《ドーナツから蟲食いを通って魔人はやってくる》12話 勘違い
エリザが起きて、その後ディアナが起きた。軽く支度を整えた後、ユゼフ達は家族の居間へ。
ユゼフ達が宿泊させてもらった村長宅は大家族だ。長男家族も同居しているから、三十人くらい。巨大なテーブルを三つ繋ぎ合わせ、皆で食事する。
子供達が駆け回り、奇聲を上げる。大人達はお喋りに夢中。賑やかな中、客人は珍しくもないのだろう。喋るのはエリザに任せ、ユゼフとディアナは黙々と食べた。
朝ご飯はいパン。それをスープに浸して食べる。ディアナが文句を言わずに、食べてくれるのは有り難い。ただ腹が減っているだけなのだろうが……
支度も早々にユゼフ達は村長の家を出た。
向かったのはナフトという町。
村から馬で半日ほどの距離だ。
シーバートと落ち合う約束をしたバソリーの廃城はソラン山脈にある。
巖が多い山道は馬よりラバの方が移に適している。この町でラバを買ってから移する方が効率的だった。幌馬車の中にあった寶飾品をしくすねたので、旅費は當分何とかなる。
Advertisement
ナフトは多くの人で賑わっていた。
町の規模としてはまあまあ大きい方だ。モズは魔法使いの國なので、魔書や魔道などを仕れに國外から沢山の商人がやって來る。製造業がいまいち活発ではないため、外國との易によって資を得ていた。
こういった易都市では様々な言語が飛びい、活気に溢れている。や魚を焼く匂い、大聲で呼び込みをする八百屋の主人、笑い聲や酔っぱらいのケンカ……庶民の生活を垣間見る事が出來た。
主國、鳥の王國(他の六國は派生してできた國なので鳥の王國を主國と呼ぶ)ほど差別が激しくないから、とりどりの髪の尖った耳や獣耳をした亜人の姿も見える。
ユゼフは子供の頃、魚を荷車に載せて売っていた時の事を思い出した。
髪が青いだけで口汚く罵られるのは當たり前。唾を吐いてきたり、生ゴミを投げつけられることもあった。それでも力一杯聲を張り上げて呼び込みをしたものだ。
今では大聲を出すなど、悪夢にうなされた時ぐらいだが。
賑やかな町はユゼフが育った王都スイマーに似ていて、母と妹達のことを思い出してしまう。
義父は飲んだくれで外にを作り、病気がちの母を置いて家にいないことがほとんどだった。しかし、なぜだろう。母と妹達のいる家は暖かく、いつもらかなに包まれていたのだ。
ユゼフが魚を売り、妹達が分擔して家事をする。喧嘩しても互いを思いやり、勵まし支え合ってきた。
一方、髪を黒く染めヴァルタンの屋敷で生活するようになってからは、家族の溫かみや安らぎをじることが全くなくなった。
あるのは義務と誇りだけだ……
人が多いためユゼフはディアナの腕を摑んだ。
「ダイ、離れるな」
二人はエリザの前では兄妹という設定だ。
ディアナは黒いスカーフで金髪と顔を隠していたが、長い睫に縁取られたエメラルドの目は隠しようがなかった。
そしてなのに騎士のような格好をしているエリザは、やはり人目を引く。
『別れるべきだったか』
朝早くエリザが寢ているに出ることも考えた。ユゼフの肩にもたれ掛かり、睡するディアナの存在がなければ。肩の上からスヤスヤと可らしい寢息が聞こえてくるのに、起こせる訳がなかった。
「分かってるよ」
エリザがニヤつきながら言った。
「あんた達は兄妹なんかじゃない。駆け落ちだろう?」
「……え」
「気持ちは分かるよ。あたしも勝手に結婚相手を決められたんだ。三十歳も年の離れたジジイだった。だから家出してやったのさ」
エリザは溜め息を吐いて繰り返した。
「想像してもみろよ。三十も年の離れたジジイだ……実は會うまでちょっと期待してた……あんたみたいな王子様を想像してね……そ、れ、が、頭の禿げ上がった息の臭い染みだらけのジジイだったんだからさ」
ユゼフは苦笑いした。
「あたしも実はそこそこお嬢様なんだ。だから分かる。年頃になれば勝手に親が縁談をまとめやがる。あんたらもそうなんだろ? 良家の坊っちゃんとお嬢様が結婚を反対されて逃げて來たのだろう?」
『傍目(はため)からはそんな風に見えるのか』
ユゼフが反応に困っていると、
「違うわ」
ディアナがキッとエリザを睨み付けた。
「ああ、悪い悪い。あたしもこう見えてだから羨ましいんだよ。『あなたを守ります』なんて言われてみたいし」
「そんなこと、言った覚えはないが……」
エリザは昨日の晩、起きていたのかもしれなかった。
會話をし聞かれていたとしても、誤解されている方が都合はいい。だが、怒ったディアナはユゼフの腕を振り払って、先に走り出してしまった。
「待って。待ちなさい!」
慌てて追いかける。
バン! という音の後、ディアナは人にぶつかり餅をついた。スカーフがハラリ、ほどけ落ちて金の髪が顕(あらわ)になる。
「痛ってえな。ガキか、か?」
振り返った男の顔には見覚えがあった。熊のような……
「バルバソフ、早く來い! こっちだ」
し離れた所から聞き覚えのある男の聲が聞こえた。
若い男の聲だ。
聞いたのはつい先日──
ユゼフの脳裏に赤い飛沫が舞い上がる。裏切り者ベイル……兄ダニエルの生首……み者にされたミリヤ──この聲は……こいつらは……
盜賊だ。
【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】
2022/6/7 書籍化決定しました! 「フィーグ・ロー。フィーグ、お前の正式採用は無しだ。クビだよ」 この物語の主人公、フィーグはスキルを整備する「スキルメンテ」が外れスキルだと斷じた勇者によって、勇者パーティをクビになった。 「メンテ」とは、スキルを整備・改造する能力だ。酷使して暴走したスキルを修復したり、複數のスキルを掛け合わせ改造することができる。 勇者パーティが快進撃を続けていたのは、フィーグのおかげでもあった。 追放後、フィーグは故郷に戻る。そこでは、様々な者にメンテの能力を認められており、彼は引く手數多であった。 「メンテ」による改造は、やがて【魔改造】と呼ばれる強大な能力に次第に発展していく。 以前、冒険者パーティでひどい目に遭った女剣士リリアや聖女の能力を疑われ婚約破棄されたエリシスなど、自信を失った仲間のスキルを魔改造し、力と自信を取り戻させるフィーグ。 次第にフィーグのパーティは世界最強へ進化していき、栄光の道を歩むことになる。 一方、勇者に加擔していた王都のギルマスは、企みが発覚し、沒落していくのだった。また、勇者アクファも當然のごとくその地位を失っていく——。 ※カクヨム様その他でも掲載していますが、なろう様版が改稿最新版になります。
8 68パドックの下はパクチーがいっぱい/女子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー
京都競馬場のイベント。著ぐるみを著た女が階段から落ちて死んだ。その死に疑問を持った女子大の競馬サークルの後輩たちが調査を始める。なぜか、顧問の講師に次々と降りかかるわけの分からない出來事。 講師に好意を抱く女子學生たちの近未來型ラブコメディー&ミステリー。 講師の心を摑むのは、人間の女の子か、それとも……。 そして、著ぐるみの女の死は、果たして事故だったのか。推理の行方は。 「馬が教えてくれる」という言葉の意味は。 そして、妖怪が仕掛けた「合戦」によって得られたものは。 推理とはいえ、人が人を殺すという「暗さ」はなく、あくまで楽しく。 普通の人間、ゾンビ人間、妖怪、ペットロボットが入り亂れ、主人公を翻弄します。 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリーです。 錯綜したストーリーがお好きなミステリーファンの皆様へ。 第四章から物語は不思議な転換をし、謎が大きく膨らんでいきます。お楽しみに。 かなりの長編になりますので、少しづつ、ジワリと楽しんでいただけたら幸いでございます。
8 186【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~
【コミックス1巻 好評発売中です!!】 平凡な冒険者ヴォルフは、謎の女に赤子を託される。 赤子を自分の娘にしたヴォルフは、冒険者を引退し、のんびり暮らしていた。 15年後、最強勇者となるまで成長したパパ大好き娘レミニアは、王宮に仕えることに。 離れて暮らす父親を心配した過保護な娘は、こっそりヴォルフを物攻、物防、魔防、敏捷性、自動回復すべてMAXまで高めた無敵の冒険者へと強化する。 そんなこと全く知らないヴォルフは、成り行き上仕方なくドラゴンを殺し、すると大公から士官の話を持ちかけられ、大賢者にすらその力を認められる。 本人たちの意図せぬところで、辺境の平凡な冒険者ヴォルフの名は、徐々に世界へと広まっていくのだった。 ※ おかげさまで日間総合2位! 週間総合3位! ※ 舊題『最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、無敵の冒険者となり伝説を歩む。』
8 138男女比がおかしい世界に飛ばされました
主人公の禮二がトラックに轢かれてしまい、起きると男女比が1:100という女性の方が多い世界だった。その世界では、男性はとても貴重で目の前に男性がいると、すぐに襲ってしまうほどだ。その世界で禮二は生きて行く....。 基本的には小説家になろうの方で活動しています。(違う作品を出していますが) なので、とても更新が遅いですが、見てくれると嬉しいです。 多分二週間に一回のペースだと思います。……恐らく。………恐らく。早い時と遅い時があります。
8 147チートスキルで異世界を生きる!
文武両道で、優しくてカッコいい。そんな主人公折原俊哉は、下校中に光に包まれて目が覚めた所は真っ白な空間。 女神のミスで死んでしまった俊哉は、女神に好かれ通常よりも多くチートを貰い異世界で無雙する。 読みにくいと思いますが、宜しくお願いします。
8 103黒竜女王の婚活
女として育てられた美貌の王子アンジュは、諸國を脅かす強大國の主《黒竜王》を暗殺するため、女だと偽ったまま輿入れする。しかし初夜に寢所へと現れたのは、同い年の美しい少女。黒竜王もまた性別を偽っていたのだ! 二つの噓が重なって結局本當の夫婦となった二人は、やがて惹かれ合い、苛烈な運命に共に立ち向かう――。逆転夫婦による絢爛熱愛ファンタジー戦記、開幕!
8 119