《やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中》33
ロレンスが流したジルとの噂は、風化するには記憶に新しい。おそるおそるジルが見あげると、いっぺんの曇りもない笑顔でハディスが見返した。
「楽しそうだね、あの三人。遠慮せず言っていいんだよ、ジル。僕よりあっちの馬がいいなら」
「へ、陛下……ロレンスのこと、まだ気にしてるんですか」
「気にしてないよ。ぜんっぜん気にしてない。君がわざわざ彼を案役に指名したってことなんか、ぜんっっぜん、これっぽっちも、まったく気にしてない。挨拶のときに、ご無禮を陛下なんてぬけぬけ言われたことも、ぜんっっぜん気にしてないから」
笑顔なのにしも目が笑っていない。やや焦點がずれている気すらする。というか背中からじる圧がすごい。
ジルはこっそり溜め息を吐いた。
ハディスと一緒に兵のけ渡し地點に向かうのは、ジル、ジーク、カミラ。そこにジルはわざわざロレンスを指名して加えた。
いくら知らないふりをするとはいえ、ジェラルドの間諜であろうロレンスを野放しにはできない。の弱いフェイリス王はノイトラールに殘るに決まっているから、そこから引き離すのも狙いだった。
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(フェイリス王が単獨で何ができるかわからない以上、ロレンスを引き離したところで意味はないかもしれないが……)
だが、ロレンスがジルと人の噂なんてものをでっちあげたせいで、余計な心労をジルが抱え込むはめになっている。
「陛下、何度も言ってるじゃないですか。あの噂は牽制のための噓だって」
「うん、知ってる。ロレンス君にも言われたよ。笑顔で、意味ありげに、まさか竜帝が自分ごとき小を気にするわけありませんよねみたいなで。いやあ、彼は度があるね!」
完全にロレンスが煽りにきている。歯ぎしりしたい気持ちをこらえてジルは黙った。
対するハディスは、同じ馬上でさわやかに続ける。
「君のことを疑ってるわけじゃないよ。彼を指名したのも、何か考えがあるんだろう」
「……な、なら、そんなに怒らなくても……」
「怒ってもいないよ、僕は――ただただ、気にらないだけだ」
低くなったハディスの聲と圧に、ひっとが鳴る。背筋をばしていると、馬を橫につけたリステアードがぱんと軽くハディスの頭をはたいた。
「やめないか、大人げない。しゃんとしていろ、自信をもって」
「皇帝だからっていうなら説得力がない。今の僕はただの料理人だ!」
「もうその設定は終わっただろうが。まあいい。お前みたいな奴は、いざというときだけしゃんとするんだろう」
軽く言われてハディスはまばたいていた。ジルは心する。
(リステアード殿下、陛下の扱いがうまくなってきたなあ……こんなふうに陛下をあしらえるのはちょっと前まで、ラーヴェ様とわたしくらいだったのに……ん?)
ふとにちくりと刺さったものがある気がして、ジルはハディスを見た。先ほどまでジルだけを見ていたハディスは、何やらリステアードに言い返して逆に言い込められている。
いいことだ。素晴らしい兄弟の構図だ。
なのにむかむかしてくるのはどういうことだろう。
「人數とはいえ僕の部下も見ている。皇帝なのだから、あまりみっともない姿は見せるな」
最後にもう一度ハディスの頭をはたいて、リステアードは先に進み、先頭のカミラに替を申し出ていた。
「あんなにばしばし毆らなくてもいいのに……ジル?」
目ざといハディスは、ジルの変化に気づいたようだった。
「――リステアード殿下と仲良くなれてよかったですね、陛下」
「あ、うん……? え? 何、どこで怒ったんだ?」
隠し事はよくない。それを思い出して、ジルは頬をふくらませ、ハディスのにぼすんと背中を預ける。
「嫌な言い方してすみません。わたし、意外にやきもちやきみたいです、陛下」
「……」
沈黙ののち、ぼんっと頭から音を立ててふらりと馬上からよろめいたハディスを、いつの間にか橫にきていたカミラがすばやくけ止めた。
「もうそろそろだと思ったわ……」
「なんですか、そろそろって」
「ジルちゃんがやらかす頃合いよ。ほら陛下、しっかり。ジルちゃんを乗せてるんだから」
「カ、カミラっ……僕のお嫁さんが可い! 僕はどうしたらいい!?」
「それは野営地についてからよ、その手のことはお姉さんにまかせなさーい」
「ちょっと待ってくださいカミラ、陛下にろくでもないこと教えるつもりでしょう!?」
「だってジルちゃんも悪いのよ?」
びしっといきなりカミラに人差し指を鼻先に突きつけられて、ジルはひるむ。
「あの、貍坊や。何者なの。クレイトスでのお知り合い?」
「そ、そういうわけでは……ないですが」
「あの子、隙あらばジルちゃんを見てる」
カミラは勢を戻し、ジルたちの乗る馬の橫に自分の馬をつけた。
「興味津々ってじよ。ジルちゃん目當てに王サマから離れてこっちについてきたってあからさまじゃなぁい。陛下のご機嫌ナナメもごもっともよ」
カミラが味方してくれたのが嬉しかったのか、ちらと見あげると、ハディスはにこにこやり取りを聞いている。ちょっとだけ悔しくなった。
「なんだ、陛下。ロレンスをあやしんでるだけで、やきもちやいてくれたんじゃないんですね」
「ぐっ……そ、そうくるのは卑怯……!」
「ジルちゃん、陛下への追撃やめて。あと誤魔化されないわよ。ジークは隊長が決めたことってなんにも口出さない気みたいだけど、アタシは違うわよ。あの殿下もね」
びしっとカミラは人差し指で先頭を行くリステアードの背中を突きつけた。
「クレイトスの報源ってことで向を見てるみたいだけど、そのへん、ジルちゃんはどう考えてるの。兵の引き渡しが罠の可能もあるのに、あやしい人間を同行させるなんて」
――隠し事はよくない。
そう言ったのは他ならぬロレンスだ。この狀況を読んでいたのかもしれない。
観念して、ジルは口を開いた。
「……あのひと、本當はフェイリス王じゃなくジェラルド王子の部下のはずなんです」
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