まあ、あれが演技だったら俳優を目指せるわね……」

「二つ目。石神は子に手を出せるようなタイプじゃない。だからあの子が石神以外の何者かに襲われたのは間違いないと思う」

「そうなの? 意外ね」

その証拠に昨日千夏が俺を庇った時、石神は全くかなかった。その気になれば千夏を突き飛ばすくらい容易にできただろうに。ああ見えて子には弱いのかもしれない。

ちなみに俺は男平等主義なのであしからず。まあ沢渡達を容赦なく殺した時點でそれは周知の事実だろうけど。

ブックマーク・評価をいただけると勇気が湧いてきます。よろしくお願いします。

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