《ドーナツから蟲食いを通って魔人はやってくる》29話 レーベ

(これまでのあらすじ)

時間の壁に遮られ、鳥の王國へ帰れなくなった王達がたどり著いたのは、おどろおどろしい過去を持つ五首城。

ユゼフ、王ディアナ、剣士エリザ、學匠シーバートは滯在中に盜賊の襲撃をけた。

地下通路から王とシーバートを逃がし、ユゼフとエリザで応戦するのだが、城り込まれてしまう。

その時、現れたのは邪悪な気配をまとう魔だった。

は王をさらい、學匠シーバートは致命傷を負う。

殘されたユゼフとレーベ(學匠の弟子)は地下通路から出したのだった。

「話がある」

ユゼフの低い聲にレーベは構えた。

「今、主國(鳥の王國)で起こっている出來事についてはシーバート様から大聞いているな?」

レーベは頷いた。

「最初にこれだけは言っておく。謀反人イアン・ローズは俺の従兄弟だが、俺は謀反には一切関わっていない。これはを張って言える。この件に関しては俺は何もやましいことはないし潔白だ」

レーベが何か言おうとしたが、ユゼフはそれを制した。

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「だが、俺が心から仕え忠義を盡くすのはクロノス國王ではない」

ユゼフはそこで一旦言葉を止めた。

左前腕にある傷を服の上からる。

ここから先の言葉を発することは一つの賭けだった。

だが、レーベにごまかしは効かないだろうし、真実を話すしかない。

「俺が忠誠を誓っているのは、シーマ・シャルドンだ」

レーベは眉間に皺を寄せて、意味が分からないといった風に首を降った。

「……シーマ・シャルドン……誰なんです、その人は……ヴィナス王が保護されている城の人ですか? 僕は貴族でないからよく分からない」

「シャルドン家は王族と縁のある名家でシーマはただ一人の正嫡子だ」

「……どうしてその人に忠誠を?」

「會ってみれば分かる。誰よりも王に相応しい人だ」

レーベは腕を組んでしばらく考えている様子だった。

「……で、あんたはそのシーマという人のために何をしようとしてるわけ?」

「ディアナ様をお守りして、無事國へ送り屆ける。それだけだ」

「もしかして、イアン・ローズが負けたら、その人が王になるんですか?」

「そうだ」

レーベはやっと腑に落ちた様子で頷いた。

「……なるほど。大分かりました」

「シーバート様のことは殘念だったが、主國へ戻るつもりであれば俺に協力してほしい」

「ふーん、そういうこと……」

レーベはいつもの意地悪な笑みを顔に浮かべた。

「でも、そのシーマという人は謀反が起こることを知っていたんじゃないですか? 時間の壁が出現することも。その人がイアン・ローズを扇した可能は?」

「……それは分からない」

の群れが鳴きながら頭上を通り過ぎていった。東の空は赤く染まり始めている。

「協力すれば、相応の見返りは貰えるんですか?」

「勿論」

レーベはユゼフの言葉に偽りがないかどうか、確かめるように鋭い視線を向ける。

しばらく二人は無言で睨み合う形になった。

「分かった。協力します」

レーベは意外にすんなり承諾した。

張が解け、ユゼフは息を吐いて笑みを浮かべた。

「勘違いしないでくださいね。僕は真実が知りたいから取り敢えずあんたに協力するだけですから。なんでシーバート様が死ななければならなかったのか、真因を突き止めたいんですよ」

「何にせよ協力は謝する」

ユゼフはレーベを促して歩き始めた。

グリンデル王國に繋がる「蟲食い」を目指して。

「まず、ディアナ様を助ける為には準備が必要だ。あの邪悪な者達は魔の國から來たと思われる。魔の國へり込むには人手と瘴気からを守るためのが必要になる」

「待って。僕は魔の國には行きませんよ。そこまでは危険を犯したくない」

「分かってる。おまえには別のことをやってもらおうと思っている」

ユゼフは懐からディアナの文を取り出した。

「この文をグリンデルの王に屆けてほしい」

容は?」

容までは……ディアナ様が書いたものだから。渡せばどういうことか分かるだろう」

「……まあ、いいや。あんたはその間、何するんですか?」

「盜賊達と渉するつもりだ」

「あいつらと?」

レーベは笑った。

「一人得の知れないのがいるけど、あとはあいつら大馬鹿者の集まりですよ」

「人手と金が必要だ」

「何か手札は持っているんですか?」

「これからそれを準備するつもりだ。これは俺一人で何とかする。それと、たまたま頭領の兄と思われる人を知っている。渉に役立つかもしれない」

「ふーん、あの人の、ね」

レーベは何か意味を含んだ笑いを浮かべた。

「捕まった時、喋ったのか? どんな男だった?」

「盜賊っぽくはなかったですね。戦闘力はあるかもしれないけど、あんまり頭は良くないです。判斷力もいまいち。元貴族とか言う変なおじさんの言いなりになってました」

「元貴族?」

「アスターとか言ったかな。あいつは曲者です」

アスターという名前にユゼフは聞き覚えがあった。こめかみを押して記憶を手繰るも、直ぐには出てこない。恐らくアナンの橫にいた貴族風の長い髭の男だろう。

「それと、頭領はいつもバルバソフという熊みたいな大男を連れてます。そいつは豬突猛進形で馬鹿だけど」

「その男は見たことがある」

話の途中で盜賊達から逃げてきたラバが一頭、巖道をうろついているのが見えた。

ユゼフがラバの言葉で話しかけると、こちらに寄って來た。

「……驚いた。あんた、みたいな聲が出せるんだ」

レーベは目を丸くする。

ユゼフは居心地悪くなり、をよじった。

レーベの前では見せたくなかった。

「まさか、二人でこれには乗らないですよね?」

「今、蟲食いまでの地図を書くから……待て」

ユゼフはシーバートから聞いた場所を暗記していた。聞いてすぐに覚えたのである。

ここから先は巖ばかりであまり道もないが、何もないところに木が植えてあったり、形の変わった大きな巖が置かれるなど目印は僅かながらある。

『不安だが、任せた方がいい』

「盜賊達のアジトの場所は分かるか?」

「彼らの話を盜み聞きした所によると、恐らく「魔法使いの森」の中かと。詳しい場所は分かりません」

ユゼフはシーバートの持ちをレーベに渡した。食料と水がっている。

「では、魔法使いの森の近くにチャルークという小さな村がある。そこで落ち合おう」

「………まあ、いいでしょう。あんたの計畫がうまく行かなければ、そこには居ないだろうけど……」

ラバの上にレーベを押し上げ、ユゼフは別れを告げた。

霊の祝福を。幸運を祈る」

レーベを見送った後、気抜けしたユゼフはしばらくぼんやり佇んでいた。から心が抜け出たようなじだ。たまにこういうことはある。

それも數秒──

ユゼフは五首城の方角へ戻り始めた。

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