《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》同期のよしみ

現場に到著すると鑑識が既に作業を始めていて、ブルーシートに覆われていた。

野次馬を掻き分けてロープをくぐる。

いつもこの瞬間は微かな優越を覚えてしまう。

だが、鑑識の作業が終わるまではシートの中にれない。

所轄の刑事達が既に臨場しており、1課で最初に到著したのは駿河のようだった。

はいつも不思議に思う。

この人、いつ寢てるのかしら?

「班長達はまだですか?」

「先ほど、渋滯にはまったのでし遅れるとの連絡があった。廿日市南署刑事課の班長の指示に従えとのことだ」

し離れた場所に視線を向けると、腕に『捜査』の腕章をはめた中年男が指示を出しているのが見えた。

所轄の班長は50代ぐらいの、いかにも叩き上げのノンキャリアという風貌の男である。

こちらに気づいた相手は厳めしい顔で一課の面々を眺める。

それから結で視線を止めると、途端に侮蔑のが浮かんだのがわかった。

しかし今はそんなことはどうでもいい。

はさりげなく鑑識員達の姿を見回した。そして、見つけた。

聲をかけるのはやめておこう。いくら初任科の同期で友人だからといって、作業中に話しかけたりしたら叱られる。

は中腰の狀態で鑑識作業に集中している、平林郁(ひらばやしいくみ)の姿を黙って見守った。

は県警にった當初から鑑識課を希していた。

念願かなって鑑識課員になれた時には、結もささやかながらお祝いをしたものだ。

鑑識が作業の終了を教えてくれる。

「どんな合だ?」

所轄の班長は紺の制服を著た若い鑑識員に聲をかけた。

「周辺に爭った形跡がないので、どこかで殺害されて棄されたのでしょう」

「死因は?」

「撲殺です。全に毆打の後がありましたが、致命傷になったのは頭部の傷です。兇は特定に時間がかかりそうです……」

元は?」

「一切が持ち去られています。とりあえず、ご覧になりますか?」

刑事達は全員、が置かれている場所へ向かった。

まだ若い男だ。毆打されたせいであちこちが腫れあがって、もはや原型をとどめていない。

これは元が判明するまで時間がかかる。

そうなると、事件は長引く……。

と、思ったのだが。

「……あ!」

「どうした? うさこ」

「この人……確かこないだ、組織的犯罪対策部の坪井課長が探してた……何とか組の麻薬売人じゃありませんか?! 寫真見せられたの、覚えてません?」

日下部は首を傾げる。

駿河もじっとの顔を見つめている。

「言い方は悪いですけど、こないだ組対が逮捕し損ねて、眼になって探してるっていう……」

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