《やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中》46
波の音が聞こえる。なんだか優しいものにくるまれているような心地だ。
寢返りを打とうとして、ハディスは目をさました。だが目を突き刺す夕日のに目をつぶってこまる。その作で、頭をでていた小さな手が止まった。
「気づきましたか、陛下」
「……ジル……」
どうも船の甲板に寢かされているようだ。けれど、頭はらかい。ジルが膝枕をしてくれているからだ。だからこんなに安心して、しあわせなのだろう。夢みたいだ。
だが、海面を赤く照らす西日が現実と時間の経過を認識させる。
「……僕……ラーヴェ、は……?」
「おー、いるぞ。ローは……まだ睡してるなぁ」
目の前にラーヴェが顔を出した。逆で見えにくいけれど、変わらない。い頃から見知っている、いつものラーヴェだ――神格を、落としてなんかいない。
「さっきエリンツィア殿下が、竜騎士団と一緒にきてくれました。今、対応に當たってくれてます。ヴィッセル殿下に言われて、すぐにライカに飛べるようずっと海の向こうで待機しててくれたみたいで。陛下、覚えてますか? 空の魔法陣。あれが見えたそうです」
「……覚えてないけど……そっか、あれだけやれば竜にも伝わるよね……」
きっと驚いてまさに飛んできてくれたのだろう。政治面には疎いエリンツィアだが、復興作業などこういう現場には慣れている。それに、そうだ、あのロジャーという男はたぶん――。
「まだ寢てて大丈夫ですよ。みんながちゃんとしてくれてますから」
強い日差しから守るように、ジルが両目に手をかぶせてくれた。確かにまだ休んだほうがいいかもしれない。とても、疲れている。涙が涸れるまで泣いたあとのように。
「あ、でも勢はそろそろ足がしびれてきそうなので――」
「……嫌な、夢だった……みんな、いない……」
腰をあげようとしていたジルのきが止まった。緩慢な作でその腰に抱きついて、目を閉じる。
「夢で、よかった……」
「――そうですよ、陛下。だって幸せ家族計畫ですからね。おじいさんとおばあさんになるまでわたしたちは一緒です」
「おー、どんどん壯大になってくなー嬢ちゃんのそれ」
ラーヴェが笑っている。
よかった。
どうしてだか何度もそれを噛みしめる。
だからきっと、頬に落ちてきた水滴が塩辛いのも、気のせいだろう。
「……嬢ちゃん? なんで泣いてるんだ」
「陛下には、緒にしてくださいラーヴェ様。……ただの傷なので」
「……何か、あったのか? さっき」
神妙な顔で尋ねるラーヴェもやはり、理を書き換えたときの記憶はないらしい。なんだかおかしくなってジルは笑い、洟をすすった。
そう、あれは幻だったのだ。だから肩にけたはずの傷もすぐ消えてしまった。
正しくない理が見せた、幻だ。
「前に、嬢ちゃんは未來を知ってるって言ったな。……それか?」
「いいえ。あれはもう、過去の話です」
きっぱり言い切って、ジルは寢ってしまったハディスの頭をでる。
あれがひとつ前の竜帝。本當は、そのことの意味をきちんと考えるべきなのかもしれない。でも、今は。
「わたしが、二回分の人生をかけて、陛下をしあわせにしますから」
そうか、とつぶいやいてラーヴェと一緒に空を仰ぐ。空のが変わっていく。闇を抱えた夜がやってくる。當然のことだ。
時間は前にしか進まない――そういう理なのだから。
殘すはエピローグとなります。
ここまでおつきあい有り難うございました!
なお、來月10/1に第5部を書籍化した5巻が発売されることが決まっております。
紙・電子ともに予約など始まっておりますので、よろしければ作者Twitterや公式サイトなどチェックしてやってくださいませ。
それでは明後日更新のエピローグまで宜しくお願い致します!
オーバーロード:前編
未來に存在するVRMMO『ユグドラシル』のサービス終了の日。最強クラスのギルドの一角である『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドマスター『モモンガ』は、メンバーと共に作り上げた居城の玉座に、臣下たるNPCたちにかしずかれながら座っていた。たった1人で、もはやいないかつての仲間達を思いながら。 そしてサービスが終わり強制ログアウトが生じるその瞬間、異変が起こった。ログアウトできず、そして何より話すことの出來ないはずのNPC達がまるで生きているかのように忠誠を示しだしたのだ。さらには外の世界は未知の世界。モモンガは混亂しながらも、絶対者(ギルドマスター)として行動を開始する。 これはアンデッドの肉體を得た絶対者たるモモンガが、己の(頭のおかしい)目的のために、異世界を蹂躙していく物語である。 この作品はarcadia様の方でも公開しております。
8 189高校生である私が請け負うには重過ぎる
海野蒼衣(うみのあおい)、高校三年の春。 そんな時期に転校してきたのは黒衣をまとった怪しげな男子高生。 彼には決して表向きには行動できないある『仕事』を行なっていた⁉︎ そしてひょんな事から彼女は、彼の『仕事』へと加擔せざるを得ない狀況に陥ってしまう。 彼女の奇妙で奇怪な最後の一年間が始まろうとしていた。
8 159引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
毎日引きこもっていただけでLv.999になっていた―― ちょっと前まで引きこもりだったのに、王女様やら幼女やらが近寄ってきてハーレムも起きてしまう。 成り行きで勇者をぶっ飛ばし、代わりに魔王の娘、ロニンを助けることになった主人公・シュン。 みなが驚く。 引きこもっていたくせにこんなに強いなんてありえないと―― 魔王の娘と関わっていくうち、シュンはすこしずつ変わっていく。 ――平和な國を作るとか、そんなめんどくせえことやりたくねえ。 ――でも誰かがやらないと、またロニンが不幸な目に遭う。だったら、俺が…… いつまでも自分の世界にこもっていられない。 引きこもりによる國づくりである。 皇女セレスティアとの爭い、國王エルノスとの政治的駆け引きなど、さまざまな試練を乗り越えながら、シュンは自分の國を育てていく―― 全力で書いております。 読んで後悔はさせません。 ぜひお立ち寄りくださいませ。 *キャラクター人気投票を実施しております。よりよい作品にするため、ぜひご協力をお願い致します。リンクは目次と各話の一番下にございます。 *アルファポリスにも掲載しております。
8 122一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...
中學ではバレー部キャプテン、さわやかイケメンの青木 奏太 中學時代いじめや病気を乗り越えて、心機一転高校では新しい自分になろうと心躍らす赤井來蘭 そんな2人は出席番號1番同士 入學式、隣に並ぶ來蘭に奏太は一目惚れをする 中學時代のいじめの記憶がトラウマとなり、ことある事にフラッシュバックしてしまう來蘭を懸命に守る奏太 その度に來蘭は強くなり、輝き出していく
8 78獣少女と共同生活!?
ある日、朝倉 誠は仕事帰りの電車で寢てしまい、とある田舎に來てしまう。 次の電車まで暇つぶしに山へ散歩に行くと、そこにはウサギのコスプレをした少女がいた。 彼女から帰る場所がなくなったと聞いた誠は、自分の家に招待。そして暫くの間、一緒に過ごすことに。 果たして、彼女との生活がどのようなものになるのか? ※作者からの一言 この作品は初投稿で、まだ不慣れなところがあります。ご了承下さい。 また、投稿間隔は気まぐれですが、金曜日に投稿出來るように努力します。毎週ではないですが……。 1話あたりの文字數が1,000〜2,000文字と少ないですが、ご了承下さい。 リクエストなども隨時受け付けています。全ては不可能ですが、面白そうなものは採用させて頂く予定です。 また、小説投稿サイト「ハーメルン」でも投稿しているので、そちらも宜しくお願いします。
8 160高欄に佇む、千載を距てた愛染で
山奧にある橋。愛染橋。 古くからその橋は、多くの人を見てきた。 かつては街と街を結ぶ橋だったが、今は忘れられた橋。 ある日、何故かその橋に惹かれ… その夜から夢を見る。 愛染橋に纏わる色んな人々の人生が、夢になって蘇る。
8 118