《愚者のフライングダンジョン》4-4 ニート、ヒルミミズ
「お、お、なんか……なんか力が湧いてくるぞー! なんだこりゃあ!」
ニートは元気に言うが、もう皮の4割が消化酵素に溶かされている。
ヒルミミズの消化酵素により弱毒化した魔石は融合が速い。皮にもヒルミミズのおかげで彼は助かった。変化を実するほどのスピードでが改造されていく。
皮からが染み出てきて大きなカサブタのように固まると、次第に剝がれて新しい骨が形された。
「おお、こりゃ新しい骨か? これは外骨格だ。でも骨格が消えたわけでもなさそうやし」
つづいて手の甲がモゾモゾといた。徐々に指と重なるように膨らみ始める。
最終的に通常の2倍ほどまで膨れ上がった指の先がひび割れ、ベリベリと皮を突き破ってオークルの突起が現れた。
「これは? 爪か? お、なんだこれは……
お?
やめろ! やめろ!」
突起はそれぞれ手の甲に繋がっていて、7本の指を補助するように7本生えていた。
「これじゃ手の指だけで28本になっちゃうぞ!
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足は? よかった……足の指は7本のままだ」
今回獲得したのは新しい皮、不滅の外骨格、不滅の指の手、不滅の八重歯、不滅の尾。
変化のたびに人の姿から離れてきたが、ついに問答無用で研究対象りするレベルまで変した。
古い皮が消化酵素に溶かされ、分解耐を持つ新しい皮が現れる。魔石の意志がニートのピンチをチャンスに変えた。
ニートは長い時間をかけて浮かんでいた魔石を全て食べ終え、やっと出プランを考え始めた。
備中鍬があれば側からを開けて容易に出できるが、頼みの綱である備中鍬はヒルミミズの攻撃で地面に埋められた。
包丁がったウエストポーチは戦いの最中に投げ捨てていたため、ニートのもとには文明の利がひとつもない。
手の甲から新しく生えた長い指を見る。指というよりは手だ。骨のように質だが関節をじさせないほど自由にかせる。タコの足のようにを摑めてよくびた。
手はばせばばすほど先端から糸のように細くなり、力を込めるとレイピアのように鋭くなって形狀を保つ。
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手を最大までばすと、腕と同程度の長さになった。最大までばすと手の太さは糸程度になり、を摑むには適さない。
ちなみに長はびていない。なんなら何センチかんで長165センチだ。
「おお! これで背中も洗いやすいぞ!」
手は便利だがまだ単純なきしかできない。ゲームのコントローラーは既存の指で持つことになるだろう。本のページをめくったり、キーボードのファンクションキーを打つときには活躍するかもしれない。
ニートは手を指に巻き付かせて質化し、4本の鉤爪を作った。両手合わせて8本の鉤爪だ。力を込めて刃の形狀をイメージすると更に鋭利になった。
「〖貓の爪〗と名付けよう」
ニートは〖貓の爪〗を壁に突き立て、爪を刺しこもうとする。しかし粘でって引っかからない。ならばと鉤爪の先をレイピアに変えて壁を滅多斬りにした。
壁は一瞬傷つくが、すぐに粘で埋まって掘り進められない。
「水を斬っとるようや。歯が立たん」
ニートは切り裂く以上の策を思い付けずにとにかく切りまくった。
最初はそれで良かったが、あることに気づくと別人のように大人しくなって息を殺す。
酸素が薄まってきたのだ。外見は人外に染まってきたとはいえ、まだ人としての名殘りがある。くためには酸素が必要だ。
ニートのもとに酸素が供給されるのはヒルミミズが空気を飲み込んだときのみ。ヒルミミズは皮呼吸が酸素供給手段なため、口を開くかどうかはヒルミミズの気分次第だ。それにの奧に行けばいくほど酸素が薄くなる。
ニートは酸素を求めて口の方へ逆走することに決めた。
「あっちは狹くて嫌いや。貯蔵庫は広くて居心地がよかったのに」
愚癡を吐きながらもゆっくりと呼吸して酸素を節約つつ、消化を押し広げながら逆走していく。
ヒルミミズのターン。容が逆流する気持ち悪さを覚えて、押し戻そうと激しく蠕運を繰り返した。大きく口を開け、土を飲み込んで容を押し流す。
ニートのターン。また貯蔵に戻ってきた。逆走は阻止されたものの目的の酸素は供給されたから良しとする。
彼は大きく深呼吸をして気持ちを切り替えた。再び壁を切り裂きはじめたものの、やはり水を斬るような手応えだ。延々と続けてみたが無駄な作業に思えてきて、ついに心が折れた。
他の手段も思い付かず八方塞がり。貯蔵に大量の魔石が溜まっていたことから考えて、ニートが糞として出るのはいつになるかわからない。
いや、糞として出ることも視野にれるべきかもしれない。おそらくそうなる前に酸素が不足するが、數日間も息を止められる生は存在する。ニート自がそうなればいい。
そうとなれば糞として出るまで生き殘るしかない。
ニートは全を発させる。粘でドロドロのヘドロとなった土をかき分けて見落とした魔石が無いか探し始めた。
すると魔石が出るわ出るわ。泥の上に浮いていた魔石しかニートは食べてこなかった。魔石は浮くものと考えていたから。
しかしドロを掬い上げてみると沈殿となった魔石がどんどん出てくる。その數は浮いていた魔石の約5倍。
泥の上に浮かんでいたのは有害質を分解中の魔石だったようだ。
沈殿の魔石は有害質が更にないはずだ。分解後も貯蔵のヘドロに接著していたと思われる。
あの猛毒の魔石から有害質をに生濃しているのだ。おそらくヒルミミズのはこの世で最も恐ろしい猛毒として生図鑑に載るだろう。
ニートは凄まじい肺活量で息を吹きかけ、魔石表面のヘドロを落とす。そしてひとくち。
時間はかかるが、ひとつ息を吹きかけては食べる作業を繰り返した。
なにせさっきの5倍くらいの量だ。顎は痛く無いが味に飽きてくる。
「醤油がしい。練のほうがいいかな」
が改造される覚を味わいつつ、どんどん魔石の山を減らしていく。
食事中に何度かニートが皮を繰り返した。抜け殻の裏面は綺麗だと知ってからは自分の皮を座布団にしたり、魔石を載せる風呂敷にしたりしている。
変化を繰り返した結果、日本人特有のオークルから管の青が消えた。
もうのが赤ではない。は無明でケミカルライトのように白くる。る涙が全を駆け回っていた。燃料に酸素が要らなくなったのだ。
臓はもっと複雑だ。役割は増えて臓の総數が減っている。酸素を送らなくなった肺や心臓のように役割が変わった臓もあるし、形が変わった臓もある。それに加えて魔力袋なる新しい臓ができた。
外骨格は更に増えて継ぎ目が無くなり、骨格と合わせて骨の総數が2本になった。外骨格と骨格が互いの可域を妨げないように位置している。ニートの関節はもう外れない。直立するだ。
今までにあった発が不滅化に伴って皮下から飛び出し、不滅の尾は太さも長さも変えられるようになった。
唯一殘った人間は外骨格と発を繋ぐの、管と聲質と指紋くらいだ。あと部。
ある意味、弱點部分がこれだ。ニートを理的に解するのは難しくなったが、まだまだ刃を通す隙間は沢山ある。骨と発を避けて全ての臓を引き摺り出すこともできる。
ニートのにある全ての魔石が融合し終えた頃にヒルミミズがき出した。それもかなりのスピードで。
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