《愚者のフライングダンジョン》8-2 ニート、裏面挑戦!
超スピードで隙間を抜け、宮殿の庭を剎那で通過し、黃金の壁に全を叩きつけた。
不滅といえどもマッハ5.0で急停止すれば全がぺしゃんこになる。
特に魔石由來のダークマターは神に応して形狀を変化させる質がある。
超スピードで壁にぶつかるイメージがニートの深層意識から引き出されると、不滅のはカートゥーンアニメのような流のふるまいをした。
水風船が破裂したような音を立てて壁にべっとりとオークルの皮が広がる。
黃金の宮殿に張り付いた汚がひらりと剝がれ落ちた。
一瞬、気を失っていたようだがニートが目を覚ますと風船が膨らむように怪の形に戻った。
「これぜったい夢の最後に出るぜ」
の調子をチェックして元気になったニート。過剰なストレスがかかる試練の道を潛り抜け、ついにゴールにたどり著いた。気持ちが高まるのも無理はない。
門のない宮殿だから禮節など必要ないとばかりに側面の吹き抜けから侵するニート。
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ダンジョンで生活様式を変えられていても異質な本質は変わっていなくて安心する。ニートはここから出しても祖母の家には玄関からでなくお縁の掃き出し窓から上がることだろう。
宮殿は側も全て黃金で輝いている。源は天井に張り付いた超巨大ホタル。ニートが下を通っても襲ってこない。
しかし彼は襲いかかる側のハンターだから相手が無害だろうが関係ない。興味をそそる相手なら倒しにかかる。魔石が大きそうなら尚更だ。
【戦闘開始】
ニートのターン。大手、尾、両腳を収させて一気に展し、ホタルに向かって垂直に飛んだ。
人がジャンプすれば屆くなんてほど天井は低くない。
宮殿は全で123メートルに及ぶ高さの建築で、超巨大ホタルは50メートル先のアーチ狀の天井に張り付いている。
それはもうジャンプというより投石機。重さ50キロのニート砲弾は天井まで屆き、ホタルの頭部を貫いて一緒に落ちてきた。
ガシャンと金屬が強く打ち付け合う音がした。薄暗くなった廊下に新しいが燈る。ニートのだ。
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片手に大きな魔石を持ってモグモグしながらホタルの頭から出てきた。
「よーし! 次行こうかね!」
宮殿の源が順番に消えていく。エントランスホールの明かりが消え、殘る明かりは中央の本殿のみとなった。
口から魔石のを溢しながら、ニートが本殿の真ん中をどすどす歩く。
本殿だけ特別に塔のような高さだ。床から天井まで100メートル以上離れており、部屋の大きさも他と比べて2倍以上大きい。そんな天井に張り付くのは巨大ホタルの2倍以上大きな超超巨大本殿ホタルだ。
さすがにニートの筋力でも天井までは屆かない。だが半分は屆く。半分屆けばやり方はいくらでもある。屋という條件であれば尚更やれることは多い。
あくまで翼は使わないようだ。特に理由のない縛りプレイだろう。ニートは隙あらばそういう楽しみ方をする傾向がある。
大手と尾を長くばし、今できる最大のジャンプで垂直に跳ぶ。やはりそれでも屆かない。あと4分の1で屆きそうなところで高さの頂點がきた。
落ち始める直前に全手から粘著糸を壁にり付け、簡易的な蜘蛛の巣を作った。
急場しのぎで作った蜘蛛の巣の足場は弛(たる)んでいる。これでは踏ん張ってジャンプしても力が分散されて跳べない。
力が分散されないようにピンピンに張った糸を壁にりつけていき、乗っても揺れない丈夫な足場を作った。
ピンピンな糸の上はトランポリンのようには弾まない。地面のときと同じフォームで2回目のジャンプをすればさっきと同じ高さまで跳べるはずだ。
本殿ホタルのターン。発を強く発させて高熱を放つ。本殿がサウナのようになるがニートは糸から落ちない。
本殿ホタルはどんどん出力を上げていき、のが赤から白へ、白から青へと変わった。
さらにはを変え、ニートの破壊線と同じ紫のが本殿ホタルから溢れ出る。
ニートのターン。予想しなかった反撃に怯み。破壊線の範囲攻撃バージョンをまともにけた。
だがしかしニートは踏ん張った。紫の破壊線は彼の専売特許。上位互換など出されてはたまらない。
ニートは無事でも糸は踏ん張れない。糸は高熱に負けて焼け溶けてしまった。
足場を失ったことでニートが落下していく。落ちるあいだも笑みを絶やさない。負けていないという自己主張だ。
本殿の床に頬杖をついて寢た。余裕でけ切れているというアピールだ。
そんなアピールを見せても破壊線は止まない。
これはどうだとスクワットをしても止まない。プッシュアップをしてもクランチをしても破壊線は衰えない。
さすがのニートも負けを認めるしかなかった。本殿ホタルの破壊線は自分の破壊線の完全上位互換であると。
広範囲に渡って長時間照しても疲れないのは敵ながら天晴であると褒めた。
開き直ったところでニートは坐禪を組む。大量のの波を浴びながら自分自のと向き合った。
(おかしい。どう考えてもおかしい。こんな弾みたいなをけているのに大して熱をじない。それになんで気を失わないんだろう。人は電気インパルスの塊だ。このが電磁波に強かったとしても、これほど大量の放線を浴びれば生電気が電離する。神経がシャットダウンせずにいられるのはなんでだ)
(俺が間違ってるのかな。放線を浴びても人は電離しないのかな。実際に験して大丈夫なんだから大丈夫だな!)
(でも仮に、仮に電磁波を完全に吸収する黒のようなのがを守っていたとして、のエネルギーはどこに吸収されるんだろう。黒だろうが吸収したら熱を持つはず。の熱エネルギーはどこに消えてるんだろう。さっき食べた魔石がで沸騰してないということは、が熱を吸収していないか熱を吸収した瞬間にどこかへ放出して冷卻しているか)
「ちょっと試してみっかあ」
ニートは上を向いて背筋をばすと口を大きく開けてを飲み込む。
(あっつい! 熱いけど! 揚げたての天ぷら程度でしかない! 一定の溫度になると何処かに放出しているはず! あっつい! あっつい! じろ! の行先を!)
ニートは坐禪の最終奧義を無自覚に発揮し、の熱伝導を電気信號で察知した。・熱エネルギーは神経の外側を通ってとある臓に回収されている。
そう、それが魔力袋だ。
(なんだ? なんでここでが途絶えた? なにこれすごく冷たい。ここが冷か。圧したあとどこに行ってるんだ。なんで放出してないのに冷たいんだ)
(もしかして、圧した熱エネルギーをこの臓が別のエネルギーに変換してる? なにに? こわい!)
そうは思いながらも不思議な臓の発見にワクワクしているニート。自分の中に日本の電力を一年間賄(まかな)えるエネルギーが格納されているというのに呑気なものだ。
しかも魔力を発生させるや裝置にはカロリーを必要としない自回復機能がある。
ニートの魔力袋の場合は格納上限まで1時間に1割ずつ回復する。
こんな便利機能を考えた使者はアホだ。こういう例外的な存在が現れたらどうするつもりだったのだ。
まぁでも無理はないか、このダンジョンの法則はコチラの世界の法則と質が異なる。
コチラの世界には魔力袋の設定に介するだけのリソースはない。これほど大掛かりな魔力袋を構築してしまう魔石には間違いなく神の手がっている。
あの新人は隨分と好き勝手にやるようだな。あいつじゃなくもう片方が神になれば良かったのに、吾(あ)が君(きみ)め。
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