《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》機械音癡

イラストは一條えりん様からのいただきものです。

い……かわいすぎるでしょう?!

玄関のドアを開けると義姉の靴があった。

旅館が忙しかったのは一時的なものだったようだ。

嬉しいような、経営は大丈夫なのかと心配なような複雑な気分だ。

「おかえりなさい」咲は笑顔で玄関に出迎えに出てくれる。

「ただいま……」

周が靴をいでいると貓達がまとわりついてくる。それと同時に、咲がじっと自分の背中を見つめているのに気付いた。

「あのね、周君……大事な話があるの」

「な、何?」

「先に服を著替えて、手を洗ってからリビングにきて」

周は言われるままに従った。

リビングにると、テーブルの上に昨日焼いたパウンドケーキと紅茶が乗っている。

「実はね、旅館を閉めることになったのよ」

咲は天気の話でもするかのように、あっさりと話し出した。

周はケーキを頬張りながらふーん、と頷いて、そして改めて驚いてしまった。

「な、なんで?!」

「やっぱり上手くいかなかったみたい……。なんていうのか、の空いたバケツに水をれてるみたいな、そんな経営狀態だったんですって」

ごくん、と口の中のものを紅茶で飲み下し、周は義姉の顔を見つめた。

それを言うなら『自転車業』……。

それでね、と彼し目を逸らして続ける。

周はその時、瞬間的に嫌な予を覚えた。

「お、將さんは?! 他の従業員達はどうなるんだよ?!」

思わず彼の話を遮ってんでしまう。

「わからない……でも」

もしや兄と別れる、と言い出すのではないか。

その方がいいと自分でも考えたくせに、いざとなると、彼と他人になってしまうことが怖い。

周は心で相當、焦っていた。

「な、なぁ! 本當にもう、どうしようもないのか?! なんて言ったっけ、ほら……會社の経営を見てくれる人……」

義姉は首を橫に振る。

「もう、どうしようもないの」

すべてをあきらめきっているような彼の言い草に、今度はカチンときた。

そして。

脳裏のあの男の無表な顔が浮かんだ。

「バカ言うなよ! それじゃあ、なんのためにあいつのこと……」

裏切って、と言いかけて周は辛うじて飲み込んだ。

「あ、あいつ……駿河って刑事が言ってたよな? 大義のために私を捨てたのなら、最後まで貫き通せ。そうでなければ僕も納得できない……とか、なんとか」

はっ、と咲の表に変化があらわれた。

あと一押し!!

「あきらめるのは、もうちょっと後でもいいんじゃねぇの? 最後の最後まで足掻いてみせて、それでもダメなら……」

咲の瞳が潤む。

「俺も、何ができるかわからないけど……協力するから!! どうにかして存続……」

言いかけた時、周はふと思い出したことがあった。

「そうだ【ファイナンシャルプランナー】!!」

確か、會社の経営狀態だとか、今後の方針なんかをアドバイスしてくれる存在。

優秀なファイナンシャルプランナーが倒産寸前だった會社をV字回復にまで引き上げたという、そんなサクセスストーリーは時々、テレビで放送される。

來て、と周は立ち上がるか早いか、義姉の手をとって自分の部屋に連れて行った。

パソコンの電源をれる。

後をついてきた貓達が例によって、キーボードの上に橫たわったり、マウスをる手にちょっかいを出してくる。

「義姉さん、ちょっと貓達を抑えてて」

周はまず検索サイトを開いた。

広島県、會計士で検索をかけてみる。すると。

出てくる、出てくる。

「義姉さん、これ見て。ほら……相談できそうな人、すごくたくさんいるだろ?」

機械音癡な彼は目を丸くして畫面に見っている。

座って、と咲を椅子に座らせ、貓を引きとってからマウスを握らせる。

作方法、わかる? 畫面をスクロールする時は、こうして……この矢印が指の形に変わったら、リンク……」

「……???」

だめだ、全然わかってないみたいだ。

「……本屋、行こうか?」

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