《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》ネガティブキャンペーン

多大な疲労を覚えて咲が家に帰ると、周はいなかった。

メイだけが留守番をしていたようで、ドアを開けると飛び付いてきた。

賢司はすぐに自分の部屋にこもってしまう。

「メイちゃん、周君はどこに行ったのかしらね?」

すぐに隣室の住人が思い浮かんだが、駐車場に車はなかった。友達の家にでも行ったのだろう。

その時「ただいまー」と玄関のドアが開いた。

咲は心底安堵した。もしもこのまま賢司と二人でいなければならないとしたら、それこそ窒息してしまうほど苦しかった。

彼は自分のことをひどく憎んでいる。母親と自分から父親を奪ったの娘。

一番恨むべき相手はもうこの世にいない。だから……。

周が父親の違う実の弟だということを、咲は賢司と結婚する直前に知らされた。

その存在は知っていたが、一度も會ったことはない。

咲にとって唯一のつながった親である。嬉しかった。

しかし周はまったく真実を知らされておらず、かえって咲について歪んだ報を吹き込まれていた。

だから初めはまったく心を開いてくれず、寂しい日々が続いた。

その上誰の仕業か知らないが、咲が駿河と今でも不倫関係にあると誤解まで植え付けられた。

周は疑うことを知らない。

賢司が言ったことは本當にその通りだった。

それから和泉の助けもあって今に至る訳だが、周と咲を引き離そうとする、険で回りくどい様々な企みはすべて賢司によるものだった。

薄々咲もそのことには気付いていたが、ある日、本人の口からそう聞かされた。

君に幸せになる権利はない。彼はそう言った。

「……義姉さん、なんか怒ってる?」

「え? どうして……」

「怖い顔してたから」

「ごめんなさいね、考えことをしていて。あら……?」

カゴから出てきた三貓の首には見たことのない首がはまっていた。

「どうしたの? これ」

淡いブルーの沢あるリボン。咲の好きなだ。

「友達が……プリンに、ってプレゼントしてくれた」

「お友達って、智哉君か円城寺君?」

すると周はなぜか目を泳がせた。

咲は後で気づいたのだが、彼らのうちどちらかなら智哉がとか、信行が、とか言うことだろう。

その時はまさか、その友人が彼だとは思わなかった。

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