《愚者のフライングダンジョン》5-3 ニート、心までは怪になるな

ついにニートを苦しめ続けたヒルミミズとの戦いが終わった。途中、住み始めてからは長かった。

「味も食も香りも各別! 桃の食! 発するような爽快! 鼻を抜けるバナナの香り! 最高のご褒や!」

超ド級の危険だ。魔石に放は無いが毒はウランみたいなものだ。魔石と適合したニートでなければ完全に消化した瞬間お陀仏だ。毒に耐があるヒルミミズですら完全には消化しない。

の魔石とはいえヒルミミズによって常に濃されて毒が取り除かれていたため、融合の時間が即座に訪れた。

背中に大手を作って以降、ニートは融合の時間に坐禪を組まなくなった。加えたいイメージが思い浮かばず、なるがままに任せている。

なるがまま魔石に任せているというよりかは自の想像力に失していた。

どうやら今回は魔石が大改造を施すらしい。ニートが気絶してしまった。

アリといえどもヒルミミズのは食わないから気絶しても安全かもしれない。ただヒルミミズからり輝くニートがけており、アリから見てもあまりに不自然な狀態だ。

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融合終了まで運良くアリが近づいてこなかったものの、もしもアリがを恐れずにニートを引(ひ)き摺(ず)り出していたら、死にはしないもののニートは大変痛い思いをしたに違いない。

融合を終え、ニートが目を覚ます。

びしたかと思えば、おもむろに貓のポーズで固まった。すると背中の皮がパックリと割れて、セミが羽化するように新しい怪が姿を現した。

重ともに以前と変わらない。は日本人特有のオークル。全から発出しているのも変わらない。不滅の骨格も外見が変わっていない。両手両足の手と指の數も計56本で変わらない。尾の形も背骨の延長みたいな形で変わらない。

唯一、変化した外見的特徴は背中の手が8本になったくらいだ。

皮したということは何かが大幅に変わっているはずだ。

皮ってことはなんかが変わっとる。そんなの決まっとるよなあ!」

背中の8本の手を広げた。そして水かきのような皮手の間を繋げていく。

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これは翼だ。

「飛べええええええ!」

ヒルミミズの頭を突き破っての怪が降臨した。

「鳥人間誕!」

鳥人間どころではない。

アリの親衛隊10名が同時に圧倒的脅威を知し、仲間の死骸集めを中斷して無防備なサナギを守るために囲んだ。

ゆっくりと地表に降り立つの怪

親衛隊は巨大なアゴを鳴らせて威嚇した。

【戦闘開始】

先行はニートのターン。翼を収納し、全手から粘著を周囲にばら撒く。自分自を囮にしてアリをい込むつもりだ。

「はい勝ち。來(き)なよレディーたち」

アリのターン。粘著を直接けたアリはきがゆっくりになっていた。粘著を避けたアリもニートの元にはたどり著けない。道中には千切れた腳がくっついている。死骸にくっついてけなくなったアリもいた。

【戦闘終了】

早くも決著。1分もかからなかった。

収穫の時間が始まる。

まずヒルミミズの脳部屋に戻って新たな皮の抜け殻でリュックを作った。といっても抜け殻をそのまま擔いだだけだが。

ヒルミミズの表にくっついたアリの生首から魔石を引っこ抜いてはリュックにれ、引っこ抜いてはれを繰り返した。

地表で潰れたアリからも魔石を取る。死骸の數が多すぎてニートは飽き始めていたが、魔石をにつけてつまみ食いすると元気を出して作業を再開する。

時間はかかったが計1000個以上のアリの魔石が手にった。

壁側に配置された卵から魔石を取り出すのは面倒だったらしく、ニートは殻の上から蟲の頭にかぶりついて頭部ごといただいていた。

ヒルミミズの中に戻って、にいるアリからも魔石を回収した。

殘るは親衛隊と王の魔石だ。親衛隊は戦闘不能であるもののまだ生きている。王も腹が潰れたもののまだ息がある。抵抗されたら面倒だから最後まで手をつけなかったようだ。

一方、彼たちアリは目の前で姉妹や子どもたちが化けに食われる地獄絵図を見せつけられて悲鳴を上げていた。

大化した脳に悲しみと怒りのが溢れていた。はじめての現象は世界の記憶庫に記録される。

ニートはまず王アリからトドメを刺した。頭からとびきり大きな魔石が取り出された。

黃金の蜂をした魔石だ。甘い果実の香りに食を堪えきれずニートは魔石にかぶりついた。

「うめえええ! 最高級のゼリーだ!」

あっという間に食べ終わり、から蒸気を出して融合しながら親衛隊に近づく。

カチカチカチカチ。親衛隊はアゴを鳴らせる。

「おお、めっちゃ怒るやんか。どうした?」

親衛隊の頭をでて溶解で甲殻を溶かしてから魔石を取り出す。すると糸が切れたようにアリはかなくなった。

親衛隊の魔石は他の有象無象よりし大きくて良い香りがするらしく、新鮮なうちにぱくりと一口で食べた。

親衛隊がいっそううるさくなった。

カチカチカチカチ。と音を鳴らせて威嚇する。

「こわいなあ。そんなにいたら危ないでしょうが。ちょっと落ち著けって」

粘著にくっついた仲間の死骸を引きずりながら親衛隊の生き殘りがニートへ最後の戦いを挑む。

ニートのターン。「こら、危ないでしょうが」の一聲とともに飛びかかってきた親衛隊の頭をでて魔石を取り出す。

そしてとれたての魔石をぱくりと一口で食べた。

殘りの親衛隊も順に鎮めていく。もはや敵とみなしていなかった。

親衛隊を全て鎮めたとき、唯一殘されたサナギがいた。

「あれ、そういやこんなん運んできてたな」

サナギからも魔石を回収しようとニートが近づいた次の瞬間!

サナギがパリッとフランスパンが割れるような音を出した。

羽化したばかりでらかく白いのアリ? が姿を現した。

おそらく王の素質があるアリなのだろう。他の有象無象の蟲より大きい。そして特殊な個だ。

なにせ人型なのだ。両手両足がある。アリと比較したならむしろ腕が二本足りない。

頭部も他のアリと違って小さい。目は真っ赤であるが目の大きさは人と同じ程度。まぶたはないがまつのような長いが生えている。

覚の代わりに鼻があり、鼻と同程度の大きさにんだアゴは退化したのか人間でいう耳のあたりまで離れていて絶対に噛み合わない。アゴの間をマスクのように白い口ひげが覆っている。

的に人を意識したかのような丸みがある。それにアリというよりはハチのようにが多く、髪のような長いもある。

スレンダーな鎧を纏っていて、アリとしての腹部は尾のように太く長く変化していた。

「エッッ……えっちだ……」

冗談かと思ったが発言と一致するように間からってるから『』だろうか)が、収納ポケットからそそり立っていた。

彼はを無くしたとばかり思っていたが、新王を見て発したらしい。

心の底から新王をしがっている。

ニート、心までは怪になるな。

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