《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第12話 理由

この世界には魔力と呼ばれる力が存在する。

魔力は主に人間ので生され、人によってその量は異なる。

魔力を使えば炎や水、風など人智を超えた現象を発現させることができ、それを人々は“魔法”と呼んだ。

というのが、ソフィアが認識している魔法の概念だったが……。

霊力、という力もあるの。最も、ソフィアちゃんの國にいる霊はごく僅かだろうから、存在自ほとんど認知されていないと思うけど」

この部分はシエルが説明してくれた。

で生される魔力とは異なり、空気中に存在する霊の力を借りて人智を超えた現象を発現させる力……それが、霊力らしい。

「ソフィアちゃんは、霊力がとても高いの。でも、霊が居ないフェルミでは、霊力が高くても頼れる霊もいないし、頼るノウハウもないから、寶の持ち腐れだったってわけね」

「ちょっと待ってください、ちょっと待ってください」

一旦、頭を整理する。

「えっと、つまり私は……フェルミの人たちが持ってる力とは、別の力を持っていた、という事ですか?」

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「そういうこと」

「……すみません、実が湧かないです」

「そのフェンリルちゃん」

『ん? 僕?』

ハナコの聲で、ハッとする。

霊力がない人間には、そもそも霊が見えないの。そのフェンリルちゃんが見えていた人、ソフィアちゃんの他に誰かいた?」

「……いいえ」

一人もいなかった。

他の人には見えない存在が、ソフィアだけに見えていた。

魔力とは違う、自の持つ異質な力が急に存在を増した。

それと同時に、さまざまな疑問が湧いてくる。

何故、自分にそんな力があるのか。

何故、ハナコは自分の元に訪れたのか。

というか、何故ハナコは巨大化した……?

それら一つ一つを知りたいと思ったが、次はアランが話を始めた。

霊力が高い者は言い換えると、霊に好かれやすい者でもあるし、霊に様々な恩恵を與える者でもある。いわば霊たちにされている、と言っていい」

されている……」

ハナコの今までの行を思い返す。

確かに、彼の自分に向けるはいつも好意的で、無償ののように思えた。

「この國のインフラや治安、國防などは、霊たちの力によって回っている。つまり霊力が高い者がいればいるほど、霊たちから様々な恩恵をけられる。つまり君は、俺たち霊王國にとって非常に有益な存在なのだ」

「なるほど……」

ようやく合點がいった。

つまり自分は、エルメルにとって利用価値があるから連れてこられた、という事で。

そこには無い故に、契約結婚なのだろう。

字面だけ見るとなんだか薄な印象もけるが、不思議と嫌な気はしなかった。

むしろ、安心さえ覚えていた。

ソフィア自、自分が誰かにされるような人間とは思っていない。

だからこうして、目に見えるの利害関係があるほうがソフィアとしてはすんなりれることができる。

と思っていたが、シエルは違うようだった。

「ちょっとアラン。もうちょっと言い方ってものがあるんじゃない? その表現だと、ソフィアちゃんに利用価値があるからの良い婚約を持ち出して連れてきました、って言ってるようなものよ?」

「……申し訳ない、言葉足らずだった」

「ごめんね、ソフィアちゃん。アランは竜族というのもあって、人族の……特に乙の繊細な気持ちに疎いの。許してあげて」

「い、いえ、そんな、お気になさらないでください。むしろ明確な利用価値があると仰っていただけたほうが、私としてはありがたいと言いますか……」

「……? よくわからないけれど、私たちは別に、ソフィアちゃんの力しさだけで連れてきたわけじゃないのよ?」

「と……いいますと?」

今度はアランが口を開く。

「あのパーティだが、俺たちは事前に參加者すべての経歴や現在のポジションの報を手し、頭にれていた。當然、君の事も」

ソフィアは息を呑んだ。

つまり初めて言葉をわした時點で、アランは自分が魔力ゼロの落ちこぼれという事を知っていたわけで。

「魔力至上主義のあの國において、君のこれまでの経歴からすると肩の狹い思いをしていたのは容易に想像がつく。ましてや、君の親である妹からの、あのような扱いを見てしまってはな……この國で暮らしたほうが、君は幸せに暮らせるのではないかと思った」

つまりはだ。

二人は事前にパーティの參加者をすべて把握していて、ソフィアの生い立ちや経歴、現狀も全て知っていた。

そしてあのパーティの短い時間で、ソフィアが妹を筆頭に周囲から強い風當たりをけている景を目の當たりにし、エルメルの方が自分の力も活かせるし、幸せに暮らせるんじゃないかと判斷した、という事だろうか。

例のパーティで、シエルがアランに耳打ちしていた場面を思い起こす。

『ねえアラン、ちょっと』

『はい……はい、自分もそう思います』

『やっぱり、貴方もそう思うわよね。そこで、提案なんだけど……』

『……シエル様、本気で言ってます?』

『私が冗談を言うとでも?』

この短い間に、そのような判斷が行われていたのかと、ソフィアは戦慄した。

「もちろん、婚約以外にもソフィアちゃんを我が國に連れてくる手段はあったと思うわ。でも、現狀だと婚約という形が一番早くて纏まりも良さそうだったから……まあ、あの時の私はし、怒りで的になってしまっていたのは否めないけれど」

(ああ、そうか……)

ソフィアは理解する。

あの時、シエルはおそらく自分のために怒りを覚えてくれたのだと。

まだ十代もそこらというを、魔力がゼロだったという理由だけで爪弾きにし、見下し、家族でさえも排斥する事が公の場でまかり通っているという理不盡に、シエルは我慢ならなかったのだ。

お國柄の違い、と言えばそれまでだけど。

優しさに溢れた思いやりに、なんだかが溫かくなる。

こんなにも自分自を見てくれて、心遣ってくれたのは初めてかもしれないと思った。

それが同じ國の人間ではなく、他國の違う種族の者たちにというのは、なんとも皮な事だが。

「君との婚約についての、大まかな概要は以上だ」

アランが一息れてから、言葉を続ける。

「契約とは言え、結婚が立した場合は俺は君を妻として迎えれるし、生活の保証は手厚くする予定だ。ただ……」

ソフィアの目をまっすぐ見據えて、アランは言う。

「今までの説明を聞いた上で、それでも國に帰りたいと言うのなら、婚約を破棄して貰って構わない。元々、強引過ぎる婚約というのは重々承知の上だからな。我が國としては、君の意思を尊重するつも……」

「結婚します」

アランの言葉の途中で、ソフィアは聲を上げた。

「結婚、させてください」

迷いはなかった。

かたや、自分をモノとしか見てくれない家族、自分の価値などなんら見出せずこき使われ窮屈で、どこにも居場所がない國。

かたや、自分をちゃんと一人の人間として接してくれかつ、自分の力が活かせそうな希もある國。

どっちが良いか。

答えは明白だった。

それに……。

(アラン様のこと、もっと知りたい……)

彼と接した時間はまだ短いが、ソフィアはそう思うようになっていた。

エルメルの竜神にして、軍務大臣。

という立場だけからは見えない、節々かられ出る優しさや誠実さに惹かれている自分に、ソフィアは気づいたのであった。

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