《ドーナツから蟲食いを通って魔人はやってくる》9話 命令
(あらすじ)
世界の果てアニュラスの中心にある鳥の王國。王國の周りは六つの國に囲まれ、常に戦爭狀態にあった。
神學校を卒業後、ディアナ王の侍従として宦にされる予定だった名家の私生児ユゼフ。王の婚約儀式に付き添ってカワウ王國へ行くが、時間(とき)の壁が出現する。
更に國へ帰る旅の途中、王一行は盜賊に襲われてしまう。護衛隊が壊滅させられる中、ユゼフは王と逃げる。しかし、何とか盜賊の手から逃れても二人の前には魔の棲む深い森が橫たわっていたのだった。
容赦なく襲ってくるのは巨大な魔。
偶然出會った剣士エリザにユゼフ達は助けられる。エリザの導きで森を抜け、小さな村で宿をとることになった。
※10話は一回消してから、また新しく追加したエピソードです。
蜘蛛の糸のような記憶をたどり、時間を遡る。ユゼフの意識は側へ向かった──思い出すんだ。壁が出現する前、國を出る前に何があったかを。
記憶の斷片を繋ぎ合わせる。事象ではなく、場面(シーン)で思い出す。場面の端にヒントが隠れているかもしれないからだ。
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そうだ、まず、俺は呼び出されたんだ──
†† †† ††
一ヶ月前。
國を出る直前のこと。
ユゼフにはどうしても行かなければならない場所があった。
ちょうど神學校の卒業式が終わった後。腹がグウグウ鳴る時分に文は屆いた。祝辭かと封を開けた所、シーマが來てくれと。しかも今すぐに。
シーマというのは學生時代の友人だ。ただし、友人……というのには語弊がある。
シーマはボスであった。
ユゼフは家來のの一人。
ユゼフが意見することはあってもそれは諫言(かんげん)に過ぎず、対等ではなかった。
私生児のユゼフと違い、シーマは名家の正嫡子である。だが、そんなことが些末と思えるほどのカリスマを放っていた。
シーマからの突然の呼び出しは初めてでもないが、頻繁にある訳でもない。ただの気まぐれかもしれないし、何か大事な相談かもしれなかった。
神學校からシーラズ城までは五十スタディオン(十キロ)程度だったので、ユゼフは歩いて行くことにした。晝食は取らずに。
王都スイマーの近く、シーラズ郡にシーラズ城はある。シャルドン領シーラズは大きな湖を中心に山で囲まれていた。領地の境界に城が建てられている。
樺の街路樹が植えられた石畳の道を歩けば、春の気に當てられし汗ばんだ。すぐに來いと言われていたため、暑苦しい祭服を著替える時間はない。
奴隷というか、従屬心が染み付いていた。よっぽど嫌なことでなければ、我が儘に慣れてしまっている。
ふと、木影から雉貓(きじねこ)が飛び出した。
首に結び付けられているのは文。國外では鳥を使うのが一般的だが、鳥の王國では貓や犬が書簡を運ぶ事が多かった。
手紙は父からだった。
──急の知らせがあるので、急いで帰るように
父がユゼフを呼び出す事など滅多にない。
あまりいい知らせでない事は明らかだった。
※※※※※※※※※※※※※※
ヴァルタン家の屋敷に著くと、父は眉間に皺を寄せ、いかめしい顔付きをしていた。まあ、これはいつもの事だ。ユゼフは父の笑う所を見たことがなかった。
「遅かったな」
「申し訳ございません。式が長引いたので……」
「言い訳はしなくていい」
ユゼフは口をつぐんだ。
父の隣には長兄ダニエルがおり、従者のベイルがし下がった所に控えている。
「カワウとの戦爭も終わり、二人の優秀な息子も無事に帰って來た」
父エステル・アルマンは一旦、言葉を切った。
「ユゼフ、お前に求められる役割はなんだ?」
「……ディアナ王殿下をお守りすることです」
「うむ」
父は満足そうに頷いた。代わって口を開いたのは兄ダニエルだった。
「ディアナ王殿下とカワウ國の王子フェルナンド殿下が婚約することになった。我々は婚約の儀式を執り行うため、王様をお守りしながらカワウへ向かう。おまえも王様の従者として同行するのだ」
そこでダニエルは言葉を區切ってユゼフの顔を見た。返答を待っているのだ。
「かしこまりました」
ユゼフにはそう答えるしか選択肢はなかった。ダニエルは冷たい表のまま父に尋ねる。
「父上、あっちの方の処理はどうするのですか?」
ちょっとした忘れを思い出したかのように……些細なことだ。とんでもなく事務的でつまらない仕事の話……
ユゼフは背筋に悪寒をじた。
「何しろ急に決まったのだ。預言では半年後に「壁」が現れると言われている。すぐにでも出発するよう國王陛下のご下命をけているのだ。明朝には発たないといけないから時間がない」
「では、そのままで」
「ユゼフよ、お前はこの任務が終わったら、臣従儀禮を済まし正式にディアナ殿下の侍従となるのだ」
その臣従儀禮の中には切られて宦にされることも含まれていた。
父は二人の息子が戦死することなく戻ってきて、尚且(なおか)つ厄介払いもできるので満足そうだった。その上、王家との繋がりにも利用できる。
「かしこまりました」
たった一つ殘された言葉を噛み締める。答えれば、承諾したのと同じ。それ以外に選ぶことなど出來ないのだ。
ユゼフは中からを抜いて、落膽を見せないようにした。
一杯の無表で深々と一禮する。人形は人形らしくしていればいい。その方が誰の迷にもならない。
しかし、父達に背を向けた途端、襲ってくるが足を早めた。
父の聲が追い打ちをかける。
立ち去る間際に思い出したのだ。さっきのつまらない話より、もっと大事なことを。
「そうそう。お前、シーマ・シャルドンと親しいようだが、今後は付き合わないように」
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